会計史学会年報
Online ISSN : 2758-1691
Print ISSN : 1884-4405
2020 巻, 39 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 小川 華代
    2020 年 2020 巻 39 号 p. 1-15
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー
    イギリス産業革命期主要産業の1つである綿工業は,短期間で大工場制へと成長した。しかし,綿工業の原価管理の手法については,これまでの研究では不十分であった。そのような中で,本稿では,綿工場の最初の管理書として評価されているが,これまで詳細な研究が行われてこなかったJ. Montgomeryの経営管理書の検討を行った。経営管理書では,これまでの綿工場経営の問題点を整理し,有用な管理手法の提案が行われている。この経営管理書の1番の功績は,イギリス産業革命期当時の,秘密性の高かった内部管理の手法を公開することにより,綿工業全体の発展を促したことである。大工場となった綿工業において,利益の最大化を追求するためには,原材料,製造費用,人材などの管理を正確に行うことが重要である。正確な管理を行うためには,知識が必要であり,J. Montgomeryはその知識の提供を経営管理書によって行った。経営管理書では,特に原価計算の重要性について着目しており,綿工業の特徴を反映させた原価計算の萌芽形態を示している。
  • 中野 貴元
    2020 年 2020 巻 39 号 p. 17-30
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー
    江戸幕府が倒れたのち,天皇を中心とする近代国家化を目指した明治政府にとって,中央集権体制を確立し,迫りくる西欧列強の脅威に備えることが急務であった。その新政体の結集する核として天皇が据えられるが,皇室が保有する財産に対していかに会計を行うかが問題となる。明治期当初においては政府会計の一部とされていたものが,その後政府会計とは別に皇室会計制度を制定し,独自の発展を遂げた。本稿はこれら皇室会計の制度の変遷を概観し,その内容を明らかにする。
  • Jardine Matheson史料によるBeale Shank Magniac商会の帳簿1799年から1814年
    山口 不二夫
    2020 年 2020 巻 39 号 p. 31-44
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー
    本稿は19世紀初頭の東アジアで活躍した英国商人Country Traderの帳簿のデータの検討を行う。前稿では,すでに1799年の帳簿組織について検討している。本稿は1799年から1814年までのLedgerのなかのデータの変化と帳簿の変化を明らかにする。本商会は4人で始まったpartnership企業であり,最初の2期は剰余金を残さないようにProfit and Loss 勘定のなかで利益をpartner に分配した。ところが業績の低下にともないMagniacが経営に参加する中で,Commissionsやそれにともなって発生したHouse ExpensesをProfit and Loss 勘定に入れる前に分配してしまった。さらにMagniacがpartner に加わってからはLedger が2部作成され,資産負債で構成されたBalance勘定がStock勘定にとって代わり,剰余金が計上されるようになる。また1811-12年期からはJournalも作成されるようになる。最初,このpartnership会社の収入は,Interests,Commissions,Factory からであった。しだいにOpium取引が増加し,1812-13年期にはFactoryを売却し,Raw Silkの取引やOpium取引が主な収入となる。とくに初期にはInterestsで儲ける仕組みになっていたが,1808年以降は金利の支払いのほうが多い期もあった。Commissionsと資金を貸すことでの金利で儲けるビジネスから,実際にOpiumとRaw Silkの取引で儲けるビジネスに変貌しつつあるのである。
  • 篠藤 涼子
    2020 年 2020 巻 39 号 p. 45-57
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー
    1895(明治28)年,学校教育制度において,女子の教科内容として家計簿記という用語が公的に使用された。本稿は,俸給生活者に対する家計簿記書の展開に焦点をあて,明治期の女子に対する教科書との関わりから検討をした。結果として,明治初期,台所の支出をその収入の範囲内で収めることを目的としていた出納教育は,家計簿記という用語が公的に使用された1895(明治28)年以後は,女子の職務として家計全般を記録する家計簿記へと展開したことが明らかとなった。明治期は,簿記の普及期にあり,簿記知識人によって最も早く家計簿記と表題する著書が出版された。家計簿記書は,簿記知識の普及を目的に,複式簿記を用いて家計全般を記録対象としていた。家計簿記を家計全般の記録と定義した場合,明治後期における日本の家計簿記書は,家計全般の収支管理を女性が記帳することを啓蒙した。そ して家計簿記の内容は,家長からの割り当て分を妻が記帳する収支計算から,教育機会を得られた社会階層や当時の社会的経済的状況から判断する限り,社会的に地位の高い夫の家計では財産計算へと展開した。
  • 石川 業
    2020 年 2020 巻 39 号 p. 59-76
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー
    拠出資本と留保利益の区別」が内外の会計基準や法律上で後退しつつある。ただそれはなお法規上の動向であって,実務上の「区別」のあり方は別個の研究対象となる。そもそも歴史を遡ると「区別」は法規以前の自発的な実務から始まっていた。この起源に照らして,時空を異にしながら法規からの独立性で近似する,現在の日本における実務上の「区別」の因果関係も説明可能な仮説を構築することが,本稿の主題である。そのための調査対象は,沿革を辿りフランス・ドイツそして日本自身の,資本制度導入前における企業定款とする。そこから,任意的な積立金に関する当事者間の合意が資本金と積立金の「区別」に結び付く想定,つまり強制的な債権者保護以前の,出資者・経営者間での財産分配をめぐる任意的な利害調整のために「区別」が生じてきた過程・起点を見出せる。定款をみた背景には実務上の「区別」を示す史料の制約もあるが,事後の概観的な決算書からは察しにくい「区別」の原因でも,事前に当事者が合意した定款でこそ遡りやすいという積極的な理由もある。その調査で日本の,より内生的な会計史から現在へと及ぶ,任意的な「区別」も説明できる仮説が構築されてくる。
  • 田中 靖浩
    2020 年 2020 巻 39 号 p. 77-80
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー
  • 上總 康行
    2020 年 2020 巻 39 号 p. 81-88
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー
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