会計史学会年報
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  • 渡邉 泉
    2022 年 2022 巻 40 号 p. 1-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/04
    ジャーナル フリー
    会計学の損益計算構造を支える複式簿記は,13世紀初頭のイタリアで,公正証書に代わり 取引記録の信頼性を確保するための文書証拠として誕生する。14世紀半ばには,損益計算機 能を完成させ,世界の覇権の推移に伴い,フランドル,オランダを経て19 世紀初めのイギリスで会計学へと進化する。その過程で,自らの第1義的機能を記録・計算から情報提供へと変容させる。 21世紀を迎え,新自由主義経済体制のもとで株主資本主義が市場を席巻すると,会計学の 情報提供先も一般の株主から1部の大株主に転換され,彼らへの目的適合性・有用性という名のもとで会計の本質である検証可能性に裏打ちされた信頼性が大きく後退していく。 こうした状況下で,会計は,信頼性回復のための手法として法的規制と違反者への罰則を強化する。しかし,どのような強制力を伴う規制でも,必ずや抜け道が考え出される。失われいく信頼性回復のための最後の砦は,民主的な教育に支えられた確固たる倫理観と道徳観にある。それ故本稿では,会計学における両者の重要性について論究することにした。
  • 山口 不二夫
    2022 年 2022 巻 40 号 p. 16-31
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/04
    ジャーナル フリー
    本稿は19世紀初頭の東アジアで活躍した英国商人Country Traderの帳簿のデータの検討を行う。前稿で1799年から1814年までの帳簿とそのデータの変化を検討した。本稿は 1815年から1825年までの間の変化の鍵となる1819-20年のLedger, Journal, Cash Bookの構造と, この間の帳簿の変化と盛り込まれたデータの変化さらに経営の変化を明らかにした。本商会では初期にはLedgerのみが残されている。1819年頃までにLedger, Journal, Cash Bookの3帳簿制となり役割が分割された。1799年から1825年にかけて総資本は4.5 倍に増加,出資額は18万ドルから50万4千ドルへ増加する。この期間の平均の出資金利益率は18%程,自己資本比率は2割程で, 総資本利益率は4%程である。収入は当初Interests,Commissions,Factoryが中心であった。すでに1812-13年期にはFactoryを売却し,Raw Silkの取引やOpium取引が主な収入となっていた。これは商会のビジネスが仲介あるいは取引相手に資金を貸出して金利を稼ぐビジネスを基本にしているが,自分でリスクをとって商品を購入販売するビジネスを取り入れたためである。ただ1825年まで棚卸資産の金額はそれほど大きくないので,手数料ビジネスや資金を貸付けるビジネスを基本にしていたと推察する。
  • ー比較史からみたその独特性ー
    岡嶋 慶
    2022 年 2022 巻 40 号 p. 32-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/04
    ジャーナル フリー
    本稿は,比較史的なパースペクティブのもとで日本における独立監査に関するプロフェッション形成を歴史的に叙述することを通じて,日本の監査プロフェッション化の独特性を明らかにすることを企図している。わが国の公認会計士制度は,第二次大戦後,占領下において,証券取引法に基づいて提出される財務諸表の監査証明の担い手としての新たな役割を果たすために創設されたものである。本稿では,プロフェッションと国家との関係性に焦点を当てながら,公認会計士制度が創設されたプロフェッション形成プロセスを描写する。プロフェッションの比較史的観点から,プロフェッションへの参入および懲戒のあり方をめぐる規制のモード,および,プロフェッション団体の会員制のあり方とその国家との関係の2点に絞って議論・分析を行なう。最後に,そこから得られるインプリケーションとこの研究のもたらす意義に関する結論を述べる。
  • 中村 恒彦
    2022 年 2022 巻 40 号 p. 50-52
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/04
    ジャーナル フリー
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