海の研究
Online ISSN : 2186-3105
Print ISSN : 0916-8362
ISSN-L : 0916-8362
12 巻, 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 小畑 元
    2003 年 12 巻 5 号 p. 449-460
    発行日: 2003/07/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    海水中の微量金属元素に関する研究はこの20年で大きな発展が見られた。特に鉄は海洋の生物生産に関連しており,いくつかの海域では制限因子になっていると考えられる。これらの研究成果はクリーン技術の進歩や高感度な分析法の開発なしには得ることが出来なかった。そこで,近年開発された海水中の鉄の分析法を概説し、その進歩と問題点を挙げる。相互検定などによりデータの信頼性を高めると共に,鉄のスペシエーションを解明するための方法論を確立することが今後の課題である。
  • 高山 勝巳, 広瀬 直毅, 久保田 雅久
    2003 年 12 巻 5 号 p. 461-476
    発行日: 2003/07/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    データ同化手法は,最適手法と経験的手法に大別できる。前者は同化結果の統計的・力学的最適性が保障された同化手法であり,後者は誤差や力学の考慮が不十分な手法である。本研究では,最適手法と経験的手法による風成循環場の推定精度について調査した。矩形海域を設定し,1.5層reduced gravity modelを用いて数値計算を行い,衛星高度計を模した観測データの同化実験を行った。比較に用いた同化手法は,時間定常カルマン フィルタと直接挿入法である。直接挿入法については,観測データをモデル格子点に内挿した上で同化する方法に加え、観測点上で直接同化する場合も実験した。観測データの誤差に空間的な相関がある場合,カルマン フィルタと直接挿入法による同化精度に顕著な差が現れた。格子点で同化する直接挿入法で最適重み係数を用いたとき,観測された状態量についてはカルマン フィルタと同等の精度を持ちうるが,非観測の状態量はカルマン フィルタほど誤差が小さくならなかった。観測点で同化する直接挿入法の解析誤差は格子点で同化する方法の解析誤差よりも大きくなったが,逆に前者の観測量の予報誤差に関しては後者の誤差よりも小さくなった。経験的手法から最適手法に近い推定結果を得ることも可能だが,最適な重み係数を決定することは困難である。
  • 岩松 一郎, 山崎 秀勝, 石丸 隆, 木原 興平, 小池 義夫, 喜多沢 彰, 林 敏史
    2003 年 12 巻 5 号 p. 477-486
    発行日: 2003/07/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    1995年6月に八丈島南方海域において,曳航式CTD(アクアシャトル)を用いて黒潮フロント域の断面構造を観測した。観測した黒潮フロントの幅は約5km,水温勾配は1.2℃km<-1>であった。黒潮内側域のフロントには,その付近の海域に存在しない幅約5kmの低塩分水が40m深にまで達していた。その低塩分水塊のクロロフィル濃度が低いことから,栄養塩が枯渇した沿岸水あるいは表層水が降雨によって,希釈されたものであると考えた。さらに,黒潮外側域のフロントにおいても低塩分水塊を発見した。黒潮流路上の屋久島等で低塩分水を形成する十分な降水が記録されていることから,黒潮外側域の低塩水は降水によるものと判断した。
  • 西田 芳則, 鹿又 一良, 田中 伊織, 佐藤 晋一, 高橋 進吾, 松原 久
    2003 年 12 巻 5 号 p. 487-499
    発行日: 2003/07/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    潮流成分(日周潮・半日周潮流)が除去された津軽暖流の流量を求めるため, 津軽海峡西口において, ADCP(Acoustic Doppler Current Profiler)を用いた4往復観測を1993年11月から季節毎に22回行った。調査より得られた津軽暖流の平均流量は約1.5Sv(1Sv=106m3s<-1>)であった。津軽暖流の日平均流量(Q:Sv)と深浦と函館の水位差(Δη:cm)との相関関係から,以下に示す回帰式が得られた。Q=0.0271Δη+0.933上記の回帰式と深浦と函館の水位差を用いて1959年以降の津軽暖流流量を推定した。流量は10年規模の長周期で変動する傾向にあった。また,流量の季節変動幅が約0.3Sv,経年変動幅が約0.3Svと両者はほぼ同じであった。
  • 鈴村 昌弘, 國分 治代, 伊藤 学
    2003 年 12 巻 5 号 p. 501-516
    発行日: 2003/07/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    東京湾における堆積物-海水間でのリンの挙動を解明するために,冬季(2000年12月)及び秋季(2001年9月)の2回の現場観測と室内実験を実施した。12月には堆積物表面に酸化層が発達し,この層には吸着態及び鉄結合態のリンが蓄積していた。9月においては堆積物が強い還元状態にあり,表層部にリンの蓄積はなかった。室内実験において,酸化還元電位(Eh)が+300mV以上の酸化状態でリンの溶出が極度に抑制されていたが, 還元化が進行すると速やかに溶出することが実証された。また, pHの影響は小さく, 温度は還元状態時に溶出するリン酸態チンの平行濃度を制御していた。現場におけるリンのフラックスを見積もったところ, 9月においては堆積物からの拡散・溶出が著しく, 海底近傍の水質に大きな影響を及ぼしていることが示唆された。一方,12月の拡散フラックスは9月の1/10と極めて小さかった。堆積物へのリンの沈降フラックスに比べて埋積や拡散のフラックスは小さく, 水柱から沈降してきた粒子中のリンの多くが底層水中あるいは堆積物-海水境界層において分解再生していることが示唆された。
  • 植松 光夫, 平 啓介, 奥田 章順
    2003 年 12 巻 5 号 p. 517-527
    発行日: 2003/07/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    我が国の独自技術で開発したUS-1A大型飛行艇(水陸両用)は,波高が3m以上の荒天下においても離着水が可能な世界一の性能を有している。飛行艇の最大の魅力は,航空機でありながら海上に着水でき,短時間で広範囲の海域の観測が可能な点にある。シンポジウムでは,海洋にかかわる各分野(海洋物理,海洋生物,海洋化学,水産海洋,衛星海洋)での飛行艇を利用した観測やそれに必要とされる観測装置の開発などについて議論し,飛行艇による大気・海洋観測の実現に向けての具体的な提案を行った。また,多くの研究者が船舶と同様に利用できるように飛行艇の性能や特徴を説明した。お互いの特徴を補完した船舶との同時観測や,飛行艇にしか出来ない観測などについての運用についてなども含め,本報告にまとめた。
feedback
Top