海の研究
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13 巻, 3 号
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  • R. Ian Perry
    2004 年13 巻3 号 p. 241-258
    発行日: 2004/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    カナダ西海岸に面した海洋生態系は,季節変動にも周年変動にも適応しているようであるが,経年変動(例えばEl Nino現象)や10年単位変動(例えば生態系型変化)のような長期変動によっては質的な変遷が強いられる。これらの海洋生態系は著しい海洋開発を受けており,この人為的な活動に対して法律制定による新しい基準が整備されつつある。同様な人為的開発に曝された他のカナダ領海における主要な変化を考慮して,カナダ西海岸における海洋研究の最も重要な使命は,海洋生態系構造の特質と生態系安定化機能を認識して,気候的撹乱にも人為的撹乱にも復元できるようにすることである。ここに,カナダ西海岸に面した海洋生態系の観測とモデル化とによる比較研究を提案する。この為には,季節変動や周年変動の係わる統計的な研究に拠って,海洋生態系を認識したり識別したりすることが要求される。最新モデルでは,気候的・人為的な影響による海洋生態系への相互作用と,影響による撹乱からの生態系の復元性とが,時空間を包括して詳細に解析できるようになっている。この様な使命の遂行には,人為的活動による海洋開発や海洋生態系変化は撹乱からの復元にとって重要な構成要素であるから,海洋資源管理学や社会科学も加わった海洋科学を構成する専門分野間の密接な共同研究が必要である。
  • 市川 忠史, 広田 祐一
    2004 年13 巻3 号 p. 259-269
    発行日: 2004/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    土佐湾湾央の定点において2000年7月から毎月1回,現場法で基礎生産速度を測定し,同時に栄養塩濃度とサイズ別クロロフィルα量を測定した。調査期間中,基礎生産速度の水柱あたりの積算値は0.27gC m-2 d-1(2000年9月)から1.39gC m-2 d-1(2001年5月)の範囲で変動し,土佐湾における2001年の総基礎生産量は約267gC m-2 y-1と見積もられた。また,2000年7月,2001年5月,8月は亜表層(水深16~27m)に0.03gC m-2 d-1以上のピークが認められ,成層期の亜表層に,クロロフィルだけでなく基礎生産のピークも出現することが明らかになった。土佐湾では,春季ブルーム期以外にも湧昇構造による下層からの栄養塩供給により,高い基礎生産が持続されると考えられた。
  • 多田 邦尚, 一見 和彦, 横田 隼人トニ, 山田 真知子, 門谷 茂
    2004 年13 巻3 号 p. 271-279
    発行日: 2004/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    洞海湾における植物プランクトン現存量は,珪藻類が優占する夏季に大きく,その他の季節は小さいことが特徴である。本稿では,著しく富栄養化した洞海湾において鞭毛藻類が卓越しない理由について実験的検証を行なった。また年間を通じて栄養塩濃度が極めて高いにもかかわらず,側面湾では赤潮が夏季のみに形成される理由についても検証した。洞海湾ではエスチュアリー循環が周年卓越し,表層水が2.0日~2.5日で湾外に流出することと,室内実験で得られた植物プランクトンの増殖速度から,水温,照度環境が好適な夏季にのみ,増殖速度の大きい珪藻類が卓越できると考えられた。これに対し多くの鞭毛藻類は,夏季の環境条件下にあっても湾外への流出速度を上回る増殖速度を有しておらず,洞海湾で大きく増殖することはきわめて困難であることが示唆された。
  • 山田 真知子, 梶原 葉子
    2004 年13 巻3 号 p. 281-293
    発行日: 2004/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    1980年~1995年の洞海湾における海水中の栄養塩濃度の年平均値と最大値は,全窒素において474μMと1,290μM,全リンにおいて4.6μMと13.9μMであった。このように,周年にわたって窒素・リン濃度が著しく高い洞海湾の調査結果を解析して,富栄養型の極相に達している洞海湾の植物プランクトンの出現特性を研究した。洞海湾における植物プランクトン密度の季節変化パターンは,温帯域海洋に特徴的な2山型とは異なり,夏にピークを持つ1山型を示し,富栄養化した淡水湖や河口堰での場合と類似していた。しかし洞海湾が常に高栄養塩条件下にありながら,高水温期においてさえも常には赤潮が形成されない主要な原因は,エスチュアリー循環速度を促進し低日照をもたらす降雨であることが明らかになった。このことから,側面湾の植物プランクトン密度には,気象・物理的環境因子が強く影響していることがわかる。植物プランクンの種多様度指数H'は低く,全窒素や植物プランクトン密度等がこのH'の低下に影響していた。また,側面端の赤潮生物は十数種に限定されたが,赤潮は珪藻によって形成されることが多く,代表的な赤潮生物は他の富栄養化した内湾と同様に珪藻類のSkeletonema属であった。
  • 柳 哲雄, 塚本 秀史
    2004 年13 巻3 号 p. 295-300
    発行日: 2004/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    月の昇交点変動に伴うf値の経年変動の影響を考慮した場合と考慮しない場合の毎月の調和分析を行って,1968年~2002年の有明海におけるM2,S2,K1,01分潮の振幅変化を明らかにした。その結果,有明海で最も卓越するM2周期の潮汐振幅は1996年以降,f値補正をした場合も,f値補正をしない場合も減少していることが判明した。さらに,最大大潮差に相当する(M2+S2+K1+O1)振幅は1986年以降,平均大潮差に相当する(M2+S2)振幅は1995年以降,減少していることもわかった。有明海の環境変化の原因を明らかにするための数値実験の検証は,有明海の実際の潮汐変動を表すf値補正をしない各分潮周期の海面変動振幅を合わせるように行う必要がある。
  • 宇野木 早苗
    2004 年13 巻3 号 p. 301-314
    発行日: 2004/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    内湾に注ぐ川の上流・中流に建設されたダムが海域に与える影響は,沿岸開発に伴う流人負荷の増大や理立・干拓・浚渫などの地形変化の影響と区別することが困難であるため,話を聞くことはあるが,わが国でその実態が明らかにされている例はほとんどない。本報では,三つのダムが建設されている球磨川が八代海に注ぐ場合を中心にして漁師の証言とともに,ダムが海域に与える影響を具体的に理解することに努めた。この結果,ダム内における大量の砂の堆積と汚濁負荷の生成が,海域の環境に大きな影響を与えていることが分かった。さらに,経年的に見た漁獲量の減衰率とダムの堆砂率の逆相関関係,球磨川系水の湾内における広がり方,および海域に与えられる汚濁負荷分布の特徴などを総合して,海域における海面漁業の著しい衰退に,ダムが重要な要因になっていることが結論された。したがって,沿岸漁業者が,既設3ダムの2.2倍の貯水容量をもつ球磨川支流の川辺川ダムが八代海に与える影響を,懸念することも理があることと思われる。なお,わが国で最初と思われるが,ダムと海の関係を数値シミュレーションで求めた水質予測結果を基に,再現性の不備と計算条件の問題点を明らかにした。とくに,いまの問題では,河川水の流入に伴う海域の密度成層と密度流の再現が本質的に重要であるが,それが満足されていないことを指摘した。
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