海の研究
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14 巻, 1 号
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  • 前田 昌調
    2005 年 14 巻 1 号 p. 7-20
    発行日: 2005/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    生物学的防除(生物防除)は,自然界で恒常的に進行している生物間の拮抗作用を利用して,天敵生物によって有古生物を抑制・排除する方法であり,1970年代当初に農業領域において,病害昆虫を微生物によって殺減する手法として実用化された。水産養殖において生物防除に使用される生物(生物防除製剤)の開発は,1980年代末頃から行われ,エビ,カニの種苗生産において病原菌の増殖を抑制し,同時に種苗の成長促進効果をあらわす微生物が発見され,実用化された。その後の約15年間に,水産養殖において同じような微生物の探索と応用例が数10編の論文で報告されたが,このような研究の進展の背景には,過剰な薬剤使用に対する消費者の危惧感とともに,薬剤の効力が低減し,疾病防除が難しくなっている状況がある。本稿では,魚介類の飼育水および消化管中において,有用徹生物の拮抗作用を利用して病原微生物(病原細菌,ウイルス等)を防除した研究結果を概観するとともに,これらの成果の背景となった研究例についても紹介する。
  • 柳 哲雄, 阿部 良平
    2005 年 14 巻 1 号 p. 21-33
    発行日: 2005/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    有明海奥部における毎月の塩分・溶存無機態リン(DIP)濃度・溶存無機態窒素(DIN)濃度の観測データ,河川からの流量・リン・窒素負荷量データを用いて,1990年~2000年の有明海奥部における塩分とDIP・DIN収支の季節・経年変動を解析した。その結果,有明海奥部では1990年代前半と比較すると,1990年代後半は海水交換が悪くなり,リンの無機化速度が大きくなり,脱窒速度が大きくなっていることが明らかになった。
  • 石井 大輔, 柳 哲雄
    2005 年 14 巻 1 号 p. 35-45
    発行日: 2005/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海に対する陸域からの汚濁影響ならびに富栄養化対策の効果を把握するための良い資料として,長年実施されている水質調査(全域に対する広域総合水質調査,環境省:沿岸域に対する公共用水域水質調査,地方公共団体)がある。本稿は,それらの調査で得られた観測データを基に,瀬戸内海各灘・湾における水質制御指標を提案し,水域ごとの特性を研究した。その結果,富栄養化対策として実施されている陸域からのリン・窒素負荷総量規制の効果が現れ易い水域と現れ難い水域が存在することが明らかになった。
  • 宇野木 早苗
    2005 年 14 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 2005/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    内湾の共振潮汐の数値計算に関して,諌早湾干拓事業が行われている有明海を例にして,開境界条件の相違が内湾における潮汐の計算結果にどのような影響を与えるかを,簡単な理論に基づいて究明した。この理論結果と実際の観測結果によれば,干拓事業における潮受堤防の締切りが有明海のM2分潮の振幅に与える影響について,最近藤原ら(2004)が得た値は,以前の塚本・柳(2002)の場合と同様に過小評価であることになる。これに対する灘岡・花田(2002)や宇野木(2003)が得た結果の方に,正当性が高いとする理由を示した。これにより,有明海の湾奥における振幅の減少のほぼ半分程度は,潮受堤防の締切りによるものと演繹された。また,藤原ら(2004)の解析方法とその結果が含む問題点を指摘し,今後の検討が必要なことも指摘した。
  • 稲津 大祐, 木津 昭一, 花輪 公雄
    2005 年 14 巻 1 号 p. 57-69
    発行日: 2005/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    日本沿岸の85か所,および,韓国の日本海側の3か所の水位データを用いて,気圧変動に対する水位の応答とその海域特性を研究した。その結果,従来提唱されてきた静力学的なInverted Barometer (IB)応答(-1cm hPa-1)が成り立つ海域は,水深の浅い内湾を除く,太平洋沿岸に限られることが明らかになった。一方,日本海やオホーツク海沿岸の水位は,総観規模の気圧変動に対して,最大半日程度の遅れを伴いながら応答することがわかった。日本海沿岸における応答時間の遅れは,対馬,津軽,宗谷海峡からの距離にほぼ比例していた。これらの結果に基づき,場所によって異なる水位の応答を仮定して,新しい気圧補正法を提案する。この補正によって,IB応答を仮定する従来の補正よりも確からしく気圧起源の変動成分を除去することができ,また山陰海岸に発生する陸棚波の信号をより確からしく抽出することができた。
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