沿岸域での海色衛星データの有効性を示すために,1998年と1999年の富山湾での海色衛星SeaWiFSのクロロフィルαデータを解析した。富山湾の湾外と湾中央では春季と秋季に二回の季節的なブルームが見られ,これは日本海全般に見られる季節的な温度成層の変化に対応した現象である。一方,湾奥では夏季に衛星のクロロフィルα濃度が減少せず,その分布は表面塩分と比較的よく対応していたことから,河川水などからの栄養塩の供給によってクロロフィルαが増加していることが示唆された。また,衛星で観測されたクロロフィルα分布の短期変動によって,反時計回りの流動が存在することと,間欠的な対馬暖流の流入によって湾奥の水が湾外に運び出されることが示された。しかし,定量的には,衛星で観測されたクロロフィルα濃度と比較可能な現場データが少なく,今後しっかりと検証をする必要がある。
親潮は二つの起源水,オホーツク海水(Okhotsk Sea Water; OSW)と北太平洋西部亜寒帯水(Western Subarctic Gyre Water; WSAGW)で構成されると考えられている。親潮水の水質が,起源水自体の変動と,起源水の混合の割合が変動することに起因するという観点から北海道南方海域での親潮水の10年スケールの変動を調査研究した。
北海道南方での41°30'N(PH線)に沿った親潮水の水質変動と両起源水の変動との間には,明確な対応がみられず,親潮水の水質の10年スケール変動の主要因は両起源水の混合比変動であることが示唆された。PH線における親潮水中でのOSWとWSAGWの混合比(Rw)の変動には,水温・塩分に比べ溶存酸素とリン酸塩の化学成分で10年スケール変動がより顕著であった。親潮水の混合比変動の要因の1つとして,北太平洋上における大気循環場による影響が示された。
能登半島東岸では,台風通過後に度々強い海流(急潮)が発生し,強い振動流が1週間以上継続したとの報告もある。本研究では,急潮の全体像を把握するため,3次元海洋モデルを用いた数値実験を行なった。沿岸観測で捉えられた2004年の急潮の特徴,例えば台風通過後の位相差,1ms-1を超える流速や周期性などを,モデルでよく再現することができた。さらに,能登半島北東沖で発生する吹送流が強い移流効果を伴って沿岸部の急潮を引き起こし,富山湾内ではその急潮が線形的な内部ケルビン波として反時計周りに伝播していくことが判明した。2004年の台風15号,16号,18号の場合を比較し,南西風によって励起される吹送流の強さに比例して,半島北部の水塊が富山湾のより奥まで輸送されることが示された。
湾を締め切る堤防が高潮,津波,潮汐などに与える影響として,これまで開口幅が問題にされてきた。しかし,締切堤防の建設に伴う潮汐減少の途中経過を理解するには,単に開口幅だけでなく,締切断面内の水中工事で水深が変化する効果を考慮することが本質的に重要であることを,簡単な理論と断面地形変化を用いて明らかにした。現在,諫早湾干拓事業による潮受堤防の建設の際に生じた有明海の潮汐の減少に関連して,水深変化を全く考慮せずに,単に開口率が20%を下回らなければ締め切りの影響は現れないとの計算結果を根拠にして,有明海に現実に生じた潮汐の減少過程は,堤防締め切りの影響とは考え難いとする主張がなされている。しかし,上記の研究結果によれば,この主張は理解し難いものである。