海洋の生態系モデルの研究をレビューする。1949年のRileyらの論文から始めて,現在に至る流れを簡単に述べた後,移流の効果を考察した生態系モデル, NEMUROのレビューなどを中心に言及する。
三陸沖海域における海況の長期変動の時空間的特性をほぼ毎月1回観測されている岩手県水産技術センターの1967年以降39年間の定線観測資料を用いて調べた。水温・塩分の時系列に見られる1年周期の変動を除去した時系列に対するEOF解析の結果,水温・塩分ともに寄与率70%を越える第ーモードは,全海域で同符号をもち,水温は沖合測点の亜表層,塩分は同じく沖合の表層で高振幅をもつ。その時間変動特性は,水温・塩分ともに年々低下する傾向がみられ, 1980年代初めに水温および塩分に見られる急激な低下と, 1990年代後半に塩分のみに見られる急な低下に特徴づけられる。これらの急激な変化を挟む前後5年間の平均差を求めたところ,前者は水温・塩分ともに沖合の亜表層で顕著な低下が見られ,親潮水系の南限緯度変化と高相関をもつことより,大規模な変動場に関係づけられる。一方1990年代後半の塩分だけに見られる急低下は,表層で顕著であり海面を通した淡水フラックス変動に起因することが示唆された。
有明海湾奥部における低塩分・高クロロフィルa濃度の表層水塊の挙動をCTD・漂流ブイ・HFレーダー・衛星画像観測により調査した。クロロフィルa濃度が高い低塩分表層水塊は,海面下わずか1 m程度の厚さしか持たないが,その下の層とは異なった収束・発散構造を持っていた。この薄い表層水塊中の収束・発散構造はクロロフィルa 濃度と有意な相関を持っていた。有明海の赤潮発生規模が1998年以降大規模化した理由を明らかにするためには,この薄い表層低塩分・高クロロフィルa濃度水塊の挙動特性を明らかにする必要がある。