海の研究
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18 巻, 2 号
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2008年度日本海洋学会賞受賞記念論文
  • 日比谷 紀之
    原稿種別: 研究論文
    2009 年18 巻2 号 p. 115-134
    発行日: 2009/03/05
    公開日: 2023/03/27
    ジャーナル フリー

    海洋の中・深層における鉛直乱流拡散は,深層海洋大循環の強さやパターンをもコントロールする重要な物理過程であるが,そのグローバルな強度分布は海洋物理学上の最大の不確定要素として残されてきた。本稿では,この鉛直乱流拡散のグローバルな強度分布の解明に向けて筆者が最近10年間に展開してきた研究の概要を紹介する。 まず,この鉛直乱流拡散に使われるエネルギーが元々は潮汐や大気擾乱によって海洋に与えられることに注目し,その乱流拡散スケールまでのカスケードダウン過程を数値的に調べることで「緯度依存性のある内部波相互干渉機構を通じて形成された鉛直10mスケールの近慣性流シアーの強さが鉛直拡散強度をコントロールしている」ことを明らかにした。 この結果から,強い鉛直乱流拡散が緯度30°より赤道側の海嶺や海山の近傍に限られることを世界に先駆けて予測することもに,投棄式流速計による鉛直シアーの観測をグローバルに展開することで,この理論的予測を実証した。さらに,この観測結果に基づき,各経度・緯度における鉛直拡散係数をその場の内部潮汐波エネルギー密度の関数として定式化することで,深海における鉛直拡散係数のグローバルマップを作成した。最後に,我が国初の深海乱流計を使用して北太平洋の代表的な地点における乱流強度の直接観測を行い,このグローバルマップの有効性を確認した。

原著論文
  • 日下 彰, 小埜 恒夫, 東屋 知範, 葛西 広海, 小熊 幸子, 川崎 康寛, 平川 和正
    原稿種別: 研究論文
    2009 年18 巻2 号 p. 135-156
    発行日: 2009/03/05
    公開日: 2023/03/27
    ジャーナル フリー

    北海道東部太平洋陸棚域における水塊分布および流動場の平均的な季節変化を、厚岸沖定線(A-line)における17年間の長期データを用いて明らかにした。沿岸親潮水は12月~1月の間に当該海域に出現する。出現初期の1月に南西向きの流速が極大となるが、この時期の流れ場は順圧流が卓越する。沿岸親潮水の出現時期がオホーツク海からの海氷流出より早い場合が見られることから、出現初期の沿岸親潮水は必ずしも太平洋側へ流出した海氷が融解してできたものではなく、その水塊形成には東樺太海流水が重要であることが示唆された。一方、7月~8月の間に宗谷暖流変質水の流入により陸棚上の水塊構造が大きく 変化するとともに、8月~9月にも南西向きの流速が極大となった。この原因は、宗谷暖流変質水の流入によって岸一沖間の密度勾配が増加したためであり、この時期の流れ場は沿岸密度流が卓越する。当該陸棚域に分布する水塊は、オホーツク海に分布する水域と比較して大きく変質していることから、オホーツク海から当該陸棚域へ至るまでの水塊変質が当該海域における水塊の形成に重要であることが示唆された。

  • 山田 真知子, 香月 絵理, 大坪 繭子, 濱田 健一郎, 上田 直子, 門谷 茂
    原稿種別: 研究論文
    2009 年18 巻2 号 p. 157-167
    発行日: 2009/03/05
    公開日: 2023/03/27
    ジャーナル フリー

    熱帯・亜熱帯性海産珪藻のSkeletonena tropicum栄養細胞についてモニタリング調査を16 年間(1991~2006年)にわたり温帯海域の洞海湾で行った結果, S. tropicumは7月から10 月の夏季から初秋を中心に出現し, 冬季から春季には出現しないという規則的な季節的消長を示した。生存に不適な低水温期には, S. tropicumは休眠期細胞となって海底堆積物中で越冬した。S.tropicumの休眠期細胞は夏季に2.9 mg g-1という高濃度の硫化物(AVS)に眼された後にも発芽が可能で, 有機汚濁に対して耐性が認められた。また発芽は, 高水温で, 光照射がある場合に可能であった。栄養細胞はNH4-Nが711 μMと他の植物プランクトンが増殖阻害を受けるような水質にもよく適応し, 濃密な赤潮を形成した。S. tropicumは上記のような生存戦略をとることにより, 温帯海域の富栄養化の進行した洞海湾に定着していると考えられる。

  • 柳 哲雄, 石井 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2009 年18 巻2 号 p. 169-176
    発行日: 2009/03/05
    公開日: 2023/03/27
    ジャーナル フリー

    博多湾奥海域で2002-2006年夏季,約1週間間隔で計測された水温・塩分・pH・濁度・溶存酸素濃度観測データを解析して,博多湾奥海域における貧酸素水塊形成機構の解明を試みた。その結果,博多湾奥海域では夏季の大雨後,大量の栄養塩が海域に供給され,湾奥部海域表層で植物プランクトン密度が急増し,その自己遮蔽効果により浅い底層が無光層となり,表層から落下する有機物を分解するために酸素が消費され,塩分成層の発注による表層からの酸素供給減少と相俟って,湾奥部地域底層に貧酸素水塊が形成されることがわかった。

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