海の研究
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18 巻, 3 号
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原著論文
  • 岩坂 直人
    原稿種別: 研究論文
    2009 年 18 巻 3 号 p. 197-211
    発行日: 2009/05/05
    公開日: 2023/03/27
    ジャーナル フリー

    太平洋の気象観測ブイの計測値を用いて,海上気温の平均的な日変化について調べた。平均的な気温日変化は,地方時5時前後に最低値,15時から16時頃に最高値を取り,日較差は0.3~0.8 K程度であった。大気潮汐が顕著な海域では午前の昇温が強調され,逆に午後の最大は多少抑制される。しかし,そのような平均的日変化が日々の気温の日変化を代表するのは,赤道域中央,東部など天気の安定している海域だけである。赤道太平洋西部や中高緯度の海域では活発な対疏活動や総観規模擾乱,季節内振動などに伴う温度変化と思われる変動が卓越し,一日の最高,最低気温の差は平均的日較差より1桁大きい。なお,過去の研究でも指摘されているが,いくつかのブイの気温観測値には正のバイアスが午前と午後に現れていることが疑われ,その大きさは平均で0.1~0.2 K程度に及ぶ可能性がある。

総説
  • 塩崎 拓平, 武田 重信, 古谷 研
    原稿種別: 総説
    2009 年 18 巻 3 号 p. 213-242
    発行日: 2009/05/05
    公開日: 2023/03/27
    ジャーナル フリー

    熱帯・亜熱帯貧栄養海域は全海洋の約6割を占め,その広大さのため同海域の新生産を把握することは海洋の物質循環を考える上で重要である。同海域の新生産を駆動する窒素源は,系外からの硝酸塩供給,窒素固定,大気からの窒素化合物降下の大きく3つに分けられる。 このうち硝酸塩起源の新生産は,冬季混合層以浅の硝化によって過大評価される可能性が近年指摘されるようになってきた。本稿では熱帯・亜熱帯貧栄養海域の新生産に関わる過程について整理し,そこから見えてきた今後の新生産研究の課題を提示することを目的とした。熱帯・亜熱帯貧栄養海域の有光層内への窒素供給には,従来考えられていた渦拡散による硝酸塩供給に加えて,時空間スケールの異なる複数の過程が寄与している。そのため,同海域の新生産量を把握するためには,各過程の時空間変動に見合った観測データの蓄積が重要である。

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