海の研究
Online ISSN : 2186-3105
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19 巻, 1 号
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原著論文
  • 高橋 大介, 南條 悠太, 大山 淳一, 藤井 直紀, 福森 香代子, 武岡 英隆
    原稿種別: 研究論文
    2010 年 19 巻 1 号 p. 1-19
    発行日: 2010/01/05
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    四国西岸に位置する法花津湾において2005年から2007年の夏季にビデオモニタリングを行い,湾内表層で形成されるミズクラゲ‘集群出現頻度の時間変動について調べた。ミズクラゲ集群出現頻度には,8月中旬から増加し,9-10月に減少する長周期変動と,10-15日周期で増減を繰り返す短周期変動が存在した。特に,短周期変動の強弱の経年変化は,四国西岸域で生じる急潮の強弱の経年変化と一致していた。そこで,急潮とミズクラゲ集群出現頻度の短周期変動との関係を明らかにするため,2007年の夏季法花津湾において係留観測と海洋観測を行った。法花博湾へ到達した急潮は湾内に暖水流入を引き起こすとともに,湾スケールの海水交換を励起した。この暖水流入にともなって湾外の既存水塊中にいたミズクラゲが湾内へ輸送され,湾内表層で受動的に集群することによって,夏季法花津湾表層ではミズクラゲ集群出現頻度が10-15日周期で変動していると考えられる。

総説
  • 諏訪 僚太, 中村 崇, 井口 亮, 中村 雅子, 守田 昌哉, 加藤 亜記, 藤田 和彦, 井上 麻タ理, 酒井 一彦, 鈴木 淳, 小池 ...
    原稿種別: 総説
    2010 年 19 巻 1 号 p. 21-40
    発行日: 2010/01/05
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    産業革命以降の二酸化炭素(CO2)排出量の増加は,地球規模での様々な気候変動を引き起こし,夏季の異常高海水温は,サンゴ白化現象を引き起こすことでサンゴ礁生態系に悪影響を及ぼしたことが知られている。加えて,増加した大気中CO2が海水に溶け込み,酸として働くことで生じる海洋酸性化もまた,サンゴ礁生態系にとって大きな脅威であることが認識されつつある。本総説では,海洋酸性化が起こる仕組みと共に,海洋酸性化がサンゴ礁域の石灰化生物に与える影響についてのこれまでの知見を概説する。特に,サンゴ礁の主要な石灰化生物である造礁サンゴや紅藻サンゴモ,有孔虫に関しては,その石灰化機構を解説すると共に,海洋酸性化が及ぼす影響について調べた様々な研究例を取り上げる。また,これまでの研究から見えてきた海洋酸性化の生物への影響評価実験を行う上で注意すべき事項,そして今後必要となる研究の方向性についても述べたい。

2009年度日本海洋学会岡田賞受賞記念論文
  • 山下 洋平
    原稿種別: 研究論文
    2010 年 19 巻 1 号 p. 41-56
    発行日: 2010/01/05
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では筆者がこれまでに行ってきた蛍光光度法及び吸光光度法を用いて得られた発色団含有溶存有機物(ChromophoricDissolved Organic Matter, CDOM)に関する研究成果を紹介する。発色団合有溶存有機物は,分光学的特徴によりタンパク質様(protein like)蛍光などの生体構成成分由来および腐植様(humic-like)発色団含有有機物に区別する事ができる。タンパク質様蛍光は溶存有機物中に実際に存在する芳香族アミノ酸に由来する事を明らかにした。更に,タンパク質様蛍光特性とアミノ酸濃度・組成から,5000以上の高分子画分におけるアミノ酸含有溶存有機物は,表層では長鎖ペプチド,深層では短鎖ペプチドと深度によって主要な化学形がそれぞれ異なることを示唆した。腐植様発色団含有有機物に関しては,それが有機物の分解過程で生成する事を観測的・実験的に示した。また,海洋自生性腐植様発色団含有有機物は少なくとも900年程度の時間スケールで生物学的難分解性である事を示した。

(海の研究,第 16巻,第 5号, 361-374) に閲する訂正事項
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