北西太平洋西部盟襲撃帯循環内の時系列観測点,Station K2において2005年3月から2006年5月に設置されたセディメント・トラップの沈降粒子の試料をもとにレディオラリア(放散虫類)・フラックスの季節変化を調べた。その結果,Station K2の海域はオホーツク海からの陸棚起源の鉄や栄養塩に富んだ水塊及び千島列島沿岸,カムチャッカ半島東岸からの沿岸水の影響を強く受ける環境にあることが示唆された。また,レディオラリアの生息深度ごとにフラックスの季節変化を考察することで西部亜寒帯循環内の様々な深度ごとの水塊環境との関わりが明らかになった。
西部北太平洋に於いて広範聞に渡る測点から深海堆積物を採取し,堆積物表面の生物起源珪素を測定したの生物生産の低い亜熱帯海域から高い含有率を治す堆積物が検出されたため,分析試料の顕微鏡観察を行ったところEthmodiscus oozeである事が判明した。Ethmodiscus oozeが採取されたフィリピン海の補足試料を測定し同様の珪質堆積物を幾つか確認したが,それらは,海底の狭い区域に集中して個別に堆積しているようであった。この散在した分布形態については,これまでの観測データから海底地形や海況などの物現学的要因が大きいと考えられていた。一方,生物起源珪藻含有量が高い堆積物が多く確認された本調査海域の表層で,台風通過後に高濃度のクロロフィルが発生している様子が海色衛星データにより観測された。調査海域における衛星の解析画橡と,新たに測定されたフィリピン海の生物起源珪素の分布図を基に,これまで論拠となるデータがなかったEthmodiscusのブルームに関する仮説について検討を行った。