海の研究
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23 巻, 2 号
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原著論文
  • 朝日 俊雅, 竹本 沙紀, 一見 和彦, 山口 一岩, 多田 邦尚
    2014 年 23 巻 2 号 p. 29-44
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    干潟域における懸濁物の挙動を知るために,瀬戸内海東部に位置する新川・春日川河口干潟域において,一潮汐間の連続的な観測を2010年5月から11月の間に計5回実施し,懸濁態リンを有機および無機態に分別定量した。栄養塩濃度は8月の溶存態無機窒素(DIN)を除いて塩分と負の相関関係にあり,河川から流入した栄養塩が海水に希釈されることで,干潟域の栄養塩濃度が決定されていると考えられた。一方,懸濁態有機リン(POP)および懸濁態無機リン(PIP)濃度は,塩分に対し有意な相関関係が認められる場合と,認められない場合があった。POPは概ねクロロフィルa(Chl a)濃度と有意な正の相関関係が認められ,同時に水中POP/Chl a比が植物プランクトンのそれと同程度であったことから,干潟域のPOP濃度には植物プランクトンの増減が河川由来の物質の多寡よりも大きく影響していたと考えられた。しかしながら,Chl a濃度が低い時にはPOP/Chl a比が高く,陸起源粒子あるいはデトリタスのような植物プランクトン以外の粒子の寄与が大きいと考えられた。また,PIPは7月を除いて塩分と負の相関関係にあり,干潟域のPIP濃度は主に河川由来の粒子の影響を受けており,干潟堆積物の再懸濁の影響は量的に小さいことが考えられた。一方,干潟の沖合では河川由来の粒子の影響は見られなかった。

  • 堤 英輔, 松野 健
    2014 年 23 巻 2 号 p. 45-72
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,2009年と2010年の成層期に有明海の諫早湾湾口周辺において行った係留系による流速場観測と乱流微細構造プロファイラを用いた乱流観測結果から,潮流の鉛直構造(鉛直シア)の特性とその形成要因を明らかにし,その鉛直混合との関係を調べた。有明海は外力として潮汐が卓越するため海底摩擦に起因する鉛直シアが卓越するが,成層時には海底境界層から離れた海洋内部においても鉛直シアが発達していた。この中層における鉛直シアは,大潮期に発達する半日周期の外部潮汐流と小潮期に発達する日周期の内部潮汐流に伴うものであった。乱流観測結果には,中層において大潮期よりも小潮期に鉛直混合が発達する様子が捉えられており,日周期の内部潮汐が特に海底境界層より上部の鉛直混合過程として重要であることが示された。

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