熱帯域における海面水温の長期変化は,地域的な気候変化パターンの形成に重要な役割を果たしている。本稿では,様々な現場観測データと海洋大循環モデルによる数値実験結果から,1950年以降の過去60年間で熱帯海洋における気候変化パターンがどのように形成されてきたかについて,大気海洋相互作用の観点から解説する。また海上風観測や海面水温観測が持ちうる時間変化する観測誤差についても注目し,それらが気候変化の検出に与える影響についても議論する。
東京電力福島第一原子力発電所(以下Fukushima dai-ichi Nuclear Power Plant を略しFNPP と表記)事故に伴い海洋環境へ放出された放射性セシウムのうち,134Csおよび137Csの我が国周辺海域における拡散状況を把握するために,2011年4月から2012年11月にかけて,福島県沖を中心とした西部北太平洋,日本海,瀬戸内海,東シナ海およびベーリング海における海水の134Csおよび137Cs濃度を測定した。FNPPの面する西部北太平洋においてはFNPP事故直後より高濃度の134Csおよび137Csが検出され,時間の経過とともに134Csおよび137Cs濃度は低下する傾向を示した。しかしながらその水平・鉛直分布は不均一であり,その分布形成の主たる成因は福島県沖を中心とした日本東方沖の西部北太平洋における黒潮,親潮および中規模渦による複雑な水塊構造が考えられた。一方,日本海,瀬戸内海,東シナ海およびベーリング海にて採取した海水からはFNPP事故以前から存在する137Csのみが検出され,134Csは検出されず,当該事故によるこれらの海域への134Csおよび137Csの負荷は極めて微量であったと考えられる。