人工衛星高度計による海面高度偏差(Sea Surface Height Anomaly; SSHA)とアルゴフロートブイ観測の密度場から計算された力学高度偏差(ΔDjdbar; jは基準深度)を組み合わせて,西部北太平洋の風応力の季節変化に対する1年周期の順圧応答成分(ΔDBT =SSHA -ΔD2000)と傾圧応答成分(ΔDBC =ΔD2000 -ΔDML; ML は表層混合層深度)を抽出した。順圧応答成分ΔDBTの特記すべき空間分布は,晩冬季(2~3月)に亜寒帯循環領域の負偏差領域が,亜熱帯循環領域の伊豆小笠原海嶺付近の南方まで舌状に張り出していることである。伊豆小笠原周辺海域では,1~2ヶ月遅れた春季(4~5月)に傾圧応答成分ΔDBCの正偏差領域が出現している。このように,順圧応答から数か月遅れた傾圧応答は,海嶺海底斜面上における順圧・傾圧モードのカップリングによる傾圧運動の励起(Impinging応答)を示唆している。また,シグナルとしては小さいものの,主として亜熱帯域にみられた他の傾圧応答ΔDBCは,約40°N以南に理論上存在可能な傾圧第一モードの1年周期ロスビー波の海洋調節過程と推測された。
赤潮の発生規模や発生状況を評価できる指標として提案された赤潮指数をはじめとする赤潮基礎データセット(1979―2004年)をもとに,瀬戸内海における赤潮関連情報の経年的な変動傾向や赤潮優占群の海域特性について検討評価を行った。瀬戸内海(大阪湾以外)と大阪湾における赤潮指数の時間変動特性を解析した結果,瀬戸内海(大阪湾以外)における赤潮指数の長期変動は1990年付近を極小とした増減傾向を示す一方,大阪湾のそれは約30年間顕著な減少傾向を示すことが判明した。また,瀬戸内海(大阪湾以外)では主に全天日射量,大阪湾では陸域からの寄与が大きい栄養塩濃度が赤潮指数の長期変動を決める要因であることを示唆する結果を得た。さらに,赤潮構成種ごとに整理した分類群別(珪藻群・非珪藻群・複合群)の赤潮指数から算出した赤潮優占率をもとに,瀬戸内海(大阪湾以外)および大阪湾における赤潮の卓越群について調べた結果,瀬戸内海(大阪湾以外)では全般的に非珪藻群が優占する一方,大阪湾では非珪藻群から珪藻群へ長期的に優占群が遷移するパターンが確認された。