光合成や石灰化,栄養塩吸収などに代表される造礁サンゴの代謝活動は,サンゴ礁生態系の中で起こる様々な物質循環に大きく関わっており,サンゴ礁物質循環の縮図ともいえる。そのなかでも近年は,分析技術の向上によって海水中の溶存態有機物(DOM)が比較的精度良く定量できるようになり,サンゴ礁の生態系・生物スケールでその動態に注目が集まっている。本論文では,生態系スケールでのDOMの動態と造礁サンゴからのDOMの放出をまとめ,そのC:N 比が同様の範囲にあることから,造礁サンゴが主要なDOM生産者の一つとして機能している可能性を議論する。また,貧栄養海域にもかかわらず,造礁サンゴがアミノ酸などの窒素化合物を含むDOMを放出できる理由として,造礁サンゴとその細胞内に共生する褐虫藻との間で行われている特殊な窒素保持機構を考察する。これら一連の研究から,サンゴ礁が貧栄養な海水で満たされているにもかかわらず,高い一次生産速度を維持できる機構が明らかになってきた。
能登半島北東端沖の3 点の海底に設置したADCPにより得られた流速記録を解析し,2007年10月8日に日本海海上を通過した低気圧により励起された近慣性内部波の特徴を調べた。観測された近慣性内部波は大陸斜面域では20~60 m深で鉛直的にほぼ同位相であったが,その振幅は表層よりも中層(38~58 m深)で大きかった。このような特徴を持つ近慣性内部波の形成機構を,実際の地形と風応力を用いた数値実験により調べた結果,沖合表層に励起された近慣性内部波が沿岸域へ達した後に半島東部の浅瀬域で散乱することと,その散乱波がほぼ同時に励起されて観測海域で干渉することが判明した。さらに,散乱波の干渉に寄与する海底地形の効果を調べるために能登半島周辺の浅瀬域を除外した検証実験を行った。その結果,近慣性内部波の中層での増幅には能登半島東部の陸棚域からの散乱波が重要な役割を果たし,鉛直的に同位相の振動系の形成には複数点からの散乱波の干渉が関与することが判明した。