本総説では日本の視点から,IOC (政府間海洋学委員会) の地域の小委員会として設立されたWESTPAC (西太平洋に関する政府間地域小委員会) の設立前から設立に至る経緯として,その切掛けとなったCSK (黒潮共同研究,1965年~1979年) とIOC下での地域プログラムとしてのWESTPACプログラム (1979年~1989年),小委員会設立後の発展 (1989年~現在) について,関連する内外の科学プロジェクトも含めて総括する。加えて,現状の体制やそれに関連する科学的活動を総括し,アジアにおける将来の海洋学の展望と日本が貢献するべき点について議論する。
高緯度域における海氷生産およびそれに伴う高密度水生成は,海洋熱塩循環の主要な駆動力の1つであり,これによって大気と海洋中深層との熱・物質交換が行われている。本研究は,薄氷(ポリニヤ)域の氷厚分布を衛星データから検出して熱収支計算を行うことによって,両極での海氷生産量分布を初めて求めたマッピング手法とその成果の概略を示している。このマッピングはまた,今までよくわかっていなかった海氷域での表面熱塩フラックス条件を与えている。さらにこのマッピングから,東南極のダンレー岬ポリニヤでの海氷生産量がロス海沿岸ポリニヤに次いで2番目に高いことが明らかになり,これが南極底層水の第4 の源である可能性も示唆された。