地球の気候システムにおいて海洋循環の西岸境界流およびその続流は大量の熱を熱帯域から極域へと運び,大気へ放出するなど重要な役割を果たしている。本稿ではその西岸境界流の中で黒潮続流域,メキシコ湾流域,および南太平洋亜熱帯循環域における十年スケール変動とそのメカニズムについての研究成果を紹介する。黒潮続流の十年スケール変動のメカニズムとして,ジェットに沿って西方伝播するjet-trapped ロスビー波を提案し,このロスビー波により西方伝播するシグナルの速度や十年スケール変動の空間構造,振幅が良く説明されることを示す。またこのjet-trappedロスビー波は,黒潮続流の流速や中規模渦活動,日本沿岸の水位変動にも大きく影響する。同様にメキシコ湾流の変動にもjet-trappedロスビー波が重要である。一方,南太平洋亜熱帯循環の強さも顕著な十年スケール変動を示し,エルニーニョの十年スケール変動に伴う風の変動によって励起される線形長波ロスビー波で良く説明される。