海の研究
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27 巻, 2 号
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2015年度日本海洋学会賞受賞記念論文
  • 大島 慶一郎
    2018 年 27 巻 2 号 p. 75-96
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/03/25
    ジャーナル フリー

    海洋の大規模な中深層循環・物質循環は,極域・海氷域での海氷生成による高密度水生成が起点になっている。全海洋の深層に広がる底層水が作られる南極海のような極海では,観測の困難さによって,海氷生成及び中深層水の形成・循環は十分わかってはいなかった。衛星マイクロ波放射計データによる薄氷厚アルゴリズムが開発され,熱収支計算を組み合わせることで海氷生産量を見積もる手法が考案された。南大洋の海氷生産量マッピングからは,ロス海に次ぐ第2 の海氷生産量域が東南極のケープダンレー沖にあることが示され,ここが未知(第4)の南極底層水生成域であることが,直接観測から明らかになった。北半球最大の海氷生産量域は,オホーツク海北西ポリニヤであることが示され,ここを起点として北太平洋の中層まで及ぶオーバーターンが形成されることに対応する。西岸境界流である東樺太海流はこのポリニヤで形成される高密度陸棚水を南方へ運ぶ役割を持つ。この50 年のオホーツク海風上域での温暖化が,海氷生産の減少とそれに伴う高密度水減少をもたらし,北太平洋のオーバーターンを弱化させていることも示唆された。これらの研究により,海氷生産量と中深層水の形成・変動に強い関係があることが定量性をもって明らかになってきた。

原著論文
  • 白鳥 健太, 山田 優貴, 松浦 知徳
    2018 年 27 巻 2 号 p. 97-123
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/03/25
    ジャーナル フリー

    海洋大循環モデルを用いて,風応力時間一定の下で長期シミュレーションを行ない,北太平洋亜熱帯循環(ST)域の海洋独自に発生する長周期変動を調べた。ST域での経験直交関数解析から,空間モード1は黒潮続流の流軸の南北移動のモードで,空間モード2と3はST域内を7~8年の長周期をもって西南西の方向へ伝播する傾圧ロスビー波海盆モードであることが示された。STおよび黒潮再循環と黒潮続流再循環の強さの7~8年周期の長周期変動は,互いにラグ相関関係のあることが分かった。7~8年周期の変動の発生源として,黒潮続流が通過しているシャツキー海台の存在が重要であり,周期を支配しているのは,それらの相互作用によって生み出されたST系の傾圧ロスビー波海盆モードと考えられる。この長周期変動は,STにおける海洋独自に発生する自律的な現象であり,その周期現象が現実にも起こっている可能性がある。

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