「瀬戸内海の赤潮」(水産庁瀬戸内海漁業調整事務所)に記載された各種情報を地図情報システム(Geographic Information System : GIS)に取り込んだ Ishii et al.(2013)の「赤潮基礎データセット」を用いて,瀬戸内海の播磨灘におけるヤコウチュウ赤潮の解析を行った。本データセットが対象とした 1979年から 2004年までの 26年間は,瀬戸内海の富栄養化が解消され,水質環境が劇的に好転した時期である。この間,瀬戸内海ではヤコウチュウ以外の赤潮の発生件数が減少したが,ヤコウチュウ赤潮の発生件数,発生面積,および継続日数に減少傾向は認められなかった。さらに,播磨灘における全赤潮に対するヤコウチュウ赤潮の寄与率は,一般的な赤潮の発生件数を基準にしたもの(36%)よりも,赤潮の面積と継続日数を考慮した赤潮規模の指標である平均赤潮指数を基準にしたもの(54%)の方が有意に高かった。これは,播磨灘における全赤潮に対するヤコウチュウ赤潮の割合の大きさを示すものと考えられる。