海の研究
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30 巻, 5 号
海の研究
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
  • 岡 英太郎
    原稿種別: 総説
    2021 年 30 巻 5 号 p. 85-86
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー
  • 木田 新一郎, 栗原 晴子, 大林 由美子, 川合 美千代, 近藤 能子, 西岡 純
    原稿種別: 総説
    2021 年 30 巻 5 号 p. 87-104
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    沿岸域において,今後10 年程度の期間で取り組むべき研究の方向性と意義,そしてその遂行に必要な研究基盤について論じた。沿岸域は外洋域と陸域を結びつける,フィルターかつリアクターとしての役割をもつ海域であると同時に,人間社会に身近であり,多様で生産性豊かな海域である。沿岸域の物質循環を理解し,将来にわたってその豊かな生態系を維持していくためには,物理・化学・生物が分野横断的に連結し,組織立ったプロセス研究を進める必要がある。変化の時空間規模が小さい沿岸域の現象を把握するには,観測データが依然として不足している。しかし,これまでの長期モニタリングデータに加えて新たな観測機器の開発,衛星観測の高解像度化,ドローンの登場によって状況は大きく前進しつつある。この現状をふまえて,今後必要と考える研究基盤と数値モデルの展望を議論した。

  • 土井 威志, 安中 さやか, 高橋 一生, 渡辺 路生, 東塚 知己, 栗原 晴子
    原稿種別: 総説
    2021 年 30 巻 5 号 p. 105-129
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    熱帯域に関する近年の研究の進展をレビューするとともに,今後10 年程度で取り組むべき海洋研究の方向性に関して,物理・化学・生物の各分野を横断して論じた。特に,エルニーニョ・南方振動(ENSO)に焦点をあてた。ENSO の予測は,近年の物理的理解の進展によりある程度可能になった。一方,ENSO が,海洋の炭素吸収能,物質循環,生物生産,生物多様性などにどのように影響するのかについては十分に理解されていない。さらに,長期的な気候の変化に伴って進行する熱帯海洋の水温上昇・酸性化・貧酸素化に,ENSO の影響が重なることで,海洋生態系がより深刻な影響をうける可能性も指摘されている。このような事態に備えるために,ENSO に伴って海洋システム全体がどのように変動するのか理解を深め,高精度で予測することが,社会要請と相まって,益々重要になるであろう。今後10 年間では特に,Biogeochemical(BGC)Argoフロートによる観測データと地球システムモデルを両輪とした海洋システム研究の展開,ならびに船舶・係留ブイ観測や現場実験・観測など現地調査に基づくプロセス研究の拡充を進め,双方の知見を互いにフィードバックする必要がある。ENSO に伴う経年的な変動予測精度が最も高い熱帯太平洋は,海洋システムの真の統合的理解と予測研究を進めるための最適な実証基盤である。

  • 橋濱 史典, 纐纈 慎也, 近藤 能子, 佐々木 克徳, 杉本 周作, 高橋 一生, 長井 健容, 西岡 純, 林田 博士, 平井 惇也
    原稿種別: 総説
    2021 年 30 巻 5 号 p. 127-154
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    本稿では,亜寒帯循環,亜熱帯循環,縁辺海からなる中緯度海洋の表・中層を対象域とし,最近10 年間の海洋学の進展をレビューすると共に,新たに浮かび上がってきたいくつかの重要課題を取り上げ,それらに取り組むための観測技術,解析手法について紹介した。特に西部北太平洋の中緯度海洋に着目し,西岸境界流と大気海洋相互作用のマルチスケール現象の把握と予測,一次生産を支える栄養塩・鉄供給の3次元像の視覚化,海洋生物の多様性維持およびホットスポット形成機構の解明を,今後10年で物理・化学・生物融合で取り組むべき重要課題として取り上げた。観測技術では,生物地球化学センサーや乱流計を装備したプロファイリングフロート,高感度高精度生元素分析,網羅的遺伝子解析などの最先端技術を駆使した,多様な時空間スケールにわたる現象の観測が重要であることを提示した。解析手法では,最新の観測により得られるビッグデータの解析や高解像度モデルにより,現状の中緯度海洋プロセスを把握し,予測することの重要性を示した。

  • 川合 美千代, 田村 岳史, 渡邉 英嗣, 西岡 純, 野村 大樹, 真壁 竜介, 溝端 浩平, 安中 さやか
    原稿種別: 総説
    2021 年 30 巻 5 号 p. 159-178
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    今後10年に我が国が取り組むべき極域研究について,海洋学の視点から論じた。気候変化への極域の応答とフィードバックを明らかにするための重要課題として,両極共通の重要プロセスである中緯度からの海水輸送,海氷を介した物質輸送と生物生産,沿岸域の熱輸送と物質循環の定量化に加えて,北極海では海氷減少に関連する環境変化のメカニズム,春先の急激な季節変化,南大洋では東南極での大気-海洋-海氷 氷床結合システムの理解を取り上げた。さらに,今後の極域研究の進展のため,自国の砕氷船,自律型無人潜水機の活用に加えて,研究用潜水艇,海底観測基地,沿岸観測タワーの建造と,オホーツク海とサロマ湖の海氷域研究基盤としての利用,数値モデルの改良について提案した。

  • 岡 顕, 大林 由美子, 勝又 勝郎, 高橋 一生, 山下 洋平, 横川 太一
    原稿種別: 総説
    2021 年 30 巻 5 号 p. 179-198
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    海洋深層において現在議論されている研究トピックを整理するとともに,今後10 年程度の期間で取り組むべき研究の方向性と意義,そしてその遂行に必要な研究基盤について論じた。本稿では物理・化学・生物が分野横断的に関わるトピックとして,とくに深層における物質循環に着目し議論した。具体的には,(1)深層から中層への物質輸送,(2)表層から中深層への有機物の輸送と動態,(3)深層の時間変化の3つの課題を取り上げた(1)では,これまでの鉛直1次元的な物質輸送の議論から3次元的な物質循環像へと理解を深めるために,とくに太平洋における深層から中層への物質輸送を定量化していく研究の必要性について議論した。(2)では,近年提唱された生物ポンプに関する新しい概念を整理するとともに,素過程についてのプロセス研究と物質循環モデルの高度化に向けた研究の双方からのアプローチの必要性を論じた。(3)では,ゆっくりではあるが確実に進行する将来の深層の変化を把握するには,観測による継続的なモニタリングに加えて,古海洋研究からの知見や数値モデルを用いたプロセス研究を進めていく必要があることを議論した。

  • 岩本 洋子, 相木 秀則, 磯口 治, 大林 由美子, 近藤 文義, 近藤 能子, 西岡 純
    原稿種別: 総説
    2021 年 30 巻 5 号 p. 199-225
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    海洋は大気と熱,気体,粒子を交換することで,地球の気候に大きな影響を与える。海洋上の大気境界層における物理・化学・生物過程は,海表面でのCO2 の吸収や雲の生成を介して地球大気の放射収支へ影響する。これはさらに気温・降水・日射の変化を経て海洋にフィードバックをもたらす。気候問題のみならず,台風などの極端現象や波浪の観測・予測を通して,大気海洋境界は人間生活と直接的に関わっている。本稿では,大気と海洋の境「界面」にとどまらず,一次生産の場となる有光層から対流圏までの鉛直的に広い領域とその衛星観測を対象として,次の10年で取り組むべき研究課題を論じた。大気からの栄養塩沈着について,窒素,リン,鉄を含むエアロゾルの沈着は一次生産に寄与するのか? 海表面のマイクロレイヤーが大気海洋界面として物質循環に果たす役割とマイクロレイヤーの物性をコントロールする要因は? 温室効果気体や海洋生物起源気体の交換量を精緻化するために何が必要か? どのような海洋性エアロゾルが雲形成に寄与し放射収支を変化させ得るのか? 波浪に関わるプロセスについて,物質やエネルギーの交換量を左右する時空間分布を把握するために必要なアプローチは何か? これらの問いに答えを出し人類が自然環境と共生するために必要な研究,ならびに日本海洋学会と隣接学会との連携について,次の10年を展望する。

  • 平井 惇也, 宮 正樹, 藤木 徹一, 吉田 聡, 乙坂 重嘉, 帰山 秀樹, 加古 真一郎, 片岡 智哉, 松岡 大祐, 日高 弥子, 杉 ...
    原稿種別: 総説
    2021 年 30 巻 5 号 p. 227-253
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    観測や分析技術の革新は海洋学を大いに発展させてきたが,同時に海洋環境汚染など人間活動に伴う新たな問題も浮き彫りにしてきた。本稿では,今後10 年の海洋学の発展に関わる新たな手法として,環境DNA,BGC Argo,バイオロギングに着目した。また,2011 年の東北地方太平洋沖地震以降の継続した問題である海洋放射能,ならびに近年急速に注目を集める海洋プラスチックを,新たな問題として取り上げた。各節ではそれぞれの研究や問題の現状を論じるとともに,次の10 年に向けての展望や課題について議論した。

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