四国電力及び大阪府立水産試験場が実施した水質調査結果を基に, 伊予灘南部及び大阪湾の栄養塩及びDIN/DIPの時間変動を求め, 伊予灘については1982年~1998年, 大阪湾については1982年~1996年にかけての栄養塩環境を明らかにした。伊予灘南部は貧栄養状態にあり, DIN/DIPに顕著な季節変動は見られず, 8月は表層よりも底層で高い栄養塩濃度を示した。また, 陸棚斜面から伊予灘南部底層への高栄養塩水の貫入の可能性が示唆された。大阪湾は富栄養状態で, DIP濃度の1973年からの低下傾向が1985年で停止し, それ以降は横這いであった。基礎生産は, 2月と5月はリンに律速されていた。河川からの栄養塩供給に加えて, 底泥からのDIP供給が大阪湾の栄養塩循環に影響を及ぼしていることが示唆された。以上に示した両海域の栄養塩環境は, 解析期間において安定していたことが明らかとなった。
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