海の研究
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12 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 川辺 正樹
    2003 年 12 巻 3 号 p. 247-267
    発行日: 2003/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    観測データから明らかにされた黒潮の流路・流量変動についてまとめた。九州南のトカラ海峡では,黒潮大蛇行の形成と消滅の約4か月前に,黒潮がそれぞれ北方と南方に変位する。その後の形成・消滅過程とそれらを除いた大蛇行・非大蛇行の四つの期間での黒潮の特徴を整理した。大蛇行と非大蛇行では,トカラ海峡での黒潮流軸の位置と形状と鉛直方向の傾きが異なる。非大蛇行の黒潮は,九州と四国の岸に沿って流れ,紀伊半島南端の潮岬で急激な加速等の変化を起こし,その変化の大小に対応して非大蛇行接岸流路と離岸流路をとる。伊豆海嶺では,中層以深の黒潮が,三宅島・八丈島間の峡谷か八丈島南方の深海域しか通れないため,黒潮の代表的流路は,前者を通る典型的大蛇行流路と非大蛇行接岸流路,後者を通る非大蛇行離岸流路の三つに集約される。これらの流路間の遷移について,変化の特徴や流速・流量との関係をまとめた。また,大蛇行と非大蛇行のイベントによる違いを整理し,大蛇行の形成機構等について議論した。
  • 柳 哲雄, 阿部 良平
    2003 年 12 巻 3 号 p. 269-275
    発行日: 2003/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    有明海における1990-2000年の毎月の塩分観測データと河川流量データをもとに,河川水の平均滞留時間の経年変動を調べた。その結果,有明海における河川水の平均滞留時間は基本的には河川流量の大小に依存していて,河川流量が大きい時短く,河川流量が小さい時長くなるが,同じ河川流量に対しては近年の平均滞留暗闇が短くなっていて,有明海と外海の海水交換はよくなってきていることがわかった。これは有明海の潮流振幅が近年減少し,そのために河口循環流が強化されたためであると考えられる。
  • 関根 義彦, 陳 苗陽
    2003 年 12 巻 3 号 p. 277-289
    発行日: 2003/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    日本南岸の黒潮流路の変動特性を知るため,1975年から1995年までの都井岬から房総半島沖までの9点からの黒潮の離岸距離を海上保安庁水路部の海洋速報の黒潮流路の中央点との距離として求め,その時間変動を調べた。その結果1975年に発生した黒潮大蛇行は室戸岬から大王崎にかけて離岸距離が大きく御前崎以東で離岸距離が小さいのに対し,1980年以後の五回の大蛇行は室戸岬から潮岬では離岸距離が小さく御前崎以東で離岸距離が大きくなり,大蛇行の流路のパターンが1980年前後で大きく変化していることが示された。大蛇行期ごとの平均距離をみると,1975年発生の大蛇行は伊豆海嶺の三宅島と八丈島の間のゲート領域を通るのに対し,1980年以降発生の大蛇行は平均距離が伊豆海嶺のゲート部よりも南に位置し,C型流路かゲート部を通る流路の選択を強制されることが示唆された。このため1980年以降発生の大蛇行は流路に及ぼす伊豆海嶺の地形効果が大きく,低気圧渦である大冷水塊を伴う大蛇行が比較的短時間で消滅する可能性が示唆された。九州南の潮位差解析により黒潮の南側分流の流量が大きいと都井岬から室戸岬沖の黒潮離岸距離が大きくなり,御前崎から石廊崎沖では離岸距離が小さくなる傾向が示された。一方北部流量が大きくなると,都井岬から潮岬沖の離岸距離が小さくなり御前崎から野島崎沖で離岸距離が大きくなる傾向がある。また,犬吠埼沖では黒潮の離岸距離が九州南の潮位差と有意な相関を示さない。
  • 堤 裕昭, 岡村 絵美子, 小川 満代, 高橋 徹, 山口 一岩, 門谷 茂, 小橋 乃子, 安達 貴浩, 小松 利光
    2003 年 12 巻 3 号 p. 291-305
    発行日: 2003/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    九州西岸の有明海奥部海域において,近年夏季に発生する底層水の貧酸素化現象および頻発する赤潮の発生メカニズムを解明するため,2001年8月より2002年2月まで毎月1回,水質調査を行った。本調査期間中,8月上旬に底層で貧酸素水塊が,11月に珪藻赤潮がいずれも大雨の後に発生し,その発生過程を次のようにまとめた。1.夏季の貧酸素水塊 梅雨期の大雨→河川からの大量の淡水の流入→表層の塩分低下による成層構造の発達・夏季の気温上昇に伴う水温の成層構造の発達→底層水の貧酸素化 2.秋季の珪藻赤潮 秋季の大雨→河川からの大量の淡水の流入・大量の栄養塩の供給→低塩分・高栄養塩濃度の表層水の形成→赤潮の発生 1998年以降,秋季の赤潮は大規模化する傾向が認められる。有明海奥部海域では,塩分や水温による成層構造が発達した時に,海水交換に大きな変化が生じ,海水が滞留しがちになることで赤潮が発生している可能性が指摘される。
  • 宇野木 早苗
    2003 年 12 巻 3 号 p. 307-313
    発行日: 2003/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    前報で諌早湾干拓事業開始後における有明海の潮汐減少の原因を検討したが,減少量がまだ小さい期間では変動成分の影響で誤差が大きかった。今回は平滑データを基に,またこれまで考慮しなかった平均海面上昇に伴う水深増加の効果も加えて,解析のやり直しを行った。この結果,振幅減少量が数mmのごく微量な初期2年間を除き,全期間にわたり系統的な変化傾向が明瞭に認められた。すなわち,堤防締切り前は外海の潮汐減少の効果が,締切り後は事業に伴う地形変化の効果が最も大きかった。水深増加の効果はかなり小さかった。ただし,解析の精度を考慮すると,堤防締切り後における前2つの効果の差は,明確に有意であると判断するのは難しい程度である。いずれにしても諌早湾干拓事業が潮汐に及ぼす影響は,当初の環境影響評価書の予測と異なって,明らかに無視できない大きさに達している。一方,干拓事業が有明海の環境に与える影響としては,潮汐よりも潮流を含む流動の変化がより重要であって,この面での研究の推進が必要である。
  • 黒田 芳史, 轡田 邦夫, 北村 佳照
    2003 年 12 巻 3 号 p. 315-339
    発行日: 2003/05/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
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