西部亜寒帯および亜熱帯太平洋における繊毛虫プランクトンの役割を,その生産と被捕食を調査することによって把握した。繊毛虫の生産は,現場海域で得られた現存量と成長速度によって求めた。一方,繊毛虫の被捕食は,有鐘繊毛虫のロリカをトレーサーとして用い,そのトレーサーが大型の動物プランクトンに捕食されるならば,糞粒に取り込まれて深層に輸送されるという仮説を設定し,その輸送量より求めた。その被捕食量は,繊毛虫生産に対して両海域とも小さくなっていた(亜寒帯域で1.6∼13.7%,亜熱帯域で3.0∼15.6%)。表層海洋における繊毛虫プランクトンの生産の重要性は,高次の食段階にエネルギーや物質を伝える栄養階層としてよりも,特に貧栄養の亜熱帯海域では,微生物環を機能させることによって,再生生産系を実現するという点でより重要であることが理解された。
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