海の研究
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総説
  • 伊地知 敬
    原稿種別: 総説
    2024 年 33 巻 1-2 号 p. 1-16
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    深層海洋大循環を把握する上でブラックボックスとなっている深海乱流混合の全球分布を解明するためには,グローバルに観測可能なスケールの大きい物理量から乱流混合強度を推定する,いわゆる,パラメタリゼーションの手法に頼らざるを得ない。しかしながら,既存の乱流パラメタリゼーションはいくつかの問題点を抱えている。海洋の中・深層における乱流散逸率のパラメタリゼーションは,ファインスケールの流速シアーと密度ストレインの両方の情報を基に内部波スペクトルの歪みを考慮しているものの,単色波近似を広帯域な内部波スペクトルに対して適用してしまっているため,単色波近似が有効となる近慣性重力波が卓越する内部波場で,かえって乱流散逸率を過大評価してしまう。さらに,この乱流散逸率から乱流混合強度を見積もる際に必要となる乱流混合効率は,約20%として従来扱われているが,乱流イベントの駆動メカニズム・発達段階に応じて異なっており,特に,間欠的な強乱流イベントが対流不安定によって駆動される高密度海水のオーバーフロー域では50%にも達してしまう。本稿では,筆者がこれまで指摘してきた既存の乱流パラメタリゼーションの問題点とその改善策を概説する。

  • 高野 祥太朗
    原稿種別: 総説
    2024 年 33 巻 1-2 号 p. 17-30
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    海洋においてニッケル,銅,亜鉛などの微量金属は,pmol/kg~nmol/kgの濃度でしか存在しないが,海洋生物にとって必須栄養素や毒素として働く。著者はこれまで,安定同位体比を用いた海水中微量金属の起源と生物地球化学循環プロセスの理解をテーマに研究を行ってきた。(i)海水中ニッケル,銅,亜鉛同位体比の分析法を開発した。本法は,海水中ニッケル,銅,亜鉛の同位体比を一斉に分析できるため,観測で採取した海水試料から効率的にデータを得ることが可能となった。(ii)インド洋および太平洋における溶存態銅の濃度および同位体比分布を明らかにし,海洋における銅の生物地球化学循環を明らかにした。(iii)東シナ海における溶存態ニッケル,銅,亜鉛の同位体比分布を明らかにし,陸域から東シナ海表層への微量金属の供給プロセスについて明らかにした。(iv)南シナ海における沈降粒子中のニッケルと銅の同位体比分析によって,それらの粒子態微量金属の起源の推定を行った。

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