化学プラントにおいて, 災害, 事故を未然に防ぐとともに, 保全を経済的に行うことが大切である.そのためには, 時間基準保全から状態基準保全に移行すべきであるといわれている.そして, これを推進する重要な技術の1つとして, 設備診断がある.
そこで本研究では, 装置・機器に対して, 設備診断 (または監視) を行うことにより信頼性を高め, 措置することによってそれらの寿命を延ばし, その結果プラントの安全を確保する設備診断モデルを用いて, 定期保全間隔内における設備診断開始時点を決定する, 状態基準に基づく最適保全計画手法を示した.
化学プラントにおける災害や事故, またはそれらの直接原因となった設備故障には, 塔, 槽類などの大型設備の外に, 小型ポンプや圧縮機などの回転機器や, 配管, 計装, 弁などの付属設備のような, 比較的小型の設備の故障が意外に多く, またそれが大型災害につながる場合がある.そこで本研究では, 小型の付属設備のように, 比較的簡単に取替えや冗長設備への切替えが可能な設備を対象とした.その際, 設備に表面亀裂や発熱などの兆候が発生するまでの時間と, 兆候が発生してから致命的故障 (以下, 単に故障と呼ぶ) が発生するまでの時間を表した確率変数が, 異なる確率密度関数 (P.d.f.) に従う2段階の故障モデルを用い, その故障法則としての分布形は, それぞれの段階で形状母数の異なる2母数ガンマ分布を仮定した.さらに, より実際的なモデルにするために, 兆候検出および兆候発生部分の修理に要する時間を考慮した.そして, 診断費用が診断時間に比例する場合の最適診断開始時点の決定方法を示した.その際の最適化問題においては, 故障の発生に伴う期待損失と, 種々の保全費用の総和が最小となるように検討した。
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