化学工学論文集
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15 巻, 4 号
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  • 広瀬 泰雄, 北沢 強, 船田 一郎
    1989 年 15 巻 4 号 p. 695-702
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は空気分離蒸留系における上塔と粗アルゴン塔を組み合わせたプロセスをシミュレーションすることである.この系は, 普通の蒸留塔と区別される2つの特徴がある.第一に, 上塔塔頂から出る蒸気を冷やす適当な冷媒がないために, 上塔にはコンデンサーが存在しない。第二に, 粗アルゴン塔にはリボイラーがなく, また塔底の液は重力のみで上塔に戻している. 現実のプロセスは数学的にNewton-Rhapson法で計算される.上記の2つの制約を満たすために, 上塔塔頂蒸気の変数は, 上塔塔底熱負荷の変数と交換し, 粗アルゴン塔塔頂蒸気の変数は, 粗アルゴン塔塔頂熱負荷と交換する.
    このアルゴリズムのヤコビアンは, 三項対角行列のほかにもサブマトリックスが存在する.このマトリックスを, 三項対角行列と残りの行列の2つに分けて考える. 上塔塔頂のサブマトリックスの逆行列をつくるために, 三項対角行列に故意に任意の非ゼロ値を加え, 同じ値を残りの行列から引く. このようにKubicekのアルゴリズムによって, 首尾よくこの間題を解くことができる.
  • 東谷 公, 山口 英明, 古川 伸一
    1989 年 15 巻 4 号 p. 703-709
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    瀝青炭粉体層からの微粉炭の空気流による飛散特性を検討した.矩形流路内に石炭粉体層をその表面が流路表面と一致するように設置し, 空気流により粒子を飛散させ, 飛散量を粉体層の重量変化により算出した.その結果, 次の飛散特性が明らかになった. (1) 他の粉体と同様, 石炭微粉の飛散量の定性的傾向は, Rumpfの粉体層引っ張り破断応力により推定が可能である. (2) 同一実験条件下における石炭粉の飛散量は, その石炭化度に依存し, 酸素と炭素の原子数比O/C=0.04付近で最小値をとる. (3) 同一実験条件下における石炭粉は, 吸湿性の大きい性質を持つものほど飛散し, 飛散量は吸湿特性を支配する石炭物性に依存している.
  • ORP制御による断続曝気の場合
    松田 晃, 井出 哲夫, 藤井 照三
    1989 年 15 巻 4 号 p. 710-718
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    下水処理場の余剰活性汚泥を用いて40~50日間の回分式好気性消化の実験をどこまで曝気時間を制限することができるかを目的とし連続曝気, 断続曝気で行った.断続曝気の曝気サイクルは消化槽のORPが0mV, 150mV以下にならないように制御した.曝気している時間が極端に短くなるため, 汚泥の分解速度は遅くなるが, 悪臭は発生せず, 消化後の汚泥も安定化された.
    種々の形態別窒素, リンの測定値を用いて, 各態窒素, リンの存在割合を求めた結果, ORP制御では脱窒反応が進むことにより処理水中の窒素の割合が低下し, リンの割合も下がることが分った.また, 汚泥固形物の窒素, リンの含有率を測定値から得た.好気牲消化の初期には窒素含有率の低い物質が分解され, その後窒素含有率の高い物質が分解されると推測された.更に, ORP制御では消化槽で泡の発生はみられなかった.
  • 定方 正毅, 原野 安土, 湯浅 秀子, 佐藤 正之, 重久 卓夫
    1989 年 15 巻 4 号 p. 719-725
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    低NOx 2段燃焼の二段目の燃焼場に於けるすすの酸化消滅機構および速度を明らかにするための実験的検討を行った.まず, 毎時5lのA重油を燃料過剰条件下で噴霧燃焼させて生成したすす, H2およびCOを含む800℃~900℃の高温燃焼排ガス中に再燃焼用空気を吹き込み, すすの減衰過程を調べた.次に, 計算機による反応シミュレーションによって, H2およびCO共存下でのすす燃焼におよぼす影響を調べた.その結果, 以下の点が明らかになった.
    1) CO, H2が共存する条件下でのすすの酸化は, 時定数0.1秒程度の迅速な第一段階の燃焼と, その後の緩やかな燃焼の二段階から成る.
    2) 第一段階の急速燃焼は, 共存するCO, H2が燃焼する際に生成するOHラジカルによる酸化によって進行する.
    3) 第二段階の緩慢燃焼は, O2による酸化によって進行し, 既往の柴山らの反応速度式によりほぼ説明することができる.
  • 丹羽 雅裕, 大矢 晴彦, 原 達也, 根岸 洋一
    1989 年 15 巻 4 号 p. 726-732
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    非対称性酢酸セルロース膜およびNS-100膜を用い, 15種類の有機物水溶液の逆浸透分離実験を行った.液体クロマトグラフ法により, ポリマーへの溶質の分配係数を測定した.逆浸透実験データをSpiegler-Kedemの膜透過モデルが成り立つと仮定して解析を行った.溶質の差異による膜透過特性の差異を比較するため, 供給液溶質濃度O, 操作圧Oの溶質透過係数補外値を溶質の分配係数で除し, 一定の膜構造における溶質 (溶媒) の膜内移動係数を求めた.得られた膜内移動係数は, ストークス径の2乗と相関関係が確認された.一方, ポリマーへの溶質の分配係数は, 溶質, 水, ポリマーそれぞれの溶解度パラメーターによって整理できた.
  • 佐藤 一省, 嶋田 博己, 吉野 善彌
    1989 年 15 巻 4 号 p. 733-739
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    水への酸素の吸収を対象に, 無撹拌の状態から撹拌が吸収に有効に作用する状態まで, 諸種の条件下において吸収速度と供給動力との関係を実験的に検討し, 吸収効率と装置の幾何学的条件や操作条件との関係について考察を行った.
    吸収効率は, 翼形状, 翼槽径比にはほとんど依存せず, 通気動力と撹拌動力との比によって主として規定され, 通気動力が撹拌動力に較べて大きくなるほど吸収効率は向上することを明らかにした.
  • 尹 錫昊, 村瀬 敏朗, 入谷 英司, 中ノ森 信也, 白戸 紋平
    1989 年 15 巻 4 号 p. 740-746
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    濾過助剤の濾過特性の簡易測定のため, 6対の白金電極を設けた濾過器により定圧濾過実験を行い, 濾過ケークが成長しケーク表面が電極の設置位置に達すると電気抵抗値が急激に増加することを利用して, ケーク厚さと単位濾材面積あたりの濾液量との関係を求めた.この関係に基づき濾過助剤のプリコートやボディフィードにおける平均空隙率εavや平均濾過比抵抗αavなどの総括的濾過特性値の決定法を示した.さらに, ケーク内部の部分空隙率εや部分濾過比抵抗αを近似的に決定し, これら特性値が濾過助剤の面積平均径を用いて評価できることを明らかにした.また, プリコート層内部における濾過比抵抗値が底部より上部の方が大きくなる傾向を明らかにし, 比抵抗値が逆の分布をもつ理想的なプリコート層を形成して効果的な助剤濾過を可能とする場合, 本報で得た濾過特性値と濾過助剤の面積平均径の相関が有用な指針となる可能性を示した.
  • 寺下 敬次郎, 宮南 啓, 坂本 和徳, 堀越 常信
    1989 年 15 巻 4 号 p. 747-753
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    優れたビデオテープを工業的に製造するためには, 混練操作によって磁性粉の分散状態をよくすることが望まれる.そこで, 種々の条件下で得られた混練物の混練状態とビデオテープの製品特性の関係を調べた.混練状態は撹拌トルクおよび混練物の引張強度から評価し, さらに走査型電子顕微鏡で検討した.一方, ビデオテープの品質いわゆる分散状態は光沢度, SN比ならびにX線マイクロアナライザーの測定結果より評価した.これらの結果に基づいて, 優れたビデオテープを得る混練条件を明らかにした.
  • 中村 嘉利, 沢田 達郎, 鈴木 基之
    1989 年 15 巻 4 号 p. 754-760
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    混合基質の微生物処理における増殖特性が, 基質を切り換えることによって研究された.ある炭素源から別の炭素源へ切り換えることによるBacillus sp.P77の実験が回分培養で行われ, ジオキシ増殖の数式モデルがシミュレーションに用いられた.グルコースとマルトースで培養を切り換える種々の実験から, 次のことがわかった. (i) グルコースの分解はマルトースの分解機構と本質的に異なった.グルコースの分解酵素は環境条件にかかわらず常に合成されるが, マルトースの分解酵素は培地中にグルコースがほとんどないかわずかに含まれるマルトースの培地においてのみ合成された. (ii) マルトースの分解酵素は, グルコースの存在下でも活性であった. (iii) ジオキシ増殖の数式モデルは培養を切り換える実験をシミュレーションできた.
  • 美濃輪 智朗, 横山 伸也, 小口 勝也, 小木 知子
    1989 年 15 巻 4 号 p. 761-766
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    木材から重油状燃料を製造することを目的とした, 直接液化反応における原料中の含水率の影響を検討した.木粉のアルカリ水溶液中における直接液化反応のエネルギー効率の向上のため, 含水率の影響について一連の実験を行った.
    この結果, 含水率60%において液化油の収率が最大に達した. 含水率60%を越えると収率はゆるやかに低下し, 60%以下では収率は著しく低下することが判明した. また, 液化油の発熱量も含水率に依存し, 含水率が高くなると発熱量は下がる傾向があった. プロセスに必要な熱量と得られた液化油の熱量との比で定義したECR (エネルギー消費比率) は, 含水率60%において最も低くなった.以上の結果から, 含水率60%のとき, 液化反応は最もエネルギー的に有利であることが判明した.なお, 最適含水率における触媒添加量, 反応温度, 保持時間の影響についても検討した.
  • 岸本 民也, 赤木 靖春, 高松 武一郎, 塩谷 捨明
    1989 年 15 巻 4 号 p. 767-772
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    固着性微生物膜には有機物の酸化分解と硝化の行われる表面近くの好気層と脱窒の起こる嫌気層とが共存している.微生物膜の厚さを任意に変えてCOD, 窒素化合物の処理を行い, これらの結果から好気層, 嫌気層の膜厚さを決定した.酸素の浸透する好気層厚さは0.08~0.3mmでCODの増大につれて減少し, 曝気量とともに増大する.またCODが処理される膜厚さは0.1mmかそれ以下であり, これによって酸素は存在するけれどもCODが存在しなくて硝化の起こる好気層の存在が明かになった.
    一方, 自家呼吸速度の測定から推定される好気層厚さは約0.2mmであった.
  • 豊原 秀史, 河村 祐治
    1989 年 15 巻 4 号 p. 773-780
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    偏析性粒子の安定な流動化を行うため, 層内軸方向に流速変化を持つテーパー付き流動層に着目し, その基礎実験として単一径粒子を用いての流動化を行い, 圧力損失特性・粒子挙動などの流動化特性に対する装置形状・操作条件の影響を調べた.その結果, 粒子挙動は従来の流動層や噴流層とは異なり, 流体流速の変化による固定層と流動層間の移行時に部分流動化領域が存在し, この領域の状態は流速の上昇時と下降時において異なる独特な挙動となることが判明した.また圧力損失については既存の断面積一定の流動層についての式を拡張することにより推算が可能であることがわかった.
  • 高橋 照男, 加瀬野 悟, 福井 淳一
    1989 年 15 巻 4 号 p. 781-787
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    本研究では気固系撹拌流動層の撹拌トルクを測定することによって流動化に及ぼす流動ガスの湿度の影響を実験的に検討した.
    流動化が比較的容易である粒子では撹拌トルクはガス湿度の影響をほとんど受けなかったが, 粒子径の小さいCaCO3およびポリマー粒子は影響を受けた.CaCO3では撹拌トルクはガス湿度とともに増加し流動化が困難になった.ポリマー粒子ではガス湿度の増加に伴い静電気力が抑制され撹拌トルクは減少したが, 高湿度ガスでは吸着水分子による付着力増大のために撹拌トルクは再び増加した.すなわち粒子が最も流動化しやすいガス湿度が存在することがわかった.
    また流動化および静止状態の粒子層にアクリルおよび鉄製円筒を挿入してそのせん断力を測定した結果, 静電気力による付着力は粒子の流動化している時に発生するが, ガス湿度により抑制され, 鉄製円筒壁面との間では発生しないことが明らかになった.
  • 清水 康利, 六代 稔, 遠矢 幸男, 栢分 英助, 矢澤 哲夫, 田中 博史, 江口 清久
    1989 年 15 巻 4 号 p. 788-794
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    メタン発酵メンブレンバイオリアクター用無機膜を開発することを目的として, 膜の濾過特性への運転時間の影響を調べた.細孔径0.2μmの管状アルミナ膜を用い, メタン発酵液を5h~30d濾過運転を行った.膜透過流束は運転時間につれて減少し, 膜供給液流速を3.0m/sで流した場合は, 30日で初期値 (5h目) の53%に, 0.6m/s時は, 初期値の22%に低下した.
    膜透過流束の減少は, 供給液流速が遅い場合は, 膜面の菌体充填層の圧密化, あるいは成長による菌体充填層部の透過性の低下に支配され, 供給液流速が速い場合は, 発酵液中に存在する微量の粒径50nm粒子の膜への沈着, 蓄積による膜の透過性低下によると推察された.
    高い膜透過流束を維持して濾過運転を続けるためには, 供給液流速が遅い場合は, 一定期間ごとに膜面の菌体充填層を除去する, 洗浄を組み込んだ運転を行う必要があることがわかった.
  • 王 寧和, 滝嶌 繁樹, 舛岡 弘勝
    1989 年 15 巻 4 号 p. 795-803
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    ピエゾ電気収着法を用いてポリスチレンのガラス転移温度以下の 313.2 K, 333.2 K, 353.2Kの温度においてポリスチレン中へのベンゼン, トルエン, シクロヘキサンの3種の溶媒蒸気の溶解度を測定した.また溶解量の経時変化の測定より溶媒蒸気を溶解したポリスチレンのガラス転移温度の濃度依存性を求めた.溶媒蒸気を溶解したポリスチレンのガラス転移温度と溶媒濃度との関係はChowの理論による推算値と良好に一致した.さらに本研究で得られたHenry定数とポリスチレンのガラス転移温度以上の状態における文献値との比較より, シクロヘキサン+PS系とベンゼン+PS系におけるHenry定数の温度依存性の傾きは純ポリスチレンのガラス転移温度を境に少し変化することを示した.
    また溶媒蒸気の溶解度の実験値をガラス状態と溶融状態の2つの領域に分け, それぞれの領域について簡単化されたFlory状態式, Sanchezらの状態式, UNIQUAC +FV 式による相関を行い, これら3つの式の適用性について検討した.
  • 松浦 章裕, 中村 肇, 平岡 節郎, 新垣 勉, 山田 幾穂
    1989 年 15 巻 4 号 p. 804-810
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    下方より発生させた電解気泡流中に設置した垂直平板電極に掛かる平均剪断応力と物質移動速度を測定し, 上昇気泡流による物質移動促進に関して検討を行った.垂直平板電極に働く平均剪断応力は, 発生気泡の違い, 電極長さに関係なく, 気泡発生電流のほぼ 0. 6乗に比例することが解った.
    垂直平板電極回りの物質移動係数は, 壁面速度勾配が一定および濃度境界層内には気泡が存在しないと仮定した層流強制対流物質移動過程に従うとして検討を行った.その結果, 本物質移動実験結果は, 濃度境界層が薄い領域で良い精度を示す Leveque の理論解および濃度境界層が発達した領域での水科らの単相流層流強制対流物質移動理論により説明できることが解った.
  • 浅井 英明, 長浜 邦雄
    1989 年 15 巻 4 号 p. 811-816
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    (CH3) 3NH+にカチオン置換したNAFION®-125膜を用いてエタノール水溶液の透過実験を行い, 透過流束への操作因子の影響について検討した.実験条件は, 1次側試料溶液中の水のモル分率=0.0-1.0, 1次側圧力=101-1082kPa, 2次側圧力=0.1-20kPa, 温度 =303-343Kであった.
    透過成分間および膜と透過成分間の相互作用を表す透過流束の補正係数を用いて透過挙動を評価した.
    実験結果は以下のように要約される.
    透過流束は1次側組成に強く影響した.補正係数は組成に対して非線形に変化した. 2次側圧力の増大に伴い水の透過流束は著しく減少し, エタノールのそれは微増したため, 水の選択率は低下した.1次側圧力の影響は無視し得る程度であった.透過流束にアレニュースの関係が成立し, 見かけの活性化エネルギーを求めた.実験範囲の温度の変化に対し選択率はほぼ一定となった.
  • 豊倉 賢, 大木 一広
    1989 年 15 巻 4 号 p. 817-823
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    固定尿素針状単結晶の成長実験を行い, 粒径変化の測定より長径および短径の成長速度を算出した.また, 非溶媒溶液中に懸濁する尿素針状晶の破砕実験を行い, その軸比と結晶個数の経時変化の実測より長径方向に破砕が支配的に起こることを確認し, 相関式を提出した.一方, MSMPR 型晶析装置を用いての尿素針状晶の晶析実験を行い, 定常状態下で得られた結晶の長径・短径基準の粒径分布を顕微鏡写真撮影より実測し, 各短径に対する平均軸比γ (Lb) が短径Lb が大きくなるにつれて減少する実験結果を得た. このMSMPR 型装置より得られた結果を固定単結晶の成長実験および懸濁結晶の破砕実験の結果を適用して検討し, 平均軸比の実測値より, 実験で得られる尿素針状結晶の破砕特性を表す定数を推算することができた.また, これらの定数の値は, 撹拌所要動力と相関することができた.それらの相関式より破砕を伴う場合の連続式MSMPR 型晶析装置より得られる尿素針状結晶の粒径分布の推算法を提案した.
  • 神吉 達夫, 浅野 強, 井内 哲, 山崎 武, 植田 洋匡
    1989 年 15 巻 4 号 p. 824-831
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    平板上に接触して成長する球形気泡周辺の流体の流れの問題について, 流れが遅いとした場合に対するStokes方程式の解析解を得た, 得られた解に基づいて, 流体の速度分布, 圧力分布, 流体要素に対する圧力による仕事, 粘性力による仕事, エネルギーの散逸速度などを計算し, 気泡周辺の流れ場を明らかにした.ポテンシャル流れに対する既存の解から計算される結果との比較から, 気泡周辺および平板近傍での速度分布に対する粘性の効果を明らかにした.また, 気泡成長速度Rは気泡内部と流体の圧力との差圧Δp とRe数 (=RR ρ/μ) の積の平方根に比例することが示された.
  • 加藤 邦夫, 黛 雅典, 飯島 健, 大久保 祐司, 宝田 恭之
    1989 年 15 巻 4 号 p. 832-836
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    ディスク型CVD装置内でのウエハからの平均物質移動係数を, カーボン板の燃焼反応をCVDの代理反応として用い, ガス-固体間の物質移動律速となる条件下で測定した.平均物質移動係数に及ぼす系内反応ガスの流速, 反応管径, サセプタ径, カーボン板径, カーボン板表面から反応管頂部までの距離, サセプタと反応管の間の距離などの因子の影響を調べた.
    その結果, 本装置における平均物質移動係数は, 装置の幾何学的形状や強制対流に大きく影響を受けることがわかった.さらに, これらの因子にもとづいてディスク型 CVD装置における.平均物質移動係数の推算式を得た.
  • 加藤 邦夫, 黛 雅典, 飯島 健, 宝田 恭之
    1989 年 15 巻 4 号 p. 837-842
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    ディスク型CVD装置を用いてシリコンの単結晶の薄膜を均一に成長させる技術を確立するために, 系内への原料ガスの流入方法を変えることのできる二重管式ノズルを考案した.このノズルを用いて, 局所物質移動係数に及ぼす軸方向ノズルと半径方向ノズルからの供給ガスの流量比, 流速, 半径方向ノズルの高さおよび, カーボン板表面から反応管頂部までの距離の影響を調べた.
    その結果, 局所物質移動係数を広い操作範囲で半径方向に均一にすることができた.中でも, 流量比7 (軸方向) : 3 (半径方向) は, 局所物質移動係数が大きく最も均一となった.
  • 鹿川 修一, 堤 正巳, 川上 満泰, 寺岡 靖剛, 岩本 正和
    1989 年 15 巻 4 号 p. 843-848
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    液相固体触媒反応では通常微粒子触媒が懸濁状態で用いられる.もし触媒をその活性を損なうことなく適当な担体に固定化できれば, 触媒の取り扱いが容易になるなどいろいろな効用が期待できる.
    本報では, シリコーンゴムに触媒粒子を包埋して固定化する方法の有用性を明らかにするために, Ru-カーボン触媒によるアセトンの水素化をモデル反応として, シリコーンゴム包埋触媒の有効係数を検討した.その結果, Ru-カーボンをシリコーンゴムに包埋することにより触媒活性は約1/20に低下したが, 各反応物のシリコーンゴム中の拡散は十分速く, 包埋触媒の有効係数は本実験範囲内で1に近いことが判った.包埋による触媒活性の低下は, シリコーンゴムが硬化する際に発生するオキシムが触媒毒となる, あるいは Ru一カーボン触媒の細孔内ヘシリコーンゴムが侵入して閉塞するためと考えられる.
  • 稲垣 隆之, 小宮山 宏
    1989 年 15 巻 4 号 p. 849-856
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    AlCl3-NH3-He系において等温管型反応器を用いて超微粒子沈着CVD によりAlN 膜を合成した.
    作成した膜は, 多結晶AINであり (002) 面に強く配向していた.成膜速度は, 最大で1.3mm/hと従来のCVDによるAlN膜の成膜速度より2桁速い成膜速度を達成した.
    成膜速度分布に対する反応温度, 反応管径, 原料ガスの予混合の影響を調べた.成膜機構としては, 気相における反応中間体の生成, 基板への拡散という逐次過程によるモデルを提出し, 反応中間体のサイズを推算したところ, 0.7nmという値を得た.
  • 欅田 榮一, 金 鍾和, 駒沢 勲
    1989 年 15 巻 4 号 p. 857-862
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    使用済みリチウム電池からリチウムイオンおよびその炭酸塩の特性を利用してリチウムを分離する回収プロセスについて研究した.硫酸によってリチウム電池を浸出し, 浸出後のpHが7.7程度になるようにすればリチウムの75%以上が浸出され, 他の金属類は水酸化物となって浸出されない.浸出液を蒸発濃縮し, 100℃近い温度で炭酸ナトリウムの飽和液を加え, リチウムを炭酸塩として折出させる.共沈された炭酸ナトリウムは熱水で洗浄除去し, 炭酸リチウムの純度を99%にすることができる.貧液中のリチウムとナトリウムとの分離には, 協同効果をもつキレート抽出剤のLIX51Rと中性有機リン酸のTOPOを用い, リチウムを選択的に抽出し, 有機相を希塩酸で逆抽出して99%のリチウムが得られた.
  • 本郷 尤, 日比野 隆
    1989 年 15 巻 4 号 p. 863-867
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフを併用した流通法により, 298.15Kにおける1-プロパノール-塩化カルシウム系, 水-塩化カルシウム系および1-プロパノール-水-塩化カルシウム系の気液平衡関係を測定し, 単一溶媒-塩系では溶媒の活量データを, 混合溶媒-塩系では各溶媒の蒸気相の分圧データを得た.また, Halaのモデルを用いて, 本実験結果に対する相関を試み, 1-プロパノールの気相のモル分率について平均2.2%の偏差で実測値を再現することができた.
  • 宍戸 郁郎, 鈴木 幸雄, 渡邉 一史, 鈴木 睦
    1989 年 15 巻 4 号 p. 868-871
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    2相密閉サーモサイフォンは構造は簡単であるが, 下部加熱の時にのみ作動するため応用範囲が制限されている.このため (1) バブルポンプをサーモサイフォン中に組み込む方式, (2) 浸透膜を組み込み, ループ式のサーモサイフォンとする方式, あるいは (3) 内部に電極を取り付け, これと容器壁間に高電圧を付加するEHD (Electro hydro dynamics) 方式などが提案されている.しかしいずれも付帯装置が必要であったり安定な動作が得にくいなどの欠点があり, いまだ実用化には至っていないのが現状である.
    そこで本報ではサーモサイフォン内部に電磁ポンプを組み込み上部加熱でも作動し得る双方向型サーモサイフォンを開発した.さらにその双方向型サーモサイフォンを2本組み合わせ双方向型カスケード式サーモサイフォン (Dual mode Cascaded Thermosyphon, 以下ではDCTと略する) を開発し, その基本的な作動特性について検討した.
  • 伝熱モデルパラメータの検討
    今駒 博信, 尚 熈善, 三好 克紀, 岡崎 守男
    1989 年 15 巻 4 号 p. 871-874
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    The applicability of the heat transfer model proposed by the authors in the previous paper was examined by comparison of theoretical values of the effective thermal conductivity with experimental values for two types of fibrous insulations, one formed in bulk (fiber orientation is isotropic) and the other in blanket (fiber orientation is random in planes). The model equations explained satisfactorily the experimental results for the insulations at room temperature under various experimental conditions in which both airpressure and packed density were varied.
  • 山城 光雄, 久野 洋
    1989 年 15 巻 4 号 p. 875-877
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    Additional experiments on gravity flow of powders from a hopper were carriedout by varying the diameter of the efflux tube, D, to reconfirm the following semi-theoretical equation :
    W=CρB1/2 (P2-P1) 1/2 (D-kd1/2) 2
    where W is the efflux rate of powder ; ρB the apparent density of the powder in thehopper ; P2 and P1 the pressure above and below the orifice ; d the particle diameter ; and C and k are constants.
  • 横田 俊幸, 大戸 行雄
    1989 年 15 巻 4 号 p. 877-880
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    A new continuous method for freezing droplets has been developed in freeze drying. A wetted-wall column with a conical tail was used, with a flow of cooled n-hexane as refrigerant. In the column a feed solution was sprayed through a pneumatic spray nozzle. Sprayed fine droplets were caught in the falling refrigerant. Frozen particles were screened by filtration. Advantages of the method are that i) almost all fine droplets can be caught, ii) rapid cooling is accomplished, thus preventing component segregation, and iii) very fine frozen particles with little agglomeration are produced.
  • 異常発現時刻の概念の拡張
    具嶋 文彦, 柴田 望洋, 潮崎 淳一, 松山 久義, 大島 榮次
    1989 年 15 巻 4 号 p. 880-883
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    前報において診断対象システムの状態変数の経時変化 (動的症状) の特徴を, 状態変数が異常を示す時刻 (異常発現時刻) によって表現して符号付有向グラフによる診断法の精度を向上させる方法を提案し, 槽・配管系においてその効果を確かめたが, この方法は, 全ての測定変数が同一のサンプリング周期で同時刻に測定されていることを前提としていた.
    しかし, 既存の計装システムに異常診断システムを付加する場合には, 変数の測定時刻がまちまちであることが多く, 前報で示した異常発現時刻を利用した診断法をそのまま適用することはできない.
    ここでは, 測定時刻が変数によって異なる場合に, 異常発現時刻の概念を拡張する方法について報告する.
  • 松本 史朗, 本間 俊司, 古閑 二郎, 阿久津 信男, 小林 秀彦
    1989 年 15 巻 4 号 p. 884-886
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    Mass transfer coefficients of suspensions were measured in circular tubes of 5.0 and 10.0 mm diameter. Particles used in this study were 183 μm and 322 μm in diameter and the concentration range was less than 20 %.
    The Sherwood number for suspensions was correlated by an empirical equation as follows :
    Sh=1.75Gz1/3+1.15Re0.8Sc1/3φ2.0
    where Gz, Re, Sc, and φ are Greatz number, Reynolds number, Schmidt number and volume fraction of particle of suspensions, respectively.
  • 中島 充幸, 徳本 淳一, 戸田 啓, 山崎 量平, 神保 元二
    1989 年 15 巻 4 号 p. 886-889
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    流動層内に設置される伝熱管に加わる力の大きさと振動は, 伝熱管設計において重要な要素である.流動層内にある管に加わる力の研究は, 単二管および複数管についてなされ, Graceらによりモデルも提出されている.しかし, これらの研究では, 単一管もしくは管群の最下管の分散板からの高さが, 25~51cmの範囲であり, また, 使用粒子径が, 177~800μmの範囲だけであるので, 商業的に使われているもしくは使われ得る流動層への適用性から考えると, 不十分である.
    本報では, 従来の研究に比べ粒径の小さい2種類の粒子について, 層内単一管に加わる力に及ぼす流動化ガス速度と単一管の分散板からの高さおよび静止層高の影響を広い範囲にわたって実験的に検討したので報告する.
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