化学工学論文集
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17 巻, 3 号
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  • 羽野 忠, 松本 道明, 大竹 孝明, 堀 文昭
    1991 年 17 巻 3 号 p. 449-454
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    種々の溶媒を用いて, リパーゼおよびオリーブ油の界面張力を測定するとともに, リパーゼによるオリーブ油の加水分解反応を平面接触型撹拌槽を用いて行った.界面張力の測定結果からリパーゼおよびオリーブ油が界面に吸着することが明らかとなり, それらの吸着平衡定数をLangmuirとGibbsの吸着等温式にもとついて算出した.検討した溶媒の中では, イソオクタンを用いた場合が最も高い加水分解速度を与え, これはこれまでの報告例と一致した.界面張力と速度実験に基づいて, 液液界面に吸着した酵素とオリーブ油が反応するという新しい反応機構を提出した.加水分解速度に及ほす溶媒の効果は, 酵素もしくは基質の界面吸着特性の差ではなく, 界面反応速度定数の差として説明できた.
  • 高山 仙夫, 中村 英昭, 太田口 和久, 小出 耕造
    1991 年 17 巻 3 号 p. 455-461
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    培養温度変化に対し常温菌の酵母Candida lipolyticaは応答し不飽和脂肪酸の組成を変えるが, この過程を細胞増殖およびC16, C18脂肪酸含量の経時変化を求めることで検討した.脂肪酸の主成分はリノール酸 (18 : 2), オレイン酸 (18 : 1), パルミチン酸 (16 : 0) およびパルミトレイン酸 (16 : 1) であった.一般に, 低温側で細胞は膜の流動性を確保するために不飽和脂肪酸の合成を促進すると言われているが, この系では, この傾向は対数増殖後期, 停止期の細胞に顕著に現われた.20, 25℃の対数増殖期では, リノール酸, パルミトレイン酸含量は一定であった.特に対数増殖細胞の場合, 30℃への温度上昇に応じて不飽和脂肪酸含量を高めることがわかった.この一見矛盾する観察結果を説明するために, リノール酸合成に関し温度依存性の異なる2つの生合成経路を想定し, 不飽和化反応の活性変化を考察するための概念図を提出した.
  • 長棟 輝行, 中村 尚志, 遠藤 勲, 井上 一郎
    1991 年 17 巻 3 号 p. 462-469
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    廃糖蜜とほぼ同一の糖組成 (スクロース : グルコース : フルクトース=2 : 1 : 1) に調整した合成培地を用いた回分培養系および逐次流加培養系において, 酵母菌体結合のインベルターゼによるスクロース加水分解過程ならびにインベルターゼの最大分解速度の変化過程について実験的に検討した.その結果, スクロースの加水分解速度はスクロースによる基質阻害, 加水分解反応の生産物であるフルクトースによる拮抗阻害, またグルコースによる部分的な非拮抗阻害を受けることがわかった.さらに, 酵母菌体結合インベルターゼの最大加水分解速度は, 全糖濃度が高い場合には低く抑制されているが, 全糖濃度が低くなるにつれて増加することがわかった.この最大加水分解速度と全糖濃度との関係は一本の無次元特性曲線で表すことができた.これらの結果に基づいて, 酵母菌によるスクロースの加水分解過程のモデル式を構築し, これを用いてシミュレーションを行った.シミュレーション結果は, 回分培養系および逐次流加培養系におけるスクロースの加水分解実験結果と良く一致した.
  • 箱田 優, 千葉 常則, 中村 厚三
    1991 年 17 巻 3 号 p. 470-476
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    タンパク質溶液を限外濾過によって分離・濃縮を行うような場合, タンパク質は膜面上に堆積しゲル状になり, 非常に大きな濾過抵抗を示す.電気限外濾過は, 電場を印加することにより荷電粒子や溶質が膜面に堆積するのを防止する方法である.
    本論文は, グルコアミラーゼによる澱粉の連続的加水分解を反応例として, 電気限外濾過型バイオリアクターの酵素活性と濾過流束に及ぼす電場の影響について実験的に検討を行った。
    電場による酵素活性の低下の原因は電解浮上分離と電気的な失活であり, それぞれ, 電気量と電気エネルギーの関数であることが明らかとなった.緩衝液を用いない場合は, 電場印加によっての電流値が小さく, 酵素活性はわずかに減少するものの, 濾過流束はかなり増大した.その結果, 電気限外濾過型バイオリアクターは, 実験条件によっては大変有効な方法であることがわかった.
  • 後藤 宗治, 後藤 雅宏, 中塩 文行, 吉塚 和治, 井上 勝利, 馬場 由成
    1991 年 17 巻 3 号 p. 477-483
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    テフロン製の中空糸一本からなる膜型バイオリアクターを用いて, トリオレインのリパーゼによる加水分解反応を行った.さらに, 本反応の加水分解速度を, 基質であるトリオレイン, 生成物であるオレイン酸の物質移動を考慮して, 定量的に検討した.
    本反応系の生成物であるオレイン酸は高濃度領域で加水分解反応を阻害する.しかし, 一方の生成物であるグリセリンは, 全く反応を阻害しないことがわかった.
    トリオレインの加水分解機構はリパーゼの界面吸着, ならびに, オレイン酸の阻害反応を考慮したMichaelis-Menten機構で表すことができた.界面における上記の加水分解速度およびトリオレインとオレイン酸の界面への物質移動速度を同時に考慮することによって実験結果を定量的に説明することができた.
  • 須藤 義孝, 大河原 肇, 大島 榮次
    1991 年 17 巻 3 号 p. 484-490
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Phaeodactylum tricornutumは海洋性の珪藻で, ミリスチン酸やエイコサペンタエン酸等の脂質を7-35wt%含んでいる.この珪藻の藻体数は10日間で約1000倍に増殖し, その速度は早いため, 近年P. tricornutumは石油の代替エネルギーとして大きな関心が寄せられている.
    本研究では, P. tricornutumを人工海水中で, 炭素源として空気をバブリングさせ, 24時間単位で明暗の時間を変えて回分培養を行った.最適操作条件として, 温度20℃, 培養液1l当り空気量2l/min, 光は培養槽底部から上部にあて, 底部の照度は10000lx以上, であった.これらの条件で培養実験を行った結果, P. tricornutumの増殖速度は積分照度モデルで表すことができた.
    更に, 照度変化による藻体の大きさの分布, 乾燥質量, 脂質についての知見を得た.
  • 小林 哲男, 小沢 貞雄, 佐藤 一省, 長棟 輝行, 遠藤 勲
    1991 年 17 巻 3 号 p. 491-496
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
    ウレタンフォーム担体に液体培地を含浸させたものを半固体培地として用いた麹カビによる固体培養方法を試みた.この培養方法は培地の初期濃度やその組成を容易に変えることができ, また, 培地の供給および酵素を含む培養液の分離が簡単に行える.
    回分操作によるグルコアミラーゼの生産を試み, 初期含水率が78~80%, 投入糖量が発泡体のかさ容積当り35,000mg/lで最大酵素生産量が得られることを見いだした.さらに, でんぷん溶液を供給培地とした反復回分操作を試み, 含水率を約85%に制御すれば高い酵素生産活性を維持したままグルコアミラーゼを半連続生産できることを明らかにした.
  • 畑中 千秋, 原口 俊秀, 井手 俊輔, 西宮 康二, 梶山 千里
    1991 年 17 巻 3 号 p. 497-503
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    モノマーとしてアクリルアミド, 架橋剤としてN,N'-メチレンビスアクリルアミドを用い, この水溶液にグルコアミラーゼを加えて液体窒素温度下で90秒間プラズマ照射して重合を開始し, 後重合によって得られるポリアクリルアミドゲル内に酵素を包括固定化する方法を試みた.
    後重合で得られたゲルを再度-50℃以下に凍結することによって固定化率は飛躍的に増大した.この固定化率は, モノマーと架橋剤のモル比を0.1とし, モノマー濃度を上昇させることによっても著しく向上し, モノマー濃度0.2の場合, 固定化率は65%となった.また, この場合, 固定化酵素の安定性, および生産性については, デキストリンを基質とした時, それぞれ520h, 0.635mol/gが達成された.これらの結果はキトサンビーズに固定化したものに比べ優れていた.さらに, 固定化酵素を用いたバイオリアクターによる連続糖化と分画分子量1000の限外濾過膜との組み合せによって純度97%以上のグルコースが得られた.
  • 中村 嘉利, Moniruzzaman Mohammed, 長尾 衛, 沢田 達郎, 元井 正敏
    1991 年 17 巻 3 号 p. 504-510
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    蒸気爆砕は植物性バイオマスの酵素糖化のための効果的な前処理方法の一つである。水蒸気圧2.55~4.02MPa, 蒸煮時間0.5~10minの操作条件で稲わらの爆砕操作を行った.爆砕稲わらは水可溶性ヘミセルロース, ホロセルロース, メタノール可溶性リグニンと, Klasonリグニンに分離された.爆砕稲わらのpHおよび細孔径分布, 抽出成分の抽出量, 酵素による糖化率などの特性に及ぼす操作条件の影響について検討した.爆砕稲わらの糖化率はメタノール可溶性成分量が増加するにつれて増加した.爆砕稲わらの糖化率は蒸気圧と蒸煮時間の関数で表された.最大糖化率は蒸気圧3.3~3.8MPaと蒸煮時間 1.0~3.5minのときに達成されることが式から推算された.
  • 平田 彰, 平田 誠
    1991 年 17 巻 3 号 p. 511-517
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    遊離酵素を用いた抽出を伴うアスパルテーム前駆体合成における有機溶媒として, 3種類の酢酸エステル : 酢酸エチル, 酢酸ブチル, 酢酸アミルを用い, これらが本合成反応に適することを基質および生成物の抽出平衡より確認した.
    次に, 遊離酵素活性に及ぼす酢酸エステルの影響を, 水系 (純水系), エステル飽和水系および水-エステル2相系の3つの系を用いて検討した.水系と後者2つの系との比較において, 酢酸エチルを用いた場合は酸側での反応速度が低下したのに対し, 酢酸ブチル, 酢酸アミルの場合は有機溶媒による顕著な影響はみられなかった.
    また, 酢酸ブチルを基質供給, 生成物抽出用の有機溶媒として利用した反復回分法による合成を行い, 有機溶媒の交換により, 遊離酵素を失活させずに再利用することが可能であることを確かめた.
  • 上岡 龍一, 松本 陽子, 加藤 康夫
    1991 年 17 巻 3 号 p. 518-523
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    エステラーゼモデルとしてカチオン性界面活性剤とペプチド触媒との混合ミセル系を選び, 長鎖アミノ酸エステル基質の不斉加水分解を行った.
    基質-触媒間のアミノ酸残基同士の認識効果および疎水性効果は二次速度定数 (ka, obsd) や不斉選択性 (kLa, obsd/kDa, obsd) を高める上で重要であり, L-フェニルアラニン (L-Phe) -L-PheおよびL-ロイシン (L-Leu) -L-Leuのアミノ酸残基間の認識効果や, 長鎖アシル部間の疎水性効果が明らかとなった.さらに, ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウム=クロリド (CBzAC) ミセル系におけるN-ベンジルオキシカルボニル-L-フェニルアラニル-L-ヒスチジル-L-ロイシン (Z-L-Phe-L-His-L-Leu) によるN-ドデカノイル-D (L) -フェニルアラニン=p-ニトロフェニルエステル (C12-D (L) -Phe-PNP) の加水分解反応においては, 触媒 (Z-L-Phe-L-His-L-Leu) とL体基質 (C12-L-Phe-PNP) 間の有効な疎水性認識効果とともに, 界面活性剤 (CBzAC) の疎水性ヘッドグループの効果も加わり, 臨界ミセル濃度以上でkLa, obsd/kDa, obsd=38と顕著に大きな不斉識別が発現された.
  • 〓 新会, 本多 裕之, 白神 直弘, 海野 肇
    1991 年 17 巻 3 号 p. 524-530
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    細孔径の比較的大きいポリエーテル系ウレタンフォーム多孔質担体への活性汚泥微生物の担持過程について実験的に検討した.微生物の担持は担体の中心から開始され, 次第に周辺へ広がっていく現象が見られた.担体の大きさによって担持過程が異なったが, 定常状態では担持微生物の密度は担体の大きさによらずほほ同じ値であった.
    また, 微生物群の反応挙動について検討した結果, 培養の進行に伴って有機質酸化細菌, 硝化細菌が出現した.しかし, 5mm担体系では主に好気性細菌群が存在しているのに対し, 7, 10mm担体系では担体内に嫌気性領域が生じることによって脱窒細菌群も構成された.これらの結果から, 担体の大きさを適切に選定することによって有機質および窒素の同時処理を行わせるための微生物群を担体内に構成させることが可能と考えられる.
  • 須藤 雅夫, 宇田 泰幸, 向山 隆之, 勝間田 仁之
    1991 年 17 巻 3 号 p. 531-538
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    過酸化水素電極を検出器とするグルコースセンサーの応答電流とグルコース濃度の関係を理論的および実験的に議論した.センサーに被覆するグルコース酸化酵素 (GOD) 固定化膜の内部でのグルコース, 酸素, 過酸化水素および水素イオンの拡散と二基質型GOD反応速度を考慮した理論解析を行った.酵素反応速度論での二つのミカエリス定数は実験からpHの関数として得られた.固定化酵素の活性は, 膜内で均一な酵素反応の条件でのグルコース濃度と応答電流の線形関係から算出されたが, 製膜時の元の活性に近い値であった.電極近傍におけるGODの反応速度は, 電極反応で生成した酸素により増大したが, 同時に生成する水素イオンにより抑制された.応答電流が, 300mA・m-2以上になると電極反応の影響が顕著になり, グルコース濃度の増加とともに応答電流は飽和値に漸近する傾向を示した.
  • 松岡 智史, 田中 久雄, 安戸 饒
    1991 年 17 巻 3 号 p. 539-546
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    還元型NAD (P) Hに特異的な波長を利用した蛍光センサを, 実際の培養系に適用する試みがなされているが, 対象とする系が複雑であることや, センサの原理, 構造に由来する非線形性が十分検討なされていないことなどの理由から, その適用範囲は制限されている.
    本報告では, Loambert-Beerの法則に基づき, センサの特徴を踏まえた測定値に関する基礎式を導出し, 培養中の菌体内の蛍光物質濃度を推定する応用式を求めた.この式をパン酵母の回分培養に適用した結果, 得られた菌体内蛍光物質濃度の推定値の変化と, 代謝経路の変化から推察される菌体内NAD (P) Hレベルの変化との間に良好な類似性が認められた.
  • 上田 宏, 菊地 昌子, 西村 肇, 長谷川 明, 八木 慎太郎
    1991 年 17 巻 3 号 p. 547-552
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    新しい免疫センサーシステムの可能性を探るために, 抗原結合能をもつ抗体分子に, EGF受容体チロシンキナーゼの信号発生能を持たせた融合タンパク質を遺伝子レベルで作成し, ミエローマ細胞で発現させた.この融合タンパク質は元の抗体と同様にH鎖2本とL鎖2本が共有結合したヘテロテトラマー状態をとっており, 抗原ニトロフェナセチル基に対する結合能を保持していた.セルソーターを用いた細胞膜表面抗体検出法と, 細胞内オルガネラ分画により, このタンパク質が粗面小胞体からゴルジ装置を通り, 抗体部分を外側にして細胞膜表面に発現されていることが確認された.これに対して膜型IgMは粗面小胞体画分にしか発現が見られなかった.またこの受容体タンパク質は細胞内への信号伝達に必要な, タンパク質チロシンキナーゼ活性を持っていた.以上の結果から, ミエローマ細胞はこの様なセンサータンパクの発現系として充分利用可能であると考えられた。
  • 永田 良一, 田中 貢, 権藤 晋一郎
    1991 年 17 巻 3 号 p. 553-558
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    ウリカーゼをオキシランアクリル粒子に固定化し活性の安定化を行った.得られたウリカーゼ固定化粒子を用いてマイクロベッド (粒子充填層部 : 5.5mmφ×1.5-5.0mm) を作製し, 市販の溶存酸素センサーに装着して尿酸センサーを構成した.pH8.5の50mMトリス・ホウ酸緩衝液中で, 液温15-35℃, 尿酸濃度0-10mg/dlに対するこれらのセンサーの濃度応答特性および安定性を調べた.得られた結果は次の通りである.1) 応答速度はほぼ, むだ時間0.1-0.68分, 時定数0.18-0.6分の一次おくれで表現できた.2) 尿酸濃度2.5-3mg/dl以下では直線的な検量線を得た.3) センサー不使用時には室温の緩衝液中で保存した場合, センサーは, ±5%の範囲内で250日間以上安定であった.4) 検量線の直線部分の勾配が溶存酸素濃度の逆数に比例することを理論的および実験的に示した.
  • 遠藤 英明, 鈴木 正康, 早出 広司, 民谷 栄一, 軽部 征夫
    1991 年 17 巻 3 号 p. 559-564
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    デキストラン発酵において, 微生物菌体量, 培養液粘度, 基質濃度の各パラメーターを計測するためのオンラインモニタリングシステムを製作した.本システムは, ピエゾゴムセンサー, 水晶振動子粘度センサー, スクロースセンサー, バイオリアクター, パーソナルコンピューターより構築される.ピエゾゴムセンサーは, 2対のピエゾゴム, パルスジェネレーター, プリアンプより構成され, L. mesenteroidesの菌体量計測が1.0~4.8 [kg dry cell mass・m-3] の範囲で可能であった.水晶振動子粘度センサーはAT-カット, 9MHzの水晶振動子, 発振回路, ピークレベルメーターより構成され, 水晶振動子の共振抵抗 (R1) とデキストラン溶液の (ρη) 1/2 (ρ及びηは液体の密度及び粘度) との間に直線関係が認められた.またスクロースセンサーはグルコースオキシダーゼ, ムタロターゼ, インベルターゼの各固定化酵素と金電極より構成され, 1~1000 [×10-3kg・m-3] の範囲で基質の測定が可能であった.次に, 本システムをデキストラン発酵に適用したところ, 各センサーの測定値は従来法の測定値と良い相関を示し, 各パラメーターのオンラインモニタリングが可能であった.
  • 木通 秀樹, 村山 茂樹, 塩見 茂史, 羽田 勝二, 山田 好延
    1991 年 17 巻 3 号 p. 565-571
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    本論文は, 好気性細菌であるRhodobacter sp.の補酵素Q10発酵を対象とし, 動的計画法による生産物収量の最大化を目的とした.菌体量を状態変数とし, 通気量を操作変数として, 糖消費速度が律速要因とならないような糖供給条件下で, 通気量による最適制御を行った.
    増殖と生産のモデル化を行い, 比呼吸速度と比増殖速度, 比生産速度の関係を実験データによる関数テーブルで表して, シミュレーションを行った結果, オペレーターによっては得られたことのない最適通気パターンを得た.この菌体量と最適通気量の関係をマップ化し, マップ制御を行った.実験は, 0.03m3培養槽を用いた流加培養により, 従来行ってきた経験的培養法と, 通気パターン以外の条件を一致させて同時に行い, 結果を比較した.実験の結果, 生産量を増加させることに成功した.また, 生産低下の許容できる範囲を考慮することによって, マップデータを減少させる方法を示した。
  • 塩谷 捨明, 清水 浩, Patoomporn Chim-anage, 菅 健一
    1991 年 17 巻 3 号 p. 572-578
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    一般にプロセスの最適化はモデリング, 最適計算とその実現という3つの段階を経て行われるが, 各ステップに含まれる誤差や, 困難性を調和させた方法を採るのが望ましい.本論文では, この調和のとれた一つの方法を提案する.すなわち, 流加培養系の最適化を念頭において, 比増殖速度による生産物比生成速度の表現と流加培養系のモデリング, 最大生産のための比増殖速度の最適パターンの最大原理による求解, また更に, この最適パターン・トラッキングのための拡張カルマンフィルターによる比増殖速度の推定とフィードフォワード/フィードバック制御の1つと考えられるPFシステムによる比増殖速度の制御等の体系的アプローチを提案する.また, この方法論による具体例として, 菌体外生産であるヒスチジンの最大生産及び菌体内生産であるグルタチオン最大生産を取り上げ, 本方法論の有効性および残された課題について示した.
  • 淺間 一, 長棟 輝行, 遠藤 勲, 平田 誠, 平田 彰
    1991 年 17 巻 3 号 p. 579-585
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    バイオプロダクトの研究開発支援を目的として, 発酵プロセスの異常診断エキスパートシステムを試作した.まず発酵プロセスにおける異常の分析と診断システムに要求される機能の明確化を行った.次に診断システムに対する要求仕様を検討し, プロセス変数に注目して発酵プロセスの制御系の診断を行うエキスパートシステムの設計を行った.知識表現に関しては, 診断のヒューリスティクスをプロダクションルールで, 培養システムのモデルおよび異常事象の因果関係をフレームで表現した.推論では, ルールに基づき異常原因を探索するのみならず, 異常事象のフレームをたどりながら異常原因が及ぼす影響を検証することによって信頼性の高い診断を可能にした.最後に, 温度制御系, pH制御系, 溶存酸素制御系の診断をインタラクティブに行うエキスパートシステムを構築し, 典型的な異常に関して診断を実行させた結果, システムの動作が妥当であることを確認した.
  • 平田 彰, 平田 誠, 古澤 比呂志, 本田 尚士
    1991 年 17 巻 3 号 p. 586-588
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    A semi-continuous pulsed extraction column bioreactor retaining free enzyme in an aqueous phase was devised for the enzymatic synthesis of the precursor of the artificial sweetener aspartame, using butyl acetate as an organic solvent for substrates feeding and product extraction. Only organic solvent was fed and flowed out, and free enzyme was retained in the reactor without immobilization. This reactor made it possible to use free enzyme continuously and to carry out stable production and extraction by pulsation.
  • 石田 誠司, 佐伯 純, 川島 利行, 熊沢 栄太郎, 加藤 滋雄, 佐田 栄三
    1991 年 17 巻 3 号 p. 589-594
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    高分子抗腫瘍性抗生物質SN-07から, イオン交換クロマトグラフィー (IEC) および疎水クロマトグラフィー (HIC) によりエンドトキシンを除去した.IECおよびHIC用樹脂に吸着したエンドトキシンは, アルカリ-エタノールによる洗浄後, 洗浄液中の塩濃度の上げ下げを繰り返す方法により除去できることがわかった.この方法で調整したエンドトキシンフリーカラムによりSN-07を精製したところ, Sepabeads FP-DA 13を用いたIECでは負荷した量の95.5%のエンドトキシンが除去された.HICではリガンド濃度の異なる2種類の樹脂 (Sepabeads FP-PH 12およびFP-PH 13) についてSN-07の吸脱着を行う塩濃度でのエンドトキシンの平衡吸着能を調べたところ, 両樹脂ともに吸着量の差は小さかった. カラムを用いたSN-07の精製においても, エンドトキシンの除去率はFP-PH12で92.8%, FP-PH13では95.7%といずれも高く, 上記平衡吸着能の結果に対応した.
  • 矢木 秀治, 中尾 雅昭, 尾藤 清貴, 植西 和宏
    1991 年 17 巻 3 号 p. 595-600
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    タンパク質の塩溶, 塩析は共存する塩濃度により水溶液中のタンパク質の状態が変化することによる.これらの現象は塩を含む水溶液中のタンパク質の限外濾過においても現われる.撹伴槽型限外濾過器において硫酸アンモニウムが共存するパパイン水溶液の限外濾過実験を行った.液本体におけるパパイン濃度が溶解度より低く, 共存硫酸アンモニウム濃度による粘度の変化が小さくても, 限外濾過特性は変化した.塩析領域において, 同じパパイン濃度でも, 硫酸アンモニウム濃度の上昇とともにゲル層の透過抵抗は高くなった.塩溶領域では物質移動係数は大きく, ゲル層表面濃度は溶解度に近かったが, 塩析領域では物質移動係数は小さく, ゲル層表面濃度は溶解度より高かった.これらの結果から, 塩溶領域ではパパインが分子状で存在するが, それ以外では凝集していることが推察できた.
  • 吉川 ユミ, 永田 和久, 松本 幹治, 大矢 晴彦
    1991 年 17 巻 3 号 p. 601-606
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    パン酵母から純水およびエタノール水溶液によるトレハロースの抽出を行った結果, 抽出率はエタノール濃度, 抽出温度, および細胞破砕操作の影響を受けた.この場合, 酵母の液胞内に存在するトレハロースの加水分解酵素であるトレハラーゼの活性がトレハロースの抽出と密接な関係があり, トレハラーゼの活性を抑制あるいは失活させることが重要である.
    トレハラーゼの活性を抑える方法として343K以上のエタノール水溶液を用いることが有効であり, 45~50wt%エタノール濃度で最大の抽出率を得た.更にパン酵母を加熱乾燥させることがトレハラーゼを失活させるためより効果的であり, 純水による抽出も可能であった.
  • 久保井 亮一, 山田 泰司, 森 義昭, 駒沢 勲
    1991 年 17 巻 3 号 p. 607-613
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    AOTとタウロデオキシコール酸 (TDCA) を用いて, 逆相ミセルによるlipase (Chromobacterium viscosum lipase) の正・逆抽出を行った.AOTとTDCAは, イソオクタン中で安定な混合ミセルを形成した.混合ミセルは, AOTミセルより優れた選択性・活性収率を示した.ミセルサイズは, 50mMAOTではTDCAの濃度 (0-4mM) によらず, AOTミセルとほぼ等しい.ミセル界面でTDCA 1分子の占める面積は, AOT6.2分子に相当する.混合ミセルは, α-chymotrypsinやpapainとは対照的に, lipaseに対して選択的に分配係数を8倍程度まで増加させ, 微量注入法を用いなくても, 二相抽出法や液膜抽出法によって活性収率を改善できる.
  • 貴志 和之, 古崎 新太郎
    1991 年 17 巻 3 号 p. 614-619
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    逆ミセル抽出におけるオリゴペプチド類の油水二相への分配に対する荷電密度 (荷電数/分子量) および疎水性の効果について検討した.ペプチドの分配定数は荷電密度とともに増大する.また疎水性が大きい程, 分配定数は大きい.このことからペプチドの疎水性の差による分離の可能性が示唆される.またテトラペプチドLys-Lys-Gly-Gluおよびウナギカルシトニンフラグメントについて液々平衡および抽出に際しての逆ミセル内の挙動を検討した.ペプチドについても逆ミセル相に於ける濃縮が確認された.
  • 杉本 整治, 横尾 義春
    1991 年 17 巻 3 号 p. 620-622
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    A purification procedure for highly purified and highly uniform recombinant eel growth hormone (EGH) was established and found to be applicable to large-scale production. Inclusion bodies of recombinant EGH expressed in Escherichia coli were obtained by the disruption of cells and washing. The inclusion bodies were solubilized in urea solution and refolded by dilution and addition of oxidized glutathione. EGH analogues such as oxidized EGH at methionine and formylated EGH at N-terminal, which were produced during the fermentaion and/or purification process, were removed by subsequent hydrophobic interaction chromatography.
  • 橋本 健治, 白井 義人, 安達 修二, 堀江 正治
    1991 年 17 巻 3 号 p. 623-626
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    マルトースは食品工業において大量に使用されている甘味料である.マルトースは主に可溶化デンプンのアミラーゼによる加水分解反応によって生産されているが, この段階で約10%程度のグルコースが副産物として生成され, マルトースとグルコースの分離が問題となる.
    これら2成分は強酸性イオン交換樹脂によるクロマト分離法によって分離することができる.しかし, 分配係数の差が小さく, 通常の回分式クロマト分離操作では, 処理速度が遅く, 大量にマルトースを分離・精製するには難点も多い.
    擬似移動層型クロマト分離装置は, 1本のカラムを数本あるいは十数本に分割し, 液の供給・取り出し口を液流れ方向にカラム1本分づつ切り換えることにより, 液と樹脂の向流接触を可能にした装置であり, 強吸着性成分は樹脂移動方向に, 弱吸着性成分は液移動方向に移動するように操作することにより, 2成分の連続分離を可能にする.この連続クロマト分離法は, グルコース, フラクトースのように分離の難しい成分の分離に特に適しているとされており, 実験的, 理論的研究も多い しかし, 回分式クロマト分離法との比較の観点から分離効率を検討した研究は見当らない.
    そこで, 本報においては, マルトース・グルコースの分離系について, 回分式クロマト分離法と擬似移動層式クロマト分離法の分離効率を比較, 検討する.ただし, 擬似移動層の操作の複雑さや装置コストは考慮せず, 分離効率の観点からのみ, これら2つの方式を, 実験および計算機シミュレーションの両面から比較した.
  • 橋本 篤, 清水 賢, 五十嵐 英夫
    1991 年 17 巻 3 号 p. 627-633
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    遠赤外線照射による殺菌効果の特徴を把握することが本研究の目的である.生理的リン酸緩衝液 (pH7.0) 中に浮遊する大腸菌745株と黄色ブドウ球菌9779株について, 遠赤外線照射もしくは伝導加熱し, 殺菌実験を行った.その際, 加熱方法による細菌懸濁液のバルク温度の差異が無視されうる条件下において実験を行った.生菌数と非致死的損傷細菌数は, 集落形成数より算出した.
    遠赤外線照射した場合のほうが伝導加熱した場合よりも殺菌効果が認められ, 生菌数に占める非致死的損傷細菌数の割合が大きくなった.そして, 遠赤外線照射による殺菌効果は, 細菌懸濁液表層部における赤外線エネルギーの吸収と細菌懸濁液のバルク温度とに起因するものと考えられた.
  • 橋本 篤, 高橋 誠, 本多 太次郎, 清水 賢, 渡辺 敦夫, 柴田 行男
    1991 年 17 巻 3 号 p. 634-638
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    The present study aims at determining the influence of the heat transfer mechanism on the amount of maltose produced by heating sweet potato in a packed-bed. The yield of maltose did not depend on whether the heat transfer mechanism in the bed was controlled by heat radiation or by heat conduction. It did depend, however, on the time required to raise the center temperature of the sweet potato from 338K to 353K. When that time was about 8 min and total time for heating the sweet potato was 3036 min, the yield was maximum.
  • 白井 義人, 松野 隆一, 中西 一弘
    1991 年 17 巻 3 号 p. 639-641
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    高分子成分と低分子成分を含む液状食品のモデル物質として, 高分子としてデキストランを, 低分子としてラクトースを含む混合液を用い, Shiraiらにより提案されている連続晶析槽中に生成する氷結晶の粒径分布推算法と同様の方法によって, 高分子物質を含む糖溶液中に生成する氷結晶の粒径分布について検討した.
  • 霜田 政美, 松村 正利, 片岡 廣
    1991 年 17 巻 3 号 p. 642-648
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    細胞の抜き取り経路を備えた灌流培養装置を用いて, グルコース制限下におけるハイブリドーマの高密度培養を行い, 細胞増殖および炭素源の代謝に対するグルコース濃度の影響を検討した.培養液中のグルコース濃度はグルコースとグルタミンの代謝を著しく変化させたが, 比増殖速度および比死滅速度に対する影響は少なかった.グルコースが高い濃度ではグルコースの比消費速度と乳酸収率は増加し, 低い濃度ではアンモニアの濃度が高くなった.この結果からグルコース制限培養下において乳酸とアンモニアの蓄積を低下させる最適グルコース濃度の存在することが示唆された.グルコースとグルタミンの代謝から推算した見かけのATP生産速度と細胞の増殖との間には良好な相関が得られ, グルコース制限下ではグルタミンから必要なエネルギーを補うことが明らかとなった.
  • 松下 琢, 石橋 和久, 岐津 真佐子, 船津 和守
    1991 年 17 巻 3 号 p. 649-654
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    植物細胞の高密度培養を目的として, ドラフトチューブ付きエアーリフト槽の最適形状の設計を試みた.その結果, より低い通気量で, 培養液の良好な循環・混合と高いkLαを得るためには, 均一な径の気泡を多数発生するスパージャーと, その気泡流の広さにちょうど合う径のドラフトチューブの使用が重要であることが示された.また高密度培養を行うには, 培地交換が必須であり, そのためには細胞と培地の効率的分離が必要となったが, 側面に穴の開いたドラフトチューブを用いることでこの点が解決された.そこでこのようなドラフトチューブ付きエアーりフト槽 (容量1l) を用いて, ニンジン細胞の高密度培養を試みた結果, 培養時間713hの間に3回の培地交換 (50%) を行い, 最高到達細胞密度で1.09×107cells/ml, 細胞乾重量で15.2g/lの値が得られた.これらの値はこれまでに報告されているニンジン細胞の高密度培養の値よりも高く, 本培養槽の有効性が示された.
  • 新規菌の探索・分離・同定とその培養特性
    中津川 直樹, 掘越 弘毅
    1991 年 17 巻 3 号 p. 655-666
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    エネルギー回収型の廃棄物・廃水処理法として多用されているメタン発酵法に関し, 現行法の技術限界を打破することを主目的として, 苛酷な培養環境においても生育し, メタン生成活性を維持する新規な特殊環境メタン生成細菌に関する基礎研究を行い, 以下の結果を得た.
    1) 高効率な分離手法を開発した上で, 広く国内外の特殊環境サンプルを対象に, スクリーニングを実施した.その結果, 多数の好塩性, 好アルカリ性, 好熱性, 耐低温性, 重金属耐性のメタン生成細菌の分離に成功した.
    2) これらの分離菌の中で特に, 米国西部高塩環境から分離された好塩性メタン生成細菌 (strain NY-218;生育至適NaCl濃度2.5~3.0M, 好アルカリ性, 耐低温性も併せ持つ) は新属・新種, 日本の東北地方湖沼底泥から分離された好アルカリ性メタン生成細菌 (strain NY-728;生育至適pH8.1~8.7, 耐低温性も併せ持つ) はMethanosarcina属の新種と同定された.
    3) 新規性の高いこれら2株に関し, 菌学的諸性質と培養特性を詳細に解析することで, 応用の可能性に関し基本検討を行った.1~3lスケールでの培養特性の評価結果は, 試験管培養レベルでの結果とほとんど同じであったこと等から, さらに大きなスケールの大量培養においても, 両菌の諸特性は維持されるものと考えられ, 実際のメタン発酵プロセスへの応用の可能性が示唆された.
  • 鈴木 基之, 酒井 康行
    1991 年 17 巻 3 号 p. 667-670
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    初代培養肝細胞は, in vivoとほぼ同レベルの肝特異機能を一定期間保持したまま培養可能である.このため肝細胞の大量培養技術の確立には, 各種血漿蛋白や肝特異酵素の大量生産, 一時的肝機能代替モジュール等の実現について期待が寄せられている.
    初代培養肝細胞のデイッシュレベルでの培養は, コラーゲンやファイブロネクチン等の付着伸展因子で被覆した表面上での単層培養が一般的である.ところが最近, 非伸展性の付着表面において, 細胞が次第に集合し球状の高密度凝集体 (スフェロイド) を形成, 単層培養と比較して高機能を長期に渡り発現することが報告されており, 物質生産の面からも注目を集めている.
    我々は, ポリリジン被覆表面上において, 既往の報告例と同様のものとみられる球状の細胞凝集体を見いだした.さらに, 工業的利用における培養条件確立めざし, 形成・維持における血清・ホルモン等の添加成分について基礎的な検討を行ったので報告する.
  • 佐藤 正之, 篠沢 隆雄, 上野 浩義, 定方 正毅
    1991 年 17 巻 3 号 p. 671-673
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    The authors proposed a valuable method for the cultivation of adherent cells on an oil-water interface. It was found experimentally that A-375 cell line adhered to a fluorocarbon-medium interface and spread all over the plane interface where there were good or had combinations of oil and water for cell growth. Cultivation on oil droplet surfaces was also studied with a small amount of surface-active agent added, where the percentage of droplets with/without cell adhesion varied with oil droplet diameter and amount of surface-active agent. By the present method, about 90% of cultivated cells was obtained without the usual practice of using trypsin solution to remove cells from the wall surface.
  • 塩見 尚史, 福田 秀樹, 福田 泰樹, 村田 幸作, 木村 光
    1991 年 17 巻 3 号 p. 674-679
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    遺伝子を組み替えた酵母を工業的に利用していくためには, 一般の酵母で発現するマーカーを有し, 且つ, 安定に宿主中に保持される工業用のベクタープラスミドの開発が必要である.エチオニン耐性遺伝子がマーカーとして優れた特性を有することから, これをマーカーとする工業化用ベクタープラスミドpER9を作製した.pER9は9.8Kbと短く, クローニングに適したBam HI, SalI部位を有し, 宿主中に安定に存在した.さらに, エチオニンにより選択圧を加えると40世代培養後でもプラスミドの保持率は98%であった.また, 実用酵母である清酒酵母やビール酵母中で発現し, 実用酵母の育種に利用できることがわかった.
  • 林 孔華, 飯島 信司, 黄 世佑, 菱沼 文男, 小林 猛
    1991 年 17 巻 3 号 p. 680-686
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    酵母ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子 (PGK) のプロモーター領域にマウスα-アミラーゼ遺伝子を連結した組換えプラスミドを持つ酵母を培養し, 効率的な遺伝子産物の生産条件について検討した.まず試験管レベルの培養でいろいろな培地を検討した結果, 硫安が遺伝子産物の生産を抑制することがわかった.一方, 硫安の代わりに酵母エキスを窒素源として用いると遺伝子産物の生産が促進され, しかも, 生産レベルは酵母エキスの濃度に依存し, 10kg/m3以上の濃度の酵母エキスが遺伝子産物の生産に最適であった.そこでジャーファーメンターでの培養において, 窒素源として酵母エキスを含んだ培地を用い, オンライングルコースアナライザーによりグルコース濃度を測定, 制御して培養した.その結果, グルコース濃度が菌の増殖と遺伝子発現に強く影響することが判明した.最終菌体濃度と遺伝子の発現はグルコース濃度が低いほどよく, グルコース濃度を0.15kg/m3に制御することによって2830μkat/m3のマウスα-アミラーゼが生産され, 培地に分泌された.これはグルコース濃度を10kg/m3に制御したときの10倍であった.
  • 中野 秀雄, 高井 敏朗, 川上 泰, 西村 肇, 巌倉 正寛
    1991 年 17 巻 3 号 p. 687-693
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    大腸菌α-ヘモリシン (HlyA) の分泌機構を用いて選択性の高い分泌ベクターを開発するため, 細胞質性タンパク質である大腸菌ジヒドロ葉酸還元酵素 (DHFR) をモデルタンパクとして, HlyAとの融合タンパクを作製しその菌体外への分泌を検討した.融合タンパクは, DHFRのC-末端部にHlyAのC-末端部を遺伝子上で結合して作製した.この系では, DHFR側の配列により融合タンパクの分泌が大きく影響をうけることを確認した.酵素活性を持ったものは分泌されず, 活性を持たないものは分泌されたことから, 分泌される側のペプチドの高次構造がその分泌効率に大きな影響を与えているものと予想される.
    またHlyAと他のタンパクを融合させて菌体外分泌させるためには, HlyAのC-末端側61アミノ酸残基を用いれば十分であることを示した.
  • 小島 紀美, 福本 勉, 武井 修一, 五十嵐 隆夫, 太田口 和久, 小出 耕造
    1991 年 17 巻 3 号 p. 694-700
    発行日: 1991/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Escherichia coliによるBacillus caldotenax由来の3-イソプロピルリンゴ酸 (3-IPM) 脱水素酵素遺伝子の発現を, 細胞の質量濃度, 同遺伝子を有するプラスミドpTMY2の含量, および単位細胞質量あたりの3-IPM脱水素酵素活性の経時変化を求めることで検討した.形質転換菌は温度を変えてDavis最少培地およびYT培地上に増殖させた.この化学合成培地においては34℃以上, 複合培地では31℃以上の条件で, 対数増殖細胞単位質量あたりのプラスミドDNA含量および3-IPM脱水素酵素活性は一定であった.一方これらの低温側では, いずれの値も時間に対し指数的に減少したが, これはプラスミドの一部が細胞分裂時間内では複製できなかったことを示していると言えよう.遺伝子の複製, 発現に関する式も導出し実験データに対しこれを適用した.細胞は, いずれの培地においても3-IPM脱水素酵素遺伝子を発現したことから好熱菌DNA断片中にプロモーターがあることを推論した.
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