化学工学論文集
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18 巻, 6 号
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  • 金子 四郎, 白井 正明, 豊倉 賢
    1992 年 18 巻 6 号 p. 773-780
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    低濃度リン酸溶液の晶析脱リン速度について, 種晶に活性化マグネシアクリンカを用いて実験的に検討した.リン酸イオン濃度の減少速度式は, 回分振とう法では溶液pHとカルシウムイオン濃度が一定になる条件下で, リン酸イオン濃度の2乗に相関され, そのときの反応速度定数は, pH=8.2~8.4, [Ca] =1.25mol/m3のとき, 4.52~5.11×10-5m3/m2h (mol/m3) になった.なお, 溶液pHとカルシウムイオン濃度が変化することを考慮して求めた反応速度定数は, 3.86~7.44×10-4m3/m2h (mol/m3)2.5であった.一方, カラム通水実験から求めた反応速度定数は, pH=8.3~9.0, [Ca] =1.25mol/m3のときに4.83~5.72×10-5m3/m22h (mol/m3) になり, 回分振とう実験とほほ同じになった.さらに, 合成液を用いたカラム通水実験と下水二次処理水を対象にした実証実験の反応速度を比較し, 相関が可能であった.
  • 山田 則行, 安部 英一, 広末 英晴
    1992 年 18 巻 6 号 p. 781-789
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    大きさの異なる粒子からなる懸濁液の噴霧乾燥粒子に偏析が見られることから, 大小二成分の粒子を含む懸濁液を噴霧乾燥することにより大粒子集合体の周囲が小粒子で被覆された無機質殻マイクロカプセルを製造することを試みた.大粒子と小粒子の粒径比および体積分率を変えて得られるマイクロカプセルのSEM観察および細孔径分布が測定された.小粒子の体積分率が2/3以上のとき, 粒径比が0.1と0.2の場合に小粒子からなる殻が形成され, 粒径比が0.5の場合には小粒子による殻の形成は見られなかった.小粒子として無機質の超微粒子であるコロイダルシリカを用いると, その体積分率が0.7以上であるとき水銀圧入式ポロシメータでは細孔 (10nm以上) が検出されないマイクロカプセルが得られた.このマイクロカプセルは大粒子として塩基性炭酸マグネシウムを用いたとき, pH2の緩衝溶液中で徐放性を示した.コロイダルシリカ殻からの有効成分の溶出はコロイダルシリカ中のソーダ分の溶出した後に形成される細孔を通して行われることが推定された.
  • 三保 智昭, 加藤 尚武, 山本 重彦
    1992 年 18 巻 6 号 p. 790-795
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    化学プロセス制御は, 大きな装置内の温度や濃度を希望する値に一致させる従来型の制御はもちろんのこと, 先端化学でしばしば現れる微小な対象の制御も今後発展させなければならない.本研究で検討したゾーンメルティングプロセスもその一例で, 試料管またはヒータの移動などの外乱に対して, 正確な温度分布を維持しなければならない.
    本研究では, これまでのゾーンメルティング操作法とは異なり, 試料管やヒータを移動させることなく, 希望する温度分布を刻々実現する新しい操作法を検討した.すなわち, プロセスを分布定数系としてとらえ, 分布定数系における制御を適用した.シミュレーションおよび実験を行い, 新しいゾーンメルティングプロセスの実現可能性を示すことができた.
  • 山田 良吉, 小山 俊太郎, 宮寺 博, 嵐 紀夫
    1992 年 18 巻 6 号 p. 796-803
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    ゼオライト系吸着剤を用いて空気から酸素を濃縮するPSA (圧力差スイング吸着) 酸素製造法において, 吸着剤再生時の真空パージ脱着 (真空減圧+パージガス脱着 : VSA法) 操作について検討した.
    本研究は真空パージ脱着操作において, パージガスとして濃度90vol%の酸素を用いた.このパージ酸素を吸着塔内から漏出させずに, 室素を効率よく脱着するための必要なパージ酸素量に及ぼす脱着圧力, パージ流量, 温度等の操作因子の影響を明らかにすることを目的とした.
    濃度90vol%の酸素をパージガスとして用いて定量的に検討した結果, 脱着窒素量はパージ流量の影響によらず脱着圧力が低真空度 (大気圧力に近くなる) になるほど多くなる.また, 必要パージ酸素量は脱着圧力が低真空度になるほど, かつ, 温度が低くなるほど多くなる.さらに, 真空パージ脱着により真空減圧単独操作時に比べ多量の窒素が脱離し, 吸着剤の再生効果は大となる.
  • 松本 曠世, 北村 光, 鎌田 敏弘, 西川 信行, 石橋 道生
    1992 年 18 巻 6 号 p. 804-812
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    中空糸膜を用いたガス吸収器による火力発電所排ガス中のCO2除去を目的として一連の基礎実験を実施した。その結果.CO2-MEA (モノエタノールアミン) 系では, 多孔質膜の総括物質移動係数Kは, 多孔質膜と均質膜によりなる複合膜のそれに比べて約10倍大きく, 本系では多孔質膜が適していることがわかった.
    CO2-MEA系について中空糸膜ガス吸収器の物質移動機構を明らかにし, 膜に濡れが生じていない場合には, Kの推算ができることがわかった.またテフロン膜は疎水性が高いのでMEAによる濡れが生じないことを約4000hに及ぶ連続実験により確認した.
    中空糸膜ガス吸収器の総括容量係数Kaは, 従来方式である充填塔の5倍以上あり, 本法を適用することにより吸収部を小型化できる見通しを得た.
  • 大江 修造, 小森 俊之
    1992 年 18 巻 6 号 p. 813-818
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    蒸留プロセスの設計に必要な気液平衡を推算するエキスパートシステムを開発した.本システムは, AI言語ARTを用いて最適な気液平衡の推算式を選定後, 推算式に対応した推算プログラムを結合する.気液平衡の推算には多くの非数値的かつ経験的な知識を必要としており, これらの知識を従来のコンピュータ技術により処理するのは困難であるが, AI技術は様々な知識を表現できるので, 気液平衡の推算のような複雑なシステムの開発に効果的である.
    本システムには以下の知識を構築した.
    1) 混合物の各成分名から各構造式を決定する知識.
    2) 各成分の各構造式から混合物の種類を決定する知識.
    3) 混合物の種類から気液平衡推算式を決定する知識.
    本システムは気液平衡推算の非専門家にとって, 極めて効果的なシステムである.本システムにより.成分名と操作圧力の入力により気液平衡の推算が可能である.
  • 井野 一, 今石 宣之, 宝澤 光紀, 藤縄 勝彦
    1992 年 18 巻 6 号 p. 819-826
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    乳化液膜法で使用される交流高電圧を用いる連続式電気解乳化器の性能に及ぼす電極形状の影響を実験的に検討した.W/Oエマルションの油相にはケロシン, 界面活性剤にはSpan 80, 内部水相には食塩水を用いた.解乳化器は内径4.9cm, 高さ45cmまたは100cmの垂直円筒形槽で無攪拌である.導電性電極として, その先端形状が円板型, 円錐型および球型の銅製電極を用いた.非導電性電極としては円板型のガラス製電極および平板型絶縁塗料被覆金属電極を用いた.解乳化を安定に連続運転できる単位有効装置体積当たりのエマルション最大流量を連続操作における最大解乳化速度, Vd [s-1] と定義し, Vdに及ぼす諸因子の影響を調べた.その結果, 電極形状の影響は小さいが, 円板型のものが最も良かった.円板型の導電性 (裸金属) 電極および非導電性 (ガラス) 電極について, 次の実験式を得た.
    Vd=KCs-0.35d3pE0.75
    導電性電極の場合
    K=2.1×1010 [m-2.25・s-1・V-0.75]
    非導電性電極の場合
    K=1.6×1010 [m-2.25・s-1・V-0.75]
    ここでCs=界面活性剤の体積分率 [-], dp=W/Oエマルション平均粒子径 [m], E;見かけ電界強度 [V・m-1] である.非導電性電極の場合は安定な連続解乳化が常に可能であった.導電性電極の場合はVdは大きいが, 電極がエマルション相に接近すると火花放電が起こり, 安定な運転が難しくなることがわかった.
  • 福井 啓介, 勝屋 訓, 神吉 達夫
    1992 年 18 巻 6 号 p. 827-831
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    スパン方向に対して異なる温度に加熱された水平平板上における流れ場では, 高温側と低温側で不安定度が異なった不安定成層が隣接して発達する.このように不安定度の異なった2つの不安定成層がスパン方向に共存して発達する共存密度成層乱流場において速度と温度を同時に測定し, 流れ場および熱輸送に関して検討した.平均速度分布から, 不安定度の強い高温側に上昇流が形成され, それに伴って不安定度の弱い低温側には弱い下降流が生じることがわかった.低温側で生じた下降流に不安定成層の効果が作用することにより, 低温側の弱い不安定成層内部において渦を伴う複雑な流れ場が形成されることがわかった.また, 測定によって得られた平均温度分布および乱流熱流束の分布から流れ場における熱の輸送機構を明らかにした.
  • 横田 政晶, 豊倉 賢
    1992 年 18 巻 6 号 p. 832-839
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    NaCl添加系DL-SCMC過飽和溶液中でL-SCMC種晶を懸濁成長させ, 過飽和溶液中への微結晶の生成速度と成長種晶表面上への微結晶の付着速度を実測した.操作過飽和度2.1×10-4kg・kg-1では微結晶の付着速度および生成速度はそれぞれ種晶成長時間によらず一定であったが, 高過飽和度 (5.7×10-4, 8.9×10-4, 16.7×10-4kg・kg-1) では成長開始後それぞれ6.5, 5.5, 3.5時間以内では微結晶の付着速度は一定で, それ以降はほば0になった.また微結晶の生成速度は5.5, 4.5, 3.0時間までほほ一定であったが, その後増加した.さらに, 種晶表面に付着した微結晶の観察より, ほとんど全ての付着微結晶は成長種晶中に埋没し, 付着してから種晶中に取り込まれるまでの時間は微結晶の付着速度が0になりだすまでの時間とほぼ一致することがわかった.このことから, 成長初期では懸濁微結晶が一定速度で成長種晶に付着するが, それ以降ではすでに付着した微結晶が成長種晶中へ埋没し両速度がバランスする領域があると考えられる.
  • 成膜速度分布の比較
    秋山 泰伸, 中野 克行, 佐藤 恒之, 今石 宣之
    1992 年 18 巻 6 号 p. 840-848
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    水平管型ホットウォールCVD反応器を用い, Zrのβ-ジケトン錯体を原料としてZrO2膜を合成した。反応温度823K~973K, 操作圧0.4kPa~24kPa, 全流量0~1500sccm, 酸素濃度0~50mol%の範囲内で, 成膜条件による膜色, 結晶形および成膜速度の相違を実験的に検討した.
    気相反応速度定数のみを未知パラメータとして含む基礎方程式群の2次元数値計算をZr (DPM) 4を原料とする上記LPMOCVD系に適用し, 実測したすべての管軸方向成膜速度分布をフィットし得る唯一の気相反応速度定数を決定した.活性化エネルギーとして140kJ/mol程度の値が得られた.正PCVD装置を用いるこの種の解析では, 管内圧力損失が無視し得ないことを示した.
  • 高橋 洋志, 本多 芳彦
    1992 年 18 巻 6 号 p. 849-855
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    粒子が剪断変形を受ける時の体積膨張効果を考慮した粒子流動モデル (応力~剪断歪速度関係式) に基づいて, 移動層の粒子速度分布と応力分布を推算する理論的手法を提案した.固気直交流式移動層および垂直円管内重力流れ移動層にこれを適用して理論の妥当性を確かめた.さらに, ガス流れを伴う垂直円管型移動層に理論を拡張したところ, 速度分布と応力分布は固気接触様式 (向流, 並流) に大きく依存し, 並流式では速度遅れの原因となる壁面摩擦力が著しく増大することが理論から予測された.モデルに含まれる体積膨張効果を表わすパラメータは, 粒子速度の関数であったが通気速度にはほとんど影響を受けないことが示された.
  • 菅沼 孝夫, 加藤 尚武, 山本 重彦
    1992 年 18 巻 6 号 p. 856-861
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    回分プロセスの制御は, 連続プロセスの場合に比べて, 強い非線形性をいかに克服するかが主要な課題である.本研究では, 非線形性を有する制御対象に有効なスライディングモード制御を, 強い吸熱反応を示すアンモニウムミョウバンの熱分解プロセスに適用し, シミュレーションおよび実験の両面から検討した.その結果, スライディングモード制御は, PID制御の場合に比べて, きわめて良好で, 生成するアルミナ粒子径および粒子分布の制御に有効であることがわかった.
  • シルバニ マンスル, 稲垣 眞, 清水 忠明
    1992 年 18 巻 6 号 p. 862-866
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    この論文は, 複雑な動特性を持つ系 (たとえば分布定数系など) を近似できる伝達関数として, 1次遅れと無駄時間を有する要素Kexp (-Ls) / (1+Ts) を2つ加えたものを提案している.まずこの伝達関数の性質を調べるため, ゲインと位相を計算しパラメータを調整することにより共振現象を実現できることを明らかにした.これは, ボード線図上でゲインと位相の勾配を大きく変える可能性のあることを意味し, その結果複雑な特性をよく近似できる可能性を有することを意味している.また, パラメータK, LおよびTを求める手段として周波数伝達関数の漸近的性質を述べている.この伝達関数の有効性を示すため化学装置の中でその動的性質が理論的にも実験的にも比較的よく研究されている熱交換器を対象にして数値実験を行っている.その結果, 共振を有する周波数特性をよくフィットできること, そして同じ装置のインデイシャル応答に対してもよくフィットできることを示している.
  • 鈴木 次郎, 保坂 正人, 川崎 良隆, 沼本 浩直, 西野 敦
    1992 年 18 巻 6 号 p. 867-874
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    可燃範囲の高濃度混合気 (灯油λ=1.4) を用いて触媒種と担持量が燃焼完結性に与える影響を調べた.また, 触媒体内での中間生成物の反応完結性の傾向を低濃度混合気 (プロパン800ppm/Air, CO400ppm/Air) を用いて調べた.
    また燃焼完結のために触媒をできるだけ高温で使用することが必要である.この目的で触媒種と担持量が触媒体の耐熱性に与える影響を調べた.この結果は以下の通りである.
    1) 高濃度混合気の場合, 触媒体の温度が高いため燃焼完結性は触媒種に影響されず, 担持量に影響される.
    2) 低濃度混合気の場合, 触媒体の温度が低いため触媒種と担持量の双方の影響を受ける.
    3) 触媒の耐熱性は触媒種と担持量の双方に影響される.
  • 佐々木 正幸, 島津 武, 中村 厚三, 北原 博幸, 堤 敦司, 吉田 邦夫
    1992 年 18 巻 6 号 p. 875-880
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    ビール醸造における発酵槽内の流動挙動について実験的に検討した.直径1m, 高さ3.5mの実験用コニカル発酵槽を用いて二酸化炭素の発生速度, 局所ガス体積流束, 液の流動速度を測定した.また, 幅0.3m, 高さ13mの2次元コニカル発酵槽を用いて発酵に伴って発生する気泡の挙動, 気泡径分布, 気泡上昇速度, およびガスホールドアップ分布を測定した.
    各々の測定結果から, 槽内の液の流動の推進力は, 二酸化炭素気泡が半径方向に偏在することによって生じる密度差であることが明らかになった.発酵槽の流動挙動は循環流理論を用いて説明された.
  • 出口 清一, 松田 仁樹, 架谷 昌信, 加藤 一成, 駒井 巌
    1992 年 18 巻 6 号 p. 881-886
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究では, ニトロセルロース/ニトログリセリンを主成分とするダブルベース固体推進薬の燃焼基本特性を解明するために, 種々の条件下で燃焼状態を直接目視観察するとともに, 燃焼速度ならびに燃焼生成ガス組成の測定を行った.さらに, 燃焼の前段階として起こる固相熱分解挙動を検討するために, ダブルベース固体推進薬粒子の熱重量測定を行った.その結果, 1) ダブルベース固体推進薬は低燃焼速度領域において不完全燃焼を起こすこと, 2) ダブルベース固体推進薬の燃焼は燃焼速度の増加とともに理論燃焼に近づくこと, 3) ストランド試料中にアルミニウム箔を挿入することにより燃焼速度を増大させ得ることが明らかとなった.
  • 速度と機構
    米本 年邦, 高木 繁行, 土井 武之, 内田 史子, 只木 〓力
    1992 年 18 巻 6 号 p. 887-893
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    チタンテトラエトキシドをエタノール溶液中で加水分解して水和酸化チタンの微粒子を生成させる実験を行い, 固体への転化率ならびに生成微粒子の形状と粒径の経時変化を求めるとともに, 固体微粒子を濾過により除去した溶液に対する小角X線散乱の測定を行った.そして非凝集の単分散微粒子生成に必要な原料濃度の条件ならびに分散剤 (hydroxypropylceHulose) 添加の効果を明らかにした.またChronomal解析に基づき, 微粒子生成機構とその速度論に関する考察を行い, 反応開始から極く短い時間にチタン原子多数を含む極微小の胚種が生成し, その後, 拡散律速下で胚種が一部の粒子上に析出して, その粒子が成長すると考えるモデルで本速度過程を説明した.また, 小角X線散乱データの解析により, 胚種径を算出した.
  • 鈴木 一如, 入山 守生, 中森 義輝
    1992 年 18 巻 6 号 p. 894-903
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    下水汚泥回転乾燥焼却炉は, 内部現象が複雑で, 入出力変数間の定量的表現が困難なため, 理論的解析, 自動制御化が遅れているプロセスの一つである.本研究では, このプロセスの動特性を解析するため, 運転中の回転乾燥焼却炉から収集した時系列データについて, ファジィ理論によるモデリングを行う.ファジィモデリングでは, データを, 出力変数により複数の部分データセットに分割し, 部分データセットことに自己回帰モデル (部分モデル) を構築する.IF-THENルールで表現される各部分モデルを, ファジィ推論により統合することで, プロセス出力を計算する.得られたファジィモデルについて, 同定精度を評価するとともに, ランダムな入力を加えた場合の出力分布の安定性をシミュレーションによって検討した結果, 頑健性が確認された.ファジィモデリングの対象プロセス特性を記述する能力は高く, 悪構造系のマクロモデル構築手法として有効であることが示された.
  • 大佐々 邦久, 中倉 英雄, 新田 哲
    1992 年 18 巻 6 号 p. 904-910
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    疎水化度の異なるアニオン性ポリアクリルアミドを用い, 石炭の選択凝集法による脱灰特性について実験的に検討した.その結果, (1) フロック形成の点から最適な分離特性を得るための撹拌条件が明らかとなった. (2) 石炭と灰分粒子とを分散させるためには, スラリーのpH調整および分散剤添加が不可欠であった. (3) 高分子の疎水性が大きくなるほど炭質分回収率は増大するが, 脱灰率を最大とする最適高分子添加域は狭くなった. (4) 石炭化度の高い石炭ほど高分子の吸着量は多くなり, 回収率も増大した. (5) 脱灰率向上のためには, 炭質分に富む沈澱物中に混入した灰分粒子の洗い出しが有効であった.
  • 神吉 達夫, 原田 享, 坂本 隆一, 松本 隆夫, 樽谷 勇
    1992 年 18 巻 6 号 p. 911-919
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    移動壁を有する矩形流路内の希薄気体の流れの問題について, 還移流域での流れを対象として, 線形化Boltzmann方程式を用いて数値的に解き, 任意Kn数域での流れ場と流量係数を明らかにした.合わせて, 自由分子域の流れに対する漸近解およびすべり流域におけるStokes方程式の解析解を提出し, Kn>10およびKn<0.1域での流れ場についても明らかにした.流量係数は, Couette流においてもPoiseuille流においても, アスペクト比が大なるほど大きい値をとる.Couette流の流量係数はKn数に大きく依存しないが, アスペクト比の小なる流路ではKn数とともに増加し, アスペクト比の大なる流路ではわずかに減少する傾向を示す.Poiseuine流の流量係数は高Kn数域では減少し, 還移域でKnudsen極小値をもつ.本結果は, 気体潤滑系, 掃引型真空ポンプなどの設計に対して有効である.
  • 神原 信志, 宝田 恭之, 中川 紳好, 加藤 邦夫
    1992 年 18 巻 6 号 p. 920-927
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石炭を急速熱分解した時に発生する窒素化合物の種類とその量について, 温度, 炭種の影響を実験的に検討した.石炭は, 亜瀝青炭から無煙炭の幅広い20種類の炭種を用いた.熱分解実験は, 853K~1488Kの温度範囲で急速か熱条件下で行った.揮発する石炭中窒素のほとんどは, NH3, HCN, N2に転換する.これらの窒素化合物への転換率は, 熱分解温度と炭種によって大きく変化することがわかった.概ね, 炭素含有量が低いほど, FuelNからHCN, NH3, N2への転換率が高い傾向にあることもわかった.
    さらに実験室規模の微粉炭燃焼場にて各炭種についてNOx生成量を調べ, Volatile Nの挙動との関係を検討した.炭種の影響を的確に表現するために, FuelNからVolatile N化学種への転換経路を組み込んだNOx生成モデルを提案した.このモデルに基づいて, 乱流燃焼炉におけるNOx転換率と相関する因子を見い出した.
  • 後藤 雅宏, 栫 隆彦, 後藤 宗治, 成迫 誠, 中塩 文行
    1992 年 18 巻 6 号 p. 928-934
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    キャリヤーとして2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル (PC-88A) を用い, 新規界面活性剤によって調製した乳化型液膜により, 銅とモリブデンの選択的分離を行った.内水相や外水相の条件に加えて液膜相中の界面活性剤やキャリヤー濃度の分離に及ぼす影響について検討した.上記分離系においては, 逆抽出試薬の選定が重要な因子となる.内水相に逆抽出剤としてマンニトールの水溶液を用いると, 効率よく銅とモリブデンの分離が行えることを明かにした.
    界面活性剤もまたモリブデンの抽出速度や内水相への濃縮に非常に大きな影響を及ぼした.中でも新規のカチオン性界面活性剤がモリブデンの分離濃縮に最も良好な結果を与えた.乳化型液膜によるモリブデンの抽出挙動はエマルションの膜破壊を考慮したキャリヤーとモリブデンカチオン種との界面反応によって説明できる.モリブデンの高濃縮のためには安定なエマルションを用いることが非常に重要となる.
  • 古内 正美, 本多 知生, 針淵 英男, 後藤 圭司
    1992 年 18 巻 6 号 p. 935-941
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    水平回転円筒内における球状と非球状の2成分混合粒子の流動と偏析現象に関する実験的検討を行い, 粒子の混合比率, 粒子層厚さおよび円筒回転速度と円筒横断面での流動状態, および円筒軸方向に形成される縞状の偏析構造の関係を考察した.低円筒回転速度域の流動状態と粒子混合比率の関係は, 混合粒子のみかけ安息角を用いてほほ説明できる.一方, 高回転速度域では, 円筒横断面での粒子の偏析が生じるため, 安息角のみでは流動状態の差異が説明できない場合がある.円筒回転軸方向に生じる縞状の粒子偏析は, Cataraeting流動域で最も明瞭に現れ, 軸方向の粒子混合比率の変動が最大となる.
  • 液中に不純物を含まない理想的な系
    向阪 保雄, 遠藤 禎行, 西江 恭延
    1992 年 18 巻 6 号 p. 942-949
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    液架橋形成機構を明らかにするために, 接触角が0°の場合の等径2球間に形成される溶解性不純物を含まない理想的な液架橋の形状についてKelvinの式を適用して理論解析を行った.その結果, 液架橋形状を雰囲気の湿度, 液体の物性, 粒子径などの関数として求めることができた.また, Kelvin効果によって形成される液架橋の大きさは最狭部の直径で100nm以下と非常に小さいことがわかった.実験では, 2枚のガラス製凸レンズおよび2球のガラスビーズ間に液架橋を形成させ, 恒温恒湿器内の一定の温度・湿度下で, 架橋形状を顕微鏡によって観察した結果, 理論解析を裏付ける結果が観察されると同時に, 架橋液中にわずかでも溶解性不純物が含まれる場合には, 液架橋形成に大きく影響を及ぼすことがあることが観察結果からわかった.
  • 液中に溶解性不純物を含む現実的な系
    遠藤 禎行, 向阪 保雄, 西江 恭延
    1992 年 18 巻 6 号 p. 950-955
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    等径2球間に形成される液架橋の形成機構を架橋液中に含まれる不純物の影響を考慮に入れて理論解析するとともに実験的にも検討を行った.液体中に溶解性物質が含まれると液表面の蒸気圧が低下することを考慮に入れた修正Kelvinの式を適用して液架橋形成機構と架橋の大きさについて検討した結果, 溶解性物質を含む液架橋は純粋な水の架橋よりも容易に形成されること, および, その形状は雰囲気の湿度や溶質の濃度の関数として表されることがわかった.実験では, 2枚のガラス製凸レンズ間にNa2SO4, CaCl2およびNaClの水溶液の架橋を形成させ, これを恒温恒湿器内の一定の温度・湿度下で, 架橋形状を実体顕微鏡によって観察した.この結果, 架橋形状に及ぼす湿度や溶質の濃度の影響は理論解析によって説明づけることができた.
    以上の結果から, 通常の粉体の湿式処理操作において存在する溶解性不純物が, 粒子乾燥後に形成される液架橋形状に大きな影響を及ぼすことを指摘した.
  • 小幡 英二, 鉢呂 英史, 秋吉 亮, 安藤 公二
    1992 年 18 巻 6 号 p. 956-958
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Glass beads and crushed glass particles of diameters ranging from 1.0 to 5.0 mm were fluidized with tap water. The bed was initially fluidized completely, and then the liquid velocity was gradually decreased to obtain a fixed bed. The relationships of relative particle diameter ratios with the relative heights of the sampling sections in the beds were obtained at 7 mm height intervals. With respect to binary systems of glass beads, good size classification was accomplished at the size ratio of 1.10. This size ratio is much smaller than the widely accepted critical size ratio of 1.30 for classification in liquid fluidization. For a multicomponent system of crushed glass, the continuous classification of various size ranges was observed.
    Inclination of the fluidized column had a great adverse effect of the size segregation.
  • 山口 信吉, 若林 嘉一郎, 笹井 文博, 番場 啓泰, 宮下 尚
    1992 年 18 巻 6 号 p. 959-961
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    An experimental study of electroosinotic dewatering was carried out, using a kneaded clay bed. By investigating the experimental results, the following conclusions were obtained. (1) After a long time, a final moisture distribution is formed in the clay bed where the electric current flows but electroosinotic flow does not occur. (2) The gradient of the final moisture distribution curve increases with increasing voltage applied to the clay bed. (3) The minimum moisture content on the final moisture distribution curve can reach a lower value than either experimental data published in the literature or the critical moisture content for dewatering shrinkage of the clay bed.
  • 洲之内 啓, 武内 一夫
    1992 年 18 巻 6 号 p. 962-964
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    An extended particle growth rate equation was proposed. This equation is based on the most simplified solution of the collision and coalescence model and can be used both in the free molecular region and in the continuous region under changing conditions. In the free molecular region, transition region, and continuous region, the dependence orders of mean particle size on the product of initial concentration of monomer and growth time were found to be 2/5, 1/4, and 1/3 respectively.
  • 川井 友博, 江頭 竜一, 川崎 順二郎
    1992 年 18 巻 6 号 p. 965-969
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Axial dispersion coefficients and Peclet numbers for fixed beds of various fine particles were measured within the range of mean particle diameter from 4.8×10-5m to 1.7× 10-4m, and that of Reynolds number from 1.0× 10-2 to 2.0. From the experimental results, the effects of Reynolds number, particle diameter and particle size distribution on the Peclet number were investigated and a correlation was proposed. It was suggested from the results of simulation of the chromatogram for preparative HPLC that the Peclet number affected the shape of the chromatogram when the linear velocity of mobile phase was low and the adsorption coefficient was small.
  • 岩井 芳夫, 多良 剛, 石田尾 徹, 荒井 康彦
    1992 年 18 巻 6 号 p. 969-971
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    The solid molar volumes of naphthalene, biphenyl, 2, 3-xylenol, 2, 5 -xylenol, 2, 6 - xylenol, 3, 4-xylenol and 3, 5-xylenol were measured from 15 to 35°C, using a flotation method, and the results obtained were compared with the literature values.
  • 宮原 敏郎, 李 明燮
    1992 年 18 巻 6 号 p. 971-974
    発行日: 1992/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    著者らは, これまでの三相流動層はガラスビーズを代表とし, 比較的密度の大きい粒子を用いて検討されてきたことから, ポリスチレン, ナイロン, 活性炭粒子のような密度の小さい粒子を用い物質移動特性, 混合特性, 気泡特性を検討してきた.しかし実際のプロセスでは系が界面的に汚染された場合が多く, 水溶液中の界面汚染物質は微量でも流動特性や物質移動特性に大きく影響することが指摘されている.この理由をScrivenらは界面汚染物質が気液界面での界面張力勾配を生じるMarangoni効果によるものと説明している.アルコールはこのような界面汚染物質の一例である.アルコール添加の諸物性に及ぼす影響についてはこれまで気泡塔に対しては多い.たとえばKelkarらは炭素数1~4のアルコールを用い気泡塔のガスホールドアップを検討している.しかし気泡塔に対する研究とは対照的に三相流動層に対する研究は少なく, 特に低密度粒子を含む三相流動層に対する研究は見あたらない.
    本研究では気液界面汚染物質の一例として液中に微量のエタノールを添加し, 低密度粒子を含む三相流動層のガスホールドアップ, 層頂を離脱する気泡の大きさ, 混合拡散係数および物質移動容量係数を実験的に検討し, 非汚染系の結果と比較検討した.
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