化学工学論文集
Online ISSN : 1349-9203
Print ISSN : 0386-216X
ISSN-L : 0386-216X
20 巻, 6 号
選択された号の論文の33件中1~33を表示しています
  • 三浦 孝一, 前 一広
    1994 年 20 巻 6 号 p. 733-746
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    最近, 石炭の迅速熱分解は温和な反応条件下で有用化学物質を製造する方法として大きな注目を浴びている.本論文では, 石炭の迅速熱分解の特徴とそれに付随する問題を検討した.まず, 揮発分とタールの収率を支配する因子を明らかにするために, 昇温速度を始めとする操作条件の影響を検討した.次に, 迅速熱分解によってタールの収率が増加する機構をNiksaらの提出したモデルを参考に検討した.その結果, メタプラストと呼ばれるタール前駆体の量と非凝縮性ガスの生成速度が揮発分収率と密接に関係することを示した.また, 石炭の熱分解反応に対する一次反応モデルの適用性に関する議論に対する一見解を提示するとともに, 一次反応モデルから真の活性化エネルギーを決定できる手順を示した.さらに, 温和な条件下で熱分解を制御する目的で提案された方法を整理し, その概要を紹介した.最後に, 温和な反応条件下で揮発分, ベンゼン, トルエン, キシレンなどの収率を大幅に増加する目的で, 著者らが提案したいくつかの新しい熱分解法を紹介した.
  • 牧野 尚夫, 木本 政義
    1994 年 20 巻 6 号 p. 747-757
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    化石燃料資源の枯渇化が懸念されている状況において, 埋蔵量が豊富で安定供給が見込まれる燃料として, 石炭の重要性が高まっている.石炭をエネルギー源として利用する際, 最も良く用いられる方式は, 微粉炭燃焼法であるが, その利用にあたっては, 環境汚染物質の排出を抑制するクリーン化技術が望まれている.微粉炭燃焼に伴って発生する環境汚染物質のうち, 窒素酸化物 (NOx) は, 排煙処理においてコストを要し, また除去性能も極端に高くできないため, 燃焼調整によって生成を抑制する低NOx燃焼技術の開発が, 極めて重要になっている.
    本報では, 微粉炭の低NOx燃焼技術の概念と研究開発動向を体系的に取りまとめると共に, 最も新しい低NOx燃焼の概念である低空気比での燃焼の促進と還元炎の早期形成・強化を利用する技術について評価・検討した.本概念に基づく新型のバーナ開発, 燃料再注入法および二段燃焼法の強化を組み合わせることにより, 微粉炭燃焼に伴って発生するNOxを大幅に低減できることが, 明らかになった.
  • 幡手 泰雄, 上村 芳三, 田中 茂穂, 徳増 康弘, 田中 安彦, Desmond F. King, 伊地知 和也
    1994 年 20 巻 6 号 p. 758-765
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石炭変換技術として, 新規に提案したドラフトチューブ付き噴流層型装置を用いて約800℃という比較的低温, 常圧下における石炭ガス化による水素製造を研究した.本装置は, 1) ガス化部の流れ (粒子及びガスとも) が栓流である, 2) 石炭の分級が不必要, 微粒子の混入も問題とならない, 及び3) 出口ガスはガス化による生成ガスのみであり, 従来使用されている酸素のかわりに空気を使用することができるという特長を持っている.1 kg/hの石炭処理を想定したコールドモデル実験を経て, 石炭チャーを供給して, 実際にホットモデル実験を行った.その結果, 水素及び上酸化炭素の含有率が80%以上の反応生成ガスを得ることができた.
  • 上田 史麒, 吉田 信夫, 橋本 涼一, 村松 忠義, 野村 和夫
    1994 年 20 巻 6 号 p. 766-773
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    酸素吹き気流層石炭ガス化炉の特性を, 最大3MPa, 50t/dのパイロットプラントにより検討した.酸素量/石炭量の比 (酸素比) に対し冷ガス効率は最大値を示した.適正な酸素比とチャー循環を行うことにより, 炭素ガス化率98%, 冷ガス効率78%の目標が達成できた.チャー循環の安定化にはチャーのガス化効率が影響し, チャーに対する適度な酸素の供給が重要である.またガス化部上段と下段の酸素量を制御することで, 炉内に温度差をつけることが可能で, この結果, 水素, 一酸化炭素の良質のガスが多く得られると同時に, 灰の溶融とスラグ流下の安定が図れた.一方, 飛散灰の付着, 凝集の問題に遭遇したが, 上段酸素量を少なくする等してここの温度を下げ飛散灰を固化する改善を実施した.以上の結果, 1149時間の安定連続運転を達成した.
  • 藤岡 祐一, 石 栄偉
    1994 年 20 巻 6 号 p. 774-783
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    6種類の石炭を, 石炭量2~6kg/hで, 直径約10cmの加圧流動層反応器へ供給し, 温度1100~1400Kで, 供給ガス中の酸素で部分酸化させてガス化する実験を行った.フリーボードガスによってキャリーオーバーされない十分大きな粒径分布に調製した石炭を使用した.炭素と灰分のマスバランスの解析から, 次の知見を得た.石炭供給量, ガス化温度, H2O供給量によらず, 流動層内のチャー炭素濃度は炭素転換率のみの関数として表された.炭素転換率低下の原因となるフリーボードガスにキャリーオーバーされて系外に排出される炭素濃度の高い微小チャーの発生は, 大部分が石炭供給直後の脱揮発反応にて発生すると推定される.チャーのガス化と燃焼が原因で発生する微小粒子による炭素転換率の低下はほとんど生じないと推定される.このような条件では炭素転換率として最大0.92~0.98を達成可能である.
  • 藤岡 祐一, 土山 佳彦, 徳田 君代, 中島 文也, 内田 聡
    1994 年 20 巻 6 号 p. 784-792
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石灰石と硫化水素の反応を加圧, 高温の固定層および流動層を用いて実験を行った.従来の流動層石炭ガス化炉へ石灰石を供給する脱硫方法では脱硫率を高くできない理由を明らかにした.第一の理由はガス化炉における石灰石の反応時間の不足である.第二の理由はCaSの酸化反応速度がCaSの生成速度よりも速いことである.CaSの生成速度とカルシネーション速度がほぼ等しいと, 石灰石のCaSへの反応率は60%以上になった.高温の石炭ガス化ガスを石灰石で形成した流動層を通過させる実験では, 脱硫後のH2S濃度が140ppmに低減した.
  • 生成ガスの影響
    西山 誼行, 寺田 和彦
    1994 年 20 巻 6 号 p. 793-798
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石炭の触媒ガス化では, 触媒が反応中に生成するガスやタールに曝される.本研究では生成ガス類が触媒の活性に与える影響を知るため, 1-40cmの充填層による積分型反応器方式を用い, 常圧800℃で水蒸気ガス化を行った.一定時間の反応量を水蒸気濃度で補正して反応性の目安とし, 触媒担持と無触媒とを比較した.無触媒では充填層高が大きいと反応性が低下したが, ナトリウム触媒では低下が僅かであり, カルシウムや鉄では無触媒とナトリウム触媒との中間的な振舞が見られた.太平洋炭やLoy Yang炭では, 触媒の有無に関わらず出口でのCOとCO2の比は水蒸気分圧と平衡であり, 充填層の下流域でシフト反応が進むことが分った.これに対し無触媒やニッケル触媒担持Blair Athol (BA) 炭ではシフト反応はあまり進まなかった.また, BA炭から発生するタール分はニッケルや鉄の存在下で急速に分解した.
  • 宝田 恭之, 小森 宇生也, 熱田 武憲, 中川 紳好, 加藤 邦夫
    1994 年 20 巻 6 号 p. 799-804
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    イオン交換担持法を用いることによりKCIからKをYallourn褐炭に担持した.K担持褐炭チャ上と無触媒のLiddell瀝青炭チャーを流動層反応器内で物理的に混合し, 750℃のCO2でガス化した。K触媒は, Yallourn炭チャーのみならずLiddell炭チャーのガス化速度をも増大した.すなわち, ガス化時に流動層内でチャー粒子同士が衝突することによりK化合物が担持炭チャーから無触媒炭チャーへ容易に移動することが分かった.また, K担持炭チャーの混合による無触媒炭チャーのガス化速度増大効果はチャーの粒径に依存し, 本接触ガス化系において触媒効果を高めるためには粒子同士の緊密な接触が重要であることが認められた.また, K触媒のガス化活性は石炭中の鉱物質との反応により一部失活することが示唆された.
  • 上宮 成之, 吉武 博之, 畢 継誠, 木村 匡, 小島 紀徳
    1994 年 20 巻 6 号 p. 805-812
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    連続式ジェッティング流動層ガス化炉 (内径, 78.1mm) を用いて, 太平洋炭乾留チャーのガス化を行った.グリッド部と呼ばれるガス送入部付近のガス濃度分布を実測し, 燃焼・ガス化反応の相対的寄与を検討した.このとき, グリッド部での複雑な温度分布による影響を解消するため, 乾留チャーをアルミナで, ノズルより送入した空気を窒素で希釈した.ジェット内では燃焼が, アニュラス部では水性ガス化反応がそれぞれ支配的であった、ジェット-アニュラス間のガス交換速度は速く, 温度の影響をほとんど受けなかったことから, グリッド部の濃度分布はガス化速度の違いによると推測した.さらに, 既報のバッチ式ガス化炉 (内径43.0mm) における実験結果との比較から, スケール効果についても言及した.塔径を変えたとき, ジェット内ではほとんど同じガス濃度を示したが, アニュラス部での生成ガス濃度は顕著な違いがみられた.
  • 森原 淳, 小山 俊太郎
    1994 年 20 巻 6 号 p. 813-819
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    一つのガス化室内で燃焼・ガス化反応を同時に行う一室二段反応型気流層石炭ガス化炉では, 上段バーナから供給した粒子の滞留時間が効率を左右するため, この算出方法の開発が必要である.そこで, 乱流中に存在する粒子は乱流場の変動により見かけ上濃度勾配にしたがって拡散すると仮定し, 粒子の運動方程式と拡散方程式を連立させて粒子濃度を算出し粒子滞留時間を計算する手法を開発した.本計算手法により, 平均粒子滞留時間に及ぼす上段ガス量及び出口径の影響が求められた.
    また, ガス化炉の流れを模擬した常温常圧のモデル炉を用いてパルス応答法により粒子滞留時間を実測した.本計算手法により得られた結果と実測値を比較した結果, 両者には良好な相関が得られた.
  • 辻 俊郎, 柴田 俊春, 上牧 修
    1994 年 20 巻 6 号 p. 820-826
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    著者等が先に開発した連続式噴流層石炭ガス化炉に対する数値モデルの開発をおこなった.このモデルは噴流層のスパウト部とアニュラス部を2つの完全混合槽とみなし, 物質収支, 熱収支の式と水性ガス化反応式等から成り立っている.小型の固定層の反応装置を使って太平洋炭の熱分解の特性と, 反応速度を測定し, この測定値とモデル式をもちいて炭素転化率, 水蒸気分解率, ガス収量, ガス成分, 冷ガス効率などの噴流層石炭ガス化炉の特性の計算をいくつかの操作条件に対しておこなった.
    計算結果は著者らの太平洋炭の実験結果と比較された.酸素供給量や水蒸気供給量に対するガス化特性の依存性はこのモデルで良く説明できた.
  • 片岡 明博, 井原 孝, ヴォイ テクノバック, 松田 仁樹, 架谷 昌信, 織田 晃
    1994 年 20 巻 6 号 p. 827-833
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    低品位炭ガス化ガス, オフガスなどの低品位・難燃性気体燃料の高効率燃焼装置として, ライザー底部の分散板下部から内部ノズルバーナを挿入した内部ノズル付循環流動層燃焼装置を提案した.本研究においては装置の燃焼排気ガス組成に関する基礎的検討を行うため, メタン燃焼時のNOx排出特性に与える粒子循環量, 空気比, 循環粒子ライザー投入温度, 粒子種, および内部ノズル流量の全体流量に対する比 (内部ノズル流量比) などのパラメータの影響を検討した.その結果, (1) 粒子循環による層温度低減, 平準化 (2) 適正な空気比において操作することによる層温度制御 (3) 熱容量の大きな粒子を用いることによる層内熱輸送促進 (4) 内部ノズル流量比を制御させることによる二段燃焼効果・層温度低減の各効果により, 本装置においてはNOxの抑制燃焼が可能であることが認められた.
  • 谷口 正行, 楢戸 清, 伊藤 和行, 宮寺 博, 工藤 一彦, John C. Chen
    1994 年 20 巻 6 号 p. 834-842
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    層流の上向き流れ中に浮遊させた微粉炭を, 赤外のYAGレーザーパルスにより約106K/sの速度で昇温し, 着火, 燃焼過程を高速度ビデオカメラで観測した.供試した瀝青炭では, レ-ザ照射から1~2ms後にまず表面反応により着火が生じ, 引き続き揮発分の熱分解, 気相燃焼が生じることが観測された.粒子の着火温度を解析して, 80oK~1400Kの範囲での瀝青炭の表面酸化反応速度定数を求めた.反応次数は酸素分圧に対して1次, 活性化エネルギーは約50kJ/molであり, 従来の表面酸化反応理論による文献値と同等である.ただし, 同じ炭種でも個々の粒子により反応性は異なるため, 着火温度には最大で数百度のバラツキがある.これを頻度因子に換算すると約3倍の幅となる.
  • 成瀬 一郎, 山本 康之, 伊藤 嘉文, 大竹 一友
    1994 年 20 巻 6 号 p. 843-848
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石炭燃焼から排出される窒素酸化物の中でとくにN2Oに着目し, 電気加熱式1次元層流石炭燃焼炉を用いて多種類の石炭の低温場における燃焼実験を行った.実験は, 燃焼過程における粒子およびガスを採集・分析して, 石炭中窒素分の放出形態 (HCNおよびNH3) およびそれらの燃焼過程における転換形態を粒子およびガス側の両情報を関連付けながら詳細に検討した.
    結果として, N2Oは主として揮発分燃焼領域で生成されること, NH3よりもHCNを放出する石炭の方が生成N2O濃度が高くなること, 揮発分燃焼がほぼ完了した後流領域では, NO濃度は緩やかに減少するがN2O濃度は増加する傾向を示すことを明らかにした.この領域でのN2O生成は, ガスおよび粒子中の窒素分析から, NOがチャー中の炭素と反応してNCOになり, これがNOと反応しN2Oになる経路およびNOとチャー中の窒素が反応して生成する経路による.N2Oの転換率は, 燃焼率の増加および高燃料比炭ほど増加する.これは, 粒子周りの温度ならびに燃焼雰囲気の還元性の違いによる.
  • 守富 寛, 鈴木 善三, 池田 道隆, 鈴木 康一, 鳥飼 欣一
    1994 年 20 巻 6 号 p. 849-856
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    地球温暖化及びオゾン層破壊ガスとして着目されている亜酸化窒素 (N2O) の化石燃料燃焼過程からの生成機構を明らかにするために, 小型回分式実験装置を用いて, 化石燃料及びそれらを乾留したチャー中の窒素分のN2への転化率を比較することにより, 熱分解に伴う一次揮発分によるN2O生成への寄与を検討した。また, 気相反応区間の滞留時間を短くすることにより, 一次揮発分及び燃焼に伴う二次揮発分の気相反応による寄与を分離し, チャー粒子表面での気固反応のN2O生成への寄与を検討した。その結果, 本実験条件範囲の1073Kの燃焼温度では, 概ねチャー粒子表面での気固反応のN2O生成への寄与は0%~30%程度と推定された.気相反応については, 1073Kまでに放出される揮発分を一次揮発分としてN2O生成への寄与を求めたところ, 燃料中の揮発分量に比例して20%~30%程度であり, 二次揮発分は40%~70%程度と見積もられた.
  • 葛西 栄輝, 齋藤 文良
    1994 年 20 巻 6 号 p. 857-864
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    鉄鉱石焼結鉱の製造過程におけるNOx発生量を低減することを目的として, 複合化したコークス粒子の燃焼実験を行った.調製した複合コークス試料は, 1) Ca (OH) 2とFe2O3の混合粉および合成calciumferrite (CFs) 粉の付着層を持つコークス粒子と, 2) 石炭と鉄鉱石粉を混合し, 乾留して作成した金属鉄含有コークスである.Ca (OH) 2と) Fe2O3の混合粉の付着層を持つコークス粒子の燃焼における燃料中NのNOxへの平均転化率は, 通常のコークス粒子に比較して小さい.CFs粉の付着層を持つコークス粒子では, さらに平均転化率が低下する.Fe2O3, CFsの存在により873から1393Kの温度範囲でCOによるNOのN2への還元が促進されることを確認した.
    また, 金属鉄含有コークス試料では, 乾留過程でNの含有量はかなり低減し, 燃焼中のNOxへの転化率も減少する.本方法により, NOx発生量は通常のコークスに比較して50%程度低減可能である.
  • 上宮 成之, 宮田 真, 小島 紀徳
    1994 年 20 巻 6 号 p. 865-871
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    微粉炭燃焼灰層にpH=3, 5, 7, 11の緩衝溶液を連続的に透過させ, 灰中に微量含有されている有害金属元素であるAs, Mo, Pb, Vおよび溶出液にアルカリ性を付与するMg, Caを対象として溶出挙動を検討した.対象としたほとんどの元素において, 実験開始1時間後までは急速な溶出がみられたが, その後はわずかな溶出にとどまった.これは石炭灰中の各元素の形態 (化物種) により, 溶出が容易な部分と困難な部分の存在を示唆している.溶出率はXt/ (1+Yt) なる時間tの関数で定式化することができた.なお, この式でXは初期最大溶出速度を, X/rは最大溶出率を表す.すべての元素において初期最大溶出速度および最大溶出率は, 浸出液のpHが低くなるにつれ大きくなった.なかでも, pHによらずAs, Moは高い溶出率を示した.Asなどの揮発性の高い元素は, 石炭の燃焼過程において灰表面に凝集するため, 容易に溶出すると考えられる.また, 初期溶出速度と最大溶出率に相関関係がみられた.
  • 小島 紀徳
    1994 年 20 巻 6 号 p. 872-879
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    様々な灰分含有率を有する石炭粉を造粒, 乾留後燃焼させ, 石炭中の微量元素を含む27元素の灰中への残留率をICP発光を用いて測定した.一部の元素については高温での揮散がみられた.生成した灰を粉砕あるいは粉化し, 純水あるいは酸性水への種々の元素の溶出性を測定した.検出されたほとんどの元素について, 石炭粒燃焼時の粒子内最高温度とともに溶出性が抑制される傾向がみられ, また一部の元素についてはある温度以上での急激な溶出性の減少がみられた.溶出性は灰のガラス化により抑制されるものと考えられた.
  • 笹岡 英司, 田中 一義, 稲美 義彦, 阪田 祐作, 笠岡 成光
    1994 年 20 巻 6 号 p. 880-888
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    固定燃焼発生源から排出されるSOx, NOxは主に湿式脱硫法と乾式接触脱硝法の二法で除去されているが, コスト的により有利でプロセス的に単純な乾式同時脱硫・脱硝法の開発を目的として, SO2, NOの乾式同時接触酸化吸着剤開発のための基礎的検討を行った.すなわち, Al2O3, TiO2, ZrO2, SiO2を調製し, 活性を評価するとともに, これらの酸化物にNaを添加して活性の向上を試みた.実験は常圧流通式の固定層式反応装置を用い, 130℃で行った.入ロガスは主に, SO2 (250ppm), NO (250ppm), O2 (5%), H2O (10.3%), N2 (バランスガス) の混合ガスを用いた.
    得られた主な結果は, (1) Al2O3, TiO2, ZrO2が接触酸化吸着剤として活性を示す. (2) ゼオライトを用いた検討と金属酸化物へのNa添加効果の検討により, 固体塩基が活性に寄与すると考察された. (3) SOxとNOxの吸着サイトは同一と推測され, SOxはNOxに比較し, より安定に吸着する. (4) 同時接触酸化吸着においてはNOの酸化にSO2は不可欠であり, NOもSO2の酸化吸着を促進する.
  • 小林 敬幸, 平野 智庸, 板谷 義紀, 架谷 昌信
    1994 年 20 巻 6 号 p. 889-893
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    熱・光直接エネルギー変換装置としての炭化水素燃焼を用いたCO2ガスダイナミックレーザーの開発を目的として, そのレーザー発振に用いられるCO2の振動回転準位CO2 (001) とCO2 (100) 間の反転分布に与える作動媒体中のH2O濃度の影響について理論的検討を行った.その結果, 超音速ノズルにより作動媒体をマッハ5程度まで加速させた場合, 炭化水素燃料の燃焼による比較的高濃度な水蒸気が共存する条件においてもレーザー発振に必要な反転分布が得られることが示された.
    また, H2O/CO2を一定とした場合の反転分布強度はH2O濃度が0.4で最大値を示し, ピーク位置は上流側へシフトした.さらにN2濃度を一定とした場合, 用いる燃料のC/Hが大きいほど反転分強度は増大し, ピーク位置も同様に上流側へシフトする傾向を得た.しかし, 反転分布が得られる範囲は両場合とも狭くなることが明らかとなった.
  • 小林 敬幸, 板谷 義紀, 架谷 昌信
    1994 年 20 巻 6 号 p. 894-901
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    熱エネルギーを利用するCO2-GDLの開発を目的とし, 本レーザー発振に必要な高温高圧ガスを容易に制御して供給するための燃焼装置として, 火炎が空間を伝播する伝播燃焼器を開発することとした.その第一段階として常圧下における燃焼範囲および火炎伝播特性について実験的検討を行い, 本燃焼方法の基礎特性を検討した.
    その結果, 比較的広い当量比の範囲で伝播燃焼が生じ, 制御可能なターンダウン比として燃焼器出口部開口比1/1で約48, 開口比1/40.3で約40を実現すること, およびその燃焼速度は一般の予混合気の層流燃焼速度に比較して最大で約15倍の燃焼促進されることが明らかとなり, 本燃焼器の高負荷化に対する可能性が示唆された.また, 燃料希薄領域で生じる伝播燃焼の周期および燃焼速度は供給ガスの平均流速で正規化することよって, 当量比に対して一意的に決まることが明らかとなった.
  • 本地 章夫, 佐藤 治, 安川 茂
    1994 年 20 巻 6 号 p. 902-911
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    日本のエネルギーシステムを対象に2030年までの期間に対して, 経済成長率や輸入燃料価格の変化及び二酸化炭素排出に対する課徴金がエネルギー需給構造や二酸化炭素排出にいかなる影響を及ぼすかについて, MARKALモデルを用いて分析した.二酸化炭素に課徴金を課さない場合には, 燃料高価格化により中期的 (2010年頃まで) には, 石油, LNGよりも低価格の石炭の使用量が増えて二酸化炭素排出量が増加するが, しかし長期的 (2030年頃まで) には一般炭の供給量が上限制約に達するため, 原子力, 自然エネルギーの導入が増えて二酸化炭素排出量が減少する.課徴金が課せられると, 化石燃料利用は総じて抑制される.しかし, システムコスト/GDP比はあまり上がらず, また2030年には年間当たりの二酸化炭素排出量は課徴金が課せられない場合の約半分に低減化できることがわかった.このときすでに原子力, 自然エネルギーの導入が進んでいるため, 燃料価格が上昇しても化石燃料供給割合はほとんど変化せず, また二酸化炭素排出量の追加削減はあまり期待できない.課徴金の効果には限界がある.
  • 高尾 彰一, 伊森 義高
    1994 年 20 巻 6 号 p. 912-917
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石炭の風化が高濃度石炭水スラリー (CWM : Coal Water Mixture) の性状に及ほす影響について検討した.風化炭は風化期間の増加にともないCWMの粘度 (1 Pa・S) を基準とした到達濃度が低下し, またCWMを2週間静置した際に生じる沈降物量が増加した.風化によるスラリー化性の低下の原因について検討した結果, 風化期間の増加にともない石炭中の硫化鉄の酸化によって生じる硫酸塩が増加し, CWMが酸性化することが明らかになった.また風化により石炭表面の親水基が増加し, 石炭表面に吸着される水分量が増加する結果, CWMの流動化に寄与する “自由水” の割合が減少することが示唆された.以上のことからCWMの酸性化と石炭表面の親水基の増加が原料石炭の風化に伴うスラリー化性の低下の主な原因と考えられた.
  • 三浦 孝一, 橋本 健治, 前 一広, 井上 真司
    1994 年 20 巻 6 号 p. 918-925
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石炭あるいはバイオマスと廃プラスチックを共熱分解し, それぞれ単独で熱分解した場合よりも転化率, 液収率を増加させる方法について検討した。まず, 石炭あるいはセルロースと各種プラスチック, 架橋ポリエチレン分解Wax, オリノコタール, 石炭液化残渣を単純に混合した試料をCurie-point pyrolyzerを用いて共熱分解した結果, セルロースと架橋ポリエチレン分解Waxの組み合わせの場合のみ, 転化率, 液収率が大幅に増加した。これより, 効率的な共熱分解には, 両者を官能基レベルで緊密に接触させるとともに両者の熱分解速度を一致させることが重要であることが明らかになった.この知見に基づき, 石炭-Wax系で液収率を増加させる新しい共熱分解法として, 石炭を298Kの過酸化水素水で酸化処理し非共有結合サイトとなる酸素官能基を導入したのちWaxで膨潤処理してから熱分解する方法を提出した.酸化改質・膨潤処理した石炭を1037Kで熱分解すると, 全揮発分収率, 液収率は大きく増加した.この増加は, 石炭の架橋形成反応の抑制とWaxから石炭への水素移行の促進によってもたらされることがわかった.
  • 三浦 孝一, 橋本 健治, 前 一広, 脇保 英之
    1994 年 20 巻 6 号 p. 926-933
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    我々は, 最近2種類の石炭の新熱分解法を提出した.一つは, 水素供与性溶剤で膨潤した石炭を不活性雰囲気で迅速熱分解する方法 (method I) で, この方法により全揮発分, タール収率を大幅に増加できた.もう一つの方法は, 溶剤蒸気中で石炭を迅速熱分解する方法 (method II) で, この方法によると二次的気相反応を制御してベンゼン, トルエン, キシレン (BTX) の収率を選択的に増加させることができた.本研究では, 工業的なプロセスで上述の2つの方法を実現する手段として, 石炭-溶剤スラリーの迅速熱分解を提案した.粒子落下型装置を用いて, 豪州褐炭 (Morwell) から調製した石炭-メタノールスラリーを923~1123Kで迅速熱分解した結果, 全揮発分, タール, BTXの収率を大幅に増加することに成功した.1023Kでは, タール収率は23.3kg/100kg-coal, BTX収率は7.8kg/100kg-coalにも達した.次に, メタノールスラリーにテトラリンを添加すると, さらに全揮発分, タール収率が増加することを示した.また, 石炭-水スラリーを本熱分解法の原料として利用する可能性を検討するために, 水を添加したスラリーの熱分解も実施した.
  • 村形 忠弘, 高橋 堅哉, 森下 郁郎, 佐藤 志美雄
    1994 年 20 巻 6 号 p. 934-940
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石炭を効率よく分解する方法として, 電解触媒であるメディエーターを用いた電解酸化を取り上げ, これをアルカリ性の石炭スラリーに適用した.水の分解による酸素の発生を抑えて効率的に石炭のみを酸化分解するためのメディエーターを, 石炭の酸化還元電位及び陽極の酸素発生電位を基に探索し, 酸化還元対Fe (CN) 3-6+e=Fe (CN) 4-6が有効なメディエーターの一つであることを明らかにした.このメディエーターを太平洋炭の電解に適用し, その有効性を示した.さらに, このメディエーターが他の石炭にも使用可能かどうかを, 電解反応を構成する化学反応過程の速度を種々の石炭について調べることにより検討した.その結果, 化学反応過程の速度は炭種に著しく依存し, 概して石炭化度の高いものほど酸化速度が小さいことがわかった.このことはFe (CN) 3-6+e=Fe (CN) 4-6が比較的石炭化度の低い石炭に有効なメディエーターであることを示している.
  • Yuan C. Fu, 石黒 勝也, 秋吉 亮, 山本 光義, 小谷川 毅
    1994 年 20 巻 6 号 p. 941-945
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究では, 合成ガスとスチームを使用して含硫モデル化合物の水素化反応を調べた.
    ジベンゾチオフェンを石油系溶剤とNiMo/Al2O3触媒存在のもとで合成ガスとスチームを使用して高圧下673Kで水素化脱硫反応を行った.水素を使用した場合に比べて活性は低いが, 合成ガスのH2/COモル比が高いほど水素化脱硫反応は進んだ.また水量として, H2O/COモル比が0.3~0.6程度が望ましく, 活発な水性ガス転換反応が同時に起こった.さらに合成ガス-水系の気相水素と水の水素化脱硫反応中における役割を検討するために, H2-CO-D2OとD2-CO-H2Oの系で反応を行い, 重水素の系内における移行を調べた.どの系の反応においてもシクロヘキシルベンゼンとビフェニルの重水素化物が生成された.また溶剤, ガス生成物と未反応物にも重水素が取り込まれていた.H2-CO-D2O系ではD2Oと反応物の水素一重水素交換のほかに, D2OとCOの水性ガス転換反応から活性重水素が生成され, さらに重水素化生成物とHD, D2のガス生成物を生成することがわかった.従って合成ガス-D2O系において水性ガス転換反応によって生成した重水素は, 気相水素とともに水素化脱硫反応と水素一重水素交換反応に寄与しているものと結論された.
  • 中村 育世, 藤元 薫
    1994 年 20 巻 6 号 p. 946-951
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    850℃で炭酸ガスを用いて活性化した褐炭に少量の鉄を担持した触媒は, 反応温度 425~435℃, 水素圧力7.0MPaという温和な条件でも石油系減圧残油の分解に高い活性を示した.活性化の過程で炭素表面に形成されるラジカルが分解反応の活性点であると考えられ, 従来の水素化分解触媒では被毒物質とされるアスファルテン, 含窒素化合物等を高濃度で含有するマヤ減圧残油でさえ100%の減圧残油転化率が得られた.活性化の過程で多量の夕ール, 一酸化炭素の回収が可能であり, シフト反応により一酸化炭素と炭酸ガス源, 水素源とすれば, それぞれを褐炭の活性化, および重質油の分解と分解生成油の水素化精製に利用することが可能であり, 自己完結型の新しい石炭・石油コプロセッシングプロセスを構築することができる.
  • 薄井 洋基, 森田 修一, 佐伯 隆, 辻野 敏男, 池木 弘
    1994 年 20 巻 6 号 p. 952-958
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石炭ガス化プロセスにおける石炭・水混合物 (CWM) の熱的前処理プロセスを開発することを本研究の目的とする.開発されたプロセスにおいてはCWM中の液状水が熱的前処理装置で急速に蒸発され, 熱的前処理装置の出口では石炭微粒子と水蒸気とから成る) 二相流が得られた.この固気混相流は噴流床型石炭ガス化炉に原料として供給できると判断された.また, 簡略化された石炭ガス化プロセスの解析から, 本研究でCWMの熱的前処理プロセスを石炭ガス化プロセスに組み込むことにより冷ガス効率の上昇, 酸素原単位のかなりの向上が期待されることが明らかにされた.以上の結果から必要な熱回収が適切に行われるならば, 本研究で提案されたCWMの熱的前処理プロセスは石炭ガス化効率の上昇に有効であると結論された.
  • 鷹觜 利公, 飯野 雅, 中村 和夫
    1994 年 20 巻 6 号 p. 959-964
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石炭の高度利用技術の開発には石炭構造に関する知見が必要であるとの見地から, コンピュータを用いた石炭三次元構造のシミュレーションを行った.棗庄炭 (中国の瀝青炭) のピリジン可溶成分の構造モデルを構築した.石炭芳香族クラスターをつなぐ結合鎖の長さを変えた構造モデルに対して, 独自のシミュレーション法で密度を推算した.その結果, 結合鎖の長さが2炭素原子の構造モデルの密度値が, 実測値と良く一致することが分かった.またその時の構造モデルが最小エネルギー値を与えることが分かった.
  • 阿尻 雅文, 中田 幸市, 小笠原 聡, 新井 邦夫
    1994 年 20 巻 6 号 p. 965-970
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究では, NiMo-Al2O3触媒を用いたコールタールピッチからの触媒水添脱窒素の反応速度を, 超臨界相 (トルエン/テトラリン) での反応と液相反応 (1-メチルナフタレン/テトラリン) とで比較し, 超臨界相における反応の特性について検討を行った.固体酸触媒を用いた本実験では, どちらの条件下においても塩基性窒素化合物の方が中性窒素化合物より反応性が高かった.
    703K, 15MPa, 触媒粒子径0.11~0.85mmで実験を行ない, この条件下では, 超臨界相, 液相とも粒子内物質移動抵抗が無視できることを確認するとともに, 超臨界相での脱窒素反応は液相反応よりも速いことを示した.
  • 菅原 勝康, 戸塚 康人, 阿部 圭子, 菅原 拓男
    1994 年 20 巻 6 号 p. 971-975
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Kinetic parameters were determined for the release rates of volatile matter and sulfur from coals at temperatures of 1120K to 1550K by using a free-fall pyrolyzer which enabled coal particles to be heated at the rate of 2 × 104Ks-1. The release rate of volatile matter increased with the increase of heating rate while each coal showed a different dependency of ultimate volatile yield on the heating rate and final temperature. The desulfurization extents of organic sulfur were larger than the ultimate volatile yields. The release rate of organic sulfur increased with the increase in heating rate.
  • 堤 敦司, 亀山 寛達, 浅野 隆, 吉田 邦夫, 稲葉 敦, 斎藤 郁夫, 横山 伸也
    1994 年 20 巻 6 号 p. 976-981
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    The liquefaction of low-rank coal with supercritical water has been studied at 400°C and 25.3 MPa using a semi-batch microreactor. Liquid yield up to 41wt% is attained in less than 7 min. Subsequent gasification of residue takes place. 2D-n. m. r. spectral analysis of liquids products in supercritical and the results of mass balance suggests that both hydrolysis and condensation reactions contribute to oxygen removal during supercritical water liquefaction of coal.
feedback
Top