化学工学論文集
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24 巻, 6 号
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  • ゲルユニットの製氷および冷熱取り出し
    本郷 賢, 小林 久晃, 山本 協子, 亀山 秀雄
    1998 年 24 巻 6 号 p. 815-821
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    水蒸気排気式氷蓄熱用に40リットル規模のヒドロゲル氷蓄熱槽を構築した.実用に適したゲルユニットの形状決定を目的に検討を行い次の結果を得た. (1) ゲルユニットの大きさはゲルの蒸発表面積あたりの排気速度が5.7g/ (m2・min) 以下となるように設計すれば, ユニット内温度分布が一定で均一に製氷できる. (2) 直径30mmの円柱状ゲルユニットでは実用速度で均一製氷ができ, 冷熱取り出し速度も速い. (3) 20~40リットルの円柱状及び球状ゲルユニットを充填して行った冷熱取り出しの実験から次のa) ~c) を示した.a) 直径30mm, 長さ250mmの円柱状ゲルユニットでは58%の氷充填率が得られる.b) 2.5~4℃の冷水が取り出せた.さらに槽高さを増すことでより低温の冷水が得られる.c) 冷熱取り出し速度を操作することにより0.58kWの熱需要にも十分に耐えられる.
  • 広 直樹, 名迫 賢二, 松本 和夫, 大隅 正人
    1998 年 24 巻 6 号 p. 822-827
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究では, 水素吸蔵合金冷凍機の環境変化による性能変化を推測できるシミュレーション手法を提案し, 熱源として太陽熱を想定した場合の最適運転法について検討した.その結果, 水素吸蔵合金冷凍機の運転サイクル時間による出力制御法は, 変動する太陽熱源を高効率に利用できることが明らかになった.
  • 松田 晃, 崔 光〓, 川崎 健二, 神里 竜治, 桜井 威, 白石 心判
    1998 年 24 巻 6 号 p. 828-833
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    作動媒体にLiBr水溶液を用いる, 熱を駆動源とする吸収冷凍機, 吸収ピートポンプにおける吸収器, 再生器の作動特性について研究した.装置形状は高さ1m, 外径15.7mmの垂直管外流下液膜式で, 管内に冷却 (加熱) 水を流した.液膜流れは層流から乱流に亘り, 3つの冷却 (加熱) 水流量で実験した.層流域では, 流量の低下に従って流下液の濃度が変化して吸収 (再生) の温度推進力が小さくなり, 吸収 (蒸発) 速度|nA|が減少した.一方, 乱流域では流下液の濃度変化は小さく, 流量が増加すると液膜の熱伝達係数hL, 物質移動係数kLが増加することにより, |nA|は増加した.以前に行った高さ0.58mの結果との比較から, 塔の高さが長くなると低流量域で|nA|が減少するが, 高流量域では高さによる違いはみられなかった.また, 冷却 (加熱) 水流量が小さくなると|nA|は減少した.これらの実験結果は, 流下液膜のhL, kLを用いて気液界面の温度, 濃度を求める計算法による値とよく一致した.
  • 加藤 之貴, 橋本 裕, 吉澤 善男
    1998 年 24 巻 6 号 p. 834-839
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    主に液化天然ガス冷熱の蓄冷を目的として, -20~-50℃で有効な新たな蓄冷媒体の探索を行った.2成分水溶液系について検討を行い, アミン系水溶液に可能性を見出した.固液平衡測定実験から, この溶液群は2段階の凝固過程を持つ共晶性を示した.最も低い温度での蓄冷性能が期待されたメチルアミン水溶液について相変化観察試験を行った.メチルアミン水溶液は第1段階の凝固にて樹枝状デンドライト結晶を形成し流動性の高いスラリー性状を示した.実験結果を基に流動性を伴った潜熱型高密度蓄冷媒体として, この共晶性溶液の可能性を検討した.
  • 加藤 之貴, 高橋 風太, 南木 渉, 吉澤 善男
    1998 年 24 巻 6 号 p. 840-844
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    酸化マグネシウム/水系ケミカルヒートポンプ試験機を用いて, 従来の基礎的研究で繰り返し反応耐久性が確認された反応材料の実用的熱出力性能試験を行った.1.8kgの反応材料を充填した反応器を用い, 構成反応である水酸化マグネシウム脱水反応, 酸化マグネシウム水和反応の繰り返し特性と, 酸化マグネシウム水和反応の高温発熱特性に着目して実験を行った.繰り返し反応耐久性を検討するための実験では同一条件における9回の繰り返し反応実験を行った.その結果, 初期5回程度に活性低下がみられたものの, その後安定した熱出力性能を示した.また需要側熱出力反応である水和反応のより高温での熱出力性能実験からは70, 80℃の飽和水蒸気供給によって, 110,130℃の温熱が得られることが示され, このシステムによる蒸気熱供給の可能性が示された.さらに, これらの結果から本ヒートポンプの実用性能を考察した.
  • 金森 道人, 藤澤 亮, 渡辺 藤雄, 松田 仁樹, 架谷 昌信, 平松 正義
    1998 年 24 巻 6 号 p. 845-850
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    平板状スーパー活性炭 (PSAC) /伝熱板一体型吸着器から成るエタノール冷媒型吸着ヒートポンプ (AHP) の, 吸着器内の熱・物質移動挙動について理論的に検討するとともに, 効率的な運転を行うためのエタノールの吸着操作域とサイクル時間の相関について理論的考察を行った.
    2次元熱移動, ならびに1次元物質移動のモデルに基づき解析した吸着, 再生両過程の温度, および吸着量の変化は, PSACと伝熱板間の接触抵抗を考慮することにより実験結果と良好に一致し, 本吸着器の吸着, 再生の両過程における熱・物質移動挙動が吸着材単粒子における拡散係数, 吸着熱ならびにそのモジュールの熱伝導度などで統一的に表現できた.本解析モデルにより諸稼働温度条件による吸着材単位重量当たりの冷熱出力を推算し, 熱源温度と冷媒蒸発温度が冷熱出力に与える影響を明らかにした.また, 本AHPを最大出力で運転させるための, エタノール蒸気の操作域とサイクル時間の相関を示した.本AHPはシリカゲル/水系AHPと同程度の冷熱出力を有し, 実用域に十分と考えられる0.3kW・kg-1以上の冷凍能力で運転可能であることがわかった.
  • 椎崎 伸二, 永島 郁男, 林谷 正雄
    1998 年 24 巻 6 号 p. 851-855
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    200℃程度の排熱によりメタノールを水素と一酸化炭素に分解し, 熱輸送に利用するシステムにおいて, プレート熱交換器型のメタノール分解反応器に用いるプレートフィンの触媒化について検討した.触媒はアルミニウムの陽極酸化により調製した.基板上にメタノール分解触媒としてPdを直接担持した場合は, アルミナの酸点に起因するジメチルエーテルの副生が多い.シリカによる基板のコーティング, アセトン溶液によるPd担持, あるいはアルカリ金属の添加によりジメチルエーテルの副生を抑制することができ, 特にNaの添加効果が最も高かった.アンモニアの昇温脱離によりこの触媒はアルミナの酸点が抑制されていた.また, 反応速度は金属表面積に比例し, ターンオーバー頻度はPd粒子径には依存しないことが明らかとなった.
  • 小倉 裕直, 藤本 真司, 岩元 博嗣, 鹿毛 浩之, 松野 儀三, 金丸 靖, 灘 秀利, 粟屋 茂
    1998 年 24 巻 6 号 p. 856-861
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    電力の有効利用に関する新たな技術として, 深夜電力を化学蓄熱により蓄え, 昼間に冷・温熱を同時生成してこれを空調用冷房熱源および給湯用熱として回収するCaO/H2O/Ca(OH)2系ケミカルビートポンプ応用装置を開発した.本報では, 本試作機の基本作動特性に加えて, 反応材充填量ならびに熱回収条件の作動特性への影響について検討を行った.
    その結果, 1) 本試作機において, 1.86MJ/kg-CaOの密度で化学蓄熱された電力が, 放熱時には273Kレベルの冷熱ならびに500Kレベルの温熱が生成され, 278Kレベルの冷房空調用出力ならびに350Kレベルの給湯として熱回収されることが確認された.2) 反応材が少なく充填層高が小さくなるほど放熱は促進されるが, 反応材の総合充填量は熱ロス等とのバランスにより決定される必要性が認められた.3) 放熱時には, 熱回収速度の調整により反応材の活性を高め回収量の増大が可能なことがわかった.
  • 藤澤 亮, 渡辺 藤雄, 松田 仁樹, 架谷 昌信
    1998 年 24 巻 6 号 p. 862-867
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    固・液系, 液・液系の2化学物質を混合する際の冷熱発生を利用するケミカルヒートパイプを提案し, 本システムの中心的課題となる熱力学データに基づく2化学物質の最適組み合わせの検討およびその冷熱出力の実験的検討を行った.固・液では尿素/水系および硝酸アンモニウム/水系, 液・液ではイソブタノール/アセトニトリル系, 1ブタノール/アセトニトリル系が大きな冷熱発生量を有する.また, これらの混合によって, 初期温度にかかわらず, 速やかな温度降下を認め, 固・液系で8.16kW・kg-1, 液・液系で0.841kW・kg-1程度の冷熱出力を得た.一部, サイクル運転を想定した固・液系の乾燥および液・液系の蒸留による再生について検討し, いずれも353K程度の熱源による蓄熱が可能であることを認め, 提案のシステムが低温排熱利用型の冷熱蓄熱・輸送技術として機能することを明らかにした.
  • 劉 秋生, 竹村 文男, 矢部 彰, 梶山 士郎
    1998 年 24 巻 6 号 p. 868-873
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    ぎ酸メチルを介在した二段階液相メタノールの分解・合成反応による長距離熱エネルギー輸送システムの研究・開発を紹介した.ぎ酸メチルの水素化によるメタノールの合成反応における触媒内の輸送過程も含めた総括反応速度に対し, プレート式ラネー銅触媒の展開条件の影響を検討するため, オートクレーブ反応装置を用い, 反応によるガスの圧力の減少量を測定し, 総括反応速度を求めた.触媒の展開時間を変えて, 触媒の活性層の厚さの総括反応速度に対する影響を調べた.また, 触媒の内部の表面積, 細孔径, 電子顕微鏡写真などミクロ的な視点からの観察結果も得た.触媒粒子のミクロな観察結果と総括反応速度の実験結果より, 各触媒厚さにおける触媒の粒子径や形状等のミクロな構造に伴う触媒の活性化の変化によって, そして, 触媒内部の輸送過程の影響も加わって, 総括反応速度の最適値が存在することが解った.
  • 渡辺 隆行, 川崎 春夫
    1998 年 24 巻 6 号 p. 874-880
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    パラアルデヒド系ヒートポンプは圧縮式ヒートポンプに化学反応を組み合わせた冷熱発生用のシステムである.本システムはパラアルデヒド (2,4,6-トリメチル-トリオキサン) の解重合反応熱を冷熱源として利用する.このためパラアルデヒドの解重合反応の検討が重要である.本研究では固体酸触媒の酸強度に注目し, パラアルテヒドの解重合反応速度を測定し, パラアルテヒド系ヒートポンプの冷熱発生速度および成績係数 (COP) について検討した.酸強度の影響を調べるためにAmberlyst15Eの酸強度分布を測定し, この結果をもとにAmberlyst15Eの活性サイトの一部を失活させて, パラアルデヒド解重合反応速度を測定した.この結果より, 解重合反応に有効なAmberlyst15Eの酸強度は, -4.3から-7.1の範囲であることがわかった.本ヒートポンプに適用した場合, 適切な酸強度分布を持つ固体酸触媒を用いると, 循環流量1g/sに対してCOPが6および冷熱発生速度が0.9kWの状態で, 触媒量は005kgまで下げることが可能である.
  • 末松 日出雄, 木村 尚史, 新田 友茂
    1998 年 24 巻 6 号 p. 881-887
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    溶媒として重要なアルコールの中で, エタノール~水系の膜分離をパーベーパレーション法 (PV) および蒸気透過法 (VP) で行う際の経済性を比較した.共沸点近傍までは蒸留法によるという考えで, 高濃度域のみを対象とし, 均質セルロース膜で基礎実験データを得た.透過性はPVが, 分離性はVPが優れた.ただし濃度が高くなるにつれて両者のデータは接近した.
    これらのデータをもとに実用規模の3条件についてシミュレーション計算を実施し, 必要膜面積を求めた.高濃度になると急激に必要膜面積が増すこと, またVPの方がPVより膜面積を多く要することなどが明らかになった。PVおよびVPのシステムを構築し, 膜モジュールや他の主要機器のコストを求めて経済性の検討を行った.その結果, 装置コストは膜面積の影響が大きく, PVよりVPの方がコスト高になった.ただし他の研究者による膜データで同様な検討を行うと, 逆の結果となる場合があって, PVとVPの経済性は使用する膜の特性および濃縮域などによって強く影響されることが明らかになった.
    さらに分離係数と透過速度の間にトレードオフ関係のあるデータ群から実用膜を選定する検討を行った結果では, 分離係数は犠牲にしても, 高い透過速度を示す膜の方が必要膜面積が小さくなって望ましいことが示された.
  • 山本 順三, 佐々木 隆志, 花熊 克友, 中西 英二
    1998 年 24 巻 6 号 p. 888-893
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    ニューラルネットワークの実用性を検討するために, 常圧蒸留装置の軽油90%蒸留点, 燃料油のリサーチオクタン価及びナフサスプリッターの引火点を対象としたニューラルネットによるモデル化の検討を行った.使用したニューラルネットワークの種類は, Back Propagationニューラルネットワーク, Radial Basis Functionニューラルネットワーク, および Wave-net である.その結果, 定常状態のデータを用いた静的モデルの作成においては, Radial Basis Function ニューラルネットワークとBack Propagationニューラルネットワークが優れていることがわかった.また, 時系列データを用いた動的モデルの作成においては, Wave-net が優れていることがわかった.
  • 金 偉力, 児玉 昭雄, 後藤 元信, 広瀬 勉
    1998 年 24 巻 6 号 p. 894-900
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    吸着式除湿冷房の実用化を冒的として, 直径1.22mのハニカムローター除湿機を用いた冷房能力20kWのフィールドテスト装置を組み立て, 冷房システムの性能に及ぼす操作条件および外気条件の影響を検討し, 以下の結果を得た.
    1) 冷房成績係数COPを評価する視点から, 最適な除湿機再生用空気温度T8が存在し, 外気温度T1=28.4~32.3℃, 絶対湿度X1=8.8~11.7g/kgの条件において, その温度はT8=65~85℃であることを明らかにした.2) 外気の絶対湿度X1が吸着式除湿冷房システムの性能に影響を与え, 絶対湿度X1の増加に伴い冷房能力CCが低下することを明らかにした.3) 除湿機再生用空気温度T8が100℃以上では, 除湿機を通る再生側と給気側の空気流量比を1/2とすることにより, 冷房成績係数COPを著しく改善できることがわかった.4) 水噴霧式熱交換器を用いることにより冷房システム性能を改善できるとの予測を得た.
  • 喜多 照行, 神谷 秀博, 堀尾 正靱
    1998 年 24 巻 6 号 p. 901-906
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    傾斜分散板を持つ流動層における, 木材 (密度ρs=649kg/m3) やアクリル樹脂球 (密度ρs=1,120kg/m3) などのモテル廃棄物の混合, 偏析特性を調べた.実験に用いた流動層は, 風箱を12分割し, 供給空気量を調整できるようにし, それにより層内に粒子循環流を形成するようにした.モデル廃棄物をバッチ的に投入し, 一定時間流動化したのち流動化を停止し, その分布を調べた.結果, 流動空気の多い箇所と少ない箇所との空塔速度比u0s/u0wを2倍にし, 少ない箇所の空塔速度をu0w=umfにしたとき, モテル廃棄物の層内分散か最もよいことがわかった.
  • 大石 勉, 平岡 節郎, 加藤 禎人, 多田 豊, 全 炯圭, 山口 隆生
    1998 年 24 巻 6 号 p. 907-911
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    バイオリアクターとして実用化されている特殊撹拌翼 EGSTAR (イージースター) の動力特性を実験的に明らかにした.邪魔板無しの所要動力は摩擦係数と修正 Re数を用いたパドル翼に対する亀井ら (1995) の動力相関式の形でまとめることができた.パドル翼に対する翼相似パラメーターγnp0.7b/Hは EGSTARでは1.57γ(d/H)(hd/d)0.59と修正された.邪魔板有りの所要動力は亀井らの動力相関の手法を用いることができた. EGSTAR撹拌翼の完全邪魔板条件とそのときの動力数は次式で示された.
    (BW/D) nb0.8≧0.74 (hd/d) 0.12
    NPmax, ε=3.7 (hd/d) 0.59 (1-ε) -1.1
  • 分散系混合物における分散状態の影響
    佐伯 幸弘, 山田 悦郎
    1998 年 24 巻 6 号 p. 912-917
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    本報は前報に引き継いで, 分散系混合物の粒子の分散状態を定量的に表現し, 温度伝導率に対する影響を明らかにすることを目的とした.
    実験方法は前報と同様な方法で温度伝導率を計測した試料から切片を採取し, その顕微鏡写真を取り, 画像解析を行った.粒子の分散状態はフラクタル次元を用いて評価し, 温度伝導率との関連について検討した.
    フラクタル次元は, 粒子の分散状態を表すには有効な手段であった.また, 温度伝導率への影響は, フラクタル次元の変化は勿論のこと, 母材の温度伝導率αcと分散材の温度伝導率αdとの比 (αd*cd) が1.0との大小によっても大きく変化した.
  • 岩崎 智宏, 小林 万希子, 佐藤 宗武, 土屋 竜太
    1998 年 24 巻 6 号 p. 918-922
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    多孔質粒子と粘性液体からなる湿潤粉体の剪断・摩擦特性を回転円錐ローター貫入法により評価し, 見かけの粘性係数ηaを用いて表した.また, 測定された剪断応力にRumpfの式を適用して, 粒子接触点に働く剪断力Hを推定した.ηaおよびHの含液比と粉体層空隙率による変化傾向から, 湿潤粉体を含液比によって3つの状態に分類した.領域Iでは液体が多孔質粒子内部に吸収されて粒子表面状態が変化しないために, ηaおよびHは乾燥粉体と同様の値を示し, 含液比による変化は見られなかった.領域IIでは, 含液比の増加とともにpendular状態からfunicular状態に変化し, ηaが上昇した.また, Hも含液比とともに増加したが空隙率による変化は見られなかった.領域IIIでは, capillary状態となり, 含液比の増加とともにηaおよびHは減少し, Hは空隙率の低下とともに増加した.
  • 後藤 宗治, 畑中 千秋, 原口 俊秀
    1998 年 24 巻 6 号 p. 923-927
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Candida cylindrasea 起源のリパーゼをN-イソプロピルアクリルアミドとN, N′メチレンビスアクリルアミドの共重合によって, ゲルビーズ中に包括固定化する場合のリパーゼ固定化の最適条件および得られる固定化リパーゼの反応特性について検討した.
    固定化リパーゼと遊離リパーゼを用いて, グリセリンとオレイン酸のエステル合成反応を37℃で行った.その結果, リパーゼを樹脂内に包括固定化すると, モノオレイン生成の選択率が遊離のリパーゼと比較して, 著しく増加することが明らかとなった.
    また, 本樹脂は下限臨界共溶温度 (LCST) (32℃~37℃) を有する感温性ポリマーであり, LCST以上で収縮, LCST以下で膨潤を可逆的に繰り返すことが明らかとなった.この特性を利用して, 37℃と5℃の間で温度を変化させてエステル合成反応を行ったところ, 樹脂の膨潤収縮により樹脂内への基質の物質移動が促進されることがわかった.
  • 福井 国博, 水田 寿雄, 柴 満也, 尹 治文, 吉田 英人
    1998 年 24 巻 6 号 p. 928-933
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    沈降天秤法による粒度分布測定のデータ処理に非線形反復法の一種であるTwomey法を利用することで算出精度の向上並びに測定時間の短縮が可能であるかを検討した.
    その結果, 完全な沈降曲線から粒度分布を算出する場合, 収束計算に使用する応答関数の指数は0.7~2が適当である.一方, 測定時間を短縮する場合, 指数を0.3以下とすることで算出精度を向上できる場合があることが分かった.また, 単峰性分布の場合, 中位径程度の粒子が完全沈降するのに要する時間を測定時間として確保すれば, 実用上十分な粒度分布が得られることが明らかとなった.上述の知見を基に, 沈降天秤法により, ガラスビーズ及びフライアッシュの粒度分布を測定した結果, 既存の測定装置による測定結果と同等の粒度分布が得られた.さらに, 測定時間を短縮した場合も実用上問題ない程度の差違しか認められなかった.
  • 小関 康雄, 丸橋 文雄, 宮寺 博
    1998 年 24 巻 6 号 p. 934-939
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    家電品からOA機器まで広く使えるLCA計算方法を開発するため, 実装回路基板の製造プロセスをモデル化し, 基板1kg当たりの熱量 : 228Mcal/kg, CO2 : 15.979kg-C/kg等の製造原単位を作成した.それを用いて, ラップトップ型パーソナルコンピュータの性能向上 (5倍高速化) と小型化 (47%軽量化) 及び省エネ化 (44%省電力化) のカテゴリー別 (資源枯渇, 温暖化, 酸性雨, 大気汚染) 環境負荷への影響を試算し, 製品当たり環境負荷は資源枯渇で38%減, 機能単位環境負荷は全カテゴリーで約87%減, さらには, 環境効率は全カテゴリーで約8倍に増大 (ファクター値 : 8) することを把握した.
  • 鵜飼 健司, 佐藤 晴子, 豊倉 賢
    1998 年 24 巻 6 号 p. 940-944
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    炭酸カルシウム中間体とガラスビーズ撹拌混合ベッドからのカルサイトの晶析現象について, 回分式晶析装置を用いて研究した.1.0×105個のガラスビーズを添加した実験で得られた結果より, 平均粒径105,155μmの小粒径のガラスビーズを添加した場合には, 炭酸カルシウム中間体はカルサイトとバテライトの混合物に転移したが, 平均粒径390,575及び791μmのガラスビーズを添加した場合においてカルサイトが選択的に生成した.カルサイトの生成個数は, ガラスビーズ平均粒径の3乗に比例して増加し, ガラスビーズが晶析槽壁などへ衝突することによって発生した衝突エネルギーが中間体からカルサイトへの転移を促進しているものと考えた.また, カルサイトの生成数はビーズ添加個数の2/3乗に比例し, 撹拌回転数の影響を受けた.炭酸カルシウム中間体の平衡濃度は3×10-3mol/lで, 中間体が十分存在している範囲において, カルサイトの成長速度は0.9μm/minであった.
  • 小林 信介, 長谷川 竜也, 吉野 彰享, 山崎 量平, 森 滋勝, 出口 清一, 藤間 幸久
    1998 年 24 巻 6 号 p. 945-952
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    流動層の軸方向および水平方向の粒子混合特性を調べるため, 矩形流動層を用いてトレーサー粒子の濃度変化の測定をおこなった.実験は, 粒子挙動が二次元とみなせる流動層を用い, 壁面をCCDカメラで撮影し, その画像をイメージデジタイザーで解析することにより流動層内粒子混合の測定を行った.また, 粒子径の混合に及ぼす影響について調べるため, 2種類の粒子径を選択し実験を行った.その結果, 流動化直後層内に大きな渦状の粒子循環流の形成がみられ, 層内での粒子混合は, 層壁近傍においてその層内粒子大循環流の影響を大きく受けていることがわかった.また, 層中心部および層下部においては気泡の移動に伴う混合が支配的であることがわかった.
  • 門叶 秀樹, 栗山 雅文, 原田 英二, 今野 宏卓
    1998 年 24 巻 6 号 p. 953-957
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    空気中において, 水平上向き加熱円板の上方に狭い間隙を保って室温の垂直円柱を設け, この円柱底面と平板との間隙を種々変化させて, 狭い間隙の開空間内の自然対流熱伝達について実験的に考察した.
    間隙およびレイリー数を種々変化させて加熱面の平均熱伝達係数を測定し, 無限平行2平板間に関して提出されている熱伝達係数の相関式との比較を行った.
    加熱面上方のフローパターンの可視化実験も行い, フローパターンと熱伝達係数の関係から, 狭い間隙内における熱移動機構を明らかにした.また, 比較的広い間隙寸法範囲に適用可能な熱伝達係数の相関式を提案した.
  • 荻野 文丸, 稲室 隆二, 鈴木 徹, 大西 康博, 首藤 淳, 宮原 隆之
    1998 年 24 巻 6 号 p. 958-965
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    固体粒子と管の直径比が大きい固液混相流の圧力損失, 熱伝達および管内の粒子数密度分布について実験的に調べた.固体粒子としては流体と密度が等しい球状粒子を用いた.まず, 流動状態を可視化して管内の粒子分布を調べた結果, レイノルズ数が小さく, 粒子の体積流量率が小さいときに, いわゆるpinch効果が確認された.レイノルズ数の増加とともにpinch効果は崩れ, 管内の粒子分布は管断面全域に及ぶ.さらにpinch効果が起こる条件では, 粒子の平衡体置はレイノルズ数の増加とともに管壁に近付き, 粒子と管の直径比の増加とともに管軸に近付くことがわかった.混相流とそれと同流量の単相流の摩擦係数の比はレイノルズ数の増加とともに緩やかに増加し, あるレイノルズ数を超えると急激に増加する.また摩擦係数の比は粒子体積流量率の増加とともに増加し, 粒子と管の直径比の増加とともに減少する。混相流と単相流の熱伝達係数の比も摩擦係数と同様の傾向を示す.
  • 大平 勇一, 今井 敬, 高橋 洋志, 安藤 公二
    1998 年 24 巻 6 号 p. 966-968
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    高粘性液体としてCMC水溶液を用い, 二重管型気泡塔の環状部における局所ガスホールドアップを探針電極法で測定した.CMC濃度の増加に伴い, 局所ガスホールドアップは小さくなった.前報の水-空気系の環状部最大ガスホールドアップ推算式にCMC水溶液と水の相対粘度項を組み込むことにより, 水-空気系のガスホールドアップ分布推算式がCMC水溶液-空気系へ適用できることを測定結果との比較から明らかにした.
  • 杉田 創, 坂東 芳行, 櫻井 幸夫, 中村 正秋
    1998 年 24 巻 6 号 p. 969-971
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    実際の地熱水の塩成分データに基づいて調製したモデル地熱水を用いて, シリカゲルシード添加法によるシリカ除去に及ぼす溶存塩の影響について検討した.
    カリウムおよびナトリウムイオンはシリカの過飽和度を増大させる塩析効果により, カルシウムおよび鉄イオンはこの塩析効果に加えてケイ酸塩の生成により, それぞれシリカ除去を促進する.一方, ほう酸イオンはシリカ除去にほとんど影響を及ぼさない.
  • 川崎 博幸, 宮越 芳枝, 熊沢 英博
    1998 年 24 巻 6 号 p. 972-974
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    ドラフトチューブ付き気泡塔において, 液混合時間に及ぼすダウンカマー内に設けた充填層高さの影響をガス流量と充填層高さを変化させ, ドラフトチューブ内側と環状部をそれぞれライザーとする操作条件下で実験的に検討した.
    2種類のガスの吹き込み方法において, 充填層がある場合の液混合時間はガス空塔速度の増加とともに減少し, 充填層高さの増大につれて増加する.これらの場合の液混合時間の増加割合はガス空塔速度の1/3乗と充填層高さの1/4乗に比例する関係として整理された.
  • 安田 啓司, 大曽根 康裕, 坂東 芳行, 中村 正秋
    1998 年 24 巻 6 号 p. 975-976
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    W/Oエマルション形成時におけるA重油, C重油の含水率および粘性の変化について実験的に検討した.A重油はW/Oエマルションをほとんど形成しなかった.C重油の場合, 蒸留水に比べて人工海水との方が, エマルション化が遅く, 同一の振とう時間におけるエマルションの含水率は低かった.本実験条件においては, 水相の種類に関わらず, C重油エマルションの含水率と粘性の関係はMooney式に従った.
  • 大石 勉, 平岡 節郎, 加藤 禎人, 多田 豊, 伊東 由浩, 山口 隆生
    1998 年 24 巻 6 号 p. 977-979
    発行日: 1998/11/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    バイオリアクターとして実用化されているEGSTAR撹拌翼の形状・寸法 (開孔率, 上下取付翼の羽根幅, ドラフトチューブ高さ) を変化させて気液物質移動容量係数kLαを測定し, 翼形状・寸法が気液物質移動容量係数に与える影響について, 以下の知見を得た.
    単位体積当たりの撹拌所要動力が0.5~4.0kW/m3の範囲において, 気液物質移動容量係数は, EGSTAR撹拌翼の開孔率や上下取付翼の羽根幅によらず, 単位体積当たりの撹拌所要動力のみに依存した.また, ドラフトチューブ高さの低いEGSTAR撹拌翼ほど通気支配から撹拌支配へ遷移する点が低動力側にシフトした.
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