化学工学論文集
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24 巻, 3 号
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  • 花熊 克友
    1998 年 24 巻 3 号 p. 357-364
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    本論文では, 化学プラントにおける制御系設計のための非線形モデリングの重要性を述べ, 実用化を進めてきた非線形モデリングの実施例 (物理モデリング, NARMAXモデルを用いた時系列モデリング, ニューラルネットワークを用いたモデリング, カオス的時系列解析・離散化ボルテラ級数モデル・離散ラゲールフィルタと拡張ウイナー級数モデルを用いたモデリング) を紹介する.さらに, 実用化に当たっての課題を述べる.
  • 伊地知 和也, 上村 芳三, 吉澤 秀和, 幡手 泰雄, 吉田 邦夫
    1998 年 24 巻 3 号 p. 365-369
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Geldartの粒子分類法によるC粒子は, 通常の流動層による流動化では付着性が強く, チャンネリング状態が発生し, 良好な流動状態が得られない.本研究においては, 層底部に縮流ノズルを備えたドラフトチューブ付き噴流層を用いて, 縮流ノズルのインジェクション効果を利用して微粒子の噴流流動化を試みた.
    その結果, 縮流ノズルによる減圧効果のために, 噴流層の環状部に下向きガス流れが発生し, そのガス流れが微粒子のエントレインメント区間への供給を促進するため, 微粒子を噴流流動化できることがわかった.実験に使用した粒子は, 平均径7.9μmおよび14μmのアルミナ粒子である.さらに, ドラフトチューブ付き噴流層の特性として, 粒子輸送量, 環状部ガス流量, チューブ内圧力損失を測定し, これらと全ガス流量, 粒子充填層高, チューブ距離およびチューブ径との依存関係を実験的に明らかにした.
  • 長谷川 正巳, 豊倉 賢
    1998 年 24 巻 3 号 p. 370-373
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    既知塩化ナトリウム濃度の未飽和かん水を塩化ナトリウム系流動層型晶析装置の溢流溶液中に添加して未飽和状態とし, 未飽和度および撹拌時間を操作条件とした場合の溶液中の微結晶の変化を検討した.溶液を静置して過飽和状態に24時間保ち, 観察可能な大きさまで成長させて測定した微結晶数は, 未飽和度と撹拌時間の積で相関され, 溶解速度係数が得られた.また, 製品結晶粒径, 生産速度, 結晶懸濁密度, 平均核化速度および平均成長速度を関連づけた無次元晶析装置操作設計線図を提出し, 微結晶の部分溶解操作によって所望粒径の製品結晶を生産する場合の工業的な適用方法を検討した.
  • 柴田 泰典, 小笹 和夫, 廿楽 和夫, 泉 秀俊
    1998 年 24 巻 3 号 p. 374-379
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石炭灰の大量利用技術を開発するために, 粉末状の石炭灰を蒸気処理などにより粒状に固化し, 路盤材とするシステムに関して研究し, 以下の必要条件を見いだした.
    (1) 粒状固化体の製造工程を, 石炭灰の塑性限界付近での水による混練工程, 低圧成形工程, 蒸気養生工程および破砕工程より構成する.
    (2) 品質の安定した路盤材を量産するために, 石炭灰のCaO含有量, 未燃カーボン含有量が所定範囲となるようにボイラ運転条件を制御する.さらに, 混練物状態を石炭灰性状によらず一定とするために, 混練時の混練機消費動力の大きさ, 時間変化幅に基づいて混練機への注水量を制御する.また, 成形体温度を一定とするために, プラント設置場所の外気温の変化に応じて混練水温度を制御する.
  • 志澤 達司
    1998 年 24 巻 3 号 p. 380-384
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    樹脂製造プロセスのオンライン・ペレット外観検査/不良品自動選別制御システムを開発した.本外観検査システムは画像処理技術を活用したもので, 50~100μm程度の樹脂ペレットの異物を, サンプリングから検査, 検査済の試料の排出処理まで自動で行い, その測定結果により, 製品サイロ又は, 不良品サイロへの自動切り換え制御を実行する.
    本システムの開発により, 品質の安定・製造装置の安定運転・省力化の向上を図ることができた.
  • 山崎 浩, 矢沢 久豊, 平田 雄志
    1998 年 24 巻 3 号 p. 385-391
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    凍結濃縮装置に使用する掻面型製氷装置の内壁に形成する氷晶層の硬さについてスクレーパーに働く掻き取りトルクをもとに解析を行った.スクレーパーが氷晶層を最初に掻き取る際に生じる初期上昇トルク値はスクレーパーの回転数が高くなるに伴い, また, 氷晶中に取り込まれる溶質濃度が高くなるに伴い減少した.その後, 連続的に掻き取る際のトルク変化は, 2種類のパターンに大別された.水とセファロスポリンCNa (CCNa) 水溶液の場合, 経時的にトルクは増加し, 最終的には掻き取り不能になった.また, 塩化ナトリウム (NaCl), グルコース, イソプロピルアルコール (IPA) 水溶液は経時的なトルク変化はほとんどなく容易に掻き取ることができた.前者は硬い氷 (hard ice) であり, 後者は軟らかい氷 (Soft ice) である.しかしながら, 硬い氷晶層を形成するCCNa溶液にIPAを添加すると氷晶層の硬さは一変し, 脆弱な氷晶層に変化することが確認された.熱分析結果から氷晶層の硬さは氷晶層の組成に起因することが示唆された.
  • 大石 勉, 平岡 節郎, 加藤 禎人, 多田 豊, 矢野 仁, 山口 隆生
    1998 年 24 巻 3 号 p. 392-396
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    バイオリアクターとして実用化されているEGSTAR (イージースター) 撹拌翼を用いて固液間物質移動係数を測定し, 種々の撹拌翼の特性との比較を行った結果, 以下の知見を得た.浮遊化限界回転数以上の操作条件では, 粒子分散系における物質移動係数は, EGSTAR撹拌翼も含め, 翼の幾何形状によらず, 単位体積あたりの撹拌所要動力のみに依存した.また, プロペラやファウドラーといつた液循環型の翼は浮遊化限界動力が低くなった.マックスブレンド翼は最も低い回転数で大きな物質移動係数が得られた.粒子をEGSTAR内に固定した場合の物質移動係数は単位体積あたりの撹拌所要動力依存性に変化が見られないことから, 低い動力域において, 他の翼より, 大きな物質移動係数が得られた.
  • 萩田 忠弘, 小野 輝生, 古川 雄士, 吉澤 秀和, 上村 芳三, 幡手 泰雄
    1998 年 24 巻 3 号 p. 397-401
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    現在精密金属部品の製造に利用されているスプレー式エッチングの特性を調べるために, ICリードフレームの材料である42アロイ (42%Ni/Fe合金) を用いて塩化第二鉄水溶液によるスプレー式エッチング試験を行った.基本的な操作条件である塩化第二鉄濃度, スプレー圧力, 液温度を変化させ, エッチング速度及び加工精度の指標であるエッチングファクターに及ぼすこれらの影響を検討した.エッチング速度は塩化第二鉄濃度に対して山型の依存性を示し, また高濃度であるほど平滑面が得られることがわかった.スプレー圧力はエッチングファクターに対して効果が高く, 圧力増加に伴う液打力の効果によってエッチングファクターは向上した.エッチング速度の活性化エネルギーはパターン径が250μm時で29kJ/molであった.
  • 瀬戸 孝俊, 平田 賢太郎, 小田切 正樹, 今成 真
    1998 年 24 巻 3 号 p. 402-406
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    エチレングリコールから脱水素反応・グリコールアルデヒド・Strecker反応を経るセリンプロセスの中で重要なセリンのNa塩 (SerNa) とエチレングリコール (EG) の分離を, 擬似移動層を用いて検討した.強酸型イオン交換樹脂のNa置換型を吸着剤とした4ゾーン型擬似移動層の作動により, EGとSerNaが比較的高濃度で分離されることが判明した.使用した擬似移動層はRaffinate 2を設けた4ゾーン型であり, このタイプにつき, 吸脱着速度及び移動速度に関する定常状態近似の式の誘導により実際の分離性がシミュレートされた.4ゾーン型での分離の必要条件としてβ値の不等式が提出されているが, その条件は本Raffinate 2タイプの4ゾーン型にも概ね適用が可能であった.
  • 篠原 邦夫, 上野 勝也, 内山 智幸
    1998 年 24 巻 3 号 p. 407-412
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    被覆型複合微粒子の物理化学的性質の一つとして, 粉体層の濡れの測定を行った.試料粒子は高速気流中衝撃法によって複合化処理を行った.濡れの評価のために, 複合微粒子の粉体層への水の毛細管上昇による重量増加を, 電子天秤を用いて連続測定した.得られたデータは, ウォシュバーンの浸透高さと重量の関係式に基づいて整理した.
    その結果, 粉体充填層の濡れ易さは, 被覆する粒子が親水性の場合, 複合微粒子の被覆率とともに増大し, 埋め込み度合いの増大により低下する.さらに空隙率とともにその濡れ易さは増大し, 有効浸透断面積は減少することがわかった.
  • 野田 多美夫
    1998 年 24 巻 3 号 p. 413-417
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    鉄化合物によるメチルメルカプタンの除去容量と除去機構について研究し, 鉄化合物のみではメチルメルカプタンの除去は起こらず, 硫黄の共存が必要であることを見出した.これは, メチルメルカプタンとαオキシ水酸化鉄の化学反応によって, CH3SとHとに分解し, 更にCH3Sは硫黄と化学結合して除去され, Hは酸化して水になることによって起こることを検証した.続いて, その知見を応用し, 鉄多孔体にLアスコルビン酸, 硫酸第一鉄, 水酸化カルシウムの混合水溶液を添着してオキシ水酸化鉄を生成させ, 更にそれを硫化水素と反応させて脱臭フィルターを製作した.そのメチルメルカプタン除去性能を活性炭と比較した結果, (1) 鉄多孔体製脱臭フィルターのメチルメルカプタン除去容量は活性炭のそれより小さい.また, (2) 鉄多孔体製脱臭フィルターでは, ジメチルジスルフィドは除去できない.ことが明らかになった.
  • 種田 大介, 高萩 仁, 青鹿 松一, 中川 紳好, 加藤 邦夫
    1998 年 24 巻 3 号 p. 418-424
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    粉粒流動層の微粒子飛び出し現象の特性, 並びに飛び出しに及ぼす操作条件の影響を明らかにするため, 媒体粒子として砂 (dp=550,780,920μm), 活性アルミナ粒子 (dp=550,720μm), 微粒子として水酸化アルミニウム (dp=3, 15μm) を用いて実験を行った.媒体粒子を流動化させているところへ微粒子を連続供給し, 定常状態下で実験を行った結果, 微粒子飛び出し速度定数は, 流動化ガス速度が早くなるほど, あるいは媒体粒子径が小さくなるほど, 大きくなったものの, 微粒子ホールドアップ量には影響されなかった.また, 平均微粒子径が小さい方が微粒子飛び出し速度定数は小さかった.粒度分布として1~70μm, 平均粒径15μmの水酸化アルミニウムを供給し, ガス流速0.8m/sで操作した時, 粒径30μm以上の微粒子が選択的に媒体粒子層内から飛び出し, 8μm以下の微粒子が層内にホールドされやすい事が分かった.この現象は, 微粒子付着力と媒体粒子の運動に起因する粒子圧力との関係で説明できることが示唆された.
  • 加納 学, 宮崎 浩一, 長谷部 伸治, 橋本 伊織
    1998 年 24 巻 3 号 p. 425-430
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    蒸留塔の製品組成制御を実現する方法として, プロセス変数から計算される組成推定値を制御に用いる方法が考えられる.本研究では多成分蒸留塔を対象とし, 塔内温度測定値に基づく組成推定モデルを Partial Least Squares regressionを利用して構築した.定常データおよび時系列データを用いて構築した組成推定モデルを比較した結果, 時系列デ-タを用いることによって推定精度を大幅に改善できることを示した.また, プロセスの動特性をモデルに組み込む方法として, 過去のデータの利用が有効であることを示した.さらに, 構築した組成推定モデルの組成制御への適用について検討し, 温度制御と組成制御を組み合わせたカスケード制御構造が優れていることをシミュレーションにより確認した.
  • 高島 史郎, 片山 二郎, 小幡 英二, 高橋 洋志
    1998 年 24 巻 3 号 p. 431-436
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    高さ4m, 内径0.1mの循環流動層内に設置した水平単-伝熱棒周りの熱伝達特性を高速流動状態で実験的に研究した.気体-固体サスペンションとして空気とFCC触媒粒子が用いられた.伝熱棒は直径10mmの木製の棒に厚さ10μmのニクロム箔を貼り電気的に加熱した.粒子の挙動を理解するために伝熱棒を模擬したガラス管を設置し, このガラス管表面の粒子挙動を管内部より工業用内視鏡, CCDカメラで観察した.実験結果は管周りの熱伝達が層の充愼率および管下面への粒子衝突, 管上面での堆積層の形成, コア・アニュラス流れに起因する壁面下降流など, 伝熱管表面の粒子運動に影響されることを示した.粒子の運動形態と局所熱伝達率の相互関係を実験結果に基づいて説明した.
  • 丹羽 忠夫, 片岡 美穂, 西谷 紘一
    1998 年 24 巻 3 号 p. 437-444
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    柔軟で効率的な多品種少量生産の達成が重要になってきている化学製品の製造において, 装置設計中心の単位操作を運転操作の立場から全面的に見直し, 操作タスクのシーケンスとしてバッチプロセスを再構成することによって, 移動槽式バッチプロセスの考え方が生まれた.各操作タスクを実行するステーションへ容器 (槽) を移動させることによって, 製品製造の各工程を順次実行するこの方式は, 次世代の生産方式として期待されている.本論文では, まずこの方式の基本概念とシステム要素について整理し考察した.つづいて各設備の台数やレイアウト, 移動槽の移動ルール, ジョブのスケジューリングなど多くの設計要素を含むこのプラントのシステム解析のためのモデリング手法について検討し, 具体的に設計案が与えられた場合のシミュレーションの方法を提案した.またプラントの設計を支援することを目指したシミュレーション環境を開発した.
  • 谷口 泉, 川畑 順一郎, 浅野 康一
    1998 年 24 巻 3 号 p. 445-450
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    拡散吸い込み・吹き出しを伴う2成分溶液からなる単一液滴の物質移動に関する数値解析を有限差分法を用いてレイノルズ数Rep=1~200, シュミット数ScAC=0.5~2.0, ScBC=0.5~2.0および吸い込み・吹き出し比φ=-0.2~0.2の範囲で行った.拡散吸い込み・吹き出しを伴う2成分溶液からなる単一液滴の拡散流束はレイノルズ数Rep, シュミット数ScAC, ScBCおよび吸い込み・吹き出し比φにより影響を受ける.3成分系トランスファーナンバーを用いて, 2成分溶液からなる単一液滴の拡散流束に対する拡散吸い込み・吹き出しの影響を表す新しい相関式を提案した.
  • 佐々木 尚史, 山本 重彦, 橋本 伊織
    1998 年 24 巻 3 号 p. 451-457
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    抄紙機の坪量プロファイル制御において最も重要なチューニング項目である位置対応を同定するためのステップ応答テストを, 操業に支障を与えることなく, 自動的に行うアルゴリズムを開発し, 実際にその有効性を確認した.このアルゴリズムは次の2つの部分から成る.すなわち, 側抑制を持つニューラルネットワークを用いて操作するスライスボルトとその操作方向を決定する部分と, ウェーブレット変換を用いてステップ応答の操作量を最適化する部分とである.
    このアルゴリズムを用いて実際にステップ応答テストを行った実例を紹介し, 本アルゴリズムの有効性を示す.
  • 小熊 一郎, 中村 昌則, 斎藤 恭一, 杉田 和之, 清原 恵, 須郷 高信
    1998 年 24 巻 3 号 p. 458-461
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    放射線グラフト重合法を適用して, ポリエチレン製多孔性中空糸膜にエポキシ基を有するビニルモノマー (グリシジルメタクリレート) をグラフト重合した.引き続き, 膜の孔表面に付与されたグラフト高分子鎖中のエポキシ基をジエチルアミンとの反応によってジエチルアミノ (DEA) 基に変換した.得られた膜にウシ血清アルブミン (BSA) 溶液を透過させることによって, BSAをイオン交換作用により多層で吸着固定した.その結果, 最大で単層吸着量の約6倍までBSAが積層した.BSA多層吸着多孔性膜を固定相とし, Tris-HCl緩衝液を移動相としてDL-トリプトファン (Trp) を注入した.BSAの積層数が大きい膜ほど, D-Trpに対するL-Trpの保持時間位比で定義される分離係数は増加した.また, リガンドであるBSAへのTrp位拡散移動抵抗が無視できるため, 分離係数は流量に依らず一定であった.
  • 町田 智, 秋山 友宏, 八木 順一郎
    1998 年 24 巻 3 号 p. 462-470
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    メタノールはガソリン用添加剤の原料として需要が伸びている.またそれ自身もクリーンな燃料であり, 将来の石油代替燃料としても注目されていることから, 今後位大量需要が予想される.
    本研究では, エネルギーの質の指標であるエクセルギーを用いて, メタノール合成システムのエクセルギー消費低減を目的としてシステムの評価を行った.その結果原料であるメタンの水蒸気改質プロセスでエクセルギーの消費量は全体位7割を占め, 効率はシステム内の全プロセスの中で最も低いことが明らかになった.この結果はメタノール合成のためのエクセルギー消費低減には天然ガスの改質プロセスの改善が最も有効であることを示した.さらに現行システムの全エクセルギー消費量は, 直接合成の理論最小エクセルギー消費量のおよそ44倍, 伝統的な水蒸気改質を含む二段階反応システムのおよそ4.5倍に相当し, エクセルギー消費改善の余地を定量的にはじめて明らかにした.
  • 渡邉 教博
    1998 年 24 巻 3 号 p. 471-475
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    ごみ焼却炉では蒸気流量を一定値の近傍に保つためにリレーフィードバック制御がおこなわれている.この制御システムでは分岐やカオス的な現象が現れることがある.本論文ではごみ燃焼制御系のモデルを用いた数値シミュレーションをおこなって, これらの現象がごみの燃焼に起因するものではなく矩形波入力をヒステリシスのあるリレーによってオンオフ制御する制御システムの構造によるものであることが確かめられている.また, このシステムにおいて蒸気発生量が最大値をとるのは1周期状態のときであったが, たとえシステムがカオス状態となっていてもその値がかなり高い場合もあることも示されている.
  • 高見 均, 野田 直希, 板谷 義紀, 松田 仁樹, 架谷 昌信
    1998 年 24 巻 3 号 p. 476-480
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    灯油炊き多孔質セラミックスバーナーはターンダウン比が高い特長を有するが, 高負荷燃焼時にNOxが比較的高濃度で排出される問題があった.本研究では, この点を改善するために空気の二段供給を行い, 灯油燃焼特性とNOx排出特性に及ぼす影響について実験的検討を行った.
    本実験の条件では, 希薄可燃限界は当量比0.2付近にあり, 燃焼負荷が2.0kWから少なくとも11.5kWにおいて安定に燃焼することから, ターンダウン比は5.8以上となることが分かった.全空気量に対する一次空気量の割合は, 炉内温度分布ばかりでなく, すすの形成, 炉出口におけるCOおよびNOx濃度に大きく影響を与えることから, 本バーナーにおける重要な操作要因となる.空気を二段階に吹き込み, 全空気量に対する一次空気量の割合を最適化することによって, NOx排出濃度は単段燃焼に比べ約1/4に抑制された.
  • 藤原 匡裕, 福井 啓介, 廣田 昇治
    1998 年 24 巻 3 号 p. 481-485
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    壁面温度が水平横方向に急変する, 矩形断面を有する水平平行平板ダクト内において発生する縦渦列および横渦列に及ぼす重力流の影響を, 流れの可視化実験およびダクト内温度変動測定実験により考察した.流れ場は横渦列のみ存在する流れ場, 横渦列と縦渦列が共存する流れ場および縦渦列のみ存在する流れ場の計3種類に分類されることが明らかとなった.これらの流れ場は重力流の強さ, その方向およびRe数をパラメーターとして, 系統的に分類できることを明らかにした.また, 重力流が低Re数域において横渦列と縦渦列が共存する流れ場を助長することを明らかにした.
  • 斎藤 昇, 横田 政晶, 佐藤 晢, 久保田 徳昭
    1998 年 24 巻 3 号 p. 486-490
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    フローセル底面に固定した塩化ナトリウム種結晶の成長の様子を光学顕微鏡を用いて観察した.溶液に乗って流れてきた微結晶 (数μm~50μm) が種結晶に付着すると, 種結晶の表面にマクロステップが現れ, それが移動する際に合体し, この合体したマクロステップを後続のマクロステップが追い越すとき液胞が形成された.この液胞の形成は微結晶の付着した結晶面以外の面にも見られた.微結晶付着に伴って生ずる結晶内応力によりある種の転位が発生し, そこから分子レベルのステップが多数発生しそれがバンチングによりマクロステップになると推定した.微結晶の付着に伴う成長速度の一時的増加も見られたが, これも分子レベルのステップ数の増加で説明した.微結晶の付着による液胞の形成は結晶純度の低下に影響する問題であり, 工業的に重要な現象であることを指摘した.
  • 脇阪 三郎, 関口 勲
    1998 年 24 巻 3 号 p. 491-496
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    針入度グレード 60-80, 80-100 および 150-200 のアスファルト18試料について, 表面張力を測定しその針入度グレード間の違いを検討した.次に各アスファルトの四成分分析を行い, 全表面エネルギー (Hs) との関係を統計解析した.その結果, 針入度グレードの標準偏差は 60-80 が最大で 80-100,150-200 は近似していた.また各アスファルト四成分とHsの関係を単回帰分析で求めた.その結果, Hsとの相関性はアスファルテンが最大で, 他の三成分との相関性は少なかった.次に四成分全体とHsの重回帰分析結果は, 相関性はみられたがアスファルテンの影響が強くみられた.そこで6種類のアスファルトからアスファルテンを分離した, マルテンの表面張力と比較した.その結果, アスファルトに比較してマルテンの表面張力は, 全体的に低下した.またアスファルト中のアスファルテン濃度が13~14%以上に成るとアスファルトの表面張力に影響が現れた.
  • 秋葉 巌, 宮本 真二, 舛岡 弘勝
    1998 年 24 巻 3 号 p. 497-502
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフを用いて3種類の結晶性アイソタクチックポリプロピレン (IPP) 粉体の結晶化度および溶質のヘンリー定数を測定した.結晶化度は温度の上昇に伴い徐々に低下し, 融点近傍で急激に零になった.結晶化度の温度依存性は単純な式で相関できた.
    さらに, IPP粉体に対する5種類の非極性溶質および4種類の極性溶質のヘンリー定数をIPPの融点をはさむ広い温度範囲で測定した.非晶部に対するヘンリー定数を対応状態原理に基づく相関式で表した上で結晶化度を考慮することによりIPP粉体に対する溶質のヘンリー定数を良好に相関することができた.
  • 安本 秀幸, 佐々木 正義, 新津 隆士, 井上 博愛
    1998 年 24 巻 3 号 p. 503-505
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    デキストラン水溶液を使った管型限外濾過膜の濾過で, 懸濁した粒子の影響を調べ, 透過液流束を測定した.膜モジュール管を水平に配置した場合, 循環させた原液速度が遅いときは懸濁粒子濃度の増加に伴い透過液流束は減少したが, 原液速度が速い場合は, 懸濁粒子濃度の増加に伴い増加した.
    膜モジュール管を垂直に配置し, 原液を下から上に流した垂直配置上昇流の濾過実験では, すべての原液速度で透過液流束は増加した.
    懸濁した粒子の透過液流束に与える影響の機構について, 円管内の粒子の挙動に関するこれまでの研究を参考に議論した.
  • 上江洲 一也, 成迫 誠, 後藤 雅宏, 後藤 宗治, 中塩 文行
    1998 年 24 巻 3 号 p. 506-508
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    キャリヤーとして2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル (PC-88A) を用いて, 合成界面活性剤グルタミン酸ジオレイルエステルリビトールによって調製した乳化型液膜により, Mixco型連続抽出装置において銅とモリブデンの選択的分離を行った.Mixco型抽出装置における軸方向のモリブデン濃度分布のpH依存性を, 連続相の金属イオンと分散相中の抽出剤との界面反応を考慮した逆混合モデルに基づいて解析した.回分式反応装置で求めたモリブデンとPC-88Aとの界面反応速度定数を用いることによって, 本逆混合モデルにおいてフィッティング・パラメータを用いることなしに, Mixco塔内のモリブデンの抽出挙動を表現することができた.
  • 田中 真人, 田口 佳成, 井口 良之
    1998 年 24 巻 3 号 p. 509-511
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    セミケミカルリサイクルを利用して廃ポリマーとマグネタイト粉末との複合体粒子の調製を試みた.
    実験では, 廃ポリマーとしてポリスチレンが, 溶媒としてジクロロメタンが, また, 固体粉末としてマグネタイトがそれぞれ採用された.この溶液が分散相として連続水相中で微小滴化された.
    低い撹拌速度と溶媒除去温度では, 良好な被覆型複合体粒子が生成された.一方, 撹拌速度と溶媒除去温度が高くなると, 分散系は不安定になり, 複合体粒子は生成されなかった.
  • 花熊 克友, 竹内 健史, 山本 順三, 中西 英二
    1998 年 24 巻 3 号 p. 512-513
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    回転機診断に用いられている歪み度・尖り度解析を改良したプロセス異常信号の検出法を開発した.本手法の有効性を確認するため, 直鎖状低密度ポリエチレン製造装置での触媒供給流量異常信号の検出に適用した.その結果, プロセス異常信号の検出に有効であることがわかった.
  • 中山 昭男
    1998 年 24 巻 3 号 p. 514-516
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    水素気泡ポンプ (電解水素気泡ポンプ) および空気泡ポンプにおける流動特性が, 実験的に考察された.その結果, 次のことが明らかになった.水素気泡ポンプの方が少量の通気で揚水開始を行う.同じ通気量では, 水素気泡ポンプの方が空気泡ポンプより多量の揚水を行う.これらは, 水素気泡ポンプ揚水管内の流動様相が気泡径約0.5mmの気泡流であり, 空気泡ポンプ揚水管内の流動様相が大気泡径のスラグ流であることに関係する.すなわち, 小さな径の気泡は, 気液間におけるすべりが小さく, 気泡に随伴する液量が多いためであると考える.
  • 宮川 洋光, 白石 文秀
    1998 年 24 巻 3 号 p. 517-519
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    充填層型固定化酵素反応器のみかけの速度パラメーターVmapp, Kmappへ及ぼす多孔性担体内の不均一活性分布の影響を理論的に検討した.Vmapp, Kmappは活性分布の型に関わらず外部拡散抵抗の増加とともに増大した.また, 反応器入口基質濃度への依存性も小さくなり, ほぼ一定となった.拡散抵抗や静電場の場合と同様に, 不均一酵素活性分布はKmappに大きな影響を及ぼした.
  • 田部井 康一, 井野 一, 黒田 正和
    1998 年 24 巻 3 号 p. 520-522
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Mobile Bed における液流れの混合について, 拡散モデルに従うとして, パルス応答法により軸方向混合拡散係数を求めた.液の軸方向混合拡散係数は気液流速, 粒子密度, 塔径, 液粘度の増加とともに増加し, 粒子径および充填層高の増加とともに減少した.
    また液流れと充填物粒子の軸方向混合拡散係数およびペクレ数との間に密接な関係があり, 液ペクレ数の推算式を得て, これによると推算値は測定値と良好な一致を示した.
  • 清水 健司, 塚本 勝男, 円山 重直, 河野 靖, 大西 伸和
    1998 年 24 巻 3 号 p. 523-525
    発行日: 1998/05/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    2次核発生とそれに続く結晶成長過程を, 落下塔による微小重力を利用して, 動的光散乱計測および光学顕微鏡によりその場観察した.微小重力場では, 過飽和溶液中の種晶から発生した結晶核の動きの停止, 非合体, および, 他領域からの新たな結晶核の発生がなかったこと, また併せて, 動的光散乱計測システムで, 発生結晶の数, 粒径の経時変化に関するナノオーダからのデータが取得できることを確認した.
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