化学工学論文集
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26 巻, 4 号
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  • 白石 康浩, 平井 隆之, 駒沢 勲
    2000 年 26 巻 4 号 p. 487-496
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    光化学反応と溶媒抽出を組み合わせた燃料油の脱硫プロセスに関する研究を行った. 従来法 (水素化脱硫法) の難脱硫成分であるジベンゾチオフェン (DBT) を対象化合物として, 軽油の深度脱硫方法を中心に検討した. 分離系には, 軽油/水系と軽油/極性溶媒系を採用した. 前者では, DBTは軽油中で紫外光により分解され, 水相中に硫酸イオンとして除去された. 脱硫反応は芳香族化合物の共存によって抑制されたが, 三重項増感剤や過酸化水素の添加により改善され, 軽油中の硫黄分を規制値 (0.05wt%) 以下に低減できた. 後者の分離系では, アセトニトリルを抽出溶媒に選択した. 軽油/アセトニトリル系に紫外光照射を行うと, アセトニトリルに分配したDBTが連続的に光酸化され, 軽油へは溶解しない成分に変換された. この操作により, 短時間での深度脱硫が可能となるほか, 硫黄分0.005wt%以下への超深度脱硫にも対応できることが分かった. さらに, アセトニトリル相への電子移動型増感剤の添加により, 可視光 (λ>400nm) を光源として利用できることを見いだした. また, 本プロセスは異種類の硫黄化合物が存在する接触分解ガソリンの脱硫にも適用できることが分かった. 脱硫操作に用いた溶媒や増感剤を後段で回収し, 再利用できるクローズドプロセスを設計し, 本プロセスの実用性について検討した.
  • 西浜 章平, 平井 隆之, 駒沢 勲
    2000 年 26 巻 4 号 p. 497-505
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    金属イオンの液液抽出において, 工業的に採用される領域, すなわち抽出剤に対する金属の負荷量の高い領域 (高保持率域) に至るまでの抽出平衡関係の解析について検討した. 高保持率域に至るまでの抽出平衡関係は, スロープアナリシス法と高保持率域における抽出錯体の量論関係に基づいて決定した. 決定した抽出平衡関係を用いることで, 各金属の混合金属系の抽出挙動, スクラビング挙動を表現できた. 更に, 決定した抽出平衡関係と物質収支に基づき, 向流多段ミキサーセトラーによる金属イオンの分離シミュレーションを行うことで, 最適な金属の分離精製プロセスの設計が可能となった.
  • 下条 晃司郎, 久保田 富生子, 大島 達也, 後藤 雅宏, 古崎 新太郎
    2000 年 26 巻 4 号 p. 506-510
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    廃棄されたテレビのブラウン管からの希土類金属の溶媒抽出法による分離回収を検討した. ブラウン管蛍光体の酸浸出液中には, ユウロピウムとイットリウムの希土類金属ならびに多量の亜鉛が含まれる. 本研究では, 抽出剤としてカリックス [4] アレーンを用いることによって, 希土類金属と亜鉛の分離が可能となることを示した. さらにナトリウム添加による協同効果により, 希土類金属と亜鉛の分離性能が大きく向上することが明らかとなった.
  • 頭師 栄太, 迫口 明浩, 中塩 文行
    2000 年 26 巻 4 号 p. 511-516
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    新規に合成した長鎖アルキル基を有する3種類のβ-ジケトンと市販の4種類の中性有機リン化合物を抽出剤として, リチウムの溶媒抽出を試みた. その結果, β-ジケトン-酸化ホスフィン混合系抽出剤およびβ-ジケトン-中性リン酸エステル混合系抽出剤において協同効果が発現しリチウムを抽出することができた. とくに, 協同効果試薬としては, 酸化ホスフィンを用いた方が中性リン酸エステルを用いた場合よりも高い抽出能を示した. また, β-ジケトンの疎水性の差による抽出平衡定数の差はほとんどなかった. さらに, これら抽出平衡特性が協同効果試薬のリチウムとの錯形成部位における電子密度の差により生じることを計算化学的手法によって明らかにした.
  • 吉塚 和治, 井上 勝利, PETER COMABA
    2000 年 26 巻 4 号 p. 517-522
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    リン酸, ホスホン酸, カルボン酸および水分子中の酸素を配位原子とするランタノイド錯体の構造と立体エネルギーを分子力学法により計算した. この計算法は, 配位子-金属-配位子変角相互作用として独立したpoint-on-sphere型1-3非結合性相互作用ポテンシャル関数を用い, 伸縮振動として調和振動子型ポテンシャル関数を用いたシンプルなモデルで表されている. この分子力学法を用いて, La (III) イオンを基準にしたランタノイドイオンの相対的な抽出平衡定数の比と錯形成過程に関与する各分子の立体エネルギーの変化との関係を求めたところ, 良好な直線関係を有する定量的構造物性相関性 (QSPR) が得られた. このことより, この分子力学法は, ランタノイド元素を高選択的に相互分離することができる次世代の有機リン酸やホスホン酸およびカルボン酸系の抽出試薬を分子設計するための有用なツールである.
  • 横澤 里枝, 二井 晋, 高橋 勝六, 三澤 嘉久
    2000 年 26 巻 4 号 p. 523-528
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    親水性多孔質膜を隔膜とし, 膜液に硝酸銀水溶液を, 供給液, 回収液にそれぞれドデカンおよびm-キシレンを用いた隔膜型O/W/O流動液膜 (FLM) を用いて, 高度不飽和脂肪酸エステル (PUFA-Et) であるドコサヘキサエン酸エチルエステル (DHA-Et) およびエイコサペンタエン酸エチルエステル (EPA-Et) の分離を293Kで行った. この液膜操作によりPUFA-Etは低度不飽和脂肪酸エステルであるオレイン酸エステル, パルミチン酸エステルを含む混合溶液から選択的に分離された. 膜液流速の増大, 供給液流速の減少およびモジュール内の流路長さの増大により, PUFA-Etの回収率, および複数のPUFA-Etの相互分離度はともに大きくなった. DHA-Etについては8sの滞留時間で60%の回収率が得られた. また, 物質透過モデルを用いたシミュレーションによると, 操作条件によっては約30sで85%近い回収率が得られることが予測できた. これらのことからFLMにより迅速かつ安定な操作で高い回収率が得られることが示された.
  • 馬場 由成, 岩熊 美奈子
    2000 年 26 巻 4 号 p. 529-534
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, 銅およびパラジウムの選択的抽出剤の開発を目的として, 2-ヒドロキシ-1-ナフトアルドキシム (HNO) を合成し, その金属イオン選択性を検討した. 水相は硝酸アンモニウム溶液および塩酸溶液を用い, 有機相はHNOのクロロホルム溶液を用いた. 硝酸アンモニウム水溶液からの抽出序列は, Pd (II) ≫Cu (II) ≫Fe (III) ≫Co (II) =Ni (II) >Zn (II) であり, Ag (I) およびCd (II) はほとんど抽出されなかった. また, 塩酸溶液からの抽出では, 銅およびパラジウムに高い選択性がみられ, 他のベースメタルはほとんど抽出されなかった. 硝酸アンモニウム水溶液からの銅の抽出平衡は, 以下のように表わされ, HNOはキレート抽出剤として挙動した.
    Cu2++2HR R2Cu+2H+; KCu, KCu=1.6×10102 [-]
    一方, 塩酸溶液からのパラジウムの抽出平衡は以下のようになり, 溶媒和抽出剤として挙動した.
    2HR+PdClCu (HR) CuPdClCu; KPd, KPd=1.8×107 (moldm-3) -2
  • 近藤 和生, 松本 道明, 大久保 都世
    2000 年 26 巻 4 号 p. 535-541
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    主抽出剤として酸性有機リン酸化合物, 協同抽出剤として5-クロロ-8-ヒドロキシキノリンをトルエンもしくはn-ヘプタンに溶解し, この混合抽出剤によるガリウムの協同抽出を292-323Kで検討した. 用いた酸性有機リン酸化合物はいずれの系においても協同効果を示した. 2-エチルヘキシルボスホン酸モノ2-エチルヘキシルエステル (EHPNA) および5-クロロ-8-ヒドロキシキノリンをトルエンに溶解させた系は, 協同抽出剤を用いない場合に比べ, 抽出平衡定数は2, 300倍増大した. しかしこの協同抽出系では, 油-水界面あるいは水相に沈殿物の生成がみられることがあり, これを防ぐために修飾剤として1-デカノールを加えた. その結果, 沈殿物の生成は抑えられたが, 抽出率の若干の減少をもたらした. この点は, 1-デカノールとEHPNAとの相互作用による抽出剤活量の減少および1-デカノール添加による5-クロロ-8-ヒドロキシキノリンの水-有機相間の分配比の変化を考慮することにより定量的に説明できた.
  • 近藤 和生, 松本 道明, 吉田 貴司, 園田 高明
    2000 年 26 巻 4 号 p. 542-547
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, リチウムに対して高い選択性を期待できる新規な抽出試薬である含フッ素フタロシアニン誘導体 (ヘキサデカ (2, 2, 2-トリフルオロエトキシ) フタロシアニンおよびヘキサデカ (2, 2, 3, 3, 3-ペンタフルオロプロポキシ) フタロシアニン) を合成した. まずこれらの抽出剤によるアルカリ金属の抽出平衡を測定した. 低pH領域ではどの金属イオンもpH依存性を示さず, イオン対の形で抽出され, またリチウムおよびカリウムについては高pH領域ではpH依存性を示し, カチオン交換型の抽出が生じているものと推察された. これらの抽出反応における抽出種および抽出平衡定数を決定した. 高pH領域では両抽出試薬ともにリチウムに対して選択性を示した. この領域でヘキサデカ (2, 2, 2-トリフルオロエトキシ) フタロシアニンによるリチウムイオンの抽出速度を平面接触型撹拌槽を用いて測定した. 抽出速度過程は, 抽出試薬の拡散過程によって律せられていることが推察された.
  • 井上 勝利, 吉塚 和治, 大渡 啓介, 関 純人
    2000 年 26 巻 4 号 p. 548-550
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エビや蟹等の甲殻類の殻から製造される塩基性の多糖類であるキトサンの水酸基をアシル化することにより, O, O′-デカノイルキトサンの合成を行った. これはケロシンのような脂肪族系の希釈剤には不溶であったが, トルエンやクロロホルムには溶解した. O, O′-デカノイルキトサンのクロロホルム溶液を用いて数種の金属イオンの溶媒抽出を行い, キトサンによる吸着と比較した. キトサンに対しては鉄 (III) イオンは銅 (II) イオンより選択的に吸着されたが, 鉄はO, O′-デカノイルキトサンには殆ど抽出されなかった. pHが2の近くで大量の鉄の中から微量の銅を選択的に抽出・分離することができた.
  • 朴 桂林, 袴田 和英, 近藤 元博, 山口 正隆, 羽多野 重信, 山崎 量平, 森 滋勝
    2000 年 26 巻 4 号 p. 551-556
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    廃棄物固形化燃料 (RDF) の燃焼設備の一つとして流動層燃焼方式が注目されている. 本研究ではRDFの流動層燃焼プロセスにおける塩素分の挙動を解明するため, 断面0.3m×0.3m, 高さ2.73mの燃焼部を有する小型気泡流動層燃焼実験装置を使用して, 原料の性状と配合比を調整して作成した模擬RDFと一般廃棄物から製造したRDFの長時間定常燃焼試験を行い, 排ガス中の塩化水素濃度の各配管部における測定と, 炉内に滞留している全固体分とサイクロン, ガスクーラ, およびバグフィルターで捕集した固体分の全量の測定と, その分析結果に基づき, 硅砂, 灰分, および塩素分の物質収支をとった. 模擬RDFを使用して長時間定常燃焼を行った場合, 塩素分の供給量と排出量との間には10%以内の精度で物質収支が成立した. この場合, 塩素分のほぼ80%が流動層内でCa分によって脱塩酸され, 炉出口の排ガス中に含まれるHClとして排出される塩素分は, 供給塩素分の4.1%しかなく, 46.7%が炉内粒子に捕捉されて滞留し, 残りが粒子に捕捉された状態で炉外へ排出されている. 一方, 一般廃棄物から製造したRDFの場合には, RDF中に含有するCaのモル比が低い試料を使用したにもかかわらず, 供給塩素分のほぼ50%が流動層内でCa分によって脱塩酸され, 炉出口の排ガス中に含まれるHClとして排出される塩素分は, 供給塩素分の約21.9%となった. また, 27.7%が炉内粒子に捕捉されて滞留し, 残りが粒子に捕捉されて炉外へ排出された. なお, 媒体砂とRDFにはNaおよびK分が含まれているため, これらのNaおよびKすべてが模擬RDFおよび一般RDFの燃焼において塩素分と反応して, NaClとKClになっているものと仮定して計算しても, それぞれ80%および50%以上の塩素分がCaCl2として捕捉されている.
  • 村上 聖, 中野 隆盛, 松岡 達彦
    2000 年 26 巻 4 号 p. 557-562
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    工業生産に使用されている培養槽の標準仕様を把握し, 従来法による培養槽のスケールアップの参考に供するとともに, 今後新規培養技術の開発を行う際の基礎を提供することを目的として, 現在までに実際に製作された480基の培養槽の基本仕様を統計的に分析した. 培養容量が数百立方メートルに至る工業生産用培養槽において, 最も標準的な仕様は, 高さ/直径1.8; 仕込量/全容量0.7; 伝熱面積/仕込液量5m-1 (大容量では1~2m-1); 撹拌動力6kw/m3 (大容量では2kw/m3); 翼間距離/翼径1.4; 翼径/槽径0.38; 撹拌翼周速5.5m/sである. また各仕様値と培養槽の容量との相関について分析した結果, 高さ/直径および撹拌翼周速は培養槽の容量と共に増加し, 伝熱面積/仕込液量, 撹拌動力および撹拌翼径/槽径は容量と共に減少することがわかった. これらの相関を分析したところ, スケールアップは撹拌翼周速の増加による剪断応力の増大を犠牲にしながらもk1αが一定になるように行われた場合が多いと考えられる結果を得た.
  • 吉村 保廣, 青野 宇紀, 池田 由紀子, 遠藤 喜重, 時末 裕充
    2000 年 26 巻 4 号 p. 563-568
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    磁気ディスク装置において, 磁気ディスクと磁気ヘッドを搭載した浮上スライダとが粘着を起こすと, 異常動作を起こすため重要な問題となる. この原因として, 装置系内からのコンタミネーションやスライダ表面への潤滑剤の蓄積が考えられる. この粘着は, 浮上スライダを撥油性のフッ素化合物溶剤で表面処理することで防止することが可能である. 本研究では, フッ素化合物溶剤であるフルオロアルキルシラン (FAS) 及びFASを加水分解, 重合反応させた改質液 (FASI) による粘着防止効果について検討を行った. その結果鉱油の接触角は, 未処理が20°であるのに対して, FASのディップ塗布-393K加熱処理で51°, FASIの同処理で68°, FASIのディップ塗布-紫外線照射処理で81°が得られた.
  • 早川 喜郎, 伊神 晴之, 鍋谷 浩志, 中嶋 光敏
    2000 年 26 巻 4 号 p. 569-574
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    清澄リンゴジュースのRO濃縮を対象として, 低阻止率RO膜と高阻止率RO膜における透過流束, 阻止率などの定量的な解析手法について検討した. 清澄リンゴジュースのRO濃縮では, 膜面のファウリングの影響により, 糖水溶液の濃縮と比較して透過流束が低くなり, 見掛けの阻止率が高くなることが確認できた. このファウリングによる影響を考慮した解析手法について検討した.
    その結果, 低阻止率RO膜では, リンゴジュースの濃縮試験により得られた反射係数, 溶質透過係数, 純水透過係数を用いて濃度分極式および輸送方程式を解くことにより, 清澄リンゴジュースの低阻止率RO膜の透過流束, 阻止率を良好に推定することができた.
    また, 高阻止率RO膜では, 膜のファウリングの影響を補正する係数により純水透過係数を補正することで, 高阻止率RO膜の透過流束を良好に推定することができた.
  • 飯田 嘉宏, 露木 敏勝, 真島 隆男, 高島 武雄, 奥山 邦人
    2000 年 26 巻 4 号 p. 575-580
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    粒子が液体中を自由に動ける粒子層中に水平円柱伝熱面を置き, 粒子による伝熱促進効果について飽和核沸騰域から膜沸騰域までの広範囲の過熱度に対して実験的研究を行った. 伝熱面は外径0.88mm, 長さ67mmのステンレス管を, 試験液体は蒸留水を用いた. 粒子は直径0.3~2.5mmのアルミナ球, ガラス球および多孔質アルミナ球を使用し, 粒子層高さを5~80mmに変化させて, 熱流束, 伝熱面温度を測定し, 沸騰曲線として表すと共に熱伝達率により伝熱促進率を求めた. 核沸騰域において, アルミナ粒子層を用いた場合, 粒子のない場合に比べ最大10倍の伝熱促進率を得た. これは, 本法が受動的技術であるにもかかわらず沸騰による流体撹乱作用により, 粒子が能動的方法と同様な挙動を示すことによる.
  • 濱野 裕之, 江頭 靖幸, 小島 紀徳
    2000 年 26 巻 4 号 p. 581-587
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    地球温暖化問題の主原因である二酸化炭素の固定対策の一つに, 乾燥地・半乾燥地における大規模緑化がある. 乾燥地における植林では水不足が問題であり, 限られた雨水の効率的利用が必要である. 本研究の概念は, 従来の要素技術とは異なる観点から水収支システムを構築し, 様々な対策技術の定量的評価を行うことである. 本研究では, 対象地として西オーストラリア, Leonora地域を選び, その地域における浸潤過程を, 二つのシミュレーションモデルを用いて解析した. そのモデルの妥当性を, 均一性が高く物性値の記述が容易なガラスビーズを用いた水移動実験結果との比較により評価した.
    その結果, 各モデルは, それぞれ固有の問題を有していることが明らかになった. またガラスビーズを用いた実験において優れた近似が可能であったモデルを用い, 研究対象とした豪州土壌の雨水浸潤速度の評価を行った. その結果, 土壌の透水性の悪さが植物成長を制限していることが示唆された.
  • 稲波 久雄, 斉藤 光子, 望月 雅文, 佐藤 一省, 明畠 高司
    2000 年 26 巻 4 号 p. 588-595
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    円錐型ガス分散器を備えた流動層によるポリエチレン粒子 (HDPE) の部分燃焼ガス化モデルを検討した. このモデルは濃厚相のスパウト部とアニュラス部そして希薄相が3つの完全混合相であると仮定し, 熱収支と物質収支の式より構成されている. 熱収支より反応温度を計算し, この値を用いて各生成ガスへの転化率を算出した.
    計算結果は著者らの実測結果と良好に一致しており, このモデルで円錐型ガス分散器を備えた流動層によるポリエチレンのガス化生成物収率を予測することがほぼ可能であることがわかった. 濃厚相におけるガス化反応の割合やHDPEの部分燃焼率といったガス化特性を検討し, 円錐型ガス分散器付き流動層におけるHDPEのガス化反応特性を明らかにした.
  • ニューラルネットワークによる組み合わせ最適化法を用いた写像構成法
    橘 裕司, 井上 義朗, 平田 雄志
    2000 年 26 巻 4 号 p. 596-603
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    速度ベクトルを時間的に積分することにより得られる流体粒子の位置変化から, 混合パターンの時間変化を計算することができる. 特に, 時間的に周期変動する流れ場では, 1周期間の流体粒子の位置変化を知るだけで, 周期の整数倍となる時刻における混合パターンが予測できる. 本論文では, 周期的に変化する層流場において混合過程を表現しうる新しい離散モデルを提示する. このモデルでは, 独立変数 (時間と空間) と従属変数 (濃度) の両方を離散化することにより, 連続的に変化する流体の運動を離散的に取り扱い, 混合パターンの時間変化を混合パターンを表すベクトルの回転運動として表現する. 1周期間の流体粒子の位置変化を精度よく表現するために, ニューラルネットワーク理論に基づく組み合わせ最適化法とドメイン縮小法を組み合わせた新しいアルゴリズムを開発した. これにより, 層流場における混合パターンの時間変化を, 高精度かつ高速に計算することが可能になった.
  • 山根 岳志, 中島 栄次, 吉田 正道, 宮下 尚
    2000 年 26 巻 4 号 p. 604-608
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    矩形容器内で階段状に2層に濃度成層するNa2CO3水溶液を側方から加熱冷却したときに発生する二重拡散対流を対象に, 広い初期浮力比N0=0.54~7.17のもと, 感温液晶とポリスチレン粒子を用いた温度場と流れ場の同時可視化実験を行なった.
    加熱冷却後, 間もなく熱と溶質の二重拡散により2層のセル対流構造が形成され, それは比較的長い擬定常状態を経て崩壊した. 崩壊前に界面の波打ち現象が確認されたが, このときの界面近傍の流れ構造, 温度場形状は非常に複雑であり, その現象のスケールは熱レイリー数に依存した. また, 界面崩壊時間は条件により10~600分まで変化するが, それは初期浮力比に大きく依存した. さらに, 本結果と溶液・条件が異なる既往の研究結果との間で界面崩壊時間の比較を行ったところ, 2つ研究で得られた界面崩壊時間は無次元時間FomScを用いて良好に相関できることがわかった.
  • 朴 桂林, 近藤 元博, 山口 正隆, 板谷 義紀, 山崎 量平, 森 滋勝
    2000 年 26 巻 4 号 p. 609-613
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では原料性状と配合比を調整した3種類の模擬RDF, 産業廃棄物から製造した原料成分の異なる2種類のRDFおよび一般廃棄物から製造した2種類のRDFを小型気泡型流動層燃焼装置を使用して燃焼試験を行い, 排ガス中の一酸化炭素, 窒素酸化物, および, 塩化水素濃度と操作条件との関係についての実験データを示す.
    密度が小さく強度の低いRDFを燃焼した時にCO濃度が他のRDFと比較して極めて高い値となったが, 二次空気を投入することによりCO排出濃度を抑制できる. 金属分が多く直径が大きいRDFの燃焼の時にはNOx排出濃度が他のRDFより高くなった. 一方, CaO分の触媒作用によって, NO生成反応を促進するため, カルシウム分の増加とともにNOx転換率が増大する傾向がある. 排ガス中のHCl濃度はCa/ (S+0.5Cl) モル比の増加とともに顕著に減少し, カルシウム分による脱塩酸率は燃焼温度の上昇とともに減少する.
  • 藤吉 一誠
    2000 年 26 巻 4 号 p. 614-616
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    メチルアミンを溶離剤として多孔質ガラス充填カラムによるニッケルとコバルトの分離実験を298Kで行った. 分離性能はメチルアミン濃度を1mol/dm3とするとpH 8~8.5の領域では完全であるが, pH 8.5以上では水酸化ニッケルの沈殿が生成するため低下する. コバルトの回収は希塩酸で後処理するとpH 8.5において70%で極小であり, 希硝酸を用いてもあまり改善しないが, 0.1mol/dm3のEDTAを用いると完全に行われる. 塩化アンモニウムを溶離剤とする場合もコバルトの完全な回収のためにEDTAが有効である. これによりカラムの内部でペンタアンミンコバルト (III) 錯体に類似した難溶性のコバルト錯塩が生成することが分かる. pHを8.1に維持すると0.5mol/dm3以上のメチルアミン濃度域で2種の金属が完全に分離する. このようにメチルアミンを用いると塩化アンモニウムよりもはるかに広い濃度域でニッケルとコバルトを分離することができる.
  • 松村 光夫, 小島 紀徳
    2000 年 26 巻 4 号 p. 617-619
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ごみ焼却灰中に含まれる鉛の溶出抑制を目的とし, リン酸塩添加の効果を検討した. 混合物をか焼したところ, 400~1,000℃の範囲では高温でか焼するほど灰からの溶出性は抑制された. 溶出液中の鉛濃度は, Pb (OH) 2の溶解度積から計算されるより相当小さく, PbHPO4のそれに近い値かむしろ若干小さかった. 高温でのか焼による鉛の溶出抑制効果は, Pb3 (PO4) 2の生成によると推測した.
  • 坂東 芳行, 田中 孝幸, 安田 啓司, 中村 正秋, 川瀬 信行
    2000 年 26 巻 4 号 p. 620-622
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    油分を液中に迅速かつ微細に分散させるために, ネット付ドラフトチューブ挿入気泡塔 (NDT-BC) を考案し, その油分分散性能を標準気泡塔 (SBC), ドラフトチューブ付気泡塔 (DT-BC) と比較した. その結果, NDT-BCの油分分散性能はSBC, DT-BCより高いことがわかった. NDT-BCにおいてネットの設置位置および設置枚数を変え, 油分分散性能に及ぼす影響を検討した. 酵母による油分分解実験では, NDT-BCの油分分解性能が3種の気泡塔の中で最も高かった.
  • 谷 浩路, 二井 晋, 川泉 文男, 高橋 勝六
    2000 年 26 巻 4 号 p. 623-625
    発行日: 2000/07/10
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    疎水性の合成吸着剤HP-20を用いた充填床による水相中の溶解油分 (トルエン) の吸着分離を行い, 充填床の厚さおよび流速の影響を調べた. 吸着平衡では吸着剤と水溶液中のトルエンの分配比が一定になり, トルエンが吸着剤に物理的に分配されていることを示している. 無次元時間に対する破過曲線の形状は流速と充填床の厚さの比に依存した. 水相の物質移動係数と粒子内の有効拡散係数を用いた計算結果は実測の破過曲線とよく一致した. 吸着剤HP-20の再生は比較的緩和な脱着条件で達成され, 同じ条件で再生した活性炭では新たな活性炭の吸着量の30%しか吸着しなかった.
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