化学工学論文集
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27 巻, 6 号
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[特集] 液相系における構造形成と機能化
  • ――シリカメソ多孔質材料の構造形成過程に焦点をおいて
    原田 誠
    2001 年 27 巻 6 号 p. 663-677
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    機能材料は,分子・ナノ・メソ・マクロスケールの階層構造から成り立っている.この階層構造の形成過程の理解に基づく材料設計は,化学工学における重要課題の一つである.液相プロセスは材料構築において重要な位置を占める.ここでは,その具体例として,シリカメソ多孔性材料を取り上げ,階層構造形成過程についての諸家の研究を総合的にまとめ,今後化学工学分野で取り上げるべき次の事項を抽出した.1)非平衡状態における構造形成,2)構造形成におけるマクロ異相界面の役割,3)蒸発誘起構造形成,4)配向構造形成のための外部場の働き,など.この具体例を通して得られた知見に基づいて,液相を用いた材料設計の将来展望を述べた.
  • 佐藤 博, 鈴木 景子, 駒沢 勲
    2001 年 27 巻 6 号 p. 678-682
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    逆ミセルの内水相を微小反応場とする超微粒子調製プロセスについて,反応場が細分化されていることが粒子の生成機構に与える影響を評価するため,逆ミセル系および均一水相系におけるCdS超微粒子の凝集速度を解析した.水相系における急速なCdS超微粒子の凝集は粒子表面に吸着する水溶性チオールリガンドを系に添加することで抑制した.チオールリガンドの添加は逆ミセル系におけるCdS粒子の凝集速度も低下させた.逆ミセル内の各微小内水相が高速な内容交換により遅い反応に対してはあたかも連続しているように振る舞うと考える擬連続相モデルにしたがって,逆ミセル系と水相系の凝集速度を比較した.その結果,逆ミセル径が粒子径と同程度に小さい低含水率の条件を除き,両系の速度定数はほぼ等しいことが明らかになった.
  • 神尾 和教, 木下 正弘
    2001 年 27 巻 6 号 p. 683-689
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    小コロイド粒子–大コロイド粒子系の相分離挙動,低分子(小粒子)集団中における生体高分子(大粒子)と生体膜(表面)間の相互作用を研究対象とし,積分方程式論に基づく解析を実施した.ただし,排除容積効果あるいはエントロピー駆動(小粒子にとっての排除容積をできる限り減少させ,系のエントロピ-を増加させようとする効果)による秩序構造形成を浮き彫りにすることができる単純化モデルを用いた.相互作用の解析では,小粒子の充填率,大粒子の大きさ,表面の曲率,小粒子集団の中に少量のやや大きな粒子(別の低分子)が共存すること,小粒子間の引力相互作用の存在などの影響を調べた.その結果,大粒子の大きさと表面の曲率間に,かなりの“Specificity”が生じることなどの興味深い情報を得た.「鍵と鍵穴」間の相互作用や,タンパク質のフォールディングなど,生体系における種々の高度な秩序化現象における排除容積効果の重要性に注目し,今後の展望について述べた.
  • 塩井 章久, 阿部 智行, 熊谷 浩人, 薄葉 岳, 近藤 聡
    2001 年 27 巻 6 号 p. 690-695
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    液々界面で界面活性剤が吸・脱着しながら二液相間を移動するとき,界面活性剤を吸着した界面が熱力学的に不安定ならば,界面組成(界面活性剤吸着量)がどのような時間変動を示し得るかを理論的に計算し,油水界面で界面張力が非線形的振動を示す実験系での観測結果と比較した.モデルは次のとおりである.第1液相から界面活性剤Aが界面に吸着し,第2液相にある化学種Mと反応,別の界面活性剤Bとなる.A,Bの一様な混合状態はスピノーダル領域にあり,時間依存型Ginzburg-Landauの式で表されるスピノーダル分解を発生する.形成されたA-richなドメインはMと反応しBを生成するが,B-richなドメインからは,Bが分子集団を作って脱着する.得られた界面組成の時間変動と実験で観測された界面張力の振動とは,よく似た統計的性質を示した.
  • 近藤 和夫, 島田 久美子, 田中 善之助
    2001 年 27 巻 6 号 p. 696-699
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
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    亜鉛めっき中へのチタニア分散粒子の取り込み形態について解析した.チタニア粒子には,50nm粒径の粗大粒子と10nm粒径の微細粒子とが存在する.粗大粒子の(00・1)η〔亜鉛(hcp)結晶の基底面,六角形となる〕上への析出形態には2種類ある.成長途中のマクロスチップに整列する粗大粒子とランダムに分散する粗大粒子とである.マクロスチップに整列した粗大粒子は(00・1)ηの端部でマクロスチップ側壁に取り込まれる.また,ランダムに分散した粗大粒子は,粒子の底部より単原子高さのステップに取り込まれるものと考えられる.一方,微細粒子は(00・1)η上にランダムに分散し,単原子高さのステップにより取り込まれるものと考えられる.さらに,(00・1)η方位像マッピング粒径とSEM像の六角板状面の粒径とが一致した.
  • 三島 健司, 松山 清, 古川 敦史, 藤井 卓, 志田 純, 野尻 尚材, 久保 英明, 片田 直樹
    2001 年 27 巻 6 号 p. 700-706
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    超臨界二酸化炭素とエタノールなどの助溶剤の混合物が混合時にのみ特異的に溶質を溶解する共存効果(コソルベンシー)を利用して,有害な有機溶媒や界面活性剤を使用せずに無機微粒子を内包する数ミクロン~数十ミクロンの高分子マイクロカプセルを形成し,コーティング厚みを制御する方法を提案した.コソルベンシーにより超臨界二酸化炭素中に溶解した被覆用高分子は,急速膨張の後,エタノールなどの助溶媒がポリマーに対して貧溶媒であるので,癒着のない高分子微粒子が得られた.マイクロカプセルの形態・構造は,SEM,TEM,EPMA,ならびに光散乱粒径分布測定装置によって解析した.生成した粒子は,粒径分布が狭い球状粒子であった.マイクロカプセルは,無機微粒子を核としてその周囲に高分子が析出しており,高分子の仕込み組成調製により,マイクロカプセルの高分子コーティング厚みが制御できることを示した.
  • 松山 清, 山内 悟留, 平原 卓司, 林 賢一郎, 服部 沙里, 三島 健司
    2001 年 27 巻 6 号 p. 707-713
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    2種類の高分子を超臨界二酸化炭素中に溶解し,急速膨張により,タンパク質を内包する2成分ポリマーブレンドマイクロカプセルの形成を行った.タンパク質として,リゾチーム,リパーゼを用い,被覆用高分子として,ポリメチルメタクリレート(PMMA;M.W.=15,000),ポリエチレングリコ-ル(1)EG4000;M.W.=3,500,PEG6000;M.W.=7,500,PEG20000;M.W.=20,000),ポリ乳酸(PLA;M.W.=5,000),ポリラクタイド-グリコライド共重合体(PGLA;M.W.=5,000),ポリエチレングリコール-プロピレングリコールブロック共重合体(PEG-PPG-PEG;M.W.=13,000)を用いた.エタノールなどの助溶媒がポリマーに対して貧溶媒であるので,308.2K~328.2K,8MPa~20MPaの範囲より,タンパク質および高分子を含む超臨界二酸化炭素を大気圧下へ急速に膨張させることで,タンパク質を含む癒着のない平均粒径約数十μmのマイクロカプセルが得られた.マイクロカプセルの形態・構造は,SEM,TEM,EPMA,HPLC,レ-ザー回折式粒度分布測定装置によって解析した.高分子の仕込み組成を調整することで,マイクロカプセルのコーティングポリマー組成ならびに平均粒子径を制御できることが示された.
  • 舩井 美樹, 後藤 雅宏, 古崎 新太郎
    2001 年 27 巻 6 号 p. 714-718
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    カチオン性界面活性剤によるオリゴヌクレオチドの液一液抽出挙動を検討した.二本の長鎖アルキル基を有するカチオン性界面活性剤が,オリゴヌクレオチドの抽出に有効であることが明らかとなった.抽出挙動に影響を与える主要な因子は,界面活性剤およびアルコールの種類,塩濃度,水相pH,および抽出温度であった.また,オリゴヌクレオチドの配列の違いも抽出挙動に影響をおよぼした.アルコールの添加および塩濃度の調製によって,オリゴヌクレオチドの逆抽出反応が,高効率で進行することが示された.
  • 加藤 雅裕, 片岡 淳司, 前川 佳範, 冨田 太平
    2001 年 27 巻 6 号 p. 719-723
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    メソ多孔性シリカであるFSM-16の骨格にA1を導入したAl-FSM-16,およびシリル化処理を施したTMS中FSM-16を調製し,その細孔構造と吸着特性について,窒素および二酸化炭素をプローブ分子として検討した.Al-FSM-16の比表面積は470m2・g-1,FSM-16にくらべ半分程度となったが,二酸化炭素と窒素との混合気体を吸着させると,0.2~0.3MPaの圧力領域で,二酸化炭素の分離係数がFSM-16にくらべ2倍以上大きくなった.これは,Al導入にともない負電荷を補償するために存在するNa+へ,二酸化炭素が選択的に吸着したためである.FSM中16のシリル化では,メソ孔内表面の82%がTMS基により被覆され,細孔径が2.8nmから2.3nmへ減少した.TMS中FSM-16への二酸化炭素の吸着量は,FSM-16にくらべ,自由Si0H基がシリル化により減少したため,吸着温度273Kで半分程度となった.
  • 河井 美典, 三宅 義和
    2001 年 27 巻 6 号 p. 724-729
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    チタニウムテトライソプロポキシド(TTIP)を塩酸水溶液中に溶解させ,透明なチタニアゾルを調整した.この溶液と水溶性高分子溶液を混合し,60℃で24時間熟成することによりチタニア粉末を調製した.
    アニオン性高分子ポリアクリル酸(PAA)添加系では,PAAおよびTTIP濃度に依存して,ゾル状態または溶液全体がゲル状態となった.熟成によってゾル状態では白色沈殿が生成し,一方,ゲル状態では溶液全体が白濁した.この沈殿物およびゲルを焼成することにより白色のチタニア粉末が得られた.この粉末はアナターゼ型であり,100m2/g以上の高比表面積のメソポーラスチタニアが得られた.ゲル状態を経て得られたチタニアはゾル状態を経て得られたチタニアと比べて細孔径分布がシャープであった.またゲル状態およびゾル状態を経て,得られた粉末チタニアのXRDパターンの低角領域にピークが見られ,規則的なナノ構造体が形成されていることが示唆され,焼成後もその規則構造は保たれていた.
    ポリエチレングリコール(PEG)添加系では溶液のゲル化は見られず,結晶はPEG濃度の増大と共にルチル型となり,比表面積,細孔容積も減少した.また,細孔径分布もPAA添加系に比べてブロードであった.
  • 藤田 充喜, 三宅 義和
    2001 年 27 巻 6 号 p. 730-735
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    アニオン性界面活性剤A0Tをヘプタンに溶解して,W/0型マイクロエマルション(ME)を調製した.このMEの電気伝導度を撹衿下で種々の温度で測定した.W>O=[H2O]/[AOT]が一定の条件下でMEの電気伝導度は,ある温度(TP)で急激に増大し,最大値を取り,その後わずかに減少した.この温度はWOの値が大きくなるほど低下した.また,電気伝導度の最大値はWOの値には依存せず,A0T濃度と共に増大した.W/0型MEの電気伝導度の温度依存性は,AOTのNaイオンがMEの水相に溶解して,温度と共にMEの水相が連結してパーコレート構造を形成するためであると推論した.
    次にこのW/0型MEのパーコレート構造を固定化するためにゼラチンを添加してW/0型MEのゲル体(MBG)を調製した.このMBGの電気伝導度の温度依存性は小さくなりパーコレ一卜構造が固定化されたものと考えられた.
    このMBGに酵素のリパーゼを固定化して2中ナフチルアセテートの加水分解を行ったが,ME系に比べて反応速度および反応量は小さくなった.
  • 森 康維, 岡本 真一, 朝日 卓治
    2001 年 27 巻 6 号 p. 736-741
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    ポリオキシエチレンドデシルエーテルやスルホコハク酸ジ2エチルヘキシルナトリウムあるいはジドデシルジメチル臭化アンモニウムを界面活性剤とするW/0マイクロエマルション中で,塩化金酸ナトリウムの還元によって金超微粒子を調製した.可溶化水と界面活性剤とのモル比が小さくなると,マイクロエマルションの大きさはほぼ単分散となり,その溶液中で良く分散した超微粒子を作成することができた.さらに1個のマイクロエマルション滴に含まれる金イオンの個数が1以上になると,単分散超微粒子を得ることができた.金超微粒子の大きさはマイクロエマルションの大きさで制御できた.ヒドラジンや水素化ホウ素ナトリウムの強い還元剤を用いると小さい粒子を作成できた.
  • 牧 泰輔, 松山 秀人, 寺本 正明
    2001 年 27 巻 6 号 p. 742-748
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    熱誘起相分離法によるPMMA/cyclohexanol溶液からの多孔構造の成長に対するクエンチ温度,高分子濃度および冷却速度の影響をCahn-Hilliardのモデルに基づいたスピノーダル分解のシミュレーションにより検討した.クエンチ温度が高い,あるいは高分子濃度が低いほどスピノーダル分解による分相構造のドメインサイズは増加した.冷却速度を変化させた場合,冷却速度が大きいほど滴構造が生成する温度が低下するため,分相構造のサイズは減少した.
    クエンチ温度,高分子濃度,冷却速度に分布を与えて分相構造成長のシミュレーションを行った.同一の分相構造内においても,温度,高分子濃度の変化により生成する構造の大きさが異なるため,非対称構造の成長が観測された.
  • 齊藤 陽平, 今野 幹男
    2001 年 27 巻 6 号 p. 749-752
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    シリコンアルコキシド重合におけるナノ粒子の生成機構を明らかにするために,モノマー濃度を0.01~0.2mol/dm3,水濃度を5~20mol/dm3またアンモニア濃度を0.2~1.5mol/dm3と広範囲に変化させた反応実験を行い,さらに電解質であるLiClあるいはKClの添加効果について調べた.その結果,電解質を添加しない反応系で,アンモニア濃度が最も低い0.2mol/dm3の条件下で23~100nmの平均径を持つナノ粒子が生成した.電解質濃度の粒径に対する影響を調べ,また反応液の電気伝導率を測定した結果,最終粒径を支配する主要な因子が反応中に生成する析出粒子の静電斥力であることを推定することができた.これよりナノ粒子生成がイオン強度の低下に基づく静電相互作用の増加にもたらされることを説明することができた.
  • 上江洲 一也, 田爪 暢, 吉田 昌弘, 後藤 雅宏, 古崎 新太郎
    2001 年 27 巻 6 号 p. 753-755
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    高い分子認識能をもつ界面分子インプリントポリマーを調製するためには,分子認識場の土台となるポリマーマトリクスを剛直にし,機能性ホストをポリマー表面にしっかりと固定化することが重要となる.そこで,架橋剤を加えずに重合した界面分子インプリントポリマーの分子量分布を測定し,インプリントポリマーのマトリクスに影響を与える因子を特定した.その知見をもとに最適な重合条件下で,亜鉛インプリント樹脂を調製した結果,インプリント効果を増大させることができた.
熱力学,物性,分子シミュレーション
  • ――せん断流と磁場が同方向の場合の理論解析面
    青島 政之, 佐藤 明, Geoff N. Coverdale, Roy W. Chantrell
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 熱力学,物性,分子シミュレーション
    2001 年 27 巻 6 号 p. 799-805
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    強磁性棒状粒子からなる希釈コロイド分散系の粒子の配向分布とレオロジー特性を,単純せん断流と磁場が同じ方向である場合について検討した.まず,粒子の方向を与える支配方程式を,配向分布関数を用いて導出した.次に,ガラーキン法を用いて支配方程式の近似解を求めた.結果を以下に要約する.磁場が弱い場合,せん断流の影響が顕著なほど粒子は互いに逆向きの2つの方向に配向する確率が大きくなる.磁場の影響が顕著になると粒子の回転は抑制され粘度は急激に大きくなる.せん断流による影響から磁気力による影響へ移行すると,粘度の曲線にオーバーシュートが現れる.これは,粒子配向の磁場方向からの平均的なずれに最大値が存在することに起因するものである.磁場による影響が圧倒的に大きくなると,粒子は磁場方向に漸近するので粘度は一定値に近づく.棒状粒子のアスペクト比が大きいほど流れ場中で大きな抵抗となるのでより大きな粘度増加を示す.
移動現象,流体力学,混合
  • 門叶 秀樹, 原田 英二, 栗山 雅文
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 移動現象,流体力学,混合
    2001 年 27 巻 6 号 p. 792-798
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    高粘度液気泡塔において溶存酸素の放散実験より塔内の液側物質移動容量係数を求めると共に,ガスホールドアップの測定を行った.測定は液位および塔径を種々変え,また試料液粘度も変化させて行った.これらの測定は,ガス空塔速度が5mm/s以下の比較的小さな領域で行った.
    物質移動容量係数は液位が高くなると小さくなるものの,塔径に対する液位の比がある値以上になると各々の条件に応じた一定値を示すことが分かった.これを踏まえて,広範囲の操作条件にわたって適用可能な物質移動容量係数の推定式を得た.
    ガスホールドアップは液粘度の増加と共に増加すること,並びに液位にほとんど依存しないことを指摘し,これに関する新たな実験式を導出した.
触媒,反応,反応器設計
  • 白井 裕三, Makoto Kobayashi, 布川 信
    原稿種別: 技術論文
    専門分野: 触媒,反応,反応器設計
    2001 年 27 巻 6 号 p. 771-778
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    高温で石炭ガス中のH2Oを除去する酸化鉄系ハニカム脱硫剤の硫化反応速度を評価し,これを用いて,固定床におけるH2Oの破過特性を予測する反応モデルを検討した.
    固定床流通式反応器においては,ガス流通初期に脱硫剤とH2Oが反応する反応帯が生成し,この反応帯が定形のまま一定速度で移動し,固定床出口に達した時,H2Oは破過を開始するとしたモデルを基に簡易にH2Oの破過特性を予測できる固定床反応モデル式を導出した.また,同時に未反応核モデルを基に脱硫剤とH2Oの反応速度を表す近似反応速度式および反応速度の推算に必要な細孔内拡散係数を明らかにした.この脱硫剤の近似反応速度式と固定床反応モデル式より脱硫剤のH2O除去特性を予測し,試験結果と比較した結果,ほぼ一致することが確認でき,妥当性が検証できた.
  • 宍戸 昌広, 大久保 恵輔, 斎須 要文
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 触媒,反応,反応器設計
    2001 年 27 巻 6 号 p. 806-811
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    グルコースの超臨界水酸化に及ぼす酸素濃度の影響について検討した.グルコ-ス酸化の化学量論比的酸素量に対して,50-250%の酸素量に相当する過酸化水素を供給し,ガス状生成物(C0,CO2,H2,CH4)の生成速度に及ぼす酸素濃度の影響を検討した.実験条件は,温度400-470°C,圧力18.5,25.5MPa,滞在時間~30secである.その結果,これらのガス状生成物の収率に及ぼす酸素濃度の影響は小さいこと,ガス状生成物量は滞在時間5秒までは急激に増加するものの,その後は頭打ちになることがわかった.そこで,ガス(C0+C02+CH4)の生成速度がグルコース濃度の一次に比例するとして,便宜的な速度解析を試みた.その結果,反応の初期段階のみ-次反応として表現できた.見掛けの速度定数のアレニウスプロットから,頻度因子の比は酸素濃度の比にほぼ等しいことがわかった.
  • 大森 隆夫, 中岩 勝, 遠藤 明, 秋谷 鷹二, 雨宮 隆, 山口 智彦
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 触媒,反応,反応器設計
    2001 年 27 巻 6 号 p. 812-818
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    固定層触媒反応器を用いて,メタノールから軽質オレフィンを合成する反応系について,目的生成物であるエチレン・プロピレンの収率を向上させ系の効率化を図ることを目的として,反応器壁面温度を軸方向にサイン波状に周期的に設定し,副生成物のペンテン・ブチレンのリサイクルを行う場合の系の挙動についてシミュレーションにより検討した.その結果,周期的温度設定とペンテンのリサイクルにより,壁面温度が一様でリサイクルを行わない場合と比較して,最大でエチレンおよびプロピレンの収率がそれぞれ約33%および約16%増加することがわかった.また,ブチレンのリサイクルを行う場合に,エチレンとプロピレンの生成比を1.60~6.05の範囲で変化させられることが示された.これは,同一の反応器を用いても温度分布の設定とリサイクル比を変えるだけで,必要に応じてエチレンとプロピレンの組成を変えた生産が可能であることを示唆する結果である.
材料工学,デバイス
  • 前背戸 智晴, 北岡 俊男, 鳥生 眞吾, 藤井 知, 小舟 正文
    原稿種別: 技術論文
    専門分野: 材料工学,デバイス
    2001 年 27 巻 6 号 p. 761-764
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    母材金属の鋼種が剥離に及ぼす影響について検討した.母材金属と下粕層の接合界面部及び剥離面の分析結果から腐食について考察を行った.また,有限要素法による応力分布解析から剥離の発生原因について検討した.
    オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)を母材に用いた試料でのみ短期間でグラスライニング層の剥離が発生した.母材及びグラスライニング層の剥離面のxps分析の結果,いずれの剥離面においてもSi,Cr,Feは酸化物として存在し,Niが存在しないことがわかった.SUS304を母材に用いた場合,酸化物層内に生成するスピネル型酸化物(NiO or FeO)-Cr2O3と下粕が反応し,耐食性の低い部分が生成することで接合界面部の腐食が発生するものと推察した.有限要素法による応力解析の結果から,母材金属と下粕層の接合界面部の腐食の先端部付近で大きな剪断応力が発生することがわかった.
分離工学
  • 緑 静男, 鄭 双寧, 山田 幾穂
    原稿種別: 技術論文
    専門分野: 分離工学
    2001 年 27 巻 6 号 p. 756-760
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    これまで,例えばエタノールの脱水など,原2成分系に均一系共沸点が存在する系の成分分離には,新しく不均一3成分系共沸混合物を形成するあるエントレーナーを加え,通常の蒸留塔2本から構成される2塔共沸蒸留システムにより原2成分系の成分分離が常用されてきた.本報では通常の3成分系分離に対してWrightらが示した垂直分割型カラムに改良を加え,従来の2塔システムとは異なり,単に1本の塔のみで共沸蒸留が可能な,塔頂にコンデンサー1基,塔底にリボイラー2基をもつ新しい垂直分割型共沸蒸留塔を提案する.そして,シクロヘキサンをエントレーナーとしたエタノ-ル脱水を例にとり,シミュレーションにより従来の2塔システムと比較し,本塔の有用性を示す.特に,90wt%エタノール原液を脱水する場合,従来法より,約7%の省エネルギー効果が期待できることを確認した.
粉粒体工学,流動層
安全,環境,エネルギー
  • 瀬谷 彰利, 只野 一郎
    原稿種別: 技術論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2001 年 27 巻 6 号 p. 765-770
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    リン酸形燃料電池は,発電により蒸発するリン酸を補う余剰リン酸をセル内に貯蔵しており,余剰リン酸は,発電中に燃料極側へ偏在している.この余剰リン酸は,燃料極のリブつきプレートと基材の毛細管力が等しくなるように両部材間で分布する.燃料極基材中の余剰リン酸体積がその空孔の30%程度まではほとんどセル電圧に影響を与えないが,40%を越えると基材中の水素の拡散性が低下し,セル電圧に影響を与える.その場合,リン酸が基材内に無い場合の1/10程度の拡散性能であると推定された.燃料基材中のリン酸量が上述したセル電圧に影響を与えない範囲になるように,セル内余剰リン酸量を設定する必要がある.また,このような余剰リン酸量を増加させるためには,基材より大きい毛細管力分布(小さい細孔径分布)をもつ部材を燃料極のリブつきプレートに使用する必要がある.
  • 大野 雄輝, 趙 黛青, 山下 博史, 古畑 朋彦, 新井 紀男
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2001 年 27 巻 6 号 p. 779-785
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    燃料過渡燃焼におけるNO生成および水蒸気噴射によるNO低減技術に関する研究が近年注目されているが,水蒸気添加型ガスタービン燃焼器のような水蒸気を添加した高温・高当量比(F/A)の燃焼場におけるNOの生成機構に関する検討はほとんど行われていない.本研究では,燃料過渡メタン-空気対向流予混合火炎について,詳細素反応機構を用いた数値計算によりN0生成機構の検討を行った.まず,当量比1.3および2.0の条件について,水蒸気を添加しない場合の燃焼特性を解析し,当量比がN0生成機構に与える影響を明らかにした.ついで,水蒸気添加による燃料過渡火炎中のNO生成抑制機構を解析し,燃料過渡燃焼の場合,水蒸気添加が火炎温度低下およびNO生成抑制に与える効果は当量比が大きくなるに伴い小さくなることがわかった.さらに,燃料過濃燃焼における水蒸気添加によるNO生成抑制機構として,火炎温度低下という物理的効果と添加された水蒸気との反応に起因するCHラジカルの減少によるNO生成反応の抑制という化学反応論的な効果があることを見出した.
  • 山本 秀樹, 部屋本 範幸, 高見 優子, 芝田 隼次
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2001 年 27 巻 6 号 p. 786-791
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    ポリビニルアルコール(PVA)を主成分とし,ホルムアルデヒドで一部を架橋して調製された親水性高分子ゲル(PVA高分子ゲル)は,温度変化に伴って体積が膨潤・収縮する感温型の高分子であることを明らかにした.水中におけるPVA高分子ゲルの体積は,外部溶液の温度の上昇に伴って急激に収縮した.ゲル体積は275K~310Kの温度範囲で最大約35%収縮した.
    一方,このPVA高分子ゲルに対する1,2-ジクロロエタンの吸着量は,310K以上で急激に増加することを確認した.温度スイングに対するPVA高分子ゲルの体積変化と1,2-ジクロロエタン吸着量変化はどちらも310K付近を境に可逆的に行われた.
  • 田中 耕太郎, 藤井 孝博, 本多 武夫
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2001 年 27 巻 6 号 p. 819-823
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2008/12/30
    ジャーナル 認証あり
    アルカリ金属熱電変換(AMTEC)の高温側熱供給温度を900K程度まで低下させる低温作動型セルに関して報告する.外径3mmのβ″アルミナ固体電解質管と内径50μmの毛細管より構成される小型発電素子を作製し,その出力特性を測定した.また交流インピーダンス測定を分極条件下で実施し,内部抵抗成分に関して検討を行った.Mo多孔質電極の電極面積あたりの最大出力密度は900Kにおいて0.13Wcm-2と測定された.これらの測定結果をもとに,複数の素子を近接して容器に収める際に生じるカソード側Na蒸気流れ損失の発電性能に及ぼす影響を解析した.その結果として,容器底面積に対する素子断面積の比が0.4の条件において,容器底面積あたりの出力密度が最大値0.71Wcm-2となることを明らかにした.低温作動化により電極面積あたりの出力密度は低下するが,高性能Mo電極の使用が可能であること,熱源との熱交換特性の向上とセル内の熱損失低減が期待できることを考慮すると現状の高温作動型(1,100K)と比較して低温作動型が十分可能性のある方式となることを明らかにした.
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