我々は生細胞と死細胞の誘電率の違いに着目して誘電泳動現象を培地中での細胞分離に適用した.本論文では,酵母,大腸菌,動物細胞の誘電泳動現象に及ぼす印加交流電圧の周波数依存性を検討すると共に細胞捕集法に関しても検討した.
細胞懸濁液をピン-プレート電極を設置した泳動セルとワイヤー-円筒電極を設置した泳動セルに満たし,電極間に交流電場を印加した.電場強度は2×10
3V/mから1×105V/mと周波数は1kHzから1MHzの範囲でそれぞれ変化させた.
いずれの細胞でも,1MHzの周波数で生細胞が捕集でき,この周波数では死細胞は全く捕集されなかった.電場強度を-定にした場合,生細胞の捕集速度は電極間距離の増大に伴って増大した.定電圧の場合,電極間距離が5mm以下であれば,生細胞の捕集速度は一定値を維持した.生細胞の捕集速度は,培地の電気伝導度に大きく影響を受け,300µS/cm以上の電気伝導度では捕集されなかった.生細胞の捕集速度に関する最適な電気伝導度は100µS/cmであった.
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