都市ごみ溶融飛灰に塩化剤として廃塩酸を含浸させ,飛灰中に含まれるCa分(Ca(OH)
2)が銅,鉛,亜鉛の塩化揮発挙動におよぼす影響について模擬飛灰・都市ごみ溶融飛灰を用いて検討した.
その結果,Ca(OH)
2を含有しない模擬飛灰に対し塩酸含浸・加熱処理(1,123K)を行ったところ,銅,鉛および亜鉛の揮発率は96%以上となった.一方,Ca(OH)
2量が増加するにつれて鉛,亜鉛および銅の揮発率は低下した.塩酸含浸処理後のCa(OH)
2含有模擬飛灰とCaCl2含有模擬飛灰の銅,鉛および亜鉛の揮発挙動がほぼ一致したことから,塩酸によって模擬飛灰中のCa(OH)
2がCaCl
2の生成を介して重金属の塩化揮発に作用したことが推測された.Ca含有量の異なる都市ごみ溶融飛灰に対し,重金属およびCa含有量に対して1.2当量の塩酸含浸・加熱処理を行ったところ,飛灰種によらず鉛,亜鉛は99%以上の揮発率が得られ,銅の揮発率は10–20%から35–60%に向上した.銅は,Ca含有量の多い都市ごみ溶融飛灰ほど,揮発が進みにくいことがわかり,実験後の固体残渣表面のSEM/EDS観察結果により,加熱処理中にCaCl
2溶融物の生成が推測されたことから,これらのCaCl
2溶融物が,本実験温度(1,123K)では蒸気圧が低いCuCl
2の表面を覆うことによって揮発阻害を及ぼしたことが考えられた.
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