化学工学論文集
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30 巻, 5 号
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[特集] 粒子 ・ 流体系分離工学の展開
  • Mohammed S. JAMI, Than OHN, 入谷 英司
    2004 年 30 巻 5 号 p. 561-567
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
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    水の循環利用を目的として, 下水処理場から流出する二次処理水を対象とした周期逆洗型精密濾過の性能を評価した. 操作は定速および定圧条件で行い, 両者の濾過特性を比較した. 得られた濾液には大腸菌が含まれず, 都市における親水用水として再利用が期待できる. 濾過の進行とともにケーク形成と膜細孔の閉塞が生じ, 定速濾過では圧力が上昇し, 一方, 定圧濾過では膜透過流束が減少した. 逆洗はケーク抵抗の低減に効果的であったが, 逆洗回数の増加とともに膜細孔の不可逆的な閉塞は次第に進行した. ケークの生成過程は圧縮性ケーク濾過モデルにより, また細孔閉塞過程は2段階の中間閉塞法則により記述できた. その結果, 周期逆洗型定速濾過の実験データに基づき, ケーク生成と細孔閉塞を記述するこれらのモデルを利用して, 周期逆洗型定圧濾過における濾過挙動を比較的精度良く推定できることがわかった. また, 周期逆洗型定圧濾過によれば, 処理速度をほぼ一定値に保てることを, 実験と計算の両面から明らかにした.
  • 藤崎 一裕
    2004 年 30 巻 5 号 p. 568-573
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    この論文は横流式沈殿池の処理効率を増大させる手法を検討したもので, 沈殿池内に設置される新しい装置を提示し, その有効性を示したものである.
    大都市で広く採用されている合流式下水処理方式では, 豪雨時には流入量が急増するため, 流入下水の多くが簡易処理のみで放流されていた. 最近この簡易処理のみで放流される排水による水域汚染が問題となり, 下水処理場の処理能力の増強が求められている. この研究は, この問題に対する一つの解決策として, 沈殿池の水表面積を増やすことなく, その処理能力の増強をはかる手法を開発することを目的としている.
    まず, 横流式矩形沈殿池の挙動について, コンピュータシミュレーションを行い, 現存の沈殿池の流入負荷増に対する処理能力の限界を示した.
    新しく開発した手法は, 傾斜板沈殿池の考えを応用したものである. 通常の傾斜板は水平に配置されるが, 本研究ではこれを鉛直に多数並べて設置した. 傾斜板の左右両端を閉じて断面が矩形の傾斜管とし, 個々の沈降管内の上澄水を吸い上げて採取する方法について検討した. この点がこの研究の独創的な点である. 個々の沈降管はそれぞれが小さな沈殿池として機能するため, 処理能力は沈降管の数に比例する. さらにこの方式は傾斜管を鉛直に並べるため, 沈殿池の水表面積の制約を受けることが少ない.
    室内実験と数値解析によりこの方法の有効性を確かめた. また, この手法を実際の沈殿池に応用するための試算では, 現在の沈殿池の5倍以上の流入量の沈降濃縮処理が可能という結果が得られた.
  • 浜田 豊三, 中塚 修志
    2004 年 30 巻 5 号 p. 574-580
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    活性汚泥のダイナミック濾過に及ぼす支持体および活性汚泥性状の影響を調べるため, 目付量3.0×10-2−0.18 kg・m-2の不織布および開口径44−100 μmのステンレス製ネットを用いて, 濾過圧力0.3 kPaの条件下にて種々の活性汚泥の濾過を行った. 支持体間で初期透水速度に顕著な違いは見られなかったが, 不織布に比べてステンレス製ネットを用いた場合, 高い透水速度が長期間維持できた. 開口径77 μmのステンレス製ネットを用いて, MLSS濃度9.0−14 kg・m-3の7種類の活性汚泥に対するダイナミック濾過を行った. 平均濾過比抵抗αavをそれぞれの活性汚泥に対して算出したところ, 2.4×109−5.6×1011 m・kg-1であった. αav値は, 活性汚泥の平均粒径 (d), および沈降試験後の上澄み液に存在する活性汚泥の平均粒径 (du) が減少するに従い増加した. さらに, αav値は30分間の沈降試験後の上澄み液に存在する活性汚泥濃度Cuが増加するに従い増加した. これらの結果から, 活性汚泥のダイナミック濾過において, d, duおよびCu値は分離性能を決定する重要な因子となることがわかった. ステンレス製ネットを支持体として, 濾過面積0.2 m2にて下水処理場の活性汚泥のダイナミック濾過を20日間以上行った結果, 透水速度および濾過液中の活性汚泥濃度は, Cu値に大きく依存することが観察された.
  • 川崎 健二, 松田 晃, 中山 浩次, Chandika P. BHATTA, 野間 雄一, 大森 大輔
    2004 年 30 巻 5 号 p. 581-586
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
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    精密濾過中空糸膜モジュールを用いた浸漬型膜分離活性汚泥法のベンチスケール装置による合成排水の処理実験を, 膜透過流束一定の条件でBOD容積負荷や汚泥滞留時間 (SRT) などを変化させて行い, 各種濾過抵抗の挙動について検討した. SRTが短い場合は生物相が安定せず, 溶存有機物を良好に処理することができないため, 膜および付着汚泥 (ケーク) の濾過抵抗が急激もしくは不規則に増加し, 安定した排水処理を長期間続けることはできなかった. SRTが長くBOD容積負荷が低い場合は, 各濾過抵抗を長期間低く保つことができ, 所要吸引圧力を低く維持した処理を行うことができた. 汚泥の引き抜きをほとんど行わないSRT=500 dの場合, 反応槽内の活性汚泥はほとんどの微生物が安定期にあり, ケーク濾過抵抗の割合は非常に小さく, 汚泥は濾過しやすい性状になった.
  • 川崎 健二, 松田 晃, 山下 洋之
    2004 年 30 巻 5 号 p. 587-591
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
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    下水または排水処理に一般に用いられている活性汚泥処理では曝気槽内の活性汚泥が非常に沈降しにくいバルキング状態になることがあるが, その場合最終沈殿池における固液分離が困難になるため下水または排水の処理を継続できなくなる. また, 一般の下水処理施設から出る余剰活性汚泥は非常に脱水しにくいことが知られているが, 我々はその固液分離特性が凍結融解処理によって顕著に改善されることを明らかにしてきた.
    本報においては, グルコースとペプトンを基質として馴致して得たバルキング汚泥と正常な固液分離特性を有する汚泥に凍結融解処理を施して固液分離特性に及ぼす影響を調べ, 下水処理場から採取した下水汚泥との比較も行った. その結果, 凍結融解処理を行うと全ての汚泥の沈降性は改善され, フロックも緻密になることがわかった. また, バルキング汚泥は他の汚泥に比べて濾過しにくいが, 凍結融解処理による濾過特性の改善の程度は他の汚泥と同じであることもわかった.
  • 福田 正, 小島 義弘, 松田 仁樹, 瀬戸 富士夫, 柳下 幸一
    2004 年 30 巻 5 号 p. 592-597
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
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    めっき廃水に含まれる各種金属の硫化物化による沈殿分離, 回収を目的として, 微粒化傾向の大きい銅について硫化物化の基本特性ならびに沈殿物のろ過特性を調べた. 実験は, 銅模擬めっき廃液 (濃度20, 100, 250 mg/dm3) および実めっき廃液 (Cu, Zn, Ni濃度各100 mg/dm3) を用いて3種類の硫化剤 : Na2S, Na2S2およびNa2S4を規定のpH下で添加し, 銅の硫化物化を行った.
    その結果, Na2Sによって生成した粒子は最も小さく, 他の2種の硫化剤に比べ粒子の成長速度が遅いことが明らかにされた. pH 1.4-1.5に固定してNa2Sを添加した場合, 1.5 mol/mol-Cuまでは微粒化は認められなかった. 一方, pH 2.4-2.5ではNa2Sの添加量が1.0 mol/mol-Cuから微粒化がはじまった. 得られた銅の硫化物の平均ろ過比抵抗および圧縮指数はNa2S, Na2S2, Na2S4の順に小さくなっており, いずれも水酸化物に比べてろ過性は優れている.
    しかし, pH 2.4-2.5においてNa2S添加量1.0 mol/mol-Cuで得られ硫化物のろ過特性は水酸化物に比べて低下した.
  • 林 一彦, 片桐 誠之, 入谷 英司, 岩田 政司
    2004 年 30 巻 5 号 p. 598-603
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    重金属で汚染された難透水性土壌の浄化を目的として, イオン交換反応を利用した動電学的手法を提案した. 亜鉛で汚染されたベントナイトの圧密ケークを機械的圧搾法により調製し, Na+を注入する動電学的手法によるケークからの亜鉛の除去を検討した. 予備的に行ったベントナイトへのZn2+の吸着実験から, 吸着挙動がFreundlich式で記述できることがわかった. 吸着したZn2+は, 注入したNa+との陽イオン交換反応によりベントナイトから脱着され, さらに電気浸透流によって難脱水性のケークから効果的に除去された. 定常状態における液透過速度は電流密度に比例して大きくなり, 一方Zn2+の除去率は電流密度には依存しなかった. これらのことから, Zn2+の除去速度が電流密度に比例することが明らかとなった. さらに, 定常状態での透過液量に対する除去率の変化は, 添加亜鉛濃度の増加とともに顕著となり, ケーク厚さには影響されなかった.
  • 石川 敏, 下坂 厚子, 白川 善幸, 日高 重助
    2004 年 30 巻 5 号 p. 604-610
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
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    確率モデルと濾過試験にもとづき, 内部濾過構造を有する金属不織布濾材の粒子分離機構を解析した. まず, 薄層の金属不織布を単位厚さの濾材とし, その細孔径分布を画像解析により測定した. つぎに, それを積層することで様々な厚さの内部濾過濾材を作成し, 濾材の厚さと部分分離効率の関係を濾過試験より求めた. 金属不織布の場合, 積層枚数が増すにつれて分離粒子径は小さくなり, 同時に分離精度は高くなった. また, 細孔径分布の影響を明らかにするため, 金属不織布よりも均一な細孔径をもつ金網を同様に評価したが, 積層枚数を増しても分離粒子径はほとんど変化しなかった. 積層枚数を分離の試行数とみなすと, 濾材厚さと分離粒子径の関係は確率モデルにより表現することができ, 分離粒子径の予測が可能となった.
  • 古田 雅也, 向井 康人, 入谷 英司, 中倉 英雄
    2004 年 30 巻 5 号 p. 611-614
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    精密濾過膜の細孔径の簡易推算法の確立を目的として, 純水透過試験に基づく手法を検討した. 対称構造のセラミック膜について純水透過率を求め, Darcy式およびKozeny-Carman式を適用することにより, 細孔径を精度よく推算することができた. この推算法を発展させ, 2枚の対称膜を重ね合わせた複層膜について細孔径の評価を試みた. 複層膜の純水透過速度と下層膜単独での純水透過速度を求めることにより, 上層膜の細孔径が推算可能であることを示した. この手法に従い, 支持層の上にごく薄い膜層がコーティングされている非対称のセラミック複合膜の膜層の細孔径が評価可能であることを明らかにした.
  • 中倉 英雄, 則行 信達, 大佐々 邦久
    2004 年 30 巻 5 号 p. 615-620
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    濾過器への振動作用の付加は, 膜表面へのせん断掃流効果によって, 膜のファウリングを大幅に抑制することができる. 振動を伴うクロスフロー精密濾過特性に及ぼす振動パラメータの影響を検討するため, 二種類の粒子懸濁液を用いて実験的に調査した. 振動型クロスフロー精密濾過の定常濾液速度は, 振動パラメータ, すなわち, 振動数fvと振幅Avとの積によって, 定量的に評価可能なことが明らかとなった. 粒子付着確率モデルに, 振動パラメータの効果を適用することにより, 振動を伴うクロスフロー精密濾過過程を理論的に解析する方法を提案した. 本理論推定法による計算値は, ポリスチレンラテックス粒子懸濁液の実測結果と良い一致が得られた.
  • 山中 忠衛, 乾 滋, 須丸 公雄
    2004 年 30 巻 5 号 p. 621-625
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    平行平板層流系膜ろ過プロセスに関して, ろ過流速が一定のときのBermanの流動場の解に基づき, 物質移動の漸近摂動解析を行った. 流れ軸方向スケールが流路巾に較べて十分大きいという仮定の下で, 圧力と濃度差による膜透過が共存する一般的な系を扱った. 摂動解析によって, 物質収支式から, 溶質粒子の膜透過流束および膜表面濃度に関する常微分方程式が導かれた. 膜の外側の溶質濃度を0とした同次境界条件の下で, 漸近常微分方程式に基づき, 物質移動係数およびシャーウッド数の近似解を得た. 得られた結果は, 固有関数展開による級数解と比較され, ろ過流束が十分小さい漸近状態において, 良い近似を与えることが示された. 提案された漸近解析法は, 従来の境膜理論を拡張したものであり, 低レイノルズ流系を含む各種の層流系膜ろ過プロセスの物質移動モデル化に応用できると考えられる.
  • 岩田 政司, 佐藤 元洋, 長瀬 治男
    2004 年 30 巻 5 号 p. 626-632
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    定電流条件下の電気浸透脱水過程を記述する簡便な方法を得るため, 脱水速度の尺度である修正圧密係数と脱水の推進力である電気浸透圧勾配を一定値として扱い, 基礎偏微分方程式を解析的に解き, 固体圧縮圧力分布と脱水の進行度を表す平均圧密比の経時変化を与える理論式を得た. 均質なベントナイトケークを実験試料に用い, 0.125−4 A/m2の定電流密度での電気浸透脱水実験を行い, 試料厚さの経時変化と最終空隙比分布を測定した. 実測値とのフィッティングにより求めた修正圧密係数と電気浸透圧勾配は, 電流密度とともに増加する傾向を示した. 最終空隙比分布の理論計算値は, 全実験範囲において, 実測値と良好な一致を示した. 電流密度<1 A/m2では, 平均圧密比の理論値と実測値は良好に一致した. 一方, 電流密度>1 A/m2においては, 脱水過程の前半においては実測値と良好に一致したが, 後半においては計算値の方が実測値より早く収束した. 後半における実測値との不一致は, 高脱水速度において現れる試料のクリープ的挙動に起因するものと思われる.
  • 吉田 裕志, 藤本 武, Hishamudi HASSAN
    2004 年 30 巻 5 号 p. 633-635
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    電気浸透脱水法における電場印加方法としては一般に定電圧あるいは定電流の操作条件を用いて実験的検討が行われてきているが, 脱水の進行に伴ってスラッジのような脱水試料を挟む電極間の電気抵抗が増加するときは, 定電流操作では印加電圧の増加によって強制的に停止する必要があるのに対して, 定電圧操作では電流がしだいに減少して脱水が終了するようになる. また, 脱水過程の電極間の電気抵抗の増減は脱水試料の電気的, 物理的特性に依存する. このような電気浸透脱水特性を考慮して, 本研究では, 定電流および定電圧条件の組合せ操作について実験的検討を行い, 脱水量や脱水量に対する消費電力効率の見地から, 組合せ方法と組合せ操作の有効性を明らかにした.
  • 岩田 政司, 小川 竜司
    2004 年 30 巻 5 号 p. 636-639
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    ポリアクリル酸塩系架橋ゲルの応力緩和について研究した. 材料が平衡状態に達する前に, 圧縮あるいは膨張変形を停止させると, 材料の応力は減少あるいは増加する. 定圧あるいは定速条件下での, 球状ゲル充填層の圧縮または膨張実験を中断し, 層の厚さを一定に保ったときの, 応力の変化を測定した. 最終平衡応力の値は, 圧縮あるいは膨張変形が, 定圧条件であるか定速条件であるかにはよらず, 緩和開始時の平均圧密比あるいは平均膨張比により一意的に定まることが明らかとなった. ゲルの膨潤圧と外圧との差を有効浸透圧と定義し, これを用いて緩和過程を解析した. 計算値は実測値と大略一致しており, 有効浸透圧を用いてゲル充填層の緩和挙動が記述できた.
  • 梁 寛植, 吉田 英人
    2004 年 30 巻 5 号 p. 640-646
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    サイクロンスクラバーにおいて噴霧液量を低減しても高い粒子捕集性能を得るための手法について実験および数値計算により検討した. 数値計算では粒子の壁面飛散率が0%と50%の場合についてサイクロン内の粒子沈着位置を検討し, また, 実験では噴霧液に表面活性剤を添加し濃度が捕集効率に及ぼす影響を調べた.
    粒子径1.0, 2.5 μmの場合, 数値計算の結果から, 主として粒子はサイクロン円筒部および円錐部下部に多く沈着することがわかった. よってサイクロンスクラバーで洗浄集じん効果を高めるには, 噴霧するミストの供給位置は円筒部上部が有効である. さらに, 実験結果から噴霧液に表面活性剤を添加することで, 同じ噴霧量で水を使った場合より捕集効率は向上した. この理由は, 表面活性剤の添加で, 噴霧液の表面張力が低下し, 粒子が噴霧液に濡れやすくなったことと噴霧ミスト径が小さくなったため生じたと考えられる.
    これらの結果により, サイクロンスクラバーにおいて噴霧液に表面活性剤を添加することが捕集効率の向上と噴霧液の節減に有効であることがわかった.
移動現象,流体力学,混合
  • 久木崎 雅人, 中島 忠夫, 宋 軍, 小濱 泰昭
    2004 年 30 巻 5 号 p. 654-660
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    分相法により調製した細孔径の均一な多孔質ガラス膜から, 1 μm以下の平均気泡径を有する単分散状の微細気泡 (ナノバブル) の生成法を見出した. また, 膜の細孔径を変えることにより, 生成した気泡の気泡径を制御できることを明らかにした. 管状多孔質ガラス膜の内側に, 濃度が1.7 mol・m-3のドデシル硫酸ナトリウム水溶液を流しながら, 水相の流れに対して膜の外側から直角方向に空気を圧入分散したとき, バブルポイント圧を超える一定の圧力域において単分散状の気泡が生成した. この条件下で, 平均細孔径0.084 μmの膜から, 平均気泡径0.72 μmのナノバブルが生成した. また, 使用した膜の平均細孔径と平均気泡径の間には, 良好な比例関係が存在した. 一方, 膜の表面を疎水化した場合は, バブルポイント圧は観測されず, 多分散状の気泡が生成した. 膜の表面が親水性であっても, 水相に溶解したドデシル硫酸ナトリウムの濃度が1.7 mol・m-3より減少すると, 単分散状の気泡は生成されなかった.
  • 稲垣 照美, 佐藤 京子, 浅井 香敦
    2004 年 30 巻 5 号 p. 685-696
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    本研究は, 垂直平行平板間における自然・強制共存対流の乱流輸送機構について, 乱流モデルによる数値シミュレーションから現象を考察したものである.
    乱流フラックス中に加味した浮力項は, 乱流プラントル数の挙動をより現実的かつ物理的に再現するうえで重要であることがわかった. また, 修正したダンピング関数は, 並行流および対向流共存対流の乱流輸送機構を模擬するうえで有効なものであることが, 実験値やDNSデータベースとの比較・検証からも確認することができた. したがって, 修正したダンピング関数を適用し, 修正した乱流モデルは, 乱流プラントル数の挙動をより現実的かつ物理的に再現できるだけではなく, 並行流の伝熱劣化や局所的な逆流が生じる対向流の伝熱促進を効果的に模擬するのに有効な手段となりうることが明らかとなった.
  • 西尾 拓, 高橋 幸司, 渋谷 純一, 的場 誠二
    2004 年 30 巻 5 号 p. 721-725
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    通気量がきわめて多い系においてタービン翼, スカバー翼, 傾斜パドル翼up-pumpingの気液混合について比較検討した結果, 傾斜パドル翼up-pumpingに対してガス吹き込みを向流で行うことにより, 25 vvmにおいても撹拌動力の低下なしにフラッディングが抑制できることが明らかとなった. これは, 傾斜パドル翼up-pumpingに対しガス吹込みを向流で行うことで, 気泡微細化と同時に, 安定的に液流動の供給が可能となることに起因する. また今回得たデータをもとに, 通気量の多い系におけるフルード数Frと通気係数Flgの相関式を得た.
  • 亀井 登, 平岡 節郎, 加藤 禎人, 多田 豊, 山本 洋祐
    2004 年 30 巻 5 号 p. 738-743
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    パドル翼および傾斜パドル翼を備えた乱流撹拌槽に邪魔棒 (丸棒状の邪魔板) を取付けた場合の撹拌所要動力について検討した. まず, 邪魔棒の半径方向への取付け位置の影響を調べ, 邪魔棒を槽壁からある程度離すと一定値を取ることを明らかにした. さらに, 邪魔棒を槽壁面へ取付けた場合の動力数Npwおよび槽璧面から離して取付けた場合の一定値Npiのそれぞれに対して, 撹拌翼形状および邪魔棒条件を組み込んだ相関式を提案した. また, 邪魔棒を円周方向だけでなく半径方向に複数本取付けた場合の動力数についても相関式を提案した.
触媒,反応,反応器設計
  • 原田 英一, 熊田 憲彦, 森下 雄成, 阪田 祐作
    2004 年 30 巻 5 号 p. 647-653
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    同一装置で1段ガス化と2段ガス化試験の実施が可能な石炭投入量25 t/dの噴流床石炭ガス化炉を用いてガス化試験を実施し, 高温高圧の実ガス化条件で生成したガス化チャーのガス化反応特性について, 熱重量分析により検討した. その結果以下の点が明らかとなった.
    1) 高温雰囲気の1段ガス化運転において生成されたチャーのガス化速度は, 高温ガス化と低温ガス化を組み合わせた2段ガス化運転で生成されたチャーに比べて小さい.
    2) 2段ガス化運転で生成されたチャーは, 1段目の高温ガス化部で生成する小粒径粒子と, 2段目の低温ガス化部で生成する大粒径粒子の混合物であり, ガス化反応は, 両者の合成された形として2段階で進む.
    3) 2段ガス化により生成されたチャーの内の小粒径粒子のガス化速度は, 大粒径粒子に比べて小さく, 1段ガス化チャーのそれと近い数値を示す.
    これにより, 1段ガス化プロセスと2段ガス化プロセスの特性比較に有効な知見を得た.
  • 辻 俊郎, 佐々木 玲, 岡島 聡, 増田 隆夫
    2004 年 30 巻 5 号 p. 705-709
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    ポリオレフィン類廃プラスチックの水蒸気改質を, 水素製造を目的として, 検討した. プラスチックを低温で熱分解して得た油を, 市販のNi坦持アルミナ触媒を用いて, 600-800℃で水蒸気改質を行い, ガスの生成量, ガス成分, 炭素転化率, コーキングの程度を調べた. ポリエチレン, ポリスチレンの分解油とも700℃以上で非常に高い炭素転化率でガス化し, ガス組成は水性ガス転化反応と一酸化炭素のメタネーションの, 二つの反応からなる平衡組成に非常に近い値となった. 水素比率の少ないポリスチレン分解油の方が, コーキングの割合が高く, 800℃でコーキングの割合は最小となった.
材料工学,デバイス
  • 下坂 厚子, 大谷 真史, 白川 善幸, 日高 重助
    2004 年 30 巻 5 号 p. 697-704
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    焼結プロセスにおける微構造制御を目的に, モンテカルロ法を利用した三次元微構造形成挙動シミュレーション法を提案した. 本手法は基本的に時間の概念を含んでいないモンテカルロ法に拡散過程を素過程とする時間概念を取入れ, 焼結過程における微構造形成挙動と支配因子との関係を定量的に検討可能とした.
    結晶粒, 粒界, 気孔の三相を設定したアルミナ粒子焼結挙動をシミュレートした結果, Monte Carlo Stepの増加とともに系のエネルギーが減少し平衡状態に推移する過程で, 粒成長や粒界の移動にともなって緻密化していく焼結現象が再現された. 焼結実験に一致する昇温, 保持, 冷却過程を取り込んだシミュレーション結果は実験における粒成長速度と非常によく一致し, 提案したMonte Carlo Stepと実時間を対応づける手法の有効性を確認した. さらに任意の条件でシミュレーションを行い, 昇温速度を含めた焼結温度および原料粒子の粒径分布および充填状態が微構造形成挙動や気孔移動に及ぼす影響を定量的に明らかにした. 本手法より得られる情報は, 希望の特性を発現する微構造を正確に形成する焼結条件の最適設計を可能とする.
分離工学
  • 重本 直也, 柳原 哲, 杉山 茂, 林 弘
    2004 年 30 巻 5 号 p. 668-673
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    炭酸カリウム水溶液を用いる溶液吸収法は, 燃焼排ガスからCO2を回収するための優れた方法のひとつであるが, 捕捉したCO2を回収する際に溶媒である大量の水を加熱するため, 多量のエネルギーを消費する.
    そこで, このエネルギーの削減を目指し, 炭酸カリウムを活性炭に担持させ, 固定床操作に適用した. 炭酸カリウムを担持した活性炭ではCO2捕捉時に湿性ガス中の水分の影響を受けないことが実験室規模の試験により既に確かめられている. 炭酸カリウムは活性炭の細孔にその水和物として保持され, CO2の捕捉および脱離の繰り返し操作はK2CO3・1.5H2O+CO2=2KHCO3+0.5H2Oの反応およびその逆反応により起こった.
    本研究では, ベンチスケールのカラム (内径54.5 mm, 長さ800 mm, 内容積1.87 L) を用いて, この炭酸カリウム担持活性炭の性能を調べた. 炭酸カリウム担持活性炭 (26.4%K2CO3) 1.20 kgを充填したカラムに湿性13%CO2ガスを通気してCO2を捕捉したのち, 蒸気を通気してCO2を脱離した. 脱離ガスを熱交換器で冷却し, 水分を凝縮することにより, 高純度のCO2が得られた. ベンチスケールでのCO2捕捉—脱離および冷却挙動を明らかにした. また, CO2回収時のエネルギー消費量を推定した.
粉粒体工学,流動層
  • 佐藤 豊幸, 小林 信介, 羽多野 重信, 板谷 義紀, 森 滋勝, 浅野 哲, 水谷 栄一
    2004 年 30 巻 5 号 p. 732-734
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
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    木質バイオマスの粉砕技術の開発は, これからの木質バイオマス有効利用を展開していく上で欠かせない技術である. 本研究では, ロッドやボールを粉砕媒体とした振動型ミルを用いて, 木質バイオマスの微粉砕を行った. 得られた生成微細木粉は50%粒子径が23.0 μmと細かく粉砕されていたほか, 粒子形状も球状に比較的均一に分布していた. また, 水を加えた湿式粉砕でも同様の実験を行った. 湿式粉砕では, 生成微細木粉の形状は乾式粉砕と異なり, 針状の微細木粉が製造されていた.
プロセスシステム工学
  • 遠藤 徹, 長本 英俊, 大島 榮次
    2004 年 30 巻 5 号 p. 710-714
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    油入変圧器の寿命を支配しているのは主として絶縁材料である. なかでも絶縁紙の経年使用に伴う機械的強度の低下は絶縁不良の原因となる. 絶縁紙の劣化機構は巻線の発熱によって高分子であるセルロースの解重合が起こり, 平均重合度が減少して機械的強度が低下し, 巻線の温度変化に伴う変形に追随できなくなると説明されている.
    本研究では, セルロースの平均重合度の低下機構を重合反応工学の観点から, モノマー間結合の開裂反応と捉え, 変圧器に生ずる損失熱による温度上昇の影響を考慮して, 寿命予測について考察を行い, 変圧器の設備保全の考え方を示した.
安全,環境,エネルギー
  • 佐藤 修一, 中村 正則, 大平 勇一, 小幡 英二
    2004 年 30 巻 5 号 p. 661-667
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    安価な脱硫剤を使用した高脱硫率で簡易な設備の開発に必要なエンジニアリングデータの取得を目標として, マグネサイトスラリー (主成分:炭酸マグネシウム) による湿式脱硫特性を検討した. マグネサイト鉱石を平均粒径12μm以下に粉砕処理することにより, 脱硫剤としてそのまま使用できることがわかった. 平均粒径12μmのマグネサイトスラリーとC重油排ガスを用いたパイロットプラントによる連続実証試験では, 脱硫率95%以上を維持し, 閉塞などによる運転上の不具合も認められなかったことから実用化の可能性を確認できた. さらに脱硫剤の反応率を高めるため, マグネサイト鉱石の改質についても検討を加え, マグネサイト鉱石に若干の熱エネルギーを与えることでマグネサイトスラリーの反応率を向上させることができ, 低コストで簡易的なプロセスおよび設備開発の目処を得た.
  • 飯尾 和典, 倉知 清悟, 小林 信介, 小林 潤, 羽多野 重信, 板谷 義紀, 森 滋勝
    2004 年 30 巻 5 号 p. 674-678
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    有機廃棄物のガス化ガス中の塩化水素除去を目的として, カルシウム系吸収剤を用いた乾式流動層型脱塩化水素装置設計および評価試験を行った. MCFCを用いた有機廃棄物のガス化発電プロセスではMCFCの機能低下や装置の劣化を防ぐため塩化水素濃度を10 ppm以下に維持する必要がある. 生成ガス中に含まれているCO2との反応の影響を考慮し, 化学平衡および反応速度の観点から最適なカルシウム系吸収剤の選択を行った. その結果, 消石灰 (Ca(OH)2) とHClとの選択的反応はCO2による炭酸化反応を抑制しながら573 K付近で起こることが明らかとなった. 消石灰を用いた流動層反応装置での脱塩化水素処理において, HClは, カルシウム (Ca) の反応率が約0.65に達するまでほぼ10 ppm以下に除去可能であることがわかった.
  • —振動乾燥機を利用した真空加熱分離方式によるPCB除去プロセス—
    田中 良, 小林 信介, 板谷 義紀, 森 滋勝, 水谷 栄一
    2004 年 30 巻 5 号 p. 679-684
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    絶縁油にPCBを含む電気機器からPCBを除去する方法の一つとして, 真空加熱分離方式が提案されている. この方式は真空下で加熱することによりPCBを含む絶縁油を処理対象機器から低温で分離することができるため, 対象機器と絶縁油およびPCBの変質を最小限にとどめ, 高い除去能力を持つことが特長である. しかし真空下で輻射伝熱によって処理物を加熱するため, その処理効率は極めて低いものとなっている. 著者らはこれまでの研究において, 真空加熱分離方式に振動乾燥機を新しく処理システムに導入し処理物を流動化させることで処理物加熱時間が大幅に短縮できることを示した. 本報では柱上変圧器構成部材である, 銅線, 絶縁紙, 活性アルミナに規定濃度のPCBを付着, 含浸させ真空加熱分離処理を行い, 真空加熱分離方式の基本的なPCB除去能力を検討した. 銅線, 絶縁紙については, 十分な除去性能が得られ, 活性アルミナについては, 加熱後の保持時間を延長することにより除去性能が向上することを明らかにした.
  • 野中 利瀬弘, 菅原 勝康, 菅原 拓男
    2004 年 30 巻 5 号 p. 715-720
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    一般廃棄物の焼却灰および煤塵をコークスベッド式溶融炉で溶融処理した際に発生する飛灰には, 多くの有用な金属が濃縮されている. 本研究ではこれら重金属の効率的な分離回収プロセスの開発に関する基礎データを取得することを目的とし, ポリ塩化ビニルや炭素粉末を添加したときの鉛および亜鉛の塩化揮発挙動を詳細に追跡した. 溶融飛灰にポリ塩化ビニルを混合し, 不活性雰囲気下において実験条件を変えた熱処理をそれぞれ行い, 鉛および亜鉛の揮発挙動を加熱温度ならびに保持時間をパラメータとして調べた. その結果, 塩素化剤としてポリ塩化ビニルを用いることにより1073Kで鉛および亜鉛をほぼ完全に揮発分離できた. また, 溶融飛灰試料に炭素粉末を添加し熱処理を行ったところ, 飛灰中金属の塩化揮発が促進され, 1073Kで鉛および亜鉛をほぼ完全に揮発できることが明らかとなった.
  • 成瀬 憲政, 小澤 祥二, 小島 義弘, 棚橋 尚貴, 松田 仁樹, 柳瀬 哲也
    2004 年 30 巻 5 号 p. 726-731
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
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    都市ごみに含まれるNaCl, CaCl2のCO2-H2O雰囲気下でのHCl発生挙動を調べた. 実験は粒径75-125 μmのNaCl, CaCl2を用いてガス流通式反応器内で温度623-1023 K, CO2濃度2.5-15 vol%, H2O濃度2.5-15 vol%, N2-balanceの条件で行った.
    その結果, NaClは623-723 Kではいずれのガス濃度においてもHClの発生は認められなかったが, CaCl2は623 K以上においてHClの発生を認めた. CaCl2およびNaClからのHCl放出速度は反応温度の上昇ならびにCO2およびH2O濃度の増加に伴って増大した.
    反応後の固体試料のSEM/EDS分析によるC, O, Cl元素の表面分布ならびにCHNコーダを用いてCの定量を行った結果, NaClからのHCl放出はCO2-H2OによるNa2CO3生成によって起こることが認められた. 同様にCaCl2は923 K以下ではCO2-H2OによるCaCO3の生成反応過程でHClを放出することが認められた. 一方, CaCl2は923 K以上ではH2Oとの反応によるCaO生成過程においてHClを放出することが確認された.
  • 石井 宏幸, 藤川 恵理子, 平田 房雄, 庄司 良
    2004 年 30 巻 5 号 p. 735-737
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
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    産業廃棄物である循環流動層ボイラーの石炭灰を有効利用するために, このボイラーの石炭灰からゼオライトを合成することが研究目的である. 循環流動層ボイラーの石炭灰からゼオライトPtがアルカリ水熱処理によって合成された. この石炭灰からのゼオライト合成の可能性をX線回析結果, 卓上小型プローブ顕微鏡による表面観察とアンモニウムイオンの吸着量によって評価した.
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