化学工学論文集
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31 巻, 2 号
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物性,物理化学
移動現象,流体工学
  • 湯 晋一, 梅景 俊彦, 松本 寛治
    2005 年 31 巻 2 号 p. 92-101
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/20
    ジャーナル 認証あり
    粒子群を連続体化するが,その仮想粒子のLagrangian軌跡を計算するSmoothed Particle Hydrodynamics法を粒子相の運動方程式の計算に適用して,気流相の運動方程式である気流・粒子間の相互干渉項を含んだNavier–Stokes式と連成して解くことにより,気泡流動層(2次元)の力学挙動の数値解析を行った.本研究では従来の連続体モデルにおいて最も大きな問題であった粒子相の応力の表現,すなわち構成関係に著者らが新しくDistinct Element Methodを用いて求めた結果(Matsumoto et al., 2004),(Yuu and Umekage, 2004)を用いた.計算結果を計算と同様の条件で得られた実験結果と比較したところ,よい一致が得られた.その結果,粒子数の制限を考慮する必要のない著者らが提案した連続体化モデルおよびSmoothed Particle Hydrodynamics法の適用などによる著者らの計算方法によって,粒子群に静止している部分と複雑に運動している部分が共在する気泡流動層に代表される高濃度粒子・流体系の流れ場を計算することが可能であることが示されたと考えられる.
粉粒体工学
  • 蓑嶋 裕典, 松嶋 景一郎, 篠原 邦夫
    2005 年 31 巻 2 号 p. 102-107
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/20
    ジャーナル 認証あり
    バインダーを含む分散系スラリーを回転ディスク型の噴霧乾燥機で造粒して調製される顆粒の粒度分布に関する考察を,既報のバルーンモデルをもとに行った.実験から,顆粒の粒度分布は初期噴霧液滴の粒度分布よりも広く,その傾向はバインダーの添加量が増加するほど顕著になることが確認された.これにより,液滴から顆粒になる際の収縮率は,液滴が小さくバインダーの添加量が少ないほど大きくなることが示された.
    これをバルーンモデルにより解析した結果,とくに小さな液滴は噴霧乾燥造粒装置の特性からバインダーの添加量による影響は小さく,バインダー添加量によらず収縮率が大きくなること,それに対し,大きな液滴ではバインダー添加量の増大に伴い粒子間凝集力が増すことから収縮率は小さくなることが説明できた.
反応工学
  • 都留 稔了, 大谷 由扶子, 吉岡 朋久, 淺枝 正司
    2005 年 31 巻 2 号 p. 108-114
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/20
    ジャーナル 認証あり
    多孔性管状支持体(細孔径1 µm)の表面にチタニアコロイドをコーティングすることでナノ細孔を有するチタニア多孔膜を作製し,光触媒膜型反応へ応用した.光触媒膜型反応では,チタニア多孔膜を透過しながら光触媒反応が起こるため,光触媒反応した溶液を膜透過側に得ることができる.ブラックライト(BL)を光源とする光触媒膜型反応を構築し,モデル溶質としてメチレンブルーおよびポリエチレングリコールを用いた.平均細孔径10 nmを有するチタニア膜では,BL照射を行わない場合,透過液濃度は供給濃度の約40%(阻止率約60%)を示した.BL照射を行った場合,透過側メチレンブルー濃度は,圧力,温度,供給液濃度に依存しているものの,供給液濃度の約5%程度まで低下した.分子篩による分離と光触媒反応を組み合わせることで,膜選択性を向上させることができることを明らかとした.さらに,BL照射を行なわない場合の体積透過流束は,メチレンブルー供給液濃度の増加とともに,ファウリングによって低下する傾向を示した.一方,BL照射においては,光照射のない場合と比べて体積透過流束は増大し,ほぼ一定の体積透過流束を示したことから,光触媒反応によって膜ファウリング物質の除去が可能となることを明らかとした.
  • 小島 紀徳, 内山 剛史, 村田 大輔, 加藤 茂, 渡邉 嘉之, 渋谷 博光
    2005 年 31 巻 2 号 p. 115-117
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/20
    ジャーナル 認証あり
    テトラメトキシシランからトリメトキシシランへの気相転換の可能性についての検討を,熱力学的解析および実験により行った.テトラメトキシシランは,トリメトキシシランから塩素系化合物を経ずに多結晶シリコンを製造するという,新たに提案されたプロセスでの副生物である.0.1 MPa, 1023 Kの条件で,Si–Cu触媒を用いることにより,1%を超えるトリメトキシシラン収率が可能であることが示された.
プロセスシステム工学,安全
  • 仲 勇治, 青山 敦, 志水 章雄, 浜田 和久, 亀田 勝好, 鍵山 喬, 松本 巌, 辻川 善雄
    2005 年 31 巻 2 号 p. 118-132
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/20
    ジャーナル 認証あり
    新しく導入される製品や製造プロセスの環境負荷低減への寄与を評価するためのライフサイクルアセスメント(LCA)と呼ばれる手法やそれを実行するためのソフトウェアツールへの需要が高まっている.しかしながら,現行のLCA手法やLCAツールの機能は,動的状態のモデル化とシミュレーション,方針,規則,管理手法や物流管理といった管理要因のモデル化,シナリオやモデル,評価基準の高度な管理機能の点で不十分であることがわかった.そこで本研究では,抽出されたLCAツールに対する要求を満たし,かつ高いモデルの再利用性および透明性をもつ製品ライフサイクルのモデル作成,シミュレーション環境としてGreen Production and Logistics Simulator(GPLS)を開発した.GPLSは,モジュラーモデリング,モデルテンプレート,多次元様式(MDF),プロセスインベントリー,品質・コスト・物流モデル化機能といった概念を採用しており単に製品やプロセスの環境負荷を評価するだけでなく,物質循環の動的変動や物質の蓄積,品質変化やサプライチェーン管理,各種規制などの環境およびコストへの影響を評価できる,施設の地理的な分布も取り扱えるという点で,従来のLCAツールに無い利点を持っている.また,GPLSのモデル構造は,モデルの高い再利用性と透明性を実現している.GPLSは,ソフトウェアシステムとして実装され,ボトル用PET樹脂ライフサイクルをケーススタディとして検証され各種シナリオを評価するためのツールとしての有効性が示された.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 前田 諭弥, 調子 健一, 三宅 義和
    2005 年 31 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/20
    ジャーナル 認証あり
    ブロック共重合体を鋳型として用いてヘキサゴナルの細孔構造を有する(細孔径7.5 nm,比表面積584 m2/g)メソポーラスシリカ粒子(SBA15)を調製した.SBA15およびヘキサゴナル構造を有する市販のMCM41(細孔径2.9 nm,比表面積759 m2/g)を加水分解酵素リパーゼの固定化担体として用いた.リパーゼの固定化量は,SBA15の方がMCM41より大きくなった.これらの固定化酵素による2-ナフチルアセテートの加水分解反応特性を生成物の2-ナフトール濃度の時間変化を25, 50および70°Cで測定して評価した.50°Cでは,リパーゼの固定化により転化率が増大した.高温での加水分解反応では,MCM41に固定化したリパーゼの転化率が,SBA15のそれよりも若干大きかった.また固定化リパーゼの再利用を検討した結果,50°Cでも70%以上の転化率を示した.メソポーラスシリカ粒子にリパーゼを固定化することによって,加水分解反応におけるリパーゼの酵素活性の熱安定性が増大した.
材料工学,界面現象
  • 佐藤 正秀, 秋元 啓太, 竹内 睦, 長谷川 和寿, 鈴木 昇, 高嵜 裕圭, 遠藤 敦
    2005 年 31 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/20
    ジャーナル 認証あり
    電解還元とチオール自己組織化膜被覆により銅表面にぬれ性勾配を形成させる新規な方法を提案した.この表面のぬれ性は電解還元の進行度および被覆されるチオールの種類を変えることによって制御可能であった.ぬれ性勾配をもつチオール被覆銅表面は電解還元により表面ラフネスの分布をつけた酸化膜フリーの銅表面へただちに疎水性のパーフルオロアルキルチオールおよび親水性のメルカプトアルコールのエタノール溶液を塗布することで形成が可能であった.さらにこの表面を用いて水蒸気凝縮実験を行った結果,周囲の小液滴との合一により成長した凝縮水滴が,高い疎水性を有する領域から親水部へ向かって自発的に移動した.この現象は熱交換器やヒートパイプなどの気-液相変化を含む伝熱操作における伝熱促進への適用可能性があるものと考えられる.
エネルギー
  • 山下 義彦, 平田 雄志, 岩田 幸雄, 山崎 恭士, 伊藤 裕
    2005 年 31 巻 2 号 p. 144-150
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/20
    ジャーナル 認証あり
    LNGガス化プロセスに蓄冷システムを適用すると,日内や季節内のガス供給量の変動に伴う冷熱発生量の変動が平準化され,LNG冷熱利用の促進を図ることができる.本研究では,蓄冷システムを適用したボイルオフガス再液化プロセスを実用化するため,前報のLNG二相流の液化実験で報告したフィンチューブ型潜熱蓄冷装置を用いて,蓄冷材(Phase-Change Material)凝固過程におけるLNG冷熱の蓄冷実験を行った.蓄冷装置の蓄冷性能とフィンチューブ周りの伝熱特性を調査した結果,フィンチューブ外のPCM凝固挙動が明らかになり,PCM融解過程と同様に蓄冷割合による整理が有効であることがわかった.また,凝固過程におけるフィンチューブ周りの熱コンダクタンスは融解過程と比較して小さく,簡単な円筒モデルで表現できることがわかった.
  • 山下 義彦, 平田 雄志, 岩田 幸雄, 山崎 恭士, 伊藤 裕
    2005 年 31 巻 2 号 p. 151-158
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/20
    ジャーナル 認証あり
    LNG蓄冷システムを適用したボイルオフガス再液化プロセスの設計・操作法を開発するために,フィンチューブ型潜熱蓄冷装置に充填した蓄冷材(Phase-Change Material)の凝固・融解過程に関する数値シミュレーション解析を行った.本解析では,前報で報告したパイロットプラント実験結果に基づき,厚肉円筒モデルを採用してフィンチューブ周りの伝熱特性と相変化挙動を表すとともに実プラント操作に適用するために計算方法の簡略化を図った.数値解析による計算結果は実験結果と良い一致を示し,本モデルは実用プラントと同規模の伝熱管長を有する蓄冷装置の性能を精度良く推測できることがわかった.この結果,本モデルは蓄冷装置を含むプロセス設計や運転に有効に活用することができる.また,管内二相流体の凝縮域の長さが蓄冷装置のフィンチューブ全長を超えると,液化時間や放冷割合が急激に低下することがわかった.
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