セラミックスやエレクトロニクス産業の分野で使用されている封着用鉛ガラスの鉛フリー化は急務の課題である.本研究では我々の研究グループが既報にて報告したV
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5–ZnO–BaOの三成分系鉛フリーガラスにおいて,中でもとくに低温軟化特性を有しΔ
T(熱的安定度)が101°C,かつ非晶質ガラスである50.9 mol% V
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5–18.9 mol% ZnO–30.2 mol%BaOの組成からなるガラス(以後V-8と略記)に対してP
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5を添加し,その評価を行った.評価項目としては,熱量分析におけるガラス転移点,ガラス軟化点,熱的安定度評価,熱機械分析における熱膨張特性,粉末X線におけるガラス構造の評価および耐水性の試験を行った.本研究では第四成分に安価なP
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5を用いることで封着温度が480°Cから550°Cで可能となり,従来の鉛ガラスとほぼ同温での封着能力を有することがわかった.とくに34.7 mol% V
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5–12.9 mol%ZnO–20.6 mol%BaO–31.8 mol%P
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5の組成から成るガラスは,極めて優れた熱的安定度(Δ
T=217°C以上)を有し特に優れた封着・封止特性が得られた.
さらに,一般にP
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5を有するガラスは耐水性に乏しいことが知られているが,本研究で開発したV
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5–ZnO–BaO–P
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5系の鉛フリ-ガラスに対して耐水試験(加速)を行った結果,極めて優れた耐水性を有していることも確認できた.実際にデジタルスチールカメラなどの電子デバイスに組み込まれている平面蛍光管に対して開発した鉛フリーガラスを用いて封着・封止を行ったところ,鉛ガラスと同等な封着・封止能を有していた.
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