化学工学論文集
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31 巻, 5 号
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物性,物理化学
移動現象,流体工学
  • 松下 洋介, 菅原 孝世, 両角 仁夫, 青木 秀之, 三浦 隆利
    2005 年 31 巻 5 号 p. 301-307
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,計算領域に非計算格子が存在する場合において,対流項の離散化に高次精度のスキームを適用した際に得られる離散化方程式の解法について検討した.まず始めに,不等間隔格子を用いた場合のセル界面における値の評価方法を示し,有限体積法に基づき対流項の離散化にQUICKおよび二次風上法を適用した場合の離散化方程式を導いた.次に解析領域に非計算格子が存在する場合に,この離散化方程式から行列方程式を構築する方法を示した.さらに,Cavity流およびBackward-facing step流の流動解析を行い,対流項の離散化に低次精度のスキームを適用した場合と比較して,流れ場の解析精度が向上することを確認した.また,角柱群を配置した矩形流路内流動解析を行い,本手法が複雑な形状を有する解析対象への柔軟性が高いことを示した.
  • 仁志 和彦, 鈴木 康夫, 上ノ山 周, 上和野 満雄
    2005 年 31 巻 5 号 p. 308-316
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,槽形状と翼形状の異なる各種双腕式捏和機を対象に,湿潤粉体における巨視的から微視的混合に至る混合過程を画像解析を用いて評価する手法を確立し,同手法に基づき混合性能評価を行った.
    研究では,まずDanckwertsの混合度に基づく湿潤粉体内の濃度塊のスケール,および本研究で提示した画像内のトレーサー粒子濃度の2点相関係数R(r)に基づく濃度塊の歪み度合を定義し,濃度塊のアスペクト比を算出した.そのために湿潤粉体とほぼ同じ粒子径のトレーサー粒子を用い,粒子径や混合状態に応じた倍率で撮影した湿潤粉体の画像を解析し,上述の値を算出する手法を確立した.
    さらに研究では,上述の手法を用い各種双腕式湿潤粉体捏和機における実験的な検討を行った.その結果,双腕式捏和機における湿潤粉体の混合状態が,濃度塊のスケールの値が小さくなる過程およびアスペクト比の値がトレーサー粒子本来の値に近づく過程の両者を調べることで,従来困難であった微視的混合状態に至る定量的に評価,検討できることを示した.
粉粒体工学
  • 石川 敏, 下坂 厚子, 白川 善幸, 日高 重助
    2005 年 31 巻 5 号 p. 317-324
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/20
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    三次元粒子要素法シミュレーションを用いて粒子群のふるい分け挙動を解析し,ふるいの分離粒子径の推算を試みた.ふるいの分離粒子径は,ふるい機の振動条件や粉体の特性などにより鋭敏に変動する.この変動の要因を明らかにするため,単位時間当たりのふるい分け試行数ξとふるい分け速度に着目した.水平振動ふるいの場合,遠心効果Kの上昇にしたがってξは増加し,Kがおよそ2のときにふるい分け速度はもっとも高くなった.また,試料粉体の装入量が増すほど,粒子径が大きくなるほどξは減少した.これらの結果およびふるい分け過程における粒子挙動の微視的観察にもとづき,ξに及ぼすふるい分け条件の影響を明らかにし,ふるいの分離粒子径の推算法を提案した.
分離工学
  • 松宮 紀文, 寺本 正明, 北田 智史, 原谷 賢治, 松山 秀人
    2005 年 31 巻 5 号 p. 325-330
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/20
    ジャーナル 認証あり
    天然ガス火力発電所排ガスからの二酸化炭素除去への膜・吸収ハイブリッド法の適用を検討した.膜・吸収ハイブリッド法はCO2の吸収液とCO2/N2混合ガスとを限外ろ過中空糸膜の内部に同時に供給し,膜外部を減圧にして分離推進力を与えCO2を膜外部に分離するCO2の分離方法である.吸収液としてはジエタノールアミン(DEA)と2-ブチルアミノエタノール(BAE)の混合水溶液を選択した.発電所から放出されるCO2を回収し90%以上に濃縮した後,気体で輸送するケース1では,CO2の回収に要する動力は0.10 kWh/kg-CO2であり,エネルギーおよび設備コストを含むCO2分離コストは3.09円/kg-CO2であった.また発電所から放出されるCO2を回収し,分離後液化し液体炭酸として輸送するケース2では,CO2の回収に要する動力は0.22 kWh/kg-CO2,CO2分離コストは5.14円/kg-CO2であった.これらの値はいずれも従来のCO2分離・回収法よりも小さく,膜・吸収ハイブリッド法でCO2を分離・回収するシステムは経済性に優れていることが示唆された.
  • 山本 秀樹, 前田 領平, 山口 修平, 北口 剛司, 芝田 隼次
    2005 年 31 巻 5 号 p. 331-337
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/20
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    共沸混合物に不揮発性の塩を添加すると気-液平衡関係が変化して,相対揮発度に大きな影響をあたえる現象は,気-液平衡関係に及ぼす塩効果として広く知られている.硝酸-水系は共沸混合物であり,通常の蒸留操作では濃縮が不可能である.本研究では,半導体製造工程や金属表面処理工程から排出される硝酸廃液からの硝酸の回収を目的として,硝酸-水系の定圧気-液平衡関係に及ぼす硝酸塩の添加効果を,この溶液の共沸組成(x=0–40 mol%)範囲で測定した.添加する塩はこれまで報告例(Ohe and Yokoyama, 1969)が少ない硝酸アルミニウム,硝酸マグネシウム,硝酸カルシウム,硝酸リチウムおよび硝酸ナトリウムなどの硝酸塩を用いた.いずれの硝酸塩を用いた場合も,気相中の硝酸濃度が増加する塩析効果を示し,塩を全溶液重量の30–50 wt%添加することにより,共沸点を消滅させることが可能であった.このことにより,低濃度硝酸廃液(共沸点以下の組成)からの蒸留による硝酸分離が可能となった.実験では,硝酸リチウムを50 wt%添加して希薄な硝酸水溶液から硝酸の蒸留分離および硝酸の濃縮について試験した結果,濃度5 mol/dm3の硝酸水溶液から約14 mol/dm3以上(収率72.2%)まで濃縮することが可能であった.
プロセスシステム工学,安全
  • 望月 宏希, 吉田 雅俊, 山下 善之, 松本 繁
    2005 年 31 巻 5 号 p. 338-345
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/20
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    触媒充填層反応器におけるホットスポットを高精度かつ効率的に推定する手法の開発を行った.本手法は,可変グリッド法と拡張カルマンフィルタを組み合わせた手法である.一般的な均一グリッドによる推定手法とは異なり,可変グリッド法は状態量の分布に合わせて動的にグリッドを構成することができる.このため,可変グリッド法により偏微分方程式から高精度かつ少ない計算コストで解を得ることができる.
    触媒充填層反応器を対象としてシミュレーションにより本手法の有用性について検討したところ,均一グリッドを用いた拡張カルマンフィルタによる推定結果よりも良好に,なおかつ計算コストを増やすことなくホットスポットを推定することができた.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 冨岡 寛治, 中山 大地, 熊田 陽一, 加藤 滋雄
    2005 年 31 巻 5 号 p. 346-351
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/20
    ジャーナル 認証あり
    蛍光物質(CF: carboxyfluorescein)を包括した抗原結合リポソームを調製し,リポソーム固相免疫測定(LISA: Liposome Immunosorbent Assay)およびリポソーム均相免疫測定(LILA: Liposome immune lysis Assay)を用いて競争的に抗原濃度を測定する方法を提案し,その検出特性に及ぼす種々の条件を検討した.抗原結合リポソーム調製時,活性化リポソームに抗原をカップリングする際漏出するCF量は,導入に用いた架橋試薬のスペーサー長が長くなるにしたがって増加した.抗原結合リポソームへの抗原の固定化量および測定系中に共存するリポソーム結合抗原濃度がLISA競争法の測定感度に影響を与えた.LISA競争法の検出限界抗原濃度は,標識抗体を用いるELISA法に比べて約100倍低く,検出可能濃度範囲は5桁以上におよんだ.LISA競争法は,B/F分離が一回だけですむため迅速,簡便な測定が行える.LILA競争法による抗原測定は,LILA法による抗体測定に比べて検出限界濃度は高いものの,均相競争法による抗原測定が可能であった.
マイクロシステム,ナノシステム
  • 大川 和男, 中元 崇, 井上 義朗, 平田 雄志
    2005 年 31 巻 5 号 p. 352-360
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/20
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    三次元屈曲チャネル内での流体層の分割,180°回転,再合流・重ね合せを組み合わせて流体を多層化する静止型マイクロミキサーの単位エレメントの構成則を求め,それに基づいてY字分岐と120°と60°の屈曲チャネルからなるY型平板静止マイクロミキサーを開発した.正方形のチャネル断面をもつY型ミキサーを用いてヨウ素の脱色実験を行い,混合完了に必要な単位エレメント数nを測定した.レイノルズ数Reが低い場合にはnReの増加とともに増加した.1単位エレメント通過ごとに厚さが1/2となる流体層内の混合過程をモデル化し,nを表す関数関係を導出し,この関係に基づいてReが低い場合のnの実験結果を相関した.Reが高い場合,Reの増加とともにnは減少した.この場合のnについては上記の関数に用いられる変数を用いて実験的に相関した.Reを50まで変化させてCFD解析を行い,Reの影響を調べた結果,Re=50では流体層は三次元屈曲チャネル内で発生する二次流によって大きく変形していることがわかった.この界面の変形が混合速度を加速させ,nを減少させる.さらに,ミキサーを構成するチャネルのアスペクト比a/bの影響をCFD計算によって検討した.a/bが2.0以上では流体界面の湾曲が大きく,a/bが0.2以下では分岐チャネルで流体が均一に分割されない.したがって,本研究で開発した平板静止型ミキサーにおいて理想的な流体層の分割・再合流を進行させるためには,できるだけ正方形に近いアスペクト比をもつ流路断面を採用することが望ましい.
エネルギー
  • 垣内 博行, 下岡 里美, 岩出 美紀, 大島 一典, 山崎 正典, 寺田 秀, 渡辺 展, 武脇 隆彦
    2005 年 31 巻 5 号 p. 361-364
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/20
    ジャーナル 認証あり
    吸着ヒートポンプ(AHP)に適した吸着材として,AFI型鉄アルミノフォスフェートからなる新規水蒸気吸着材FAM–Z01を開発した.FAM–Z01の水蒸気吸着等温線はS字曲線を描き,大きな温度依存性を示す.吸脱着のヒステリシスはないか非常に小さい.FAM–Z01は20万回吸脱着を繰り返しても吸着特性は変化せず,実使用に際し問題ないレベルの高い耐久性を有している.AHPをTL/TM/TH=283 K/303 K/333 Kの温度条件下で運転する場合,平衡論的にはFAM–Z01の有効吸着量差はRD型シリカゲルに比べ4倍大きいことが判った.FAM–Z01をAHPの吸着材として用いることで,AHPが小型化できる可能性が示唆された.
環境
  • 和田 洋六, 黒田 康弘, 三田 宗雄, 岸田 勝
    2005 年 31 巻 5 号 p. 365-371
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/20
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    3価クロメート処理排水の再利用とクロムの再資源化を目的に排水中のクロム(III)錯体と有機成分を紫外線(UV: Ultraviolet)照射併用オゾン酸化により分解後,処理水をイオン交換樹脂法で脱塩した.UVオゾン酸化ではCr3+がイオン交換吸着可能なCr6+に酸化され,同時に有機成分も分解された.
    イオン交換処理では電気伝導率20 µS/cm以下の脱塩水が安定して得られ表面処理工程の水洗水として再利用できた.
    陰イオン交換樹脂の再生廃液にはCr6+とともにClも含まれる.Clの混在は回収クロム塩類の再資源化を不可能にするので再生廃液からClを選択的に除く方法について検討した.その結果,イオン交換樹脂法によりClの少ないクロム酸塩が回収でき,クロム塩類製造原料の一部として再資源化できることが明らかとなった.本実験結果に基づき3価クロメート処理排水の再利用とクロムの再資源化を実用化した.
  • 吉田 昌弘, 吉中 忠, 日高 隆太, 幡手 泰雄, 甲原 好浩, 皿田 二充
    2005 年 31 巻 5 号 p. 372-376
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/20
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    セラミックスやエレクトロニクス産業の分野で使用されている封着用鉛ガラスの鉛フリー化は急務の課題である.本研究では我々の研究グループが既報にて報告したV2O5–ZnO–BaOの三成分系鉛フリーガラスにおいて,中でもとくに低温軟化特性を有しΔT(熱的安定度)が101°C,かつ非晶質ガラスである50.9 mol% V2O5–18.9 mol% ZnO–30.2 mol%BaOの組成からなるガラス(以後V-8と略記)に対してP2O5を添加し,その評価を行った.評価項目としては,熱量分析におけるガラス転移点,ガラス軟化点,熱的安定度評価,熱機械分析における熱膨張特性,粉末X線におけるガラス構造の評価および耐水性の試験を行った.本研究では第四成分に安価なP2O5を用いることで封着温度が480°Cから550°Cで可能となり,従来の鉛ガラスとほぼ同温での封着能力を有することがわかった.とくに34.7 mol% V2O5–12.9 mol%ZnO–20.6 mol%BaO–31.8 mol%P2O5の組成から成るガラスは,極めて優れた熱的安定度(ΔT=217°C以上)を有し特に優れた封着・封止特性が得られた.
    さらに,一般にP2O5を有するガラスは耐水性に乏しいことが知られているが,本研究で開発したV2O5–ZnO–BaO–P2O5系の鉛フリ-ガラスに対して耐水試験(加速)を行った結果,極めて優れた耐水性を有していることも確認できた.実際にデジタルスチールカメラなどの電子デバイスに組み込まれている平面蛍光管に対して開発した鉛フリーガラスを用いて封着・封止を行ったところ,鉛ガラスと同等な封着・封止能を有していた.
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