化学工学論文集
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32 巻, 4 号
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移動現象,流体工学
  • 伊佐地 実央, 大川原 真一, 小川 浩平
    2006 年 32 巻 4 号 p. 315-326
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/04
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    固液撹拌における粒子とインペラの衝突頻度相関式を導出するため,ウェーブレット解析を用いた衝突音判別法に基づく衝突頻度の測定を行い,翼回転数,粒子径および固液密度差などの操作条件と衝突頻度の関係を調べた.その結果,インペラ近傍に来た粒子は,再び槽内に吐出されるまでのきわめて短い時間にインペラと複数回連続して衝突する場合のあることを明らかにした.また,しきい値以上の衝突音圧を示す衝突頻度と操作条件との関係は,しきい値に応じて変化することを確認した.さらに,平羽根タービン翼を用いたときの衝突音圧分布は操作条件によらず対数正規分布になるという実験結果に基づくモデルを構築し,しきい値に応じた衝突頻度相関式を導いた.最後に,しきい値とする衝突音圧と衝突エネルギーの関係を考察し,衝突エネルギーに応じた衝突頻度が予測可能であることを示した.
  • 野中 利之, 安蔵 慶介, 奥谷 猛
    2006 年 32 巻 4 号 p. 327-330
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/04
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    本報では,(株)日本無重量総合研究所(MGLAB)および(独)産業技術総合研究所計測フロンティア研究部門ナノ移動解析研究グループ(AIST, RIIF)の落下塔を使用し,水平方向に設置された正方形管内の液体の微小重力環境下における界面変形・プラグ形成挙動を観察した.
    通常重力環境下で正方形管底部に存在する液体の形状は,通常から微小重力環境への遷移によって流体力学的に不安的な状態となり,円管の場合と同様に周期的な界面変形を起こして,液体プラグを形成することがわかった.また,仕込み液量が多いため平均ピーク(気液界面が管中心に向かって盛り上がった部分)間隔が円管に対する既往の線形安定性解析によって説明されることを示した.
粉粒体工学
  • 西浦 泰介, 下坂 厚子, 白川 善幸, 日高 重助
    2006 年 32 巻 4 号 p. 331-340
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/04
    ジャーナル 認証あり
    流体流れを計算する直接数値計算法と粒子挙動を計算する離散要素法を連成した大規模シミュレーションを行い,粒子群干渉沈降挙動に及ぼす粒子濃度と粒子径分布の影響を検討した.大規模シミュレーションは地球シミュレータを用いて行い,最大で10万個の粒子数から成る粒子径分布を有する多粒子群を扱うことが可能である.まず,シミュレーションモデルの信頼性を確認するために均一粒径粒子群の干渉沈降現象についてシミュレーションを行った.粒子濃度の増加にともない粒子の沈降により誘起される上昇流の速度が増加して流体抵抗力が大きくなるために粒子沈降速度は減少した.シミュレーションで得られた粒子濃度と粒子沈降速度の関係は実験結果ともよく一致した.
    次に,二成分粒径粒子群の干渉沈降現象について粒子沈降速度に及ぼす二成分の粒径比と体積割合の影響をシミュレーションにより検討した.大粒子の体積割合および粒径比が増加するにつれて上昇流体の速度が増加するために二成分ともに粒子沈降速度は減少した.また,層流域では流体抵抗力に比べて粒子間接触力はきわめて小さいために干渉沈降現象に及ぼす粒子間衝突の影響は無視しうることが明らかになった.
  • 西浦 泰介, 下坂 厚子, 白川 善幸, 日高 重助
    2006 年 32 巻 4 号 p. 341-347
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/04
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    多分散粒子懸濁液中の単一粒子干渉沈降速度を推算することが可能な粒子濃度と粒子径分布を考慮した粒子群干渉沈降速度式を導出した.まず,流体抵抗力と流体速度に対する粒子濃度および粒子径分布の関係を理論的に考察して単一粒子干渉沈降速度式の基本式を提案した.その基本式に含まれる未知因子を決定するために直接数値計算法と離散要素法の連成シミュレーションを行い,二成分粒径粒子群の沈降速度に及ぼす二成分の粒径比と粒子群体積割合の影響を検討した.沈降速度に及ぼす流体抵抗力と流体速度の影響を粒子濃度と粒子径分布の関数で定式化して干渉沈降速度式を導出した.連続な粒子径分布を有した多粒子群中の個々の粒子の沈降速度について,導出した干渉沈降速度式による推算値と実験値は非常に良く一致した.
分離工学
反応工学
  • 野中 利之, 奥野 純平, 相田 卓, 畑田 清隆, 鈴木 明, 田嶋 聖彦, 服部 秀雄, 新井 邦夫
    2006 年 32 巻 4 号 p. 356-362
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/04
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    超高圧(100 MPa以上)領域における超臨界水反応を実現する連続流通式システムを開発した.本システムでは,急速昇温方式が採用されており,反応溶液は旋回合流型ミキサーにて予熱水と混合し,所定の反応温度となって反応が開始する.反応器内の滞在時間は1 s以下であり,ジャケットを用いた冷却法によって反応が停止される.なお,超高圧領域におけるシステム内の圧力は,複数の背圧弁を用いることによって制御した.
    本システムでは,グルコースやフルクトースなどの水溶液を523–873 K, 20–200 MPaの亜・超臨界水中にて反応させ,様々な中間体や化学製品(グリセルアルデヒド,5-ヒドロキシメチル-フルフラールや乳酸)へと変換させることが可能である.超臨界水反応における予備的な研究として,混合部の流動挙動に関する有限体積法に基づく三次元数値シミュレーションを行ない,反応管断面における温度差と経過時間の関係を示した.
  • 小布施 洋, 山田 信吾, 中井 智司, 高田 誠, 細見 正明
    2006 年 32 巻 4 号 p. 363-368
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/04
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    超臨界水酸化による含窒素化合物の除去効率に関わる因子を明らかにすることを目的とし,分解対象の含窒素化合物の分子構造および添加剤としての有機化合物が与える影響を調べた.炭酸アンモニウム,尿素,およびホルムアミド系の化合物を用いて含窒素化合物の分子構造の影響を評価した結果,窒素原子に結合する炭素数が多いほど窒素除去率が向上する傾向が認められた.また,反応系にメタノールをはじめとする有機化合物を添加した場合にも同様の傾向が確認された.窒素除去率の向上は,有機物の超臨界水酸化過程で生成するラジカル種とアンモニアおよびその他の含窒素化合物との反応によるものと推定された.
  • 川瀬 泰人, 増家 孝佳, 安田 啓司, 中村 正秋
    2006 年 32 巻 4 号 p. 369-371
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/04
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    揮発性有機化合物(VOC)分解に対して,超音波霧化とオゾン照射の組合せを考えた.被分解物質としてトリクロロエチレン(TCE)およびジメチルスルフォキシド(DMSO)の水溶液を用い,オゾン含有ガスを流した.TCE水溶液では,ストリッピングが支配的であったが,分解促進への超音波霧化の寄与も認められた.一方,DMSO水溶液では,ストリッピングはほとんど起こらず,気相中での液滴とオゾンの接触が分解を大きく促進した.
生物化学工学,食品工学,医用工学
エネルギー
  • 梶山 士郎, 竹村 文男, 矢部 彰
    2006 年 32 巻 4 号 p. 376-383
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/04
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    熱回収部の排熱でメタノールを液相分解し,分解生成ガスをパイプ輸送し,熱供給部で直接燃焼させ燃焼熱に変換する液相法メタノールオープン方式についてのプロセス構築とその評価を行った.化学反応を利用したエネルギー輸送システムを研究するには,システム構築に最適な触媒の選定,触媒性能,触媒寿命,触媒の回収および副生物の挙動などを明確にすることは重要な要素である.液相メタノール分解反応実験結果より,メタノールを一酸化炭素,水素に分解することにより低発熱量基準で1.2倍の増熱効果のある液相法メタノールオープン方式のシステム構築に最適な銅–クロム–マンガン–バリウム触媒を見いだした.実験結果をもとに,反応温度473 Kでの反応圧力を5.86–7.07 MPaとし,分解生成ガスの圧力差を利用した膨張タービンおよびカリーナサイクルを組み込んだシステム検討を行い,熱回収系でのシステム効率は59.3–73.4%,カリーナサイクルのシステム効率は10.6–12.2%と試算された.
    液相法メタノールオープン方式は産業排熱のもつ熱エネルギーを燃料の発熱量という化学エネルギーに高効率に変換し,かつ熱損失のない状態で長距離輸送できるエネルギー資源の有効利用に活用できる方式であることが示唆された.
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