化学工学論文集
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32 巻, 6 号
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移動現象,流体工学
  • 加藤 禎人, 多田 豊, 仲道 真也, 長津 雄一郎, 岩田 修一, 岩石 真一, 梶原 進, 李 泳世, 高 承台
    2006 年 32 巻 6 号 p. 465-470
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
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    近年ロボットなどに多く用いられているサーボモーターを撹拌操作に応用した.モーターの断続的な運転,回転方向の反転,また,翼を上下移動させるなどの非定常な操作を撹拌操作に応用し,ディスクタービンという主に低粘度領域で使用される撹拌翼でも低レイノルズ数領域で効果的に使用できることがわかった.翼の断続的な運転操作は液混合に有効であり,切換頻度を大きくした方が効果的だった.また,翼の上下移動では移動速度と移動距離を大きくすることが効果的だった.さらに,翼の断続的な運転と上下移動を組合せれば,その相乗効果によりさらに混合性能が良くなった.また,低Re数では不等速撹拌よりも混合性能が良くなった.
  • 大平 勇一, 酒井 猛, 高橋 洋志, 小幡 英二, 安藤 公二
    2006 年 32 巻 6 号 p. 471-476
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル 認証あり
    平均粒子径26 μmのガラスビーズ–水系のスラリーを用いて,二重管型気泡塔の環状部外壁の物質移動係数を測定した.物質移動係数の測定は電極におけるK4[Fe(CN)6]–K3[Fe(CN)6]の酸化還元反応を利用して行った.固液系の物質移動は液単相の挙動と類似している.通気により物質移動係数はおよそ10倍となり,気液系および気液固系の物質移動は液またはスラリーの物性値とガスホールドアップで決まる.
分離工学
  • 松隈 洋介, 高谷 真介, 井上 元, 峯元 雅樹, 上島 直幸
    2006 年 32 巻 6 号 p. 477-483
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル 認証あり
    光化学スモッグや悪臭公害の主要な原因の一つになっている低濃度溶剤を,ハニカム型ゼオライトを充填した回転式吸着塔を用いたTSA方式で除去・濃縮するシステムについて最適化のためのシミュレーション計算を行った.本論文では,前報で,考慮しなかったガス流量,溶剤濃度および吸着剤の劣化の影響を検討することにより,最適条件の選定を行った.
    この結果,以下の結果を得た.1.処理ガス濃度が変化しても所定の性能をほぼ維持できることがわかった.2.処理ガス流量が変化しても,処理ガス流量に対して回転数を制御することにより,所定の性能を維持できることがわかった.3.負荷変動として処理ガス流量が経時的に変化しても,回転数を制御することにより,目標性能を維持できることがわかった.これらの結果から,本研究により,回転式吸着塔を用いたTSA方式で除去・濃縮するシステムについて最適化の指針を得ることができた.
熱工学
  • 中尾 一成, 尾崎 永一, 弓倉 恒雄, 池内 正毅, 山中 晤郎, 辻森 淳, 平田 雄志
    2006 年 32 巻 6 号 p. 484-493
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル 認証あり
    針状フィンの巻き方や形状寸法が液膜表面の吸収特性や管壁-液膜間の熱伝達特性に及ぼす影響を実験的に明らかにした.針状フィンの巻き方に関しては,ダブル巻きがシングル巻きより優れていること,シングル巻きではフィン高さの高い方が優れていることやフィンピッチの最適値が存在することを明らかにした.また,巻き方は吸収速度よりも管外壁面近傍の伝熱速度に大きい影響を及ぼす.
    実用上の観点から管質量を基準に吸収伝熱管の性能比較を行った.管単位質量あたりの吸収速度や伝熱速度に対して,シングル巻き,フィン高さ8 mm,フィンピッチ8.6 mmもしくは10.6 mmの特性が優れていることがわかった.針状らせんフィン付き管の昇温幅は管質量が大きいほど大きく,ダブル巻きが26.4 K,シングル巻きが23–25 Kでありダブル巻きが大きい.
  • 松下 洋介, 菅原 孝世, 両角 仁夫, 青木 秀之, 三浦 隆利, 富永 浩章
    2006 年 32 巻 6 号 p. 494-499
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
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    本研究では,燃焼炉内における温度および化学種濃度を測定する場合に用いられる水冷されたサクション・パイロメータ(S.P.)を炉内に挿入した場合に生じる温度測定誤差について数値解析を用いて定量的に把握した.具体的には寸法および投入熱量の異なる2種類のガス燃焼炉を対象とし,実験で行われるようなS.P.を炉内に挿入した状態を解析上で再現し解析を行った.実験炉を想定した投入熱量3.71 kWの燃焼炉にS.P.を挿入した場合,温度測定誤差は300 K以上と多大であるばかりでなく,燃焼状態自体が変化した.一方で,投入熱量14.8 kWと4倍にした燃焼炉にS.P.を挿入した場合,温度測定誤差は30 K程度であり,燃焼状態にもさほど変化はなかった.そのため,実験炉クラスのガス燃焼炉では,水冷されたS.P.を用いるべきではないものと考えられる.また,熱損失が生じる熱移動現象についても把握するため,S.P.近傍の伝熱現象の把握を試みた結果,S.P.による熱損失の85%程度はふく射伝熱によるものであった.S.P.による熱損失を小さくし,温度測定誤差を小さくするためには,S.P.による熱損失を投入熱量に対して十分小さくする,S.P.表面に放射率の大きい材料を用いるかS.P.の厚みを増加させ,S.P.の表面温度を増加させるなどの対策が考えられる.
プロセスシステム工学,安全
  • 江口 元
    2006 年 32 巻 6 号 p. 500-506
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
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    プラントの高い生産性を保つためには,適切な生産スケジューリングが不可欠である.プラントの生産計画は,顧客からの追加注文や注文の取り消しに合わせて繰り返したてなおされるので,必ずしも最適計画を求める必要はなく,実行可能計画で十分なことが多い.しかし生産スケジューリングを自動化するにあたって,解決すべき問題がある.まずスケジューリングの過程を定式化できなければならず,実用的な時間の範囲内で解を見つけなければならない.またシステム化の主な利点は生産スケジューリングのための労力を減らせることと,制約条件をみたす実行可能解を迅速に見つけられることであり,これまで生産スケジューリングに従事してきた熟練者でなくても計画が作成できることである.この問題を解くために,ここでは制約論理プログラミング(CLP)を使用した.このシステムは実プラントで使用して十分に実用性があることが明らかになった.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 常田 聡, 賀來 周一, 林 浩志, 大串 聡, 寺田 昭彦, 平田 彰
    2006 年 32 巻 6 号 p. 507-513
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル フリー
    微生物固定化空間内において基質の能動輸送を行う手段として電気泳動を利用し,固定化微生物の反応を促進化する実験的検討を行った.スラグ繊維を付着担体とする硫黄脱窒細菌の充填層について,電気泳動によりNO3の輸送促進を図りながら脱窒回分試験を行ったところ,30分間隔で18 Vにて極性を換えた場合の窒素除去速度は1.99 g-N·m−3·h−1であり,一方電気泳動のない場合は0.40 g-N·m−3·h−1であった.電極でのNOx還元反応は起きていないことが確認され,NOx除去は全て微生物反応によることが示唆された.電気泳動によって微生物固定化空間内にNO3を能動的に輸送することで脱窒反応向上が可能であり,窒素除去速度は最大4.9倍向上した.電場印加時の窒素除去特性は,微生物反応に関するMonod式とイオンの電気泳動に関するStokes式を使ったシミュレーション解析で試験結果と対応する結果をえた.さらに,連続試験の結果,電場印加を行った系では電場印加のない系に比べ窒素除去率が良好であり,それぞれの単位容積当たりの窒素除去は2.0×10−2および1.6×10−2 kg-N·m−3·d−1であった.回分試験と比べると電気泳動による反応促進効果は小さく,液の流動状態や電極磨耗の影響があったと推察された.
材料工学,界面現象
エネルギー
  • 大島 一典, 山崎 正典, 武脇 隆彦, 垣内 博行, 児玉 昭雄
    2006 年 32 巻 6 号 p. 518-523
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル 認証あり
    デシカント用吸着材として,アルミノフォスフェート(ALPO)の部分置換体であるFAM-Z01(Fe含有量5.0 mol%のFAPO),FAM-Z02(Si含有量7.2 mol%のSAPO)を用いて水蒸気吸脱着特性を調べた.容量法水蒸気吸着等温線測定,水蒸気流通式の熱重量分析法により,既存の吸着材であるシリカゲルやYゼオライトより低温・低湿度領域で性能が向上し,70°C以下の低温排熱の利用が可能であることを示した.ハニカムローターを作製しデシカント運転を行ったところ,FAM-Z02は50–70°Cの低温再生においてシリカローターより,11–22%除湿性能が高いことがわかった.
  • ―リン酸抽出蒸留法の基礎試験―
    岩月 仁, 伊地知 雅典, 久保 真治, 小貫 薫, 日野 竜太郎
    2006 年 32 巻 6 号 p. 524-527
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル 認証あり
    熱化学水素製造法ISプロセスの熱効率を向上させるうえで,HIx溶液(HI–I2–H2Oの混合溶液)から効率的にヨウ化水素を分離させることが主要な課題となっている.この解決方法としてGeneral Atomicsから提案されているリン酸を用いる抽出蒸留法について,その成立性検討の一環として,リン酸によるHIx溶液からのヨウ化水素抽出,および抽出液の単蒸留を一連のバッチ操作として行い,HIx溶液から水分同伴量の少ない高濃度ヨウ化水素が分離できることを確認した.
  • 下岡 里美, 山崎 正典, 武脇 隆彦, 赤繁 悦史, 池畑 富美代, 垣内 博行, 渡辺 藤雄, 窪田 光宏, 松田 仁樹
    2006 年 32 巻 6 号 p. 528-534
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル 認証あり
    水蒸気を作動媒体とする吸着ヒートポンプ用吸着材の高性能化開発手法の確立を目的として,親水性処理による新規活性炭の設計・製造を行った.5種類の活性炭に対して酸化処理活性炭を製造した.酸化剤には塩酸,硝酸を使用し,濃度0.5–1.0 mol/dm3,酸化時間2–4 hの範囲の酸化処理活性炭を得た.この活性炭について,298 Kにおける水蒸気吸着等温線,官能基量(Fs)の測定,ならびに等温線に基づく細孔表面–水蒸気間の接触角(θ)の推算を行った.
    酸化処理活性炭の等温線は,試料によらず,細孔分布を考慮に入れた毛管凝縮のKelvin式で相関できる.その等温線は未処理活性炭に比べて低相対圧側(φ)へシフトする.また,φ=1における吸着量の1/2量を示す相対圧(φ0.5)の対数値はcos θの増大とともに直線的に減少する.Fs値はcos θの増大とともに増大する.これより,親水性官能基量が活性炭の水蒸気吸着性能の指標となることが示された.さらに,酸化処理活性炭はAHP用のシリカゲルのそれぞれクローズドシステム用として1.2倍およびデシカントシステム用として1.9倍の吸着容量を有することを認めた.
環境
  • 岸田 央範, 金 放鳴, 守谷 武彦, 榎本 兵治
    2006 年 32 巻 6 号 p. 535-541
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
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    近年,化石燃料に換わる燃料として,バイオディーゼル燃料(BDF)が注目されている.しかし,BDFの製造時に約1/10の量のグリセリンが副生されるため,これの有効利用方法が課題となっている.著者らの研究の結果,グリセリンは,アルカリ性の高温高圧水中で,反応させることによって,乳酸に転換されることが分かった.乳酸への転換率は高く,300°C,90分の反応条件で,約90 mol%であった.また,反応経路として,グリセリンはピルブアルデヒドを経由して乳酸へ転換するであろうと推測した.そこで,この反応経路をもとに反応モデルを作成し,反応速度式を導いた.また,反応温度,濃度などの操作条件を変化させた実験の結果から,反応の活性化エネルギーなどを得た.このようにして求めた反応速度式から推算される乳酸の生成速度と実験によって求めた乳酸の生成速度はよく一致しており,反応モデルの妥当性が示された.
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