化学工学論文集
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33 巻, 5 号
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物性,物理化学
  • 擬2次元モンテカルロ・シミュレーションを用いた解析
    青島 政之, 佐藤 明, Roy W. Chantrell
    2007 年 33 巻 5 号 p. 383-390
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    モンテカルロ・シミュレーションにより,強磁性ナノ粒子からなる擬2次元単層膜のミクロ構造に対する垂直外部磁場と面積分率の影響を調べた.シミュレーションで得られたミクロ構造は動径分布関数と配向分布関数によって解析した.得られた結果を以下に要約する.粒子の面積分率が小さい場合,磁場の強さが増加するにつれ磁気モーメントが磁場方向に配向するため,鎖状構造の形成が妨げられる.それゆえ,磁場が十分強くなるとミクロ構造は気体的な特徴を示す.面積分率が大きい場合,比較的磁場が強くても鎖状構造は残る.非常に強い磁場を作用させると,鎖状構造が消滅する代わりに液体に類似したミクロ構造があらわれる.
  • 宇野 繁理, 松田 弘幸, 栗原 清文, 栃木 勝己, 越智 健二
    2007 年 33 巻 5 号 p. 391-395
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    蒸留を用いた溶剤リサイクルプロセスを検討する際に,NRTL式などの活量係数式が広く使われているが,実際的に重要な水溶液のパラメータは必ずしも多くはないのが現状である.水溶液系は条件によっては2液相を形成するため,その実験的決定は必ずしも容易ではない.本研究は,2液相系にも適用できるように,既往のホールドアップ補償型エブリオメータの改良を行い,均一共沸系である2-プロパノール+水系と不均一共沸系である2-ブタノール+水系,および気液平衡データが報告されていなく不均一系である水+酢酸n-ペンチル系の圧力40.00–98.66 kPa中の6圧力における沸点を測定し,得られた沸点データよりNRTLパラメータの決定を行った.
    また,気液平衡と相互溶解度の測定値が存在する2-ブタノール+水系については,測定した沸点データと相互溶解度データを用いたNRTLパラメータの決定を試みたところ,沸点データのみから決定した場合に比べ相互溶解度の実測値に近い値となった.今回測定を行った水+酢酸n-ペンチル系のNRTLパラメータは,これまでに気液平衡の測定データが報告されていないため,有用であると考えられる.
移動現象,流体工学
  • 金田 昌之, 高尾 裕, 石塚 博孝, 深井 潤, 安武 重和, 高原 淳
    2007 年 33 巻 5 号 p. 396-401
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    インクジェット製膜法において,沸点の異なる2成分溶媒が薄膜形状に及ぼす影響を実験により検討した.単一成分溶媒より2成分溶媒を用いた方がリングステインの生成を抑制できることがわかった.この理由は,低沸点溶媒が瞬時に蒸発することによって,接触線が固定した時の液滴粘度が高くなるためである.さらに,この液滴粘度の上昇は,自由表面上の溶媒濃度分布に起因するMarangoni対流によって液滴内がよく撹拌されることに起因することが示唆された.この結果に基づいて,初期溶質濃度すなわち初期粘度を高くした単一溶媒を用いて実験を行った結果,リングステインの生成を抑制できた.しかし,インクジェットノズルで射出できる液滴の粘度には限界がある.そこで,低沸点溶媒で溶液を希釈し,液滴が基板に着弾する前に低沸点溶媒を蒸発させた.このような操作によって,リングステインの生成を抑制できることを示した.
  • 杉原 慶治, 真田 俊之, 城田 農, 渡部 正夫
    2007 年 33 巻 5 号 p. 402-408
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    超純水中での単一気泡の挙動を定量的に計測・評価した.超純水製造装置で精製した水の純度を保つため,異物の混入や溶出を抑えた材質の配管・水槽を用いて実験系を構築し,テストセクション出口側で比抵抗値およびTOC値を計測することで,水の純度を定量的に評価した.実験は,超純水中に単一気泡を発生させ,高速度ビデオカメラを用い気泡挙動を,スチルカメラを用いて気泡形状をそれぞれ詳細に観察した.まず,気泡が直線運動からジグザグ・螺旋運動に遷移する臨界Re数を調べ,Re=650程度では気泡が終端速度に達した後100 mm程度も直線上昇しその後遷移したのに対し,Re=700程度では終端速度に達すると直ちに遷移を行い,臨界Re数は一意に決定できなかった.定常状態の気泡の上昇速度や抗力係数を調べ,半径r<0.5 mm程度では理論解とほぼ一致するが,r>0.5 mmでは実験値と理論解のかい離が観察された.また気泡形状を,ルジャンドル関数を用いて定量的に評価を行い,気泡形状と抗力係数との比較を行った.さらに気泡形状を表現する新たな実験式を提案した.
粉粒体工学
  • 山下 大輔, 柴田 亮, 村山 憲弘, 芝田 隼次
    2007 年 33 巻 5 号 p. 409-414
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
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    電場内の微粒子の挙動が,微粒子の分級に適用することを目的として,モデル粒子に平均粒子径が0.03, 0.1, 1.0, 4.3 および9.6 μmの球形ポリスチレン粒子を用いて,測定された.電気泳動移動度およびゼータ電位の測定には,レーザードップラー効果を原理とする装置を用いた.
    懸濁液のpHおよび温度が増加するほど,微粒子の電気泳動移動度は増加した.電気泳動移動度はKNO3濃度や粒子径によって変化する.Wiersemaらの解析法を用いて,粒子の電気泳動移動度に影響を与えると思われる緩和効果および電気泳動遅延効果について検討した.
    電場内での粒子に作用する力は,電気泳動力,摩擦力,そしてイオンの挙動で見られる緩和効果や電気泳動遅延効果のような他の力が考えられる.粒子の移動速度は粒子径に依存することがわかった.粒子径が1 μm以下のとき,速度は粒子径が大きくなるにつれ増加する.一方,粒子径が1 μm以上のとき,速度は粒子径が大きくなるにつれ減少する.その現象は電場内の微粒子に作用する力によって説明される.これらの電場内での微粒子の挙動は微粒子を分級するために適用できる.
分離工学
  • 山本 秀樹, 米田 裕司, 大野 友裕, 平野 正人, 前田 領平
    2007 年 33 巻 5 号 p. 415-422
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    半導体製造工場ではシリコンウェハの洗浄工程およびエッチング工程でフッ酸を一成分とする酸混合溶液(フッ酸–硝酸系,フッ酸–硝酸–酢酸系など)が使用されており,使用済みの混酸廃液が多量に発生している.前報では,共沸混合物である硝酸–水系の気液平衡関係に及ぼす塩効果を測定し,この塩析効果を利用して希薄な硝酸廃液から硝酸の分離・濃縮について検討した.
    本研究では,フッ酸–硝酸系混酸廃液に対する塩効果(塩析および塩入効果)を利用した蒸留法により,フッ酸を一成分とする混酸廃液からフッ酸を分離することを試みた.添加する塩として,硝酸セシウム,硝酸カリウム,フッ化カリウムを選び,硝酸–水系およびフッ酸–水系の気液平衡関係におよぼす塩効果を測定し,前報で報告した他の硝酸塩の結果と比較した.
    実験結果から,硝酸–水系に硝酸セシウムおよび硝酸カリウムを添加した場合,気相中の硝酸濃度が減少する塩入効果を示した.一方,フッ酸–水系の硝酸セシウムを添加した場合,気相中のフッ酸濃度が増加する塩析効果を示した.硝酸濃度5 mol/dm3・フッ酸5 mol/dm3の模擬混酸廃液に対して,硝酸セシウム45 wt%を添加して単蒸留を行った結果,留出液としてフッ酸濃度5.41 mol/dm3および硝酸濃度1.13 mol/dm3とフッ酸の比率の高い混酸(5 : 1)として回収できた.さらに,この留出液を塩無添加で単蒸留して,留出液としてフッ酸濃度7.21 mol/dm3と硝酸濃度0.46 mol/dm3の混酸(16 : 1)と,硝酸をほとんど含まないフッ酸を回収でき,リサイクル可能であることを明らかにした.実験に使用した塩を繰り返し5回使用した結果,分離性能の低下は認められなかった.
  • 藤吉 一誠
    2007 年 33 巻 5 号 p. 423-426
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    ピリジン-2,6-ジカルボン酸(PDCA)を溶離液とした未修飾のバイコール多孔質ガラス充填カラムを用いて銅,ニッケル,亜鉛およびコバルトの分離実験を行った.
    pH 3付近では水素イオンおよびPDCAアニオンの濃度がともに低いため亜鉛およびコバルトの保持体積が極大となった.また銅,ニッケル,亜鉛はそれらを中心金属とするPDCA錯体の安定度定数の大きい順に溶離した.しかし,コバルトはこの規則に従わずに最も遅く溶離した.コバルトイオンはカラムの中で酸化されて3価のイオンに変化するためと考えた.
    これら4種類の金属は溶離液のpH 3.0,PDCA濃度0.05 mol/m3およびカラムの長さ150 mmの条件下に150 minで分離され,また溶離液のpH 2.5,PDCA濃度0.15 mol/m3およびカラムの長さ300 mmの条件下に60 minで分離された.これにより未修飾のバイコール多孔質ガラス充填カラムを用いて2価の遷移金属を分離できることがわかった.
  • 河合 秀樹, 高橋 洋志, 千葉 誠一
    2007 年 33 巻 5 号 p. 427-431
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    壁面に多数の通気孔を持つ二重管円筒容器の環状部の内円筒側に大粒子濾材,外円筒側に小粒子濾材を配置充填した複層式充填層の環状グラニュラーフィルターで,含塵ガスを内筒から外筒に向かって透過させてダスト捕捉実験を行ない,新しい機能性複層式フィルターの集塵性能を調べた.濾材粒子と微粉はそれぞれガラスビーズとフライアッシュである.濾材径3 mmと1 mmを用いた適切な複層化により小粒子(1 mm)のみの単層充填層と同様の高い集塵効率で,しかも圧力損失は半分以下とする操作が可能であった.以前に提案した集塵モデルも概ね実験結果を説明でき,機能性環状グラニュラーフィルターの設計に有用なものと考察した.
反応工学
  • 西村 顕, 藤田 光将, 加藤 征三, 加藤 真示
    2007 年 33 巻 5 号 p. 432-438
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    TiO2光触媒のCO2改質性能向上を目的として,ゾルゲル・ディップコーティング法により作製するコーティングTiO2膜に光析出法にて金属担持を行い,TiO2のCO2改質性能におよぼす影響を評価した.その結果,銅管上にコーティングしたTiO2膜へPdを担持した場合,コーティングTiO2膜は金属担持の際に脆弱化して銅管から剥離し,金属担持の効果が十分に得られなかった.金属担持したTiO2粉末をTiO2ゾル溶液中に混入させてコーティングTiO2膜を作製した場合,Cu, Pd, Ptの3種類の金属の中でPdを担持した時に最も高いCO2改質性能が得られた.また,コーティングTiO2膜の焼成時間を420 sから180 sへ短くすることで,担持金属種によらず,CO2とH2Oの混合気体からCOや炭化水素への改質性能が促進された.金属担持により,CH4と共にCH4の中間体のCOの生成濃度が増え,コーティングTiO2膜のCO2改質性能が向上した.
  • 築地原 博之, 福井 航, 野崎 智洋, 岡崎 健
    2007 年 33 巻 5 号 p. 439-445
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    低品位燃料の高付加価値化を目的として,プラズマ・触媒複合反応によるメタンの低温水蒸気改質(300–600°C)を行った.一般的な水蒸気改質用触媒に大気圧非平衡プラズマを併用することで相乗効果が出現し,メタン分解反応速度が低温でも大幅に増大することを見出した.これは高エネルギー電子によって活性化されたメタンおよび水分子が,低温でも触媒上で水蒸気改質反応を促進するためと考えられる.一方,非平衡プラズマによる電力供給が過剰な場合,触媒層の著しい温度上昇とともに熱反応が支配的となり,活性種生成による反応促進効果はほとんど期待できない.そこで,プラズマによる活性種生成と発熱による反応促進効果を分離して評価するために,赤外線カメラによって触媒層温度を計測するシステムを構築し,非平衡プラズマによる反応促進効果を速度論的に評価した.解析では,水蒸気改質反応の総括反応速度式(r=k [CH4]α [H2O]β)の反応次数を初速度法により求め,メタンの正反応速度定数に対するアレニウスプロットを描いた.プラズマを印加すれば,反応次数(α,β)が共に増加するが,活性化エネルギーの変化は小さかった.一方,プラズマを印加することで頻度因子が大幅に増加したことから,活性化されたメタンおよび水分子が解離吸着反応を促進していることが示唆された.
プロセスシステム工学,安全
  • 福地 拓史
    2007 年 33 巻 5 号 p. 446-452
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    人的過誤に起因する事故を防止する安全対策の効果を調べるために信頼性評価を行った.プラント管理全般にわたる知覚,判断,操作の各段階において生起する人的過誤の頻度確率はあまり明確でないために,類似作業の過誤生起確率を参考にしたり,操作者や作業管理者の経験に基づく推定値による感覚尺度を用いたフォルトツリー解析から事故の発生確率を算出した.これにより,感覚頻度を用いたフォルトツリー解析により,候補となる事故対策の比較により相対的に対策効果を判定できること,および感覚頻度は,頻度確率が把握されていない場合や発生確率のあいまいさが大きい事象に対して有効であることを明らかにした.
  • 小野 仁意, 野田 賢, 長谷部 伸治
    2007 年 33 巻 5 号 p. 453-462
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    高温で動作する固体酸化物型燃料電池(SOFC)は,ガスタービンやガスエンジンと組み合わせることで,より高効率な複合発電システムを実現することできる.本研究では,SOFCとガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)を組み合わせた100 MW級の加圧型トッピング方式の複合発電システムの物理モデルを構築し,装置に課せられた運用上の制約条件のもとで,発電効率やライフサイクルコストを最適にする設計変数,操作変数をモデルにより求めた.その結果,SOFCとGTCCを組み合わせた複合発電システムでは,すべての運用上の制約条件を満足しながら,HHV基準で70%を超える発電効率のサイクルが構築可能であることを示した.ライフサイクルコストの観点からは,SOFCのイニシャルコストがGTCCに比べて高いため,セル数を減らしてSOFCの出力比率を下げ,発電効率を67%に抑えたシステムが最適となった.さらに,システムに要求される運転パターンに応じた最適な設計変数と操作変数を,Multi-Period最適化問題として定式化することにより導出した.
生物化学工学,食品工学,医用工学
材料工学,界面現象
  • 荻 崇, イスカンダル フェリー, 矢吹 彰広, 奥山 喜久夫
    2007 年 33 巻 5 号 p. 468-475
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    二流体ノズルを用いた噴霧乾燥装置によりチタニアおよびシリカコロイドナノ粒子とテンプレート材料(polystyrene latex: PSL)のコンポジット粒子を製造し,有機溶媒または加熱によりテンプレート材料を除去することで,チタニア,シリカの多孔質粒子,中空粒子の合成を検討した.これより二流体ノズルを用いた噴霧乾燥装置により,平均粒子径1.31 μm,幾何標準偏差約1.59の多孔質粒子を合成することが可能となった.またテンプレート材料の粒子径を変化させることで,多孔質粒子のポア径を制御できることが確認され,さらに300 nm以上のテンプレート材料を用いることで中空粒子が合成されることが明らかとなった.またテンプレート材料と熱分解温度が近い有機材料(ポリエチレングリコール: PEG)についても,有機溶媒によるテンプレート材料の除去を行うことで多孔質粒子の合成が可能であった.
エネルギー
  • 日高 秀人, 垣内 博行, 窪田 光宏, 渡辺 藤雄, 松田 仁樹
    2007 年 33 巻 5 号 p. 476-482
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    空調用の冷熱生成のための電力消費の平準化および高効率冷熱生成を目的として,融点13°C潜熱蓄熱材(PCM13)と蒸気圧縮式冷凍機(VCRM, Vapor Compression Refrigerating Machine)を組み合わせたシステムを提案した.本提案システムにおいては,夜間にVCRMを冷熱源として稼動させPCM13を凝固させて蓄熱を行い,昼間に冷熱を蓄熱槽から放熱させVCRMの凝縮器を冷却しながら成績係数(COP, Coefficient of Performance)が高い条件でVCRMを冷熱源として稼動させて負荷に冷熱を供給する.VCRMはハイドロフルオロカーボン系冷媒R134aのp-h線図に基づくCOPで冷熱を生成するものとし,東京における夏季の外気温度データを用い,熱交換器での冷媒とPCMの温度差を5°Cとし,事務所(標準型)と住宅の2ケースを冷熱負荷として想定し,既存の氷蓄熱に対して提案システムの導入による圧縮機の必要動力の低減効果を算出した.
    その結果,提案システムの導入により,既存の氷蓄熱よりも事務所(標準型)で13%,住宅で11 %の必要動力を低減しながら5°Cの冷熱が供給可能であることが明らかとなった.事務所(標準型)は昼間にしか負荷がないため,夜間にも負荷が存在する住宅より,低減効果が大きかった.氷蓄熱システムのPCMを氷からPCM13に置き換えたシステムの既存の氷蓄熱に対する必要動力の低減効果は,事務所(標準型)で47%,住宅で49%であると見積もられたが,冷房用途として利用するには,冷熱の供給温度が18°Cであるため,室内機の熱交換器の伝熱面積が増え,冷却除湿が不十分となりASHRAEの快適線図(ASHRAE, 1997)の快適な湿度範囲外となる.
  • 山中 真也, 高津 淑人, 門田 和紀, 下坂 厚子, 白川 善幸, 日高 重助
    2007 年 33 巻 5 号 p. 483-489
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    温室効果ガスの削減に有効な軽油代替燃料であるバイオディーゼルの製造に用いる実用触媒として,酸化カルシウム固定化シリカ粒子を調製した.この触媒複合粒子は,炭酸ガス化合法を利用し,触媒前駆体である炭酸カルシウムの微粒子をシリカ担体上に析出させた後,アルゴンガス雰囲気下で焼成することによって得た.触媒前駆体の析出挙動は炭酸化温度の影響が大きく,40°C以上ではシリカ担体上に析出せず被覆できなかった.18°C以下において,触媒前駆体でシリカ担体を均一に被覆することができた.この前駆体複合粒子を焼成し,触媒として大豆油とメタノールのエステル交換反応へ供したが,脂肪酸メチルエステルはほとんど生成しなかった.これは,焼成操作中に触媒成分である酸化カルシウムのほとんどがシリカ担体と反応することで珪酸カルシウムとなり,活性点が消失したためであった.そこで,担体表面に固定化される触媒前駆体の炭酸カルシウム層厚を大きくしたところ,焼成後も触媒成分である酸化カルシウムの微粒子が担体上に残存した.これによって,3 hのエステル交換反応で脂肪酸メチルエステルが98%以上生成し,酸化カルシウムの微粒子のみを用いた場合と同様に,きわめて高い活性を発揮した.
  • 下岡 里美, 山崎 正典, 武脇 隆彦, 赤繁 悦史, 池畑 富美代, 垣内 博行, 窪田 光宏, 松田 仁樹
    2007 年 33 巻 5 号 p. 490-494
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    本研究は,吸着ヒートポンプ(AHP)用吸着材の高性能化のために,メラミンを付加したフェノール樹脂を原料に用い,KOH薬品賦活によって親水性官能基量の増大に伴う活性炭の水蒸気吸着性能の高性能化を試みた.
    その結果,メラミンを付加したフェノール樹脂では親水性官能基量の増加は得られなかったが,メラミンを変性したフェノール樹脂を原料に用いることによって,活性炭上に窒素元素が観察され,親水性官能基量の増加が確認でき,本研究によって得られた活性炭はAHP操作範囲において,最大でシリカゲルの1.7倍程度まで有効吸着量を増加できることが認められた.
環境
  • 野中 利瀬弘, 山口 洋平, 菅原 勝康, 佐藤 和久
    2007 年 33 巻 5 号 p. 495-500
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/22
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,由来の異なる種々の溶融飛灰に対応可能な効率的有価金属分離プロセスの開発のための基礎的なデータを取得することを目的として,溶融飛灰中に含まれる亜鉛の存在形態を定量的に明らかにすると共に,種々の亜鉛化合物の塩化揮発挙動を調べた.各種溶媒を用いた逐次抽出により,飛灰中の亜鉛化合物を塩化鉄可溶分(酸化物,炭酸塩),酢酸可溶分(珪酸塩,アルミノ珪酸塩),水酸化ナトリウム可溶分(フェライト),そして混酸可溶分(硫化物)の4種に分離し,定量した.コークスベッド式および流動床式ガス化溶融炉で発生した2種の飛灰MとBをそれぞれ分析した結果,飛灰M中の亜鉛の93%とBの60%は酸化物や炭酸塩として存在していた.また,飛灰B中に含まれる亜鉛の40%はフェライトや硫化物,珪酸塩やアルミノ珪酸塩で構成されていることがわかった.いずれの飛灰でも,単独で加熱した場合には亜鉛の揮発は生じないが,種々の形態を含む飛灰Bでは,加熱によりその組成が著しく変化することがわかった.さらにPVCを添加した場合には,飛灰中の酸化物やアルミノ珪酸塩が主に揮発分離し,また亜鉛フェライトは,飛灰中の炭酸カルシウムとの反応により,固相中へ酸化物として安定化することがわかった.炭素を添加した場合には,安定な珪酸亜鉛や硫化亜鉛の塩化揮発がPVC添加時に比べて著しく進行しており,種々の形態で存在する亜鉛の揮発に対する炭素の添加効果が高いことが明らかとなった.
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