化学工学論文集
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34 巻, 1 号
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[特集]現象の解析とプロセス強化
  • 黒田 千秋, 松本 秀行, 藤岡 沙都子
    原稿種別: レビュー
    2008 年 34 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
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    英国に生まれ欧米で展開してきたProcess Intensification(PI)と,その翻訳語であるプロセス強化の現状を比較検討し,それらの動向を探りながら,期待するPIとその実現のための方法論について独自の見解を述べることを目的としている.現状においては,PIはモデルベースのプロセス設計戦略であり,飛躍的な性能向上(Quantum Leap)を目指し,Green Process Engineering(GPE)の中核をなす技術イノベーションと捉えるのが妥当であると考えている.一方,日本におけるプロセス強化は未だ明確に把握することが難しい段階であり,上述のPIと共通した解釈もなされてはいるが,モデルベースの捉え方が異なっているように考えられる.とくに現象論的モデルに立脚しつつ,要素の分解・統合を繰り返しながら設計を行う構成論的設計手法が重視され,飛躍的性能向上の実現を創発(Emergence)に期待することにもなっている.期待するPI技術にとってプロセスシステムの組織的な統合化,すなわちコンパクト化が重要であり,その結果,精密要素が緻密に詰まった複雑なシステムに至ることになるであろう.そして,物質設計→デバイス設計→プロセス設計を通観する複雑なシステム設計戦略が要求され,そこでの最重要難題の一つがダイナミック複雑系のマルチスケール(複数観点)モデリング・シミュレーションであると考えられる.結局,期待するPIは移動現象論に代表される種々の現象論的モデルに基づいて,既往の単位操作設計の枠組みを再構築し,新モデルベース単位操作の統合化によるプロセス技術の設計・開発戦略であると考えられる.残された課題は複雑系の精密で効率的かつ柔軟なモデリング・シミュレーション技術の更なる展開であろう.
  • 前 一廣, 牧 泰輔, 青木 宣明
    原稿種別: レビュー
    2008 年 34 巻 1 号 p. 8-17
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    マイクロ空間では輸送物性のバランス変化によって混合,伝熱などが促進される.マイクロ空間で期待される混合には迅速混合と精緻な拡散混合の2種類がある.ここでは,マイクロ流体セグメントという概念を提案,導入し,この2種類の混合それぞれに関してマイクロ空間利用のコンセプトを示すとともに,それを制御するために必要な新しい工学への定量的な扱いについて概説する.まず,迅速混合ではマイクロミキサーの設計が必須であるため,マイクロ混合の論理を整理して設計し,操作のための指針を示すとともに,ナノ材料製造装置としての有用性を示した.また,反応機構に基づいた反応システム設計による中間活性種を厳密に制御した新しい有機合成法への可能性を示した.一方,精緻拡散混合では,設計されたマイクロ空間における反応基剤の精密な拡散による微粒子径の厳密な制御を実験的に示すとともに,マイクロ流体セグメント配置によって,複合反応の選択率を制御する操作論を示した.以上の知見をもとに,マイクロ流体セグメントに立脚した新反応工学として,セグメント形状を考慮した設計法の概要を示し,プロセス強化ツールとしてのマイクロ空間利用の精緻化学工学体系のベクトルを示した.
  • 門叶 秀樹, 原田 英二, 栗山 雅文
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    一様気流中に置いた垂直平板の後流域における,局所の気流の乱れ特性と熱伝達特性の関係を実験的に考察した.垂直平板後流域では,平板背後で気流速度の小さな死空間が形成され,その上方において気流速度の増大と強い速度変動があらわれることがわかった.また,熱伝達係数は,死空間では自然対流支配のため小さな値を示すが,死空間外縁付近では気流速度の増大と強い速度変動の影響で,条件によっては平板のない条件よりも50%ほど大きな値を示すことがわかった.
    以上の熱伝達係数と気流速度および速度変動の分布に関する知見を基に,垂直平板後流域の局所のヌッセルト数を一様気流中のヌッセルト数と気流速度変動によるヌッセルト数の加成性を用いて表示する実験式を提出した.
  • 門叶 秀樹, 原田 英二, 栗山 雅文
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
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    潜熱蓄熱材をマイクロカプセル化した微粒子を水に分散させた,いわゆる蓄熱微粒子スラリーのキャピラリー内伝熱特性を実験的に検討した.まず,蓄熱微粒子スラリーの密度,熱伝導度,比熱などの物性値を測定することで蓄熱微粒子自体の物性値を把握した.また,キャピラリー内流動実験から蓄熱微粒子スラリーが指数法則流体であることを確認し,スラリーの見掛け粘度を求めた.
    次に,蓄熱微粒子スラリーのキャピラリー内伝熱実験を行い,蓄熱微粒子が相変化を起こすことで熱伝達係数が最大2倍程度大きくなることを確認した.また,測定した物性値を適切に用いて各無次元数を定義することで,スラリーの熱伝達係数が既往の無次元相関式で良好に表示可能なことを示した.
  • 吉川 史郎, 島崎 泰
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
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    マイクロチャネルを有するクロスフロー限外濾過装置は,濾過原液側の拡散距離が短いこと,膜面積の流路体積に対する比が大きいことなどの特徴がある.このことより,マイクロ化学システムにおけるタンパク質などの高分子物質の分離を効率よく行える装置として期待される.本研究では,マイクロ化学プロセスにおける酵素を含む溶液の分離を想定し,マイクロチャネルを有するクロスフロー限外濾過装置を作成して酵素のモデル物質であるポリビニルピロリドン(PVP)の水溶液のクロスフロー限外濾過実験を行った.
    実験では,膜間圧力差,供給流量,溶液濃度をパラメータとし,透過流束の経時変化を測定した.実験結果より,いずれの条件でも十分時間が経過した後に透過流束はほぼ一定となることが確認された.また,その一定となった透過流束値は供給原液流量,膜間圧力差(TMP)の増加とともに増加し,供給液濃度の増加とともに減少する結果が得られた.
    実験の結果をもとに,濃度分極モデル,溶質の軸方向への対流の効果を考慮したマイクロチャネル内の移動現象および膜の透過に関するモデルを構築した.モデルにより,チャネルを軸方向に並ぶ微小検査体積に分割し,膜面垂直方向の透過による移動と軸方向の原液の流れに伴う対流による移動を考慮した各体積についての溶質の物質収支をとり,局所の透過流束を推算した.推算された局所の流束の濾過装置全体についての平均値を装置全体の透過流束値とし,実験によって求められた流束値と比較検討した結果,モデルは妥当であることを確認した.
  • 島添 雅紀, 杉川 祐介, 植田 利久
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    ノンエレメントミキサーの混合過程に及ぼす周期操作の影響について実験的に検討を加えた.装置は,内径10 mm,長さ1000 mmの主流円管と主流円管に垂直に取り付けられた内径3 mmの支流円管からなる.作動流体にはグリセリンを用い,主流,支流ともにグリセリンを流す.流れのレイノルズ数は小さく,基本的には層流である.支流から流体が周期的に注入されると,主流円管内に主流流体と支流流体が交互に配置されるようになり,主流流体と支流流体円管内流の放物型速度分布の影響を受け,主流流体と支流流体の界面は折りたたみ,引き伸ばしを受け,その結果形成される流れのパターンは一周期の主流と支流の流量で決定されることが明らかになった.実験結果をもとに,混合の進行度,混合度,を対流混合と分子拡散混合として評価するモデルを構築した.対流混合は主流流体と支流流体の界面の面積の増加により定量的に評価する.分子拡散混合は通常の濃度評価により定量化することができる.そして,総合的な混合の進行度を,両者の和として求める.さらに,対流混合が支配的な領域と分子拡散混合が支配的な領域の割合を求める.その結果,全体的な混合の進行度は,総合的な混合の進行度と支配領域の比により評価できることを示した.
  • 大門 咲子, 岡田 文太朗, 平田 雄志, 井上 義朗
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 48-56
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    混合が化学反応系に及ぼす影響を明らかにするために,Lotka-Volterra型の周期反応によって形成される濃度場の時空間構造に及ぼす対流・拡散効果を調べた.混合開始直後の濃度分布は空間的に不均一であるため,濃度の振動形態は場所ごとに異なるが,十分時間が経過すると系全体が一様濃度に近づき,その濃度が一定の時間周期で振動する同期現象が起こる.濃度場全体を濃度振動子の集合体と考え,拡散による近接相互作用と対流による結合の組み換えを行う動的ネットワークと見なした.このモデルを用いて,最終的にコヒーレントな濃度振動形態に至る過程と,それらに影響を及ぼす諸要因について解析を行った.
  • 萩原 秀紀, 平田 雄志, 井上 義朗
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    反応速度が水素イオン濃度に依存する並列逐次反応を,層流条件下の合流型マイクロリアクターを用いて行う場合,反応液のpH値の空間分布を適切に調製することにより転化率や選択率を高める手法を示した.主反応速度を大きく,逆に副反応速度は小さくなるように各反応液のpHを調製した溶液が流入する3本合流型チャネルでは,選択率は高くできるが転化率は低下する.しかし,合流チャネルの本数を増加させることにより,転化率と選択率の両方を高めることが可能である.チャネル出口部で,目的生成物の濃度の高い部位だけを選択的に取り出すことによる選択率の向上効果についても考察した.
  • 松田 圭悟, 岩壁 幸市, 中岩 勝, 小菅 人慈, 片岡 祥, 山本 拓司, 大森 隆夫
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    二重管型充填塔およびプレート型熱交換器式内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)について,速度論に基づいたシミュレータを構築し,多成分系混合物の蒸留シミュレーションを行った.解析には市販の方程式解法型ツールgPROMS®を用い,従来型の二重管熱交換器式HIDiCのシミュレーション結果と従来型よりも装置体積辺りの伝熱面積が大きいプレート型熱交換器式HIDiCのシミュレーション結果とを比較し,コンパクトで効率的な蒸留分離プロセスについて検討した.その結果,プレート型熱交換器式HIDiCは従来型HIDiCと同様に外部還流比ゼロの条件にて動作し,さらにはリボイラなしでも動作した.本研究から,プレート型熱交換器式HIDiCは従来の蒸留分離プロセスの機能と性能を高め,さらにはプロセスをミニチュア化することが可能であり,高い省エネルギー性能を示すことが明らかになった.
  • 堀内 均平, 中岩 勝, 岩壁 幸市, 松田 圭悟, 都田 昌之
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    パイロットスケールの内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)により炭化水素12成分系混合物の蒸留分離を行い,操作特性,省エネルギー性について検討した.運転結果を元に,市販のプロセスシミュレータ上でHIDiCシミュレータを構築した.運転データおよびシミュレーション結果から,外部還流比ゼロおよびリボイラー負荷ゼロでの運転条件が最も経済性に優れ,従来型蒸留塔よりも約62%の省エネルギー性が得られることを示した.作成したシミュレータを用いて塔頂と原料との間での熱交換を行うフローについても検討を行い,HIDiCのさらなる省エネルギー運転の可能性を見出した.
  • 高橋 伸英, 真野 弘, 岡部 和弘, 中村 光穂, 藤岡 祐一, 三村 富雄, 八木 靖幸
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 76-84
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    火力発電所などの排ガス中からCO2を分離回収する技術として,従来の充填塔方式に代わり,中空糸膜を介した化学吸収法は装置をコンパクト化し,分離回収コストを削減できると期待されている.本研究ではPTFE, PPおよびPEの3種類の材質の中空糸膜について向流接触型のモジュールを用い,MEA水溶液を吸収液としてCO2/N2の模擬ガスからのCO2吸収実験を行い,膜の形状,物性が物質移動係数およびCO2吸収性能に及ぼす影響について検討を行った.またシミュレーションモデルを構築し,それらの影響を理論的に検討した.
    PEの延伸膜を除き,CO2回収率および総括物質移動係数の実験結果とシミュレーションによる計算結果の一致はおおむね良好であり,モデルの妥当性が確認された.PTFEは中空糸径,膜厚が他の材質のものに比べ大きく,その結果CO2回収率は最も低かった.PPおよびPEの中空糸膜は流速などを調整することにより80–90%の高いCO2吸収率を達成できた.しかし,PTFEでは膜の細孔径の増加に伴いCO2回収率は増加し,理論的にも裏づけられたが,PP, PEではその逆の依存性を示した.
    PEの延伸膜ではCO2回収率が著しく増大し,延伸処理が中空糸膜のCO2吸収性能を向上させる有効な手段であることが実証された.しかし,延伸による中空糸膜形状の変化,あるいは延伸により引き起こされうる細孔径,屈曲度の変化を考慮した計算からはそのような著しいCO2回収率の増大は説明することができず,本モデルでは考慮されていない現象が関与していることが示唆された.
  • 永井 秀忠, 桑原 康, Giorgio Carta
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 85-94
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    L-リジンのイオン交換樹脂分離における多塔システムのシミュレーションモデルを構築し,吸着および溶離時に使用される塔数を変化させ,樹脂とフィード液の向流多段接触を行う場合のL-リジンの挙動を検討した.
    具体的には,25°Cでのリジン解離平衡定数,さらには,三菱化学(株)製のカチオン交換樹脂DIAION SK-1B(DVB含量8%)に対してイオン交換平衡定数,樹脂相内拡散係数を測定した.これらの測定データを用い,1.5 cmφ×10.0 cmのカラムでスイッチング時間3600 sの条件で,L-リジンの完全吸着,完全溶離をするのに必要な吸着工程,溶離工程での塔数を検討することとした.
    (1)1塔吸着の場合では,リジン塩酸塩水溶液によるフィードリジン量が5.7×10−2 mol/h以上のときに吸着漏れが確認された.これに比べて吸着塔を2塔にした場合は1.2×10−1 mol/h以上,3塔にした場合は1.4×10−1 mol/h以上のときに吸着漏れが観察された.すなわち,塔数を増やす効果は1塔から2塔にする場合に吸着漏れを防ぐ効果が高く,2塔から3塔に増加した場合は効率が顕著には増加しなかった.
    (2)1塔溶離の場合は,アンモニア水溶液によるフィードアンモニア量を増加させても,溶離塔出口での完全溶離は困難であった.これに比べて溶離塔を2塔にした場合は1.0×10−1 mol/h以上,3塔にした場合は6.6×10−2 mol/h以上のアンモニア量の場合に完全溶離が可能となることがわかった.すなわち,1塔だけではリジンの完全溶離は不可能であったが,2塔にした場合に完全溶離が可能となった.2塔と3塔では,その効果に顕著な差が見られなかった.
  • 相田 隆司, 四元 孝典, 木村 香織, Ratanaporn Yuangsawad
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    Oxidative removal of a low concentration of CO from hydrogen was studied using a simulated moving bed reactor (SMBR) with 1wt% Pt/Al2O3 as a catalyst and adsorbent. Compared with an ordinary fixed bed reactor (FBR), SMBR showed higher CO removal when the ratio of the CO introduction rate to the active site moving rate (mCO) was smaller than 1. The presence of H2 enhanced the CO oxidation performance of FBR, whereas it barely affected the performance of SMBR. Effects of mCO, ratio of O2 introduction rate to active site moving rate (mO2), H2 concentration and O2 concentration on CO removal and COx concentration in H2 at the outlet of SMBR were investigated experimentally. The most important factor in order to enhance the CO removal was mCO: CO was not detected at the outlets when mCO was smaller than 1. The most important factor in order to enhance the COx concentration in H2 at the outlet was mO2: CO2-free H2 was obtained when mO2 was larger than 1. H2 concentration did not affect either the CO removal or the COx concentration in H2 at the outlet. O2 concentration affected mCO and mO2, which in turn influenced the CO removal and COx concentration in H2 at the outlet.
  • 堀江 孝史, 相田 隆司
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    プロピレンの二量化に対してマイクロリアクターを用いて周期的濃度変動操作を行い,ベンゼン収率の向上と二酸化炭素生成の抑制を目的として実験を行った.周期的濃度変動操作は原料となるプロピレンと酸素を交互に反応器に導入するため,軸方向拡散の影響を抑制し,高度に流体濃度を制御できるマイクロリアクターが有利になると考えた.緩和時間を基準として,周期的濃度変動操作におけるマイクロリアクターと充填層反応器との結果の比較を行った.マイクロリアクターを用いた場合,12 sという短い周期で濃度変動操作を行うことができた.周期12 sでのプロピレン応答曲線は充填層反応器における周期72 sと,周期を規格化したときに形状がほぼ同一であったが,触媒酸化度が高く維持されたことと,変動応答が正確であることによって生成物の濃度応答は大きく異なり,ベンゼン収率を向上させ,CO2生成を抑制することができた.マイクロリアクターでは周期的濃度変動操作によって,定常操作に比べてベンゼン収率が約4倍となり,充填層反応器を用いた場合の濃度変動操作の結果の最大値と比較しても約2倍であった.
  • 外輪 健一郎, 白石 宣政, 杉山 茂
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 108-112
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    反応装置の温度を周期的に変化させると反応率,収率,選択率などの時間平均値が,定常状態での値を上回る可能性が数値計算による検討結果によって明らかにされている.しかし,温度周期操作が反応に及ぼす影響についての実験的な検討はほとんど行われていない.これは,温度周期操作には大量のエネルギーが必要とされるため実施がきわめて困難であるためである.本研究では従来とは異なる形式の反応装置を提案し,これを利用した温度周期操作について検討を行った.本研究で開発した反応装置は,ヒーターを反応流路の内部に設置している点で一般的な反応装置と異なる.開発した反応装置では約9 Wの電力で動作することが示された.プロピレンの酸化反応を例に取った反応実験を行ったところ,温度周期操作によって選択率を制御できる可能性が示された.
  • 張 琪, 郭 燏, 周 呂, 桜井 誠, 亀山 秀雄
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 113-118
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    触媒反応システムのより一層の省エネルギー化のために燃料電池の水素製造反応において熱応答性が速く,圧力損失の小さいプレート触媒改質器の開発が求められている.本研究は,COMSOLを用いた通電加熱アルマイト触媒(EHAC)によるメタン水蒸気熱交換改質器に関して反応と伝熱の動特性のシミュレーションを行った.従来の報告された熱交換改質器と比べて,提案した加熱策はEHACで直接通電して内部加熱することが利用できるので,燃焼部に予熱段を設計し,メタン燃焼ガスの入口温度は常温でも起動時間は10 min以内であることが分かった.また,反応原料物質の供給量を急激に変化させた場合,プレート型反応器は反応場である触媒壁面との熱エネルギーの交換が伝導伝熱によって迅速で効率的に行われ,短い時間で反応器が安定した.
  • 常木 英昭
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 119-124
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    ジエタノールアミンは除草剤原料として需要が急増しており,選択的に製造する方法が望まれていた.我々は希土類修飾ペンタシル型ゼオライト触媒がアンモニアとエチレンオキシドとの反応活性が高く,形状選択性発現によってジエタノールアミン選択性に優れることを見いだし,これを用いたプロセスを工業化した.この触媒は数日のオーダーで劣化するので再生する必要がある.工業プロセス構築と運転条件決定には劣化の現象の解析とそのモデル化が必要である.エチレンオキシドの転化率に対応した触媒層温度分布の経時変化解析と劣化触媒の分析からジエタノールアミンとエチレンオキシドの累積反応量が触媒劣化に対応するモデルを提案した.温度分布と生成物分布の経時変化を説明することができるこのモデルは反応プロセス設計に有用である.
  • 大村 直人, 銭谷 優香, 永田 晃大, 熊谷 宣久, 瀧川 悌二, 今駒 博信
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 125-129
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    連続乳化重合プロセスの強化の観点から,撹拌・混合操作条件および,反応溶液のpHが粒子の反応・凝集に及ぼす効果を調べた.実験は乳化剤濃度を低くすることを目的として臨界ミセル濃度以下で行った.撹拌条件を変化させる実験では,半月型2枚翼の回転数が200 rpm未満で撹拌の影響を受け,重合率および,凝集による粒子成長は抑制された.一方,回転数が200 rpm以上では重合速度に対して重合反応が律速となり,高い重合率が得られた.撹拌速度の増加に伴い,粒子の凝集による成長速度も速くなり,大きい粒子が得られた.反応溶液のpH条件を変化させた実験では,反応溶液のpHが6,7と大きい場合は平均粒子径の最大値は3 μmと増加し,粒子径が10 μm以上のものが観察された.この場合,平均粒子径が最大値に達するまでの粒子径分布はバイモーダルとなり,平均粒子径がピークを過ぎ減少しはじめると粒子径分布は単分散となることがわかった.
  • 藤岡 沙都子, 松本 秀行, 黒田 千秋
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 130-135
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    発熱反応を伴う剪断流動場で局所的な物性の変化に起因して発生する不安定振動現象について,いくつかの異なる解析・モデル化手法を適用することにより振動のパターンの定量化を試み,粘性がパターンに与える影響について解析した.振動発生の定性的因果関係モデルに基づく時間付きペトリネットを用いたシミュレーションにより,振動発生領域における周波数は粘性の増加とともに増加する傾向にあることが確かめられた.発生した流れの振動パターンが次第に崩れ複雑に変化していくパターンの遷移領域においては,ペトリネットのようなシステム論的な手法によるモデル化が困難であるため,パターンの複雑性の定量化にフラクタル解析を導入し可視化画像をもとに粘性の影響について検討した.その結果,遷移領域においても粘性が重要な支配因子であることが確かめられた.また,この不安定振動現象は,運動量移動と熱移動が異なる時間スケールをもちながら相互に作用しあうことで発現すると考えられる.そこで,温度計測情報から流れの状態を予測することを目指し,粘性の変化が温度変動の時間的パターンに与える影響について検討した.時系列のフラクタル解析による時間的パターンの解析により,粘性が温度の振動パターンについても重要な支配因子となっていることが確かめられた.このように観点の異なる解析・モデル化手法を用いることで,発生領域および下流の遷移領域それぞれにおける不安定振動の空間的,時間的パターンの特徴を抽出することができた.
  • 松本 秀行, 宮本 直樹, 小林 大祐, 黒田 千秋
    原稿種別: 報文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 136-143
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    本論文では,超音波を利用したスチレン乳化重合プロセスの連続操作に関して,間接照射システムの構造を検討した.まず,超音波場を有効利用しうる流通式反応器構造の検討を行った.その結果,反応器設計に関して,振動子に面する反応器底面の形状,窒素ガスの供給方法と反応器内部の液面高さを考慮に入れることが必要であるという知見が得られた.そして,間接照射に有効な反応器モデルの一つとして,垂直型円筒反応器の適用が提案された.
    次に,同反応器モデルを適用した連続重合システムの動的挙動の解析を行った.滞留時間を適切に設定することで,回分操作に比べて多分散度が小さい高分子を安定的に得られることがわかった.さらに,還流システムを導入し,プロセスのシステム構造を変化させることで,超音波のプロセス強化的効果を高められることが明らかになった.
  • 大森 隆夫, Weifang Yu, 片岡 祥, 山本 拓司, 遠藤 明, 中岩 勝, 伊藤 直次
    原稿種別: ノート
    2008 年 34 巻 1 号 p. 144-147
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    メタンの水蒸気改質反応により水素を製造する無機分離膜反応器を対象として,周期操作を用いたプロセス強化についてシミュレーションによる検討を行った.周期操作には,反応器の軸方向に壁面温度をサイン波の形で設定する操作法を用いた.その結果,適切な周期的温度設定を用いることにより,水素の生成量が7%増加しうることなどが明らかになった.この効率向上・プロセス強化の要因について,装置・プロセス内の各部分で起こる反応や移動現象を最適化するとの観点から考察した.
  • 関口 秀俊, 図子 竜介
    原稿種別: ノート
    2008 年 34 巻 1 号 p. 148-151
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    この研究は,クリーンマテリアルとして注目されている過酸化水素を水中放電により合成を行う際に,超音波の照射を試み,その効果について検証したものである.実験の結果,超音波照射は過酸化水素の生成量を減少させたが,放電エネルギーに対する生成効率を上昇させ,水中放電場におけるプロセス強化の手法として有効であることが示唆された.
  • 関口 秀俊, 伊藤 久師
    原稿種別: ノート
    2008 年 34 巻 1 号 p. 152-155
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    大気圧非平衡プラズマジェットを用いて1-デセンの無触媒アミノ化を試みた.アンモニアプラズマジェットを液相デセンに直接照射する実験を行い,その結果,アミノ化物である1-デシルアミンと2-デシルアミン,および水素化物であるデカンが生成された.得られた結果から反応機構を提案した.本方法は炭素2重結合の無触媒アミノ化に有効であることが示唆された.
粉粒体工学
  • 小林 信介, 上田 泰之, 大鹿 由梨, 水野 憲治, 塚田 茂男, 清川 英明, 小林 潤, 羽多野 重信, 板谷 義紀, 森 滋勝
    原稿種別: 報文
    専門分野: 粉粒体工学
    2008 年 34 巻 1 号 p. 156-160
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    木質バイオマスを大量かつ効率的に微粉砕可能な装置の開発を目的とし,連続式振動ミルの改良および粉砕プロセスの最適化を行った.従来,材料の微粉砕に利用されてきた振動ミルに粉砕原料制御用堰を設置,また閉回路粉砕プロセスを構築することにより木質バイオマスの微粉砕プロセスを改良し,改良型の連続式振動ミルによる木質バイマスの粉砕性について評価を行った.堰の設置や閉回路プロセスの構築により,粉砕原料である木質チップの滞留時間(粉砕時間)および原料投入量の改善が可能となり,粉砕収率の向上,粉砕木粉製品生産量の大幅増加,木質バイオマスの粉砕に要するエネルギーの大幅削減が可能となった.
熱工学
  • 原田 拓自, 渡部 弘達, 松下 洋介, 丹野 庄二, 青木 秀之, 三浦 隆利
    原稿種別: 報文
    専門分野: 熱工学
    2008 年 34 巻 1 号 p. 161-167
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    現在,窒素酸化物や一酸化炭素,すすといった大気汚染物質の同時排出低減法として,水エマルジョン燃料の研究が行われている.水エマルジョン燃料液滴の2次微粒化挙動が確率的な挙動を示すことは知られているが,2次微粒化挙動の詳細が解明されているとは言い難い.本研究では,2次微粒化現象の1形態である蒸気吹き出し(パッフィング)の発生条件を解明することを目的とした.熱電対に懸垂した水/ドデカンエマルジョン燃料液滴を電気炉に挿入し,その2次微粒化挙動をハイスピードカメラにより観察した.また,水/ドデカンエマルジョン燃料液滴の初期液滴径および水/ドデカンエマルジョン燃料液滴を加熱する炉の壁面温度がパッフィング発生確率に及ぼす影響を検討した.その結果,水/ドデカンエマルジョン燃料液滴のパッフィングの発生確率は,電気炉壁面温度および初期液滴径の増加に伴い増加した.
プロセスシステム工学,安全
  • 江口 元
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2008 年 34 巻 1 号 p. 168-174
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    化学工場において,生産活動を支援するための情報システム(生産支援システム)は生産性向上(コストダウン)や増産による売上げ増に寄与するものと考えられてきたが,これまでシステムの導入に関する投資利益率によって導入の可否を判断してきたため,必要な費用に見合うだけの利益を生み出すことができないとみなされると,生産支援システムの新たな導入が次第に行われなくなったり,新しい機能の開発が停滞したりすることもある.しかしプロセスシステム工学の技術に基づく生産支援システムは,今後も工場の生産性向上への大きな貢献が期待でき,さらに技術開発の継続性を途切れさせないためにも,本論文において,これまでの導入効果評価法に代わる省力化効果に着目した新たな評価法を提案する.評価の具体的な手順を示すために化学プラントの例についても述べる.
マイクロシステム,ナノシステム
  • 山崎 吉一, 後藤 理人, 仮屋崎 侃, 諸岡 成治
    原稿種別: 報文
    専門分野: マイクロシステム,ナノシステム
    2008 年 34 巻 1 号 p. 175-180
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    単位操作をマイクロチャンネルで実現する一助として,アルキメデスらせん形のマイクロチャンネル中に,固体粒子(直径22および40 μmのガラス粒子)を懸濁した水を流し,粒子を分離して排出する操作の可能性を調べた.チャンネルの幅および深さはそれぞれ700 μmおよび500 μm,最内半径は2.5 mm,最外半径は5.0 mmとした.マイクロチャンネルは水平または垂直に保った.らせん内側端から懸濁液を送入し,2.5巻きの地点で2方向に分岐して取り出した.チャンネル内で粒子は2次流れ(Dean渦)によって運ばれ,かつ重力で沈降するために,内外出口における濃度が異なった.採取した懸濁液試料は乾燥後に秤量し,粒子の分離度を求めた.
    水平設置の場合:粒子の沈降速度がDean渦の速度に比べて大きくなると,粒子はチャンネル内側の底部に集まった.粒子の沈降速度が,底部壁近傍を流れて内側壁で上昇する流れの速度よりも小さくなると,底部に集まった粒子は上向きDean渦に巻き上げられ,チャンネル内に分散し,出口の分離度が低下した.
    垂直設置の場合:粒子が集まる壁面は液流の方向によって変化することが分かった.本実験では,頂部を起点として時計回りに90°回転した位置に分岐点を設置したので,液流速が低い条件下において粒子は内側出口に濃縮された.
    以上の実験結果はCFDシミュレーションと合致した.また,液と粒子の速度分布,ならびに粒子濃度分布のシミュレーション結果は,液固分離用のマイクロらせんの設計と操作条件の選定に有意義な示唆を与えた.
材料工学,界面現象
  • 渡辺 孝典, 名和田 道生, 小林 潤, 小林 敬幸, 架谷 昌信
    原稿種別: 報文
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2008 年 34 巻 1 号 p. 181-186
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    赤色蛍光体であるY2O3 : Eu粒子の微粒化を目的として,エマルションの高温燃焼による微粒子製造を行い,当該製造法が生成微粒子の構造および発光特性に及ぼす影響について検討した.原料には硝酸イットリウム・硝酸ユーロピウム混合水溶液および白灯油を用いた.この混合溶液に適当な界面活性剤を加え超音波ホモジナイザーによる撹拌を行うことでW/O(water-in-oil)およびW/O/W(water-in-oil-in-water)エマルションに調製した.得られたエマルションを酸素富化空気下において高温反応炉に噴霧することで蛍光体微粒子の製造を試みた.その結果,作製した粒子の粒径は100 nm以下のナノ粒子が製造されていることが明らかとなった.W/O/Wエマルションから得られたナノ粒子の粒径は,エマルション内水相径と内水相の蛍光体の前躯体濃度から算出した推算値に比べ小さいことが明らかとなった.一方,蛍光発光強度については,本法により製造したY2O3 :Eu微粒子は最大でも従来の固相法で製造された市販品の約45%程度であった.しかし,本法を適用することで,水溶液のみを用いた噴霧熱分解法により製造される微粒子と比較して蛍光発光強度は1.5倍程度向上することが明らかとなり,本法の有用性が示された.
  • 小田 正昭, 菅 真一郎, 吉井 英文, 古田 武
    原稿種別: 報文
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2008 年 34 巻 1 号 p. 187-193
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    分布屈折率レンズ(GRINレンズ)を作製する新規技術開発の研究を行った.この手法は,高屈折率の芯ファイバーの周囲に屈折率の異なる高分子溶液を複数積層させた分布屈折率レンズを作製する方法である.本研究では,屈折率分布制御の重要な要素となる賦型膜厚の形成について,屈折率の異なるモノマーを配合した3種類の溶液による,3層連続積層賦型による高分子薄膜形成実験を行った.賦型膜厚はキャピラリー数(Ca数)で相関され,Caの2/3乗式で良く相関できた.また,溶液の液深が賦型膜厚に影響を与えることが明らかになった.
環境
広領域,その他
  • 杉森 活彦, 俵山 吉智, 佐藤 崇行, 今田 高峰, 櫛木 賢一, 古田 武
    原稿種別: 報文
    専門分野: 広領域,その他
    2008 年 34 巻 1 号 p. 200-204
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル 認証あり
    In order to prevent hazardous contamination inside satellite stations by the sediment action of frozen toxic liquid propellant on the space suits of astronauts, it is necessary to understand the phase changes of the leaked liquid propellant in case of valve breakdown. Using MON-3 as the liquid propellant, the minimum flow rate of MON-3 released without freezing to the vacuum chamber was investigated. For all the experimental flow rates tested in this study (0.347×10−5−4.45×10−5 g/s), MON-3 was found to freeze when released into the vacuum chamber. Freezing may be caused by the loss of latent heat to the surroundings in the vicinity of the orifice outlet where vaporization occurs.
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