発芽玄米製造における浸漬発芽工程で発生する排液中に含まれる一般生菌,酵母,カビの不活性化技術の確立を目的として,ステンレス板に市販光触媒コーティング剤を塗布乾燥して作製した薄層光触媒反応器を用いて,これら菌類の不活性化特性について検討した.また,秋田県産珪藻土を用いたろ過による分離と光触媒反応を組み合わせることによる効果を検討した.
試作薄層光触媒は,ブラックライトランプの照射により浸漬発芽排液中に含まれる一般生菌,酵母,カビを不活性化した.菌類の不活性化速度は,ブラックライトランプ光触媒間距離
r2および溶液層厚さ
lの影響を受け,
r2一定の場合,薄層域ながら
lが3×10
−3 m以上の値をとると不活性化速度が遅くなる傾向がみられた.珪藻土を用いて試料溶液を吸引ろ過した結果,一般生菌は約90%,酵母およびカビは100%除去された.珪藻土ろ過と光触媒分解技術の組み合わせにより一般生菌は効率よく不活性化できることが明らかになった.
薄層光触媒による菌類の不活性化速度を定式化するために,まず,一般生菌に対し,半径光モデルにより推定した触媒表面照射光強度
Iをもとに1ヒット性多重標的モデルを適用した結果,溶液層厚さ
lがごく薄い範囲では本モデルが適用可能であるが,溶液層が厚くなると適用できないことがわかった.一方,光触媒表面で生成する活性化学種の影響を有効照射光強度
Ieffとして導入することにより,ろ過の有無および異なる
r2および
lの下で得た一般生菌の不活性化実験値を,単一の標的数
mおよび不活性化係数ηを用いた標的モデルでほぼ良く表現できた.
Ieff/
Iは溶液厚さ
lが大きくなるにつれて小さくなり,ろ過の有無にかかわらずほぼ等しい値を示した.一般生菌(ろ過無)で得た
Ieffを酵母,カビの実験結果に適用した結果,両菌類についても標的数,不活性化係数の値は共に一般生菌の値とほぼ同一であった.
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