化学工学論文集
Online ISSN : 1349-9203
Print ISSN : 0386-216X
ISSN-L : 0386-216X
34 巻, 3 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
移動現象,流体工学
  • 柴 貴子, 井上 義朗
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2008 年 34 巻 3 号 p. 313-320
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    流体混合を解析する場合に用いられる定量的指標として,混合度と混合能がある.混合度は着目流体の空間分布の一様性に関する指標であるのに対し,混合能は流体運動における混合性の強さに関する指標である.本論文では,相対エントロピー(あるいはKullback-Leiblerの情報量)に相当する量を用いて新しい混合能の定量的指標を提示する.流れの中で混合に直接寄与する部分は,力学系と見なした流れ場のPoincaré断面に見られるBirkhoffパターンと呼ばれる構造,すなわちカオスの海やKAM曲線で囲まれた孤立島状領域等の幾何学的形状に強く依存する.本論文で提案した混合能は,このBirkhoffパターンから予測される流れ場の潜在的な混合能力を的確に反映することのできる指標である.また,その計算に用いる流体粒子数への依存性も少ないという利点を持つ.
粉粒体工学
  • 西浦 泰介, 下坂 厚子, 白川 善幸, 日高 重助
    原稿種別: 報文
    専門分野: 粉粒体工学
    2008 年 34 巻 3 号 p. 321-330
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    固体微粒子けん濁液の乾燥により得られる粒子層構造の制御に必要な知見を得るために気液二相流体流れを計算するCIP法と粒子挙動を計算するDEMを連成した固体微粒子けん濁液の乾燥シミュレーション法を提案した.けん濁液の乾燥過程で分散微粒子に作用する力として微粒子間相互作用による接触力,液膜付着力,Van der Waals力および電気二重層により生じる静電気力と,粒子流体間相互作用による流体抵抗力,潤滑力,ブラウン揺動力および液面上に浮遊する粒子に働く表面張力を考慮した.提案したシミュレーション法の信頼性を確認するために,粒子分散状態と乾燥速度を変化させて平板上の微粒子けん濁液の乾燥挙動をシミュレートした.乾燥により形成された粒子充填層の表面構造は実験とシミュレーションで良く一致した.次に,けん濁液の乾燥過程における微粒子挙動と乾燥粒子層構造の関係を提案したシミュレーション法を用いて微視的に検討した.平板上に積み重なった粒子群の最下層の粒子配列が粒子充填構造に大きく影響した.また,乾燥速度の増加による粒子間接触力の増加が粒子充填構造を乱すことがわかった.
分離工学
  • 山本 秀樹, 隈村 大誠, 長野 千佳, 竹内 扶美子, 藤井 槙子, 田頭 素行, 大竹 康之
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2008 年 34 巻 3 号 p. 331-338
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    ビール製造工程から廃棄されるホップ苞部分にはポリフェノール類(カテキン,プロシアニジン類など)が豊富に含まれている.前報では,ホップ苞部分にカテキン類(カテキン,エピカテキン)が重合したプロシアニジン類(プロシアニジンB1, B2)が含まれていることを明らかにした.本研究ではホップ苞部分に含まれるポリフェノール類を純溶媒および混合溶媒により抽出分離を行い,それぞれ溶媒に対する溶解性の評価を溶媒と溶質の溶解度パラメータ(Solubility parameter)を用いて行った.
    実験で使用した溶媒には,水,メタノール,エタノール,1-プロパノール,アセトンおよびそれぞれの水溶液を用いた.純溶媒を用いた場合,ホップ苞部分からの総ポリフェノールの抽出量は水>メタノール>アセトン>エタノール>1-プロパノールであった.一方,混合溶媒(メタノール–水,エタノール–水,アセトン–水)を用いてポリフェノールを抽出した場合,すべての系で純溶媒より混合溶媒の方が高い抽出量を示した.エタノール水溶液を用いた場合,ポリフェノールの抽出量は最も高く,エタノールの体積分率40%(20 mol%)付近で最大抽出量を示した.
    本研究では,ポリフェノール類の各溶媒への溶解性の評価を行うために,溶媒および溶質の溶解度パラメータを用いた.溶媒および溶質のHildebrandの溶解度パラメータ(δH)の計算には,Fdors法を用いた.Hansenの定義する溶解度パラメータ(δt, δd, δp, δh)の計算にはvan Klevelen and Hoftyzer法を用いた.
    実験結果より,純溶媒の溶解性は,溶媒と溶質のHildebrandの溶解度パラメータの差が小さいほど高い傾向を示した.一方,混合溶媒に対する溶解性はHansen溶解度パラメータを3次元プロットした図中で,溶質と混合溶媒の溶解度パラメータの値が近いほど抽出量は多いことを明らかにした.さらに,2成分系の混合溶媒の場合,Hansen溶解度パラメータのそれぞれの寄与率(fd, fp, fh)を三角線図上にプロットすることで,線図上から抽出に最適な溶媒組成(体積比)を予測できることを明らかにした.
  • 澁川 卓実, 松野 克則, 大平 勇一, 小幡 英二
    原稿種別: ノート
    専門分野: 分離工学
    2008 年 34 巻 3 号 p. 339-343
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    二酸化窒素の吸収操作で硝酸の生成を抑えることを目的として,吸収速度,吸収率,選択率に及ぼす初発pH,イオン強度,還元剤添加の影響を実験的に検討した.気泡塔型の回分式吸収装置に二酸化窒素を含む混合ガスを通気し,吸収液中の亜硝酸イオンおよび硝酸イオン濃度を測定した.吸収液の初発pHが高く,イオン強度が大きいほど吸収速度が大きく,硝酸生成を抑えることができる.また,吸収液に還元剤として亜硫酸ナトリウムを添加すると,生成物はほとんど亜硝酸になる.
熱工学
  • 阿蘇谷 利光, 山下 亨, 富永 浩章, 板谷 義紀, 森 滋勝
    原稿種別: 報文
    専門分野: 熱工学
    2008 年 34 巻 3 号 p. 344-350
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    微粉炭粒子群の輻射物性を総合的に評価可能な減衰効率を適用した輻射伝熱モデルを開発した.近赤外用FT-IRによる赤外吸収スペクトル法で粒子群の赤外線透過率を測定し,電磁理論により透過率から輻射エネルギーの吸収と散乱の影響を含めた減衰効率を算出した.微粉炭乱流燃焼実験炉に対して微粉炭燃焼と輻射伝熱を連成したシミュレーション解析を行い,解析結果と測定結果の比較から提案した輻射伝熱モデルの解析精度を評価した.解析は粒子による輻射を考慮しないモデル,粒子による輻射を粒子放射率で考慮するモデルおよび開発した輻射伝熱モデルで実施した.バーナノズル近傍における微粉炭粒子は,燃焼領域から伝播してきた輻射エネルギーを吸収して予熱されるので,輻射伝熱による影響は着火位置と火炎部分の温度勾配の違いとなって現れた.着火領域の昇温パターンを最も精度良く解析可能できたのは,微粉炭粒子の輻射物性として減衰効率を用いた場合であり,提案した輻射伝熱モデルの妥当性が明らかとなった.
反応工学
  • 甲斐 敬美, 通山 恵一, 高橋 武重, 中島 充幸
    原稿種別: 報文
    専門分野: 反応工学
    2008 年 34 巻 3 号 p. 351-357
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    反応物と生成物の量論関係によって体積が減少する反応を流動触媒反応器で行った場合,反応速度が高くなると流動化状態が極めて悪化する.条件によっては層の上部が非流動化状態となり,固定層となった部分がピストンのようにガスによって持ち去られた.体積減少速度が大きな場合には,エマルション相の粒子における抗力,重力および浮力のバランスが崩れ,気泡相からのガスの補給が追いつかずにエマルション相におけるガス速度が流動化を維持できない速度に低下するためと考えられる.このような現象を防止するために,内挿物を設置し,取り付け位置や数についての検討を行った.その結果,層の上部よりも下部にメッシュ板を設置することにより,より流動性を改善できることが分かった.これは,非流動化状態になった粒子層を破壊するよりも,空隙率が減少しつつある部分の粒子を分散して空隙率の低下を防ぐほうが効果的であるためと考えられる.
  • 菅原 靖, 菅原 勝康, 菅原 拓男
    原稿種別: 報文
    専門分野: 反応工学
    2008 年 34 巻 3 号 p. 358-366
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    発芽玄米製造における浸漬発芽工程で発生する排液中に含まれる一般生菌,酵母,カビの不活性化技術の確立を目的として,ステンレス板に市販光触媒コーティング剤を塗布乾燥して作製した薄層光触媒反応器を用いて,これら菌類の不活性化特性について検討した.また,秋田県産珪藻土を用いたろ過による分離と光触媒反応を組み合わせることによる効果を検討した.
    試作薄層光触媒は,ブラックライトランプの照射により浸漬発芽排液中に含まれる一般生菌,酵母,カビを不活性化した.菌類の不活性化速度は,ブラックライトランプ光触媒間距離r2および溶液層厚さlの影響を受け,r2一定の場合,薄層域ながらlが3×10−3 m以上の値をとると不活性化速度が遅くなる傾向がみられた.珪藻土を用いて試料溶液を吸引ろ過した結果,一般生菌は約90%,酵母およびカビは100%除去された.珪藻土ろ過と光触媒分解技術の組み合わせにより一般生菌は効率よく不活性化できることが明らかになった.
    薄層光触媒による菌類の不活性化速度を定式化するために,まず,一般生菌に対し,半径光モデルにより推定した触媒表面照射光強度Iをもとに1ヒット性多重標的モデルを適用した結果,溶液層厚さlがごく薄い範囲では本モデルが適用可能であるが,溶液層が厚くなると適用できないことがわかった.一方,光触媒表面で生成する活性化学種の影響を有効照射光強度Ieffとして導入することにより,ろ過の有無および異なるr2およびlの下で得た一般生菌の不活性化実験値を,単一の標的数mおよび不活性化係数ηを用いた標的モデルでほぼ良く表現できた.Ieff/Iは溶液厚さlが大きくなるにつれて小さくなり,ろ過の有無にかかわらずほぼ等しい値を示した.一般生菌(ろ過無)で得たIeffを酵母,カビの実験結果に適用した結果,両菌類についても標的数,不活性化係数の値は共に一般生菌の値とほぼ同一であった.
プロセスシステム工学,安全
  • 河野 浩司, 長谷部 伸治
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2008 年 34 巻 3 号 p. 367-375
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    バッチプロセスでは,様々な要因により各工程の所要時間が変動する.所要時間の変動によるスケジュールの遅れは生産性の低下や作業ミスの原因となるため,できるだけ早くもとのスケジュールに戻すことが望ましい.本報では実際に遅延が発生したとき,復旧方法をオンラインでガイダンスするシステムを提案する.提案するシステムでは,まず遅延発生時に取り得る対策を戦略として分類し,戦略ごとに各工程の短縮可能時間と短縮に要するコストを定義した.そして,復旧するまでに許されるバッチ数の制約下で復旧に要するコストを評価として所要時間を短縮する工程とその短縮時間を導出する手法を提案した.提案した最適化手法を組み込んだ遅延回復支援システムのプロトタイプシステムを開発し,その有効性についてシミュレーションにて評価した.
  • 坂倉 義康, 野田 賢, 西谷 紘一
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2008 年 34 巻 3 号 p. 376-382
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    本論文では,1つのモデルを用いて設計パラメータの異なる複数のモデル予測制御器を構築して並列に配置し,それぞれの制御器の算出する局所操作量をアフィン結合してプロセスへの操作量とする制御系について考察した.異なる評価関数の重みパラメータを持つ複数のモデル予測制御器の結合係数の決定関数としてソフトマックス関数を用い,調節パラメータを導入することによって制御性能を調節する方法を提案した.提案手法をCSTRの温度制御に適用した結果,単一のモデル予測制御器を用いる場合と比較して良好な制御性能が得られることを示した.さらに,モデル予測制御アルゴリズム中の評価関数の重みパラメータをスケジューリング関数を用いて直接調節する手法との制御性能比較を行った結果,ほぼ同等の結果が得られることを示した.
材料工学,界面現象
  • 本城 幸, 横田 政晶, 土岐 規仁, 清水 健司
    原稿種別: 報文
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2008 年 34 巻 3 号 p. 383-387
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル フリー
    2,2′:6′,2″-Terpyridine (terpy) は長寿命りん光を示す興味深い発光分子である.固相状態においてさらなる長寿命なりん光が期待されている.現在までにterpyについて二つの結晶構造が報告されている.しかし発光特性については詳しく議論されていない.本研究では磁場を用いたterpyの二つの多形の制御に関する新しい方法を示し,磁場制御可能な有機りん光材料の開発の可能性について議論する.
    通常は斜方晶が得られるが,5 T以上の磁場下では単斜晶が得られた.この単斜晶は室温りん光を示し,りん光寿命は磁場強度の増加とともに長くなった.
エネルギー
  • 小宮 尚, 落合 哲也, 森本 達也, 小田 廣和
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2008 年 34 巻 3 号 p. 388-395
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    石炭ガス化反応時における細孔構造の変化に関して,過去に研究例がほとんどない閉鎖孔に着目した.試料は石炭とフェノール樹脂,PVCピッチなどのモデル物質を使用した.これらの熱分解およびチャーの気固反応時の閉鎖孔の形成および開孔挙動に関して気体吸着,X線回折,真密度測定などを用いて解析を行った.その結果,石炭では粘結炭から調製したチャーの閉鎖孔容積は非粘結炭から調製したチャーより大きい値を示した.このことより閉鎖孔の形成は熱分解時の軟化溶融性が密接に関係していると考えられた.また熱分解温度の上昇に伴い閉鎖孔容積は増加した.これは積層構造の発達によりマイクロ孔の閉鎖が生じたと考えられる.
    気固反応時に関しては,石炭とモデル物質共に気固反応初期において急激な比表面積の増加及び閉鎖孔容積の減少が見られた.このことは,閉鎖孔の開孔が比表面積の急激な増加を示唆するものと考えた.
環境
  • 加藤 雅裕, 山崎 達也, 菊池 尚子, 岡田 佳枝, 吉川 卓志, 和田 守
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2008 年 34 巻 3 号 p. 396-401
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    実バイオマスから生成したバイオエタノール(エタノール:77.4%,水:19.6%,その他;残渣)を原料として,HZSM-5ゼオライト触媒を用いて転化反応を行い,C3およびC4の低級オレフィンおよび芳香族化合物の生成に関する特性を,純エタノールおよび含水エタノール(水:20%)からの転化反応と比較検討した.573–773 K,WHSV=26 h−1の条件では,バイオエタノールからの主生成物は,エタノールから脱水反応で容易に生成するエチレンあるいはジエチルエーテルであったが,623 K以上ではC3–C5の炭化水素およびC6以上の芳香族炭化水素も比較的多く生成された.低級オレフィンの生成量は反応温度につれて増加したが,バイオエタノールを反応物とした場合には,モデル反応物に比べて生成活性の発現温度がより高温側にシフトするとともに,やや大きい経時的失活が認められた.この原因として,バイオエタノール中のトレース量の不純物が触媒の酸性質を変化させた可能性が高い.バイオエタノールからの芳香族化合物の生成量は,純エタノールの場合より減少したが,バイオエタノールと同程度の水を含有するエタノール水溶液よりは多くなった.これは,高SV条件下での水の共存が芳香族生成抑制の効果を示すのに対して,バイオエタノールに含まれる不純物が触媒活性点を改質したため,含水エタノールよりも芳香族化合物の生成量が増加したと考えられる.
  • 垣上 英正, 井上 元, 松隈 洋介, 峯元 雅樹, 安武 昭典, 岡 伸樹
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2008 年 34 巻 3 号 p. 402-409
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    地球温暖化の主要な原因の一つになっている火力発電所からの排ガスに含有されるCO2を,ハニカム型ゼオライトを充填した回転式吸着塔を用いたTSA方式で除去・濃縮するシステムについてシミュレーションによる最適化方法の検討を行った.本研究では,最適化のために拡張Lagrange関数法を適用し,5個の操作条件の最適値の推算を行った.
    この推算手法により,一例として70000 m3 (STP)·h−1の排ガスを対象に,CO2回収率が60%,回収CO2濃度が約90%でかつ所要エネルギーを最少にするような最適操作条件の探索を行った.各操作条件としては異なる3とおりの初期値を設定して計算を行ったが,いずれの条件でも5つの操作条件すべてで同一の最適値が得られることを確認した.この最適操作条件では,CO2 1 kgを回収するための加熱量と送風機動力を加味した所要エネルギーは,835 kJ疚g−1, CO2回収率は60%および回収CO2濃度は93%であった.この所要エネルギーは,前報で算出した最適値よりもさらに5%程度低減されており,本手法による最適化の有用性が確認できた.
    また前報までの検討結果よりパージ工程を省略したシステムのほうがより高い回収性能がえられる可能性があったが,システムを変更して本手法により最適化を行った結果,従来のパージ工程を設置したシステムが高性能であることを確認した.
  • 山田 信吾, 内藤 勇太, 山本 貴士, 野馬 幸生, 細見 正明
    原稿種別: ノート
    専門分野: 環境
    2008 年 34 巻 3 号 p. 410-414
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2008/06/15
    ジャーナル 認証あり
    環境中への残留性が問題視されている有機フッ素化合物の処理に向け,ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびペルフルオロオクタン酸(PFOA)の紫外線分解を水中,アルカリ性2-プロパノール(IPA)中にて行い,また水中にて過酸化水素を添加した系,過酸化水素およびFe2+を添加した系において分解性を比較した.PFOSの分解によりフッ化物イオン(F)および硫酸イオン(SO42−),PFOAの分解によりFが生成し,いずれの系においてもPFOSはPFOAに比べ分解性が低かった.またPFOSとPFOAでは系により分解性に違いがみられ,PFOSはアルカリ性IPA中,PFOAは水中での処理が有効であり,PFOSでは過酸化水素の添加により分解性が向上した.光Fenton条件ではPFOAは照射8日後に分解率100%に達したが,PFOSでは28.6%に留まった.PFOAにおいて水中ではC–F結合の切断の進行は遅かったが,光Fenton条件では切断が促進された.またPFOSでは光Fenton条件においてC–F結合切断が抑制された.
feedback
Top