炭酸ガス分離のための液体膜プロセスの開発を目的として,アミン液体膜におけるCO
2/CH
4およびCO
2/N
2混合ガスの透過分離実験をおこなった.疎水性多孔質膜の片側面を親水化処理することにより,1枚の膜の表側で液体を含浸し,裏側で支持する形式の表面含浸液体膜を考案した.膜面180 mm角の平膜モジュールを製作して,ジグリコールアミンとトリエチレングリコールの50 wt%混合液を含浸させて約8 μmの厚さの液体膜とした.供給側大気圧,透過側真空(4–5 kPa)で透過実験をおこない,CO
2混合気体の分離と透過係数を測定した.アミン液体膜はCO
2を優先透過し,理想分離係数はCO
2/CH
4で約30,CO
2/N
2で約40であった.CO
2の透過係数は低分圧範囲で増加し,いわゆる促進輸送効果が観察された.このアミン液体膜は空気中のCO
2のような低濃度のCO
2の分離・回収に応用の可能性があることが示された.液体膜へのCO
2の吸収量を測定し,これをもとに溶解-拡散モデルで透過係数の推定を試みた.透過係数の計算値は溶解度の小さいN
2については実測値と合ったが,溶解度の大きいCO
2についてはオーダーの異なる計算値となり,拡散係数のさらなる検討が必要であった.しかし透過係数が低分圧範囲で増加する傾向は一致したので,この促進輸送的現象を溶解-拡散モデルで説明できる可能性が示唆された.
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