化学工学論文集
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34 巻, 4 号
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  • 小菅 人慈, 大村 直人
    原稿種別: 編集ノート
    2008 年 34 巻 4 号 p. 415-416
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2008/08/01
    ジャーナル 認証あり
    化学工学論文集論文賞委員会は,2007年(33巻)に掲載された93編の論文について審査を行い,論文誌編集委員会は次の2編の論文を2007年化学工学論文集優秀論文賞に選定した.それらは,「粒子の焼結・融合を考慮したすす生成モデルを用いた一次粒子成長および凝集体形成機構の検討」に関する論文,および「処理時間の変動を考慮したバッチプロセスにおけるバッチ間バッファ時間設定方法」に関する論文である.
移動現象,流体工学
  • 岩田 修一, 山田 悠介, 小森 翔悟, 森 秀樹
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2008 年 34 巻 4 号 p. 417-423
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2008/08/01
    ジャーナル 認証あり
    圧力振動脱泡法における気泡上昇メカニズムの解明のため,顔料系インクを用いた粒子追跡手法により,圧力振動場に設置された気泡周りの局所流れを実験的に測定した.この測定には,圧力振動の1周期における気泡形状と,気泡近傍に分散された顔料の位置と単位時間当たりの移動距離とが必要であり,得られた速度分布より気泡近傍の速度勾配を実験的に評価することが可能となる.この実験では,振動周波数が市販ビデオのフレーム速度より高いため,膨張・収縮する気泡の観察には,高解像度ビデオカメラとストロボ発光を組合せて使用した.実験結果より,気泡表面の移動速度は,気泡上部より気泡下部の方が大きいことがわかった.これは,セル下部のゴム膜を通じて振動を与えるという実験装置の構造によるものである.気泡側部と気泡下部において,速度分布から実験的に評価された剪断速度は,Iwata et al.(2007)によって報告された気泡径の時系列変化を用いて評価した剪断速度と良好に一致した.
  • 矢野 賢一, 前田 将宏
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2008 年 34 巻 4 号 p. 424-431
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2008/08/01
    ジャーナル 認証あり
    液体表面のスロッシングを抑制することで液面の泡立ちを抑え,空気取り込み量の低減を可能とする高速揺動撹拌制御システムを開発した.本研究では水平旋回揺動撹拌を扱い,流体の挙動解析と撹拌に伴う空気取り込み量の評価にCFDシミュレータを用いた.任意の撹拌軌道と撹拌速度を実現するため,6自由度ロボットマニピュレータを用い撹拌を行った.結果として,撹拌開始時の液面の泡立ちを抑え,空気取り込み量を減らすことをシミュレーションと実験の双方で確認した.
分離工学
  • 古島 健, 伊東 章
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2008 年 34 巻 4 号 p. 432-437
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2008/08/01
    ジャーナル 認証あり
    炭酸ガス分離のための液体膜プロセスの開発を目的として,アミン液体膜におけるCO2/CH4およびCO2/N2混合ガスの透過分離実験をおこなった.疎水性多孔質膜の片側面を親水化処理することにより,1枚の膜の表側で液体を含浸し,裏側で支持する形式の表面含浸液体膜を考案した.膜面180 mm角の平膜モジュールを製作して,ジグリコールアミンとトリエチレングリコールの50 wt%混合液を含浸させて約8 μmの厚さの液体膜とした.供給側大気圧,透過側真空(4–5 kPa)で透過実験をおこない,CO2混合気体の分離と透過係数を測定した.アミン液体膜はCO2を優先透過し,理想分離係数はCO2/CH4で約30,CO2/N2で約40であった.CO2の透過係数は低分圧範囲で増加し,いわゆる促進輸送効果が観察された.このアミン液体膜は空気中のCO2のような低濃度のCO2の分離・回収に応用の可能性があることが示された.液体膜へのCO2の吸収量を測定し,これをもとに溶解-拡散モデルで透過係数の推定を試みた.透過係数の計算値は溶解度の小さいN2については実測値と合ったが,溶解度の大きいCO2についてはオーダーの異なる計算値となり,拡散係数のさらなる検討が必要であった.しかし透過係数が低分圧範囲で増加する傾向は一致したので,この促進輸送的現象を溶解-拡散モデルで説明できる可能性が示唆された.
  • 澁川 卓実, 大平 勇一, 小幡 英二
    原稿種別: ノート
    専門分野: 分離工学
    2008 年 34 巻 4 号 p. 438-443
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2008/08/01
    ジャーナル 認証あり
    還元剤を含む水溶液にNO2ガスを吸収させた際の硝酸生成の抑制条件の解明を目的として,亜硫酸ナトリウム水溶液へのNO2吸収速度,吸収率,選択率におよぼす初発pH,イオン強度の影響を実験的に検討した.気泡塔型の回分式吸収装置に二酸化窒素を含む混合ガスを通気し,吸収液中の亜硝酸および硝酸濃度を測定した.還元剤を含むpHが約5以上の水溶液を用いることで,亜硝酸を選択的に生成し,硝酸生成および亜硝酸放散を抑制することができる.また,NO2吸収速度,吸収率におよぼす亜硫酸ナトリウム濃度,イオン強度の影響はほとんどない.亜硫酸ナトリウムが全て酸化された後は水系でのNO2吸収とほぼ同じになる.
  • 堀内 均平, 松田 圭悟, 岩壁 幸市, 中岩 勝
    原稿種別: ノート
    専門分野: 分離工学
    2008 年 34 巻 4 号 p. 444-447
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2008/08/01
    ジャーナル 認証あり
    ナフサ分解プロセスから流出するガソリン留分を原料とする設計処理量1650 kg/hのシクロペンタン精製用内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)のパイロットプラントを用いて,その省エネルギー性能,二酸化炭素排出量,運転コスト,償却年数について検討した.その結果,リボイラ負荷をゼロとしてHIDiCを操作した場合には,二酸化炭素排出削減量は56.6 kg/h(453 t/y)であり,従来型の蒸留塔と比較して63.5%の削減率が得られることが明らかになった.また,原油価格がUS$90/bbl(約68円/dm3)での省エネルギー効果のみによる償却年数は8年と試算された.本研究から,HIDiCは従来型の蒸留塔よりも温室効果ガスの排出量が少なく,それと同程度の償却年数を有することから地球温暖化防止に寄与する高効率な分離プロセスであることが明らかになった.
熱工学
プロセスシステム工学,安全
生物化学工学,食品工学,医用工学
材料工学,界面現象
  • 今駒 博信, 相澤 英次, 大村 直人
    原稿種別: 報文
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2008 年 34 巻 4 号 p. 463-470
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2008/08/01
    ジャーナル 認証あり
    単独揮発成分を含む塗膜に対する連続式熱風乾燥装置の乾燥室1室に着目して非定常操作を考慮してモデル化した.塗膜の乾燥モデルには乾燥応力による物質移動促進効果を考慮した高分子溶液塗膜に対する既往の「乾燥特性モデル」を利用し,ポリビニルアルコール水溶液塗膜を例として乾燥操作のシミュレーションを行った.計算条件の範囲内で以下の結論を得た.乾燥装置は一般に複数の乾燥室の直列接続で構成されることから,以下の結論も乾燥装置の設計に対して有効だろう.
    乾燥室内の湿度の増加とともに定率乾燥期間の塗膜温度も大きく上昇する.滞留時間を大きくすることで出口含水率を著しく低下できる.外気湿度が増加すれば出口含水率も増加する.外気供給速度と装置壁の断熱性能が装置の省エネルギー性能に大きな影響を与えることから,滞留時間の増加が乾燥所要エネルギーの増大に与える影響は大きい.一方,非定常操作と外気供給速度の増加が出口含水率に与える影響は小さい.以上より省エネルギー性能を考慮した滞留時間の決定には,第1に装置壁の断熱性能,次いで外気湿度と外気供給速度を検討すべきことが示唆された.
エネルギー
  • 市橋 利夫, 中野 義夫
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2008 年 34 巻 4 号 p. 471-476
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2008/08/01
    ジャーナル 認証あり
    2 nm 付近に狭い細孔径分布を有するメソポーラスシリカゲルを溶媒揮発法により合成した.合成シリカゲルC12の細孔径は2.0 nm 以下であり,C18の細孔径は2.2 nmである.これらの合成シリカゲルの水蒸気に対する吸脱着の温度依存性を明らかにするとともに,有効吸着容量の評価を行った.C12およびC18合成シリカゲルは温度依存性のあるS字型の吸着等温線を示した.C12の水蒸気に対する有効吸着容量は,相対湿度Φ=0.29(303 K)とΦ=0.21(333 K)の範囲で0.11 kg-H2O/kg-silica gel という大きな値が得られた.C18合成シリカゲルに感温性高分子(NIPA: N-isopropylacrylamide)を導入したC18メソポーラスシリカゲル/高分子ゲルは,感温性高分子の性質が相転移温度(Tp=306 K)前後で親水性から疎水性へと不連続に変化するために,水蒸気の吸着量がドラスティックな変化を示すことがわかった.この感温性を有するメソポーラスシリカゲル/高分子ゲルの特性をデシカント空調システムに適用することにより,再生操作温度の一層の引き下げが期待される.
  • 穐山 徹, 木曽 文彦, 三樹 創
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2008 年 34 巻 4 号 p. 477-483
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2008/08/01
    ジャーナル 認証あり
    旋回気流層型石炭ガス化炉は,石炭から燃料ガスを得ると同時に,高温により灰分を溶融スラグ化するのが特徴である.スラグは炉内の旋回流によって炉壁に衝突して捕集されるが,一部は上昇流に同伴して飛散することがある.ガス化炉上部は灰の融点よりも低温であるため,上部に飛散したスラグが炉壁などに付着すると固化・成長し,運転の妨げとなる.したがって,スラグの飛散高さを抑制する設計が必要である.スラグの飛散挙動は,上昇流と旋回流によって支配される.旋回流は自由渦と強制渦の合成であるRANKINE組み合わせ渦とし,また上昇流は,ガス化炉出口流速分布を拡大して算出するモデルとした.この推算はコールドモデル試験結果による測定結果と概略一致した.スラグ飛散は,重力と上昇流のバランスから上昇速度を求め,炉壁方向への移動は,遠心加速度から速度を求めるモデルとした.スラグ飛散高さは実測値との誤差±20%以内で推算できた.
環境
  • 馬場 太一郎, 福岡 寛, 重本 直也
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2008 年 34 巻 4 号 p. 484-491
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2008/08/01
    ジャーナル 認証あり
    流動床フライアッシュと高炉セメントの混合物に,石膏やリン酸3ナトリウムもしくは硫酸アルミニウムを添加したのち,水熱処理により固化体を試作し,そのXRD分析を行うとともに鉛やフッ素の溶出挙動を調べた.流動床フライアッシュとセメントのみの固化体あるいは流動床フライアッシュ–セメント–石膏の固化物は比較的高いフッ素溶出濃度を示したが,これはCa(OH)2–CaF2の共存時の溶解度積を用いて説明できた.また,鉛の溶解度は鉛水酸化錯体を想定した理論溶解度曲線におおむね一致し,溶出液pHに大きく依存して変化した.セメントにリン酸3ナトリウムあるいは硫酸アルミニウムを添加した固化体では,それぞれ加藤石およびリン酸アルミニウムあるいはエトリンジャイトの生成が認められ,フッ素および鉛溶出濃度が前述した流動床フライアッシュ–セメントあるいは流動床フライアッシュ–セメント–石膏固化物よりもさらに低下した.これは固化時に生成したエトリンジャイトなどの結晶内に鉛イオンやフッ素イオンが取り込まれ,これらの有害成分の溶出が抑制されるものと推定される.
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