化学工学論文集
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35 巻, 2 号
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移動現象,流体工学
  • 河越 幹男, 木原 澄人, 大山 恵奈, 直江 一光, 野田 秀夫
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2009 年 35 巻 2 号 p. 195-200
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2009/04/02
    ジャーナル 認証あり
    従来,分散相粒子(固体粒子,液滴,気泡)の比表面積の測定に用いられていたレーザー透過法を応用して粒子および気泡の速度分布を測定した.本計測系は,装置外に設置したレーザー発振器からのレーザービームと近接した2本の光ファイバープローブで構成されており,プローブ間隔を2本のプローブから得られるシグナルの時間差で除した見掛けの軸方向粒子速度を算出した.非接触式測定法であるので,測定系に外乱を与えることなく粒子および気泡の速度を測定できる.
    まず,粒子の移動方向を考慮した簡単なモデルに基づいて見掛け速度の測定に及ぼす粒子の水平方向の運動とプローブ間隔の影響を検討し,粒子の真の軸方向速度成分と見掛けの軸方向速度との関係を求めた.次に,ビデオカメラで測定した粒子速度と本測定法による見掛け速度を比較した.その結果,レーザー透過法による測定値は,粒子の移動方向の影響を適切に補正すれば,軸方向速度を正しく評価できることが分かった.
    本法を用いて,外部循環式気泡塔内を循環している固体粒子の速度分布を測定した.低ガス流速では,粒子個数の循環速度に及ぼす影響が認められた.また,標準気泡塔における気泡上昇速度分布を測定した.ガス流速による気泡上昇速度分布の変化は気泡流動から攪乱流動への状態変化に良く対応した.
  • 井上 義朗, 岡田 文太朗, 橋本 俊輔
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2009 年 35 巻 2 号 p. 201-210
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2009/04/02
    ジャーナル 認証あり
    撹拌槽内の流れは撹拌翼や邪魔板によって複雑化されるため,流体混合機構の解析は容易ではない.撹拌槽内を動く流体粒子軌跡の複雑さの特徴は,非定常性と3次元性と非対称性にあるが,このような運動を引き起こす流れ場も同様の複雑さを備えている必要はない.本論文では,撹拌槽内における流体粒子軌跡の複雑な動きを再現できる簡易流動モデルを提示する.流動モデルはいくつかの要素的流れの線形和として構成され,各要素流れを表す式中に含まれるパラメータの選び方により,羽根形状・羽根枚数・羽根設置高さなどが異なる撹拌翼や,邪魔板を挿入した撹拌槽内流れにも対応できる.要素流れの組み合わせ方や強度を変えることにより,多様な撹拌槽内流れを再現できる.撹拌槽内の流体混合に直接関与する流れを特定し,その要素流れによる混合のメカニズムを解明するのに,本簡易流動モデルは有力な道具となり得る.
  • 加藤 禎人, 平岡 節郎, 亀井 登, 多田 豊
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2009 年 35 巻 2 号 p. 211-215
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2009/04/02
    ジャーナル 認証あり
    化学工学の長い歴史の中で撹拌槽に関する研究は非常に多くなされてきた.しかしながら,その研究対象は多岐にわたり,新たに撹拌に従事する技術者は,研究成果があまりにも多く,理解することが困難であった.本報では,撹拌所要動力をキーワードに,いくつもの撹拌槽に関する性能を説明できることを示し,これまでの研究成果をまとめることを試みた.乱流撹拌槽(一部層流を含む)に関しては,大まかであるが撹拌所要動力によって,流動特性,混合特性,伝熱特性および物質移動特性を推定可能なことを示した.また,動力相関式は永田の式と同様,平岡・亀井の式も有用であることを示した.
粉粒体工学
  • 吉田 幹生, 中務 真吾, 後藤 邦彰, 押谷 潤
    原稿種別: 報文
    専門分野: 粉粒体工学
    2009 年 35 巻 2 号 p. 216-220
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2009/04/02
    ジャーナル 認証あり
    固気流動層内での物体の浮沈挙動に及ぼす流動層の粒度偏析と物体の投入高さの影響を検討した.流動化粒子にはコスト削減と分級処理の省略を目的として,安価である砂を未分級のまま用いた.空塔速度比が小さい場合には,粒度偏析が発生することにより上層と下層で見掛け比重の差が生じた.また,投入高さによって浮沈挙動が異なった.これらにより分離精度が低下した.一方,空塔速度比が大きい場合は,物体投入高さによる浮沈挙動の違いは見られなかった.しかし,流動化が激しいため物体の浮沈が安定せず,分離精度が低下することが判明した.したがって,未分級の砂を流動化粉体に採用する場合には,偏析と流動化の激しさの両者を抑制可能な適度な空塔速度比に設定することが重要である.
  • 浅尾 勝哉, 綿野 哲
    原稿種別: 報文
    専門分野: 粉粒体工学
    2009 年 35 巻 2 号 p. 221-228
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2009/04/02
    ジャーナル 認証あり
    高速気流中衝撃法によって,アミノ基を有する球状の反応性ポリイミド粒子(約3 μm)と球状の多孔性シリカゲル(約50 μm)との複合化を検討した.複合粒子は反応性ポリイミド粒子(子粒子)が扁平化して多孔性シリカゲル(母粒子)の表面を膜状に被覆した形態で得られた.複合粒子は母粒子の形態や特徴である多孔性やハンドリング特性を保持することがわかった.また,複合粒子の表面を被覆した反応性ポリイミド粒子のアミノ基は反応性を有しており,酸クロライドとアミド化反応することを確認した.
  • 増田 勇紀, 坪田 圭司, 石井 健一, 今駒 博信, 大村 直人
    原稿種別: 報文
    専門分野: 粉粒体工学
    2009 年 35 巻 2 号 p. 229-231
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2009/04/02
    ジャーナル 認証あり
    粒状材料を乾燥固化させる際に利用されるバインダーの中から,無機バインダーである水ガラスを選び,その水溶液で湿ったガラス微粒子層のマイクロ波による乾燥固化実験を行った.
    乾き材料層内のバインダー体積一定の条件下で,材料空隙体積に占める初期水溶液体積で定義される初期液相率を0.1–0.35の範囲で変えて実験を行い,乾燥速度と材料表面温度を測定した.その結果,平均含水率に対する乾燥速度のプロットでは,低含水率域で1本のマスター曲線の存在が示唆されたが,平均含水率に対する表面温度のプロットではされなかった.0.15以下の初期液相率に対する水ガラスの結果を,有機バインダーであるゼラチンに対する筆者らによる既往の結果と比較検討したところ,水ガラスの乾燥速度はゼラチンの最大で2倍以上となった.
分離工学
  • 金指 正言, 都留 稔了
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2009 年 35 巻 2 号 p. 232-238
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2009/04/02
    ジャーナル 認証あり
    ゾルゲル法により多孔質支持体上に,ナノ細孔を有する多孔性チタニア膜を作製し,パラジウムイオンを含む水溶液中で光析出することでパラジウム/チタニア膜を作製した.EPMA線分析結果より,チタニアとパラジウムは同一の位置で強ピークが確認され,パラジウム/チタニア層を形成していることが明らかになった.紫外線照射時間とともに,パラジウム/チタニア膜の水素および窒素透過率は減少し,その後一定値に漸近したことから,本製膜法は自己制御性を有することが示された.塩化パラジウム水溶液にメタノールを添加し光析出すること,また450°Cで8 hパラジウム/チタニア膜を熱処理することで,水素選択性が増加することが明らかになった.作製したパラジウム/チタニア膜は,200°Cで水素/窒素透過率比29,水素透過率6.3×10−6m3·m−2·s−1·kPa−1を示し,水素脆化による水素選択性の低下も確認されず高い安定性を示した.
プロセスシステム工学,安全
材料工学,界面現象
  • 山本 剛大, 相澤 栄次, 今駒 博信, 大村 直人
    原稿種別: 報文
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2009 年 35 巻 2 号 p. 246-251
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2009/04/02
    ジャーナル 認証あり
    ポリエステルフィルム上にポリビニルアルコールを主成分とした市販合成のり塗布層を形成させた塗膜試料を,断熱材上に静置して回分式熱風乾燥実験を行い,放射温度計から得た試料表面温度履歴に蒸発総水分量を必要としない改良材料温度変化法を適用することで,乾燥速度の測定に成功した.
    異なる厚みに対して得られた塗布層の減率乾燥速度は,同じ平均含水率に対して,高含水率域で乾き塗布層厚みが大きいほど低下し,低含水率域で変わらないという既往のポリビニルアルコール水溶液と近い結果であった.
    また,乾燥応力による物質移動促進効果を加味したFick型の拡散移動モデルに基づいた既往の乾燥特性モデルを用いて,本実測結果の相関を試みたところ結果は良好だった.
環境
  • 林 伸哉, 南 亘, 小口 達夫, 金 煕濬
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2009 年 35 巻 2 号 p. 252-257
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2009/04/02
    ジャーナル 認証あり
    SF6はその高い地球温暖化係数(CO2の23,900倍)からCOP3京都会議において排出削減目標の対象ガスに指定されている.我が国におけるSF6排出量は減少しているが,生産量はここ数年増加傾向にある.再使用できないSF6や不要となったSF6は分解処理する必要がある.本研究では,管型反応器を用いてSF6の見かけの分解速度に関する基礎的なパラメーターを求めた結果,以下の知見が得られた.
    SF6分解反応速度は雰囲気ガスとしてHe, Arのいずれを用いた場合においても,SF6濃度に対して一次反応であり,SF6分解反応の活性化エネルギーは,雰囲気ガスをHeとした場合で354 kJ·mol−1,Arとした場合で371 kJ·mol−1であった.またSF6分解反応は気相での分解反応が律速段階であった.
  • 牧 善朗, 芝田 隼次, 村山 憲弘, 西村 泰宏, 上嶋 優矢
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2009 年 35 巻 2 号 p. 258-263
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2009/04/02
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,鉛,銅,カドミウムを含む人工汚染土壌を作成し,キレート化剤であるクエン酸とEDTAを用いて人工汚染土壌からの上記重金属の溶出・除去を試みた.回分溶出操作での最適な条件を調べたところ,クエン酸濃度0.1 mol/dm3,pH 3–4,振盪時間30 minが適切な操作条件であった.EDTAを用いた時には0.025 mol/dm3の濃度が適切であった.カラムによる連続溶出操作を行い,土壌汚染に関する環境基準値を満たすために必要な通液量と溶出速度を求めた.土壌充填量に対して約14倍量のキレート化剤溶液を通液することにより,重金属が除去できることがわかった.得られた溶出速度は,ヒープリーチング形式で汚染土壌を処理するときの設計指針になると考えられる.
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