化学工学論文集
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35 巻, 3 号
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移動現象,流体工学
  • 井上 義朗, 高岡 大, 岡田 文太朗, 屶網 和也, 橋本 俊輔, 平田 雄志
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体力学
    2009 年 35 巻 3 号 p. 265-273
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2009/05/27
    ジャーナル 認証あり
    撹拌槽内の流れは,非定常の3次元流であるだけでなく空間的にも非対称であるため,その構造は極めて複雑である.そのため,撹拌槽内の流体混合機構についてはいまだ不明な点が多い.2次元の層流カオス混合系では,安定多様体と不安定多様体が流体混合機構を理解する際の重要な概念となり,それらが混合機構を支配する不変構造あるいは混合パターン形成の鋳型となっている.しかし,撹拌槽内の3次元流体混合場においても同様の役割を果たす不変構造が存在するか否かについてはいまだ不明である.本研究では,不安定多様体と同様の特性を有する流脈に着目して,2枚パドル翼をもつ撹拌槽内における層流流体混合機構の解析を行った.翼先端から伸びる流脈が混合パターン形成と密接な関係があることを実験およびモデル解析より明らかにするとともに,層流場における撹拌槽内の大域的な流体混合が,側壁近傍における流脈線の強い引き伸ばしと折り畳み機構から生み出されることを示した.
粉粒体工学
  • 吉田 幹生, 中務 真吾, 後藤 邦彰, 図師 竜也, 久保 泰雄, 押谷 潤
    原稿種別: 報文
    専門分野: 粉粒体工学
    2009 年 35 巻 3 号 p. 274-278
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2009/05/27
    ジャーナル 認証あり
    固気流動層内での物体の浮沈挙動を利用した乾式比重分離の高効率化を目的として半連続式の分離装置の作製を新規に行った.本装置はパイロットスケールの大きさを有し,分離対象物体の投入高さを変化させられるという特徴を持つ.本装置を用いて物体投入高さが分離効率に及ぼす影響を検討した.流動化粒子には最小流動化速度が3.5 cm/sの砂を用いた.分離対象物はモデル廃プラスチックとし,その塩素非含有プラスチックと塩素含有プラスチックの分離を試みた.その結果,物体投入高さが層中間部の場合に分離時間が短縮でき,分離効率も向上することが明らかとなった.また,分離対象物の初期投入量が分離効率に及ぼす影響も合わせて検討した.
  • 坪田 圭司, 増田 勇紀, 山口 英介, 今駒 博信, 大村 直人
    原稿種別: 報文
    専門分野: 粉粒体工学
    2009 年 35 巻 3 号 p. 279-281
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2009/05/27
    ジャーナル 認証あり
    微粒子層の乾燥固化の一例として鋳型の製造に着目し,ゼラチン水溶液とガラス微粒子の混合物のマイクロ波併用熱風対流乾燥を行い,マイクロ波が乾燥所要時間および乾き材料の機械的強度に与える影響に関して実験的検討を行った.その結果,マイクロ波の併用により乾燥所要時間は対流乾燥に比べて大幅に短縮された.一方,乾き材料強度はマイクロ波の有無に関係なく,乾燥前期の材料温度に依存したことから,マイクロ波の影響は主として発熱による材料温度上昇に起因することが示唆された.
分離工学
  • 藤吉 一誠
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2009 年 35 巻 3 号 p. 282-286
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2009/05/27
    ジャーナル 認証あり
    エチレンジアミン水溶液からコバルト,ニッケル,銅および亜鉛などの二価遷移金属の多孔質ガラス上における吸着実験を298 Kで行った.吸着量の測定値とエチレンジアミン–金属錯イオンの生成曲線との比較によるとニッケル,銅および亜鉛の場合に金属の吸着はエチレンジアミン錯イオンの生成によって促進されたので吸着機構は配位反応であることがわかった.また吸着量に対するイオン交換の寄与は配位反応と較べて無視小であった.コバルトの場合は交換母液中で進む酸化反応によって3価のコバルトイオンが生成し,それがイオン交換によって吸着されると思われた.
    エチレンジアミンを溶離液とした多孔質ガラス充填カラムを用いて上記の金属の分離実験を298 Kで行った.これらの金属の保持時間はいずれも吸着量とともに増加した.pH 6.0の溶離液を使用するすると0.2 mol/dm3以下のエチレンジアミン濃度においてコバルト,ニッケルおよび銅がこの順序で溶離し,ほぼ完全に分離された.このとき亜鉛はほかの3種の金属よりもはるかに多く吸着されるため,イソクラティックには溶離されなかった.
反応工学
  • 菅原 靖, 菅原 勝康, 菅原 拓男
    原稿種別: 報文
    専門分野: 反応工学
    2009 年 35 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2009/05/27
    ジャーナル 認証あり
    ステンレス板担体に市販酸化チタン光触媒コーティング剤を塗布乾燥して調製した薄層光触媒を用い,発芽玄米製造における浸漬発芽工程排液の珪藻土ろ過により得た一般生菌含有溶液を,ブラックライトランプ照射下で不活性化した場合の光強度の影響について速度論的な観点から検討を行った.
    菌の不活性化は352 nm照射光強度の影響を受け,ランプ本数を増やすほど誘導期が短くなり,不活性化はより速やかに進行した.
    微生物の不活性化速度を決定する因子を有効光強度Ieffおよび微生物濃度Cと考え,誘導期が短い不活性化データに対して速度論的な解析を行った結果,反応速度式を次式で表現できた.
    -dC/dt=k·Ieff·C
    ここで有効光強度Ieffは,受光強度Iの下で光触媒表面上に生成した活性種を通して微生物不活性化に有効に作用する光強度と定義した.その絶対値は,ランプ本数一定の条件下,ランプ光触媒間距離r2,溶液厚さlそれぞれが最小値(r2=2.5×10−3 m,l=1.0×10−3 m)の下での受光強度Iを基準値とし,一般に,照射光強度I0r2),溶液厚さlおよび溶液光吸収率μの関数と考えた.
    有効光強度Ieffは照射光強度I0が大きくなるにつれて増加したが,有効光強度と受光強度の比度Ieff/Iはほぼ一定であった.
  • 長田 秀夫, 北 詔仁, 森 晴樹
    原稿種別: 報文
    専門分野: 反応工学
    2009 年 35 巻 3 号 p. 293-296
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2009/05/27
    ジャーナル 認証あり
    クロロペンタフルオロエタンの接触燃焼分解に比較的高い性能を示したアルミナ–ジルコニア触媒をジクロロジフルオロメタン(CFC-12)の加水分解に適用した.その結果,アルミナ–ジルコニア触媒においてはCFC-12の加水分解の反応途中でCFC-12の転化率が向上するという特性が認められた.X線回折測定,吸着アンモニアの昇温脱離測定から,アルミナ–ジルコニア触媒においてはCFC-12の加水分解で生成したハロゲンと水蒸気の作用によって新たな酸点が反応途中に生成し,これが活性向上の原因と考えられた.
材料工学,界面現象
  • 山本 剛大, 相澤 栄次, 今駒 博信, 菰田 悦之, 大村 直人
    原稿種別: 報文
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2009 年 35 巻 3 号 p. 297-303
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2009/05/27
    ジャーナル 認証あり
    ミクロンオーダーの球形のポリメタクリル酸メチル微粒子をポリビニルアルコール水溶液中に分散させたスラリーを平面基材上に塗布した塗膜の乾燥速度を改良材料温度変化法により実測した.この際,乾き層中に空隙が形成され難いと想定される粒子濃度(微粒子体積/ポリマー体積)=約0.25–1.0の範囲を対象とし,粒径の影響も検討した.
    その結果,減率乾燥前半の速度は粒子濃度の増加とともに低下し,その程度は粒径が小さいほど大きかったが,後半の乾燥速度はほぼ一致した.その際,空隙はほぼ形成されなかった.実験で得られた後半の速度の特徴は,本研究で提案した乾燥応力を推進力とする移動モデルにより説明できた.
    また,先の乾燥実験で得た乾き塗膜表面の光沢度を実測し,粒子濃度と粒径が光沢度に与える影響に関しても実験的検討を加えた.その結果,光沢度は粒子濃度の増加とともに減少したが,粒径による違いは小さかった.
エネルギー
  • 伊藤 栄基, 弦巻 茂, 森賀 卓也, 山田 昭彦, 野島 繁, 井上 元, 松隈 洋介, 峯元 雅樹
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2009 年 35 巻 3 号 p. 304-311
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2009/05/27
    ジャーナル 認証あり
    著者らは前報(Itou et al., 2008)で,PEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)スタックの供給ガスの低湿度条件下における連続運転において,2000 h時間程度で直列に接続した9セル中3セルの高分子膜の破損が発生したために運転継続が不可能であることを報告し,かつOCV加速劣化試験により,低湿度状態での高分子膜劣化は化学的劣化が主要因であることを明らかにしている.この化学的劣化機構として,燃料電池反応時の副生成物である,過酸化水素,ヒドロキシラジカルが高分子膜を分解している機構を推定した.対策案としてカソード触媒と高分子膜の間にラジカル捕捉層の設置を提案した.
    本研究では,この対策として7種類のラジカル捕捉材を選定し,各ラジカル捕捉材の効果を実証するために,OCV加速耐久試験にてスクリーニングを行い,ラジカル捕捉層のないセル標準セルと比較して10倍程度の耐久性能を示すものがあることを確認した.
    また,選定したラジカル捕捉材を使用した実機サイズセルにて,実機の最も過酷な条件を想定した,Daily Start and Stop(DSS)加速耐久性試験を行い,その有効性を確認した.
  • 鷲見 裕史, 倉知 清悟, 廣山 徹, 梅田 良人, 大島 一典, 垣内 博行
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2009 年 35 巻 3 号 p. 312-317
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2009/05/27
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,ゼオライト系吸着材を用いて,吸着器と蒸発/凝縮器を同一の容器に収納した一体型吸着式ヒートポンプユニットの評価を行った.蒸発/凝縮温度293 K,吸着温度303 K,脱着温度363 K,切り替え時間150 sの条件において,理論出力4.35 kW,COP 1.64に対して,今回試作した一体型吸着式ヒートポンプユニットでは出力3.27 kW,COP 1.37を得た.サイクル切り替え直後は熱交換器や吸着材などの顕熱による加熱が支配的となり,吸着熱や凝縮熱の生成速度が遅いため,切り替え時間を短くするとCOPが小さくなった.外気温が下がると蒸発性能が低下し,給水温度が高くなると吸着温度の上昇に伴って吸着量が減少するため,COPや出力が低下した.
環境
  • 岡本 裕行, 内橋 康充, カーン ルォン ゴォク, 宮原 照夫, 川面 克行, 西山 孝, 藤井 隆夫, 古川 憲治
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2009 年 35 巻 3 号 p. 318-327
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2009/05/27
    ジャーナル 認証あり
    anammox処理を応用してビール工場排水の窒素量を効率良く削減することを目指し,アサヒビールの工場において実際の排水を用いて,anammox処理に適用させるための前処理実験を実施した.供試排水のTOC値の18.5%は酢酸とプロピオン酸から成り曝気処理で容易に分解した.有機物分解後にアンモニア態窒素酸化が起こる事象が確認され,前処理工程としてはアクリル繊維担体で微生物を固定化した曝気槽(有効容積360 L)で有機物の除去(活性汚泥処理)を行った後,同型の曝気槽にて部分亜硝酸化処理を行うプロセスが構築できた.
    半年間の連続実証運転において,有機物除去能力1.5–2.4[kg-TOC/m3/d]程度,部分亜硝酸化処理能力は1.5–2.5[kg-NH4/m3/d]程度であった.供試排水への急激な高濃度排水あるいは浮遊性懸濁物質(Suspended Solid : SS)の流入や運転ミスがない限りは,有機物を80%除去した上,亜硝酸化率が50%付近で維持できる前処理が可能であることを連続1ヶ月間確認することができた.
  • 岡本 裕行, 内橋 康充, カーン ルォン ゴォク, 宮原 照夫, 川面 克行, 古川 憲治
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2009 年 35 巻 3 号 p. 328-335
    発行日: 2009/05/20
    公開日: 2009/05/27
    ジャーナル 認証あり
    anammox処理を応用してビール工場排水の窒素量を効率良く削減することを目指し,実際の排水を用いて前処理として有機物除去と部分亜硝酸化を行った上でanammox処理実験を実施した.anammoxリアクターとしては,反応工学理論上,最も小型化が可能で運転動力が最小となると考えられるプラグフロー型を採用した.リアクターにはビール粕の麦芽穀皮を炭化して製造したモルトセラミックス®を担体として充填した.半年間の連続実証運転において最大除去速度4.17[kg-N/m3/d]を記録し,その時の滞留時間は42[min],原水のC/N比は0.196であった.NH4-N,NO2-N濃度が平均して100 mg/l未満と薄く,C/N比が比較的高い実際の排水において,1hを切る非常に短い滞留時間でプラグフローによりanammox処理が可能であったことを示し,anammox処理の超高速化に有益な知見を得た.
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