化学工学論文集
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35 巻, 4 号
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  • 小菅 人慈, 大村 直人
    原稿種別: 編集ノート
    2009 年 35 巻 4 号 p. 337-338
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
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    化学工学論文集論文賞委員会は,2008年(34巻)に掲載された93編の論文について審査を行い,次の3編の論文を2008年化学工学論文集優秀論文賞に選定した.それらは,「2,2′:6′,2″-Terpyridine結晶構造への磁場の影響」に関する論文,「通気撹拌槽におけるディスクタービン羽根面上の圧力分布と形状抵抗」に関する論文,および「リプロン・レーザー表面光散乱法を用いたポリマー有機溶剤液の液膜表面挙動の動的観察」に関する論文である.
移動現象,流体工学
  • 島田 直樹, 斉木 理奈, 冨山 明男
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2009 年 35 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
    ジャーナル 認証あり
    N種の分散相と2種の連続相を扱える(N+2)-field modelを基に構成され,圧縮性混相流体に対する質量・運動量・エネルギー・化学種の保存式と各相流体の状態方程式を基礎式に使用した混相流計算モデルを用いて,数値実験により気泡塔内の形状の相違による気泡流動の相違が反応成績に及ぼす影響を考察した.
    まず,気泡塔設計支援ツールとしての能力を検証するため,理論解が取得可能な押し出し型・完全混合型での液相反応を計算し,選択率が理論解通りに予測できるか否かを種々の反応率において検証した.その結果,いずれの反応率においても,押し出し型,完全混合型での液相反応における選択率が理論解通りに予測できていることを確認した.
    次に気泡塔の形状設計への展開を考察するため,同容積の3種類の気泡塔を取り上げ,同流量条件の下での逐次反応の選択率を評価した.さらに,マーカー粒子を用いて混合性を評価した.各成分の濃度変化,滞留時間分布,反応率と選択率との関係を比較した結果,縦型の気泡塔には非均質流動状態により逆混合がみられること,気泡塔の横型化のみでは液相の軸方向混合が期待通りに抑制されず,かえって選択率を低くする可能性があること,バッフルが液相の混合抑制に寄与できていること等,形状変更に伴う流れの相違が反応成績に及ぼす影響を本手法により検討できることを確認した.
  • 宮原 敏郎, 永谷 尚紀
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2009 年 35 巻 4 号 p. 345-350
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
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    前報(Miyahara et al., 2007)で,化学反応装置や河川,湖沼の水質浄化あるいは水産養殖に有効な微細気泡(マイクロバブルを含む)の生成を目的とし,Raschig ring充填層通過の液流れによる単一気泡の分裂を検討した.これに続き本研究では,ガス流量および六種類の液を用い液物性を変え,Raschig ring充填層通過の液流れによる微細気泡の生成を検討した.その結果,液速度および液粘度の増加および表面張力の減少に伴って,径1 mm以下のいわゆるマイクロバブルが確認された.この分裂気泡群の体積平均径は充填層通過の液側レイノルズ数,ガス側レイノルズ数,Raschig ringの大きさおよびモートン数の関数として相関された.さらに,測定された分裂気泡群の気泡径分布はupper limit log-normal probability functionで整理できた.
  • 原田 佳尚, 上ノ山 周, 仁志 和彦, 三角 隆太, 砂田 潔, 増子 芳弘
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2009 年 35 巻 4 号 p. 351-356
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
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    本研究では,ポリ塩化ビニルを模擬した2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(DC)懸濁重合法を用いて,分散剤の種類を変更した場合の塩化ビニルおよびDC懸濁重合との実験データ間の相関関係から,ポリ塩化ビニルの粒子特性の代替評価手法の妥当性について検討した,その結果,平均粒子径および可塑剤吸収量は撹拌所要動力のべき数で整理できることがわかった.
  • 兪 善昊, 杉川 裕介, 植田 利久
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2009 年 35 巻 4 号 p. 357-363
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
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    ノンエレメントミキサーは,主流に,主流流路に垂直に同一間隔で接続された複数の支流から流体を注入させることにより,流体が引き伸ばしと折り畳みの効果を受け,混合を促進させるミキサーである.主流流路中心軸に垂直な断面の混合の様子をレーザ誘起蛍光法(LIF)を用いて可視化し,得られた断面像から界面の大きさの時間変化の様子を明らかにし,対流混合促進のメカニズムについて検討を加えた.支流本数n,支流押し出し周期Tpを変化させ,断面像観察,境界線長さLの測定を行った.その結果,以下の結論を得た.支流本数が増えるほど,すなわちnが大きくなるほど,混合のパターンは複雑になる.特に遅延座標系の位相空間でのLの形状より,nが大きくなるとカオス的挙動を示すことが示唆された.またLは時間的に変化し,その周期はTpと一致する.Lの時間平均値Lnが大きくなるほど大きくなる.その増加は指数関数的な増加であり,このことは本ノンエレメントミキサーが,Kenicsタイプのスタティックミキサーと同様の混合促進特性を有していることを示している.
分離工学
  • 棚橋 正治, 棚橋 正和
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2009 年 35 巻 4 号 p. 364-369
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
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    本研究は,活性炭が溶液中で電気二重層を作ることを利用して水溶液に含まれるイオンを除去する方法において,速い速度で効率よく除去することを目的としたものである.それを実現するためにバッチ処理で高電圧を印加する手法を提案する.
    提案法では活性炭布をイオン吸着電極として平行平板状に電極間間隔を広くして配置し,その間にイオンを含む水溶液を入れ,電圧を印加しイオン除去を行った.水溶液中のイオンが活性炭電極に吸着されるにつれ,電極間の液抵抗が高くなり高電圧が印加できることを確認した.その結果,処理する液量が多い場合でも速い速度でイオンを除去することができた.
    また,活性炭の自己再生も容易であること,バッチ処理により活性炭表面を有効に活用できることも確認した.
    今後,本法は簡単に水溶液のイオンを除去する新しい手法として期待できる.
  • 澁川 卓実, 大平 勇一, 小幡 英二
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2009 年 35 巻 4 号 p. 370-374
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
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    亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸マグネシウム水溶液によるNO2吸収速度,吸収率,選択率におよぼす温度の影響について実験的に検討した.水へのNO2吸収を低温で行うと,NO2吸収速度,吸収率が向上する.温度が高いと亜硝酸生成が抑制され,NO2吸収速度,吸収率は低下する.一方,亜硫酸塩を含む吸収液の温度が高い場合,NO2吸収速度,吸収率が低下するものの,硝酸生成を抑制できる.
プロセスシステム工学,安全
  • 上小鶴 正康, 宮原 道夫, 駿河 幸貴, 重久 和幸, 鶴原 敬士
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2009 年 35 巻 4 号 p. 375-381
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
    ジャーナル 認証あり
    LPG ガス(主成分:プロパンガス)を空気で希釈し,発熱量を62.8 MJ/m3に調整した,いわゆるPA-13 Aは中規模都市の都市ガスとして極めて有用である.そこで,著者らは従来型製造プロセスに比べ,より合理的にPA-13 Aを製造し得る省エネルギー・省力型プロセスの開発を以下の手順を経て行った.すなわち,新規プラントで不可欠なLPGガスと空気の混合器に,動力不要のベンチュリー管式混合器を選択し,その設計,試作および特性試験を行った.その結果,実装置の1/2スケールで設計・試作された本装置は,仕様を充分みたす安定した混合特性と製品タンクへの送入圧力を維持することがわかった.そこで,本報および前報の結果を踏まえ,LPG貯蔵タンク,自然通風式LPG気化器,ベンチュリー管式混合器,および製品タンクからなる新規のPA-13 A製造プラントを開発・建設し,稼働させた.その結果,約10,000世帯へのガスの供給が可能である本プラントは,既存のPA-13 AプラントおよびLNGを供給するLNG-13 Aプラントに比べ,機器類は圧倒的に少なく,設備および運転経費も安価であること等を示した.
  • 金子 弘昌, 荒川 正幹, 船津 公人
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2009 年 35 巻 4 号 p. 382-389
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
    ジャーナル 認証あり
    化学プラントにおいては,測定困難なプロセス変数を推定する手法として,ソフトセンサーが広く用いられている.しかしソフトセンサーには,化学プラントの運転状態の変化や触媒性能の変化,機器や配管への汚れ付着によって予測精度が劣化してしまうという問題点がある.このソフトセンサーの劣化に対応するため,新しいデータを用いて回帰モデルを更新する試みがなされているが,更新に用いるデータの中に異常値が混入した場合,モデルの予測性能を低下させる恐れがある.そこで本論文ではこの問題の解決を目的として,独立成分分析(ICA)とサポートベクターマシン(SVM)を組み合わせた新たな異常値検出手法(ICA-SVM)を提案する.そしてICA-SVMをソフトセンサーに応用し,高い予測能力と異常値診断能力を合わせ持つモデルの構築を目指す.ICA-SVMモデルによって適切に異常値を検出することにより,正常時のみ回帰モデルを更新することで,異常値の影響を受けずにプラントの状態変化に対応する精度の高いソフトセンサーモデルを構築可能であると考えられる.本手法の異常値検出能力と予測能力を確認するため,実際のプラントデータを用いたソフトセンサーモデルの構築を試みた.まず異常値検出能力を検証し,次に従来のソフトセンサー手法と提案手法を比較することで,本手法の有用性を示した.
エネルギー
  • 羽黒 雅博, 柴田 安啓, 大坪 泰文, 小倉 裕直
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2009 年 35 巻 4 号 p. 390-395
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
    ジャーナル 認証あり
    化学蓄熱およびケミカルヒートポンプ材料候補として,比較的温度レベルの低い373 K前後の熱源での化学蓄熱による温・冷熱生成が可能な石膏材料,すなわち硫酸カルシウム系反応材料が検討されている.この硫酸カルシウム系反応材料を蓄熱装置さらにはケミカルヒートポンプ装置へ適用した際の蓄・放熱特性を見積もるため,反応速度論に関する検討が必要である.前報では反応平衡圧力,常圧開放系での反応速度式を報告した.本報では,減圧対流系および密閉系についての反応速度式を理論的に求め実験値と比較した.速度式を求めるにあたり以下のことを考慮した.(1)反応ガスの粒子内拡散速度の違いをグラハムの関係より考慮した.(2)対流系の違いによる試料温度の変化の違いを非定常熱伝導方程式により求め考慮した.(3)水蒸気圧力の大きな領域での飽和水蒸気吸着速度を考慮した.これら3つの理論を考慮した反応速度式は,実験結果と良好な一致を示し,提案した反応速度式は十分適用可能であることがわかった.さらに計算結果より作動可能な温度域および反応速度が確認された.
  • 照井 光輝, 廣澤 寿幸, 三宮 豊, 松下 洋介, 青木 秀之, 三浦 隆利, 川上 理亮
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2009 年 35 巻 4 号 p. 396-402
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
    ジャーナル 認証あり
    水素吸蔵合金に水蒸気含有水素を長時間吸蔵および放出させた場合の吸放出特性および十分に劣化した合金の再活性化を実験的に検討した.水蒸気含有水素を長時間吸蔵させた場合,合金の吸放出特性は吸放出サイクル数の増加に伴い初期の性能低下,合金の微粉化に起因する回復および後期の劣化に分類される挙動を示した.十分に劣化したMmNi5系水素吸蔵合金に,純水素の繰り返しの吸放出による再活性化処理を施した場合,吸放出率および吸放出速度は劣化後と比較してサイクル数の増加に伴い増加した.しかしながら,合金の外因的劣化により,吸蔵された水素が完全には放出されず合金内に残存していたため,吸放出率は完全には回復しなかった.
環境
  • 野中 利瀬弘, 船山 齊, 菅原 勝康
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2009 年 35 巻 4 号 p. 403-410
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
    ジャーナル 認証あり
    超硬工具等の合金スクラップからのWおよびCoの回収プロセスにおいて生成する浸出残渣(WCR)には,TaやNbなどのレアメタルが高濃度で含有されている.本研究ではこれらレアメタルの高効率な分離回収プロセスの開発に関する基礎研究の一環として,塩素ガス気流中におけるTaやNbならびに共存元素の塩化揮発挙動を詳細に追跡すると共に,揮発挙動に及ぼす炭素の添加効果を調べた.573–1273 Kで塩化処理を行った結果,Taは15–46%,Nbは95%以上を揮発分離でき,NbはTaよりも優先的に気相中へ放出されることがわかった.これに対し,固体炭素共存下で塩化処理することでTaおよびNbの揮発形態はオキシクロライドから塩化物へと変化し,両元素共に873 Kでほぼ完全に揮発した.試料中に含有されるTaおよびNb化合物のモデルとしてクロム酸塩を合成し,炭素共存下における揮発挙動を調べた結果から,273–573 Kの低温域ではCrNbO4由来のNbの塩化揮発反応が優先的に進行し,Crの放出が顕著に観測された573 K以降では,(Ti, Nb, Fe, Ta)O2由来のTaおよびNbの気相への放出が進行することが明らかとなった.次に,TaとNb,共存するレアメタルの分離を目的として,2段階の塩化処理を試みた.第一段階目では,TaとNbの揮発率の差が最大となる1273 Kで1 h塩化処理を行い,Nbの96%とTaの26%を気相中へ分離・回収した.これにより固相中のTa濃度は原試料の12%から32%へと濃縮した.第二段階目では,固体炭素を添加して再び塩化処理することで,固体中に残留するTaを873 Kで全て気相中へ放出させ,冷却区間で100%回収することができた.これら二つの塩化処理工程を経ることで,レアメタルをそれぞれ塩化物として全量回収できることがわかった.
  • 林 伸哉, 南 亘, 小口 達夫, 金 煕濬
    原稿種別: 化工データ
    専門分野: 環境
    2009 年 35 巻 4 号 p. 411-415
    発行日: 2009/07/20
    公開日: 2009/07/30
    ジャーナル 認証あり
    地球温暖化防止技術の1つとして,高い温室効果を持つSF6の熱や燃焼による分解を想定し,雰囲気ガスにH2Oを添加した場合におけるSF6の分解特性を調べた.反応速度定数や活性化エネルギーおよびSF6ガス分解生成物を調べ,以下の知見を得た.
    N2またはO2雰囲気,およびArにH2Oを添加した場合におけるSF6分解反応はSF6濃度に対して一次反応であった.SF6分解反応のみかけ活性化エネルギーは,N2およびO2雰囲気において,それぞれ386および446 kJ·mol−1であった.ArにH2Oを50–1000 ppm添加した場合,活性化エネルギーは310±10 kJ·mol−1でH2O濃度の影響は小さかった.SF6分解生成物の分析を行った結果,SO, SO2, SOF, SO2F, SOF2およびSO2F2が生成されたことがわかった.
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