化学工学論文集
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36 巻, 1 号
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編集ノ-ト
移動現象,流体工学
  • 井上 義朗, 伊藤 寛之, 中田 繕和, 橋本 俊輔
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2010 年 36 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2010/01/30
    ジャーナル 認証あり
    低レイノルズ数の層流撹拌条件下で生成するドーナツ渦状の孤立混合領域(IMR: Isolated Mixing Region)の周囲には,螺旋形の閉曲線を描くひも状のIMRが形成され,それらがドーナツ状のIMRの回りを回転運動する現象が観測される.通常,このひも状IMRの巻数や平均回転速度は,周回運動する流体粒子軌道の巻数や平均回転速度とは異なる.本研究では,流体の周期的な回転運動がパドル翼の羽根通過によって誘起される進行波的摂動と同期することにより,ひも状IMRが形成される機構を示した.また,ひも状IMRの本数・巻数・平均回転速度と流体粒子の平均回転速度,撹拌翼の回転速度・羽根枚数などを関係づける式を提示した.これら諸関係式を簡易流動モデルによる計算結果と実測データの両面から検討し,その有効性を確認した.
  • 田中 正博, 林 公祐, 冨山 明男
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2010 年 36 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2010/01/30
    ジャーナル 認証あり
    人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Network: ANN)と混合モデルを組み合わせたスラリー気泡塔内固気液三相流の数値計算手法を提案する.本手法では,混合モデルの平均化方程式を数学的に閉じた形とするために,ガスホールドアップ,混合拡散係数,反応速度などの巨視的変数をANN相関器により評価する.限られた実験データに基づいて構築された既存の実験相関式と比べて,ANN相関器は以下の長所を有する.(1)学習プロセスで用いた入力値以外の未知の入力に対しても良好な巨視的変数評価が期待できる.(2)実験データベースが拡充された際には,再学習機能により予測精度の向上(進化)を容易に達成できる.ANNの予測精度検証用実験データを取得するため,水空気系気泡塔のガスホールドアップを測定した.また,ANNと混合モデルを組み合わせた本手法の妥当性を検証するため,Fischer-Tropsch(FT)反応器内固気液三相流を対象としてCO転換率の数値予測を実施した.これらの検証により以下の結果を得た.(1)ANN相関器により,水空気系気泡塔のガスホールドアップを良好に予測できる.(2)ANN相関器を組み込んだ混合モデルにより,FT合成反応におけるCO転換率の各種パラメータ依存性を良好に予測できる.(3)ANNの予測精度は,新たなデータを用いた再学習により容易に向上する.以上,本手法が,大型工業設備における混相流数値予測手法の一つの雛型と成り得ることが示された.
  • 加藤 禎人, 多田 豊, 浦野 邦彦, 中岡 梓, 長津 雄一郎
    原稿種別: 化工データ
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2010 年 36 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2010/01/30
    ジャーナル 認証あり
    これまで撹拌槽に関する研究は非常に多くなされてきたが,大学側の研究対象は装置作成が容易である平底円筒槽に関するものがほとんどであり,実機に採用されている皿底円筒槽に関するデータは少なく,スケールアップにおいて,しばしば問題点とされてきた.本報では,皿底槽と平底槽との撹拌所要動力の差異がどのような撹拌槽で大きく現れるかを検討した.その結果,最も差が顕著に表れる撹拌槽の条件は,標準邪魔板条件の乱流状態で,放射流翼(主にパドル翼)を用いた場合であった.その際,皿底槽の撹拌所要動力は平底槽のそれに比べて最大約20%低下した.また,ピッチドパドル翼やプロペラ翼等の軸流が強い翼を使用した場合は,皿底槽と平底槽の間に動力の差異はなかった.さらに,邪魔板無し撹拌槽の場合は,旋回流支配になるためいずれの翼を使用しても,槽形状による動力の差異はなかった.
  • 加藤 禎人, 多田 豊, 浦野 邦彦, 服部 正寛, 長津 雄一郎, 高 承台, 李 泳世
    原稿種別: ノート
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2010 年 36 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2010/01/30
    ジャーナル 認証あり
    これまで撹拌所要動力に関する研究は非常に多くなされてきており,邪魔板無し撹拌槽に関しては永田の式をはじめとして種々の相関式が提案されている.しかし,邪魔板付き乱流撹拌槽に関しては翼の取り付け位置や槽の幾何形状によって所要動力が変動し,しばしば実機と実験装置との差異が問題になってきた.本研究では,永田の式の考え方では従来同じ動力を示すとされてきた幾何形状の撹拌翼に対し槽底形状,羽根枚数,羽根配置を変えた動力数を測定し,邪魔板付き乱流撹拌槽に関しては,それが大きく異なることを示した.ただし,邪魔板無し撹拌槽に関しては従来の永田の式の考え方が翼取り付け位置によらず成立していた.
分離工学
  • 関野 政昭, 八木 敏幸, 玉村 憲幸
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2010/01/30
    ジャーナル 認証あり
    血液透析濾過器について,既報の実験データにより十分検証した新規の解析モデルを提案する.当解析モデルでは,溶質の膜透過式の対流項にZydney(1993)の提唱式を,血液側境膜物質移動には修正したRautenbach and Albrecht(1989)式を,透析液側境膜物質移動にはFukuda et al.(1992)式を,また血液および透析液の流動圧損式には重力項を付与したHagen-poiseuille式を適用した.
    この解析モデルを使って,血液透析濾過器性能への中空糸形状の影響について検討したところ次の結果を得た.小分子量溶質のクリアランス値は中空糸形状の影響を中分子量溶質の場合より強く受ける.すなわち,等膜面積下では中空糸が小径で中空糸長が長いほど中空糸内の血液流速が速くなり大きな値をとる.一方,中分子量溶質では,クリアランス値は中空糸形状には余り依らず,除水量の影響が大であることが明らかとなった.
反応工学
  • 阿部 豊, 金子 暁子, 八木 崇弘, 濵田 博之, 池 昌俊, 浅野 俊之, 加藤 健, 藤森 憲
    原稿種別: 報文
    専門分野: 反応工学
    2010 年 36 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2010/01/30
    ジャーナル 認証あり
    高濃度オゾン水によるノボラック樹脂を主成分とするフォトレジストの除去過程の機構を明らかにした上で,適度の紫外線照射が大きく除去を加速することが見いだされ,除去が二段階の化学プロセスで進むことが明らかとなった.すなわち,(1)紫外線によってオゾンが分解して生じた水酸化物ラジカルがノボラック樹脂のフェノール部を水酸化してポリフェノールに変換する.(2)親電子試薬であるオゾンに対してフェノールより著しく反応性が向上したポリフェノールは,容易にオゾンの酸化分解を受けて高効率フォトレジスト除去を達成する.一方,紫外線が強すぎると,全てのオゾンが光分解するので除去速度は落ちる結果となった.これらの実験事実に基づいてオゾン濃度と紫外線強度のバランスが除去効率を支配することが明らかとなった.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 浅見 和広, 稲葉 英, 太田口 和久
    原稿種別: 報文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2010/01/30
    ジャーナル 認証あり
    通常スクロース測定用酵素電極にはインベルターゼ(INV),ムタロターゼ(MUT),グルコースオキシダーゼ(GOD)の3種の酵素を使用するが,中でもMUTは非常に高価である.本研究では,MUTを使用しない安価な2種類の酵素から成る電極を作成し,スクロース濃度測定の可能性について検討した.グルタルアルデヒドを用いてGODを白金に架橋結合した酵素電極(GOD電極)と,GODとINVを併せて白金に架橋結合した酵素電極(GOD+INV電極)を作成した.スクロース測定の際,リン酸塩によるα-D-グルコースからβ-D-グルコースへの変旋光触媒作用を利用した.スクロース濃度測定の最適条件,正確な測定に必要な試料の量,グルコースの測定値への影響,得られる電流値と基質濃度の関係を求めた.スクロース測定において最適な測定温度は308 K,緩衝液中のリン酸濃度は0.5 mol·L−1であることがわかった.スクロース溶液にグルコースを混ぜた状態でGOD電極,GOD+INV電極それぞれで電流値を求めた.その結果,GOD+INV電極電流値からGOD電極電流値を差し引いた電流値はスクロース濃度と直線関係を示したため,GOD電極とGOD+INV電極の2つの電極を使用すればスクロースの定量が可能であることがわかった.
マイクロシステム,ナノシステム
  • 山東 篤生, 橋本 俊輔, 井上 義朗
    原稿種別: 報文
    専門分野: マイクロシステム,ナノシステム
    2010 年 36 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2010/01/30
    ジャーナル 認証あり
    屈曲型マイクロチャネルは,流路としての役割に対流混合機能を付加させることのできる最も単純な構造のチャネルとして,マイクロリアクターやマイクロ分析器に応用されている.しかし,通常の屈曲型チャネルでは,屈曲方向が周期的に反転するため,前の屈曲部通過で生じた対流混合効果が,逆方向に曲がる次の屈曲部で一部もとに戻される傾向がある.そのため,1回ごとに屈曲方向が反転するジグザグ・チャネルでは,m回屈曲部を通過させても,必ずしも1回の屈曲部で生じた混合効果のm倍の効果は得られない.本研究では,m回連続して一方向に90度屈曲した後,逆方向にm回連続して屈曲するパターンを繰り返す屈曲型チャネルを,m=1, 2, 3, 4の4種類作製し,その混合性能を比較した.それにより,高い混合効果が得られるmの値やレイノルズ数範囲を実験的に明らかにした.
材料工学,界面現象
  • 今駒 博信, 長岡 真吾, 堀江 孝史, 吉田 正道
    原稿種別: 報文
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2010 年 36 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2010/01/20
    公開日: 2010/01/30
    ジャーナル 認証あり
    市販の水性アクリルエマルション塗料にエタノールを添加した水性揮発2成分系モデル塗料を,鉄板基材上に塗布した塗膜の回分式対流乾燥実験を行い,表面温度変化と質量変化を同時測定した.単独揮発成分系に対して導出された材料温度変化法の基礎式を揮発2成分系に拡張し,拡張式に実測した両変化を代入してエタノール添加水性塗料の水とエタノールの乾燥速度を求めることに成功した.
    乾燥時の蒸発蒸気や湿り塗膜の組成分析を用いずに湿り成分毎の乾燥速度を測定できる本方法は画期的である.ただし,本方法は質量変化の測定可能な低風速熱風条件下での利用に限定されるし,揮発3成分系以上に対して直接的には利用できない.
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