化学工学論文集
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36 巻, 2 号
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編集ノ-ト
物性,物理化学
粉粒体工学
  • 中里 勉, 谷野 文彬, 大山 兼人, 内堀 輝男, 中川 紳好
    原稿種別: 報文
    専門分野: 粉粒体工学
    2010 年 36 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2010/04/10
    ジャーナル 認証あり
    石灰石粉砕粉を粉粒流動層により常圧焼して得られる酸化カルシウム微粉末の細孔構造を無機塩改質剤の添加によりさまざまに変化させた.流動化ガスの種類,反応器垂直方向温度分布,改質剤の添加が及ぼす生成物微粉末の物理特性ならびに吸湿性を調査した.生成物微粉末の283 Kにおける低露点(270–273 K)下での吸湿性を比表面積,細孔容積,焼率との関連性から解析した.
    フリーボード領域をより高温にすると焼反応はさらに進み,生成物がより多孔質化した.乾燥空気よりも窒素ガスを用いる方が生成物である酸化カルシウム微粉末の多孔質化に有利であった.炭酸ナトリウムと酢酸カルシウムをそれぞれ1%添加して焼した結果,細孔は肥大化し10 nm以上の細孔が新たに生成された.多孔質酸化カルシウム微粉末の低湿度下での吸湿特性を調査した結果,吸湿に有効な細孔径は6–50 nmの大きさであることがわかった.また吸湿初期はBET比表面積に,吸湿中期は細孔容積と強い相関があった.
  • 下坂 厚子, 赤司 雅俊, 松本 啓和, 白川 善幸, 日高 重助
    原稿種別: 報文
    専門分野: 粉粒体工学
    2010 年 36 巻 2 号 p. 86-93
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2010/04/10
    ジャーナル 認証あり
    粉体挙動に大きな影響を与える粒子形状を離散要素法(DEM)シミュレーションに取り込むために,転がり摩擦に着目し,球形要素を用いて経済的に粒子形状の効果を表現する方法を提案した.
    まず,傾斜部を持つ平板上を転動する多角柱の挙動から転がり摩擦係数が粒子形状に関する係数と回転速度の関数で与えられることを明らかにし,円柱要素を用いたDEMシミュレーションにより多角柱の挙動を再現した.また,この粒子形状と転がり摩擦係数の関係を任意の物質へ適用する換算法を明らかにした.つづいて,輪郭フーリエ変換を用いて不規則形状粒子の形状の等価多角形数を求め,転がり摩擦係数を得た.傾斜樋上における不規則形状粒子群の流動挙動の実験およびシミュレーションの結果は良好な一致を示し,提案した形状表現法およびその形状から求める粒子群の等価転がり摩擦係数の信頼性を確認した.
分離工学
  • ─モノマー排出量の削減による環境対策─
    天野 正, 小柳 俊一, 奥野 義隆, 金川 千尋
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 2 号 p. 94-104
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2010/04/10
    ジャーナル 認証あり
    塩ビ樹脂(poly(vinyl chloride), PVC)製造における最重要の環境対策である,塩ビ樹脂スラリー中の未反応残留モノマーを除去・回収する脱モノマー塔について検討した.環境影響の更なる低減と生産性および塩ビ樹脂の品質(焼け異物の発生防止と樹脂着色性の抑制)の両立を目指して,シーブトレイを用いたカウンターフロー方式の脱モノマー塔を選択し,塔の安定動作条件,脱モノマー性能を評価した.この結果を基に実機のスケールアップを行い,塩ビ樹脂処理量で35 t/hという高効率の脱モノマー塔を設計,稼動させることができた.
  • 西田 貴裕, 滝山 博志
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2010/04/10
    ジャーナル 認証あり
    工業晶析では,プロセス中の不純物が結晶成長現象に影響を及ぼし,生産効率を左右することがある.そこで,本研究では,無機リン化合物を対象に,複数の不純物(夾雑不純物)存在下での単一結晶および結晶粒子群(懸濁結晶)の成長現象を観察するとともに,不純物が結晶粒子群の品質に及ぼす影響について考察した.
    その結果,本対象系では,不純物は結晶粒子群の成長を阻害するが,構造には影響を及ぼさないことがわかった.特にCaイオンに成長阻害作用があり,Caイオン濃度10 ppm(溶液質量比)で成長速度が約35%減少することがわかった.また,Caイオンを含む不純物存在下で,不純物をマスクする目的でEDTAを添加したところ,結晶粒子群の成長速度が回復することがわかった.以上のように,複数の不純物(夾雑不純物)存在下での結晶製造について,結晶粒子群の生産効率を向上させるための一つの指標を見出すことができた.
反応工学
  • ―バッチ操作の時間短縮による生産性向上―
    奥野 義隆, 金川 千尋, 小柳 俊一, 大浦 誠, 天野 正
    原稿種別: 報文
    専門分野: 反応工学
    2010 年 36 巻 2 号 p. 111-121
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2010/04/10
    ジャーナル 認証あり
    塩ビ樹脂(poly(vinyl chloride), PVC)の量産化,コストダウンの要件であるバッチサイクルタイムの短縮と塩ビ樹脂品質(特に樹脂の初期着色性の改良)の両立を目的として重合開始剤系の探索を中心に検討した.パーエステル系およびジアシル系の開始剤が品質を維持しながら重合時間を短縮するために有効なことを見出し,従来4 h程度に留まっていた重合時間を3 hまで短縮することができた.
    一方,重合反応の高速化および重合器の大型化に対応した更なる安全対策技術の向上を目的として,重合禁止剤の添加による反応抑制・緊急停止手法を検討し,重合異常等の監視・管理システムを確立した.
    これらの成果を現行生産設備に適用することで大幅な生産性の向上,コストダウンが期待される.
  • 吉井 泰雄, 穂刈 信幸, 岩瀬 徹哉, 光来 要三
    原稿種別: 報文
    専門分野: 反応工学
    2010 年 36 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2010/04/10
    ジャーナル 認証あり
    加圧流動層ボイラから排出するNOxを低減するために,圧力788 kPa,反応温度650–850°Cの高温高圧条件下において,NH3注入による無触媒脱硝性能を評価した.基礎試験では流通型反応装置を用いてNOx還元率を評価し,結果から導いた予測式から,NH3/NOモル比2では,反応温度855°C以上,滞留時間1.4 sで,NOx還元率55%以上が可能と評価した.2MWth試験装置でのNH3注入試験において,NH3注入部ガス温度840°C以上,NH3/NOモル比2で,煙突入口NOx濃度を70 ppm以下,リークNH3濃度を5 ppm以下に低減できた.加圧流動層ボイラ内の空気比,および流動層内のガス滞留時間を用いて算出されるNOx濃度と実際に火炉から排出されるNOx濃度は±20%以内の精度で一致することを確認した.2MWth試験装置でのNH3注入試験において,予測制御による自動注入を実施し,負荷変化時においても良好にNOxを低減できることを確認できた.
プロセスシステム工学,安全
  • ―オブジェクト指向によるシミュレータ生成と強化学習による AGV制御ルールの獲得―
    山場 久昭, 冨田 重幸
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2010 年 36 巻 2 号 p. 127-135
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2010/04/10
    ジャーナル 認証あり
    不確定な環境の下での生産システムの設計問題を解こうとするとき,仮想プラントの考え方に基づくシミュレーションベースの手法が有効である.ただしこれを可能ならしめるには,種々の構造を持つ生産システムのシミュレータを半自動生成してくれるような構造設計支援環境と,そこで得られた構造案の生産システムを効率よく運用するための適切な運用戦略の策定支援環境が不可欠である.そこで,構造設計支援については,生産システムの構成要素を表すソフトウェア部品群を組み合わせることにより,様々な構成のシミュレータを生成できる「構造設計支援環境」をオブジェクト指向技術を用いて構築し,一方,そうして得られた構成要素案それぞれの運用戦略の獲得は,強化学習の考え方に基づき自動学習させる方法を検討した.
    具体的な対象として,搬送車による搬送系を持つ生産システムをとりあげ,(1)まずその搬送ラインと装置群の配置の設計を行い,(2)ついでその構造案の下で,搬送車同士が衝突したりデッドロックに陥ったりすることなく,与えられた要求群を達成できるような搬送車の制御ルールの獲得を行い,構築した環境と提案法の妥当性と有効性を実証的に示した.
  • 武田 和宏, 濵口 孝司, 野田 賢
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2010 年 36 巻 2 号 p. 136-142
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2010/04/10
    ジャーナル 認証あり
    プラントアラームシステムは,オペレータがプラントの異常を早期に検知し,正確に状況を把握するための重要なインタフェースの一つである.本論文では,プラントで想定される異常原因発生後の状態変数の異常伝播を表すCause-Effectモデルから,想定異常を静的には完全に識別することができるアラーム変数の組合せをシステマティックに導出する方法を提案する.また,Cause-Effectモデルの可到達行列から,アラームシステムの適切性やユニーク性を反映したアラーム変数の選好度評価法を提案する.選好度は,階層構造化Cause-Effectモデルにより視覚的に確認でき,複数のアラーム変数の組合せの候補をより詳細に検討するときの優先順位の決定に役立つ.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 河田 拓也, 井上 相祐, 安田 昌弘, 荻野 博康
    原稿種別: 報文
    専門分野: 生物化学工学,食品工学,医用工学
    2010 年 36 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2010/04/10
    ジャーナル 認証あり
    有機溶媒耐性微生物Pseudomonas aeruginosa LST-03株が産生するLST-03リパーゼは有機溶媒存在下でも高い安定性を示す.LST-03リパーゼの活性発現にはリパーゼ特異的分子シャペロンが必要であり,異種宿主で発現された組換えLST-03リパーゼにリパーゼ特異的分子シャペロンを添加することにより,組換えLST-03リパーゼをin vitroで活性化することが可能である.活性化された組換えLST-03リパーゼにカルシウムイオンを添加するとさらに活性が高まった.高活性の原因は組換えLST-03リパーゼへのカルシウムイオンの配位とそれに伴う組換えLST-03リパーゼの構造変化が原因であることが示唆された.一方,P. aeruginosa LST-03株の培養上清から調製されたLST-03 リパーゼと組換えLST-03リパーゼの有機溶媒安定性は大きく異なっていた.in vitroで活性化した場合,組換えLST-03リパーゼとリパーゼ特異的分子シャペロンは結合した状態であることから,組換えLST-03リパーゼに結合しているリパーゼ特異的分子シャペロンは,組換えLST-03リパーゼの有機溶媒安定性に大きく影響することがわかった.
エネルギー
  • 松隈 洋介, 三輪 真裕, 弘中 秀至, 井上 元, 峯元 雅樹
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2010 年 36 巻 2 号 p. 149-156
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2010/04/10
    ジャーナル 認証あり
    新たなエネルギー資源として注目を集めているメタンハイドレートを深海底から回収する方法として提案されているガスリフト方式の回収管下端近傍に注目し,回収管下端近傍の流動場および回収される粒子の挙動を実験と解析から調べた.回収管下端近傍の海水の流れとハイドレート粒子の挙動をあらわす支配方程式を連成して解析できるように,差分法と離散要素法を用いた.回収管長さ1.5 m,管径0.05 mの実験室スケールでの実験値と解析値は妥当な範囲で一致した.また,実機システムの設計および操作条件を明らかにするために,実機スケールでのシミュレーション計算を行った.管径1 mのガスリフトシステムにおける最適な回収部形状として,かさの角度45°,かさの高さ0.4–0.6 mを得た.また実機システムの操作条件の指針として,ハイドレート層を0.1 m程度まで砕けばガスリフトシステムは経済的に十分成り立つことを示した.
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