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江頭 靖幸, 玄地 裕, 小島 紀徳, 酒井 裕司, 竹下 健二, 田中 幹也, 山崎 章弘
2010 年 36 巻 4 号 p.
199
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
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田中 幹也, 成田 弘一, 齋木 幸則
原稿種別: レビュー
2010 年 36 巻 4 号 p.
201-206
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
使用済みの無電解ニッケルめっき液(使用済み液)からニッケルを回収しリサイクルする技術が求められている.本稿では,筆者らが研究してきた,溶媒抽出法を適用した技術を紹介する.バッチ実験の結果に基づき,まず酸性有機リン抽出剤であるPC88Aを用いて使用済み液中の不純物である鉄や亜鉛を選択的に除去し,その後pHを6付近に上げて,キレート試薬であるLIX84Iに少量のPC88Aを加速剤とした有機相を用いてニッケルを抽出し,得られる有機相を1–2 mol/dm
3の硫酸で逆抽出することにより,ニッケルを硫酸ニッケル溶液として回収し,めっき工程で再使用するプロセスを開発した.向流多段操作の実験も行い,高効率でニッケルを回収できることを確認し,めっき工場において実用に供することができた.まためっき液中の不純物や副生成物を除去することによるめっき液長寿命化の研究も併せて行ったところ,アルミ表面へめっきする際に用いるストライクめっき液に蓄積する亜鉛を,酸性有機リン抽出剤を用いて選択除去し,ストライクめっき液の寿命を3–5倍に延ばすプロセスを確立した.
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飯塚 淳, 山崎 章弘, 柳沢 幸雄
原稿種別: レビュー
2010 年 36 巻 4 号 p.
207-211
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
コンクリートは我々が最も多量に使用している物質の一つであり,そのマテリアルリサイクル技術を開発することは循環型社会の構築に向けて不可避かつ喫緊の課題である.コンクリート塊のマテリアルリサイクルにおいてはセメント水和物部分のリサイクル技術開発がその最大の障壁となっている.コンクリート廃棄物中のセメント水和物部分を水と二酸化炭素のみを用いて化学的に再資源化することを試みた.実際のコンクリート廃棄物から炭酸カルシウムを製造し,再資源化することが可能であった.また,二酸化炭素処理と機械的な処理を組み合わせることで,コンクリート塊から細骨材を再生することができた.
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小寺 洋一, Mushtaq A. Memon
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
212-221
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
本論文では,廃棄物の中でもとくに廃プラスチックの燃料化技術を,ある国や地域に導入する際に必要となる技術選択の手法を検討した.複合固形廃棄物の処理事業の検討事項を参考に廃プラスチックまたは廃プラスチックを含む混合廃棄物の燃料化の事業計画を進めるスキームをまとめた.廃プラスチックの性状に基づき,燃料化手法の選択指針を提示した.事業上,そしてシステムの環境上適正な技術(EST)としての評価項目を例示した.
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牧 善朗, 芝田 隼次, 村山 憲弘, 西村 泰宏, 上嶋 優矢
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
222-228
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
重金属として,電気・電子産業で部品,回路やはんだ付け材料などとして汚染源になりやすいPb,Cd,Cuを選び,キレート化剤に(
S,
S)-Ethylenediaminedisuccinic acid(EDDS),
N,
N-Dicarboxymethylglutamic acid(GLDA)およびクエン酸を選定して,これらを単独および混合して用い,汚染土壌の浄化を検討した.キレート化剤の濃度,溶出時間などの条件を変化させて,回分操作により重金属の溶出挙動を調べた.キレート化剤はそれぞれに特有の酸解離定数や金属錯体生成定数を持っているので,これらの値はキレート化剤を選定するときの大きい指針となる.たとえば,EDDS は大きい金属錯体生成定数を持っているが,高いpHで酸解離が起こり,金属水酸化物の生成するpH と重なるので土壌浄化に使用しにくい.GLDA とクエン酸を混合使用すると,Pb,Cd,Cuをほぼ同じ溶出速度と溶出量で土壌から溶出させることができた.回分操作の結果を基にして,カラム式連続溶出試験を行い,重金属の溶出速度を求めた.得られた溶出速度を用いて,汚染土壌をヒープリーチング形式で浄化処理を行うことをモデルにして,いくらかの検討と推算を行った.
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利谷 翔平, 周 勝, 中島田 豊, 寺田 昭彦, 細見 正明
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
229-236
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
浸透流式飼料イネ人工湿地からのメタン(CH
4)および亜酸化窒素(N
2O)の排出量を直接および間接排出源ごとに評価した.直接排出源の評価として,湿地表面から大気への排出フラックスを,間接排出源の評価として,浸透流出水中の溶存ガス濃度をモニタリングした.CH
4-Cの排出フラックスと浸透流出水中の濃度はそれぞれ既往の排水処理の人工湿地およびその他排出源よりも低かった.N
2O-Nの直接フラックスは,排出および人工湿地への吸収が見られ,それぞれの平均フラックスは17.7±18.8(サンプリング回数41回のうち14回)および−18.9±15.2 μg-N·m
−2·h
−1(サンプリング回数41回のうち13回)だった.浸透流出水中の溶存N
2O-N濃度は0.43–10.4 μg-N·
l−1の範囲で推移し,土壌間隙水中のNO
3-N濃度と有意な正の相関を示した.実験期間中における全排出量(直接排出量+間接排出量)に対する間接排出量の割合は,CH
4-Cが2.9%だったのに対し,N
2O-Nは86.7%だった.N
2O-Nの間接排出による排出係数(EF
5g)の範囲は0.00053–0.0086 kg N
2O-N·(kg-N leaching/runoff)
−1であり,文献に見られる主な間接排出源と同等であった.これらの結果から,浸透流式人工湿地においてはN
2Oの間接排出のモニタリングおよび制御が重要と考えられた.
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小島 紀徳, 長嶺 淳
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
237-242
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
二酸化炭素問題の対策技術の一つとして,資源量が豊富である岩石の風化反応に注目した.しかしながら,岩石を利用する対策技術では,その風化反応速度は遅く,その反応速度がネックになると予想される.本研究では,基礎的知見を得るために,様々な珪酸塩鉱物について,速度論的検討を行った.
実験は,二酸化炭素飽和水を用意し,粉末状の鉱物を加え,恒温槽内(25°C)で撹拌を行いながら,二酸化炭素を流し続けた.そして,一定時間経過後,一定量採取し,手早くろ過し,ろ液からの再沈澱を防ぐために硝酸を加え,液中の主成分元素を定量した.
溶解反応は,瞬間的な溶出過程・一次的な濃度増加過程・風化反応の平衡からなることがわかった.さらに,風化反応の律速段階は,鉱物表面上に存在することから,風化反応速度を表面積当りの溶解速度として求めた.速度は2.1×10
−5–7.3×10
−4 mol/(m
2· h)の範囲であり,中でもCaを主成分とするCaSiO
3,CaCO
3の溶解速度が速いことがわかった.
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眞弓 和也, 菊池 康紀, 中谷 隼, 平尾 雅彦
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
243-254
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
プラスチックリサイクルシステムは,消費者やリサイクル業者など複数のステイクホルダーにより設計され,リサイクル技術,回収方法,プラスチックによる代替物などの条件によって効果が異なる.適切なシステム設計のためにこれらの条件と効果の関係を解析し,最適な条件を検討するための仕組みが必要である.本研究では,日本の廃プラスチック全量を対象としたリサイクルシステムの設計支援のために,プラスチックライフサイクルに関与するステイクホルダーの設計条件と,環境負荷との関係を解析する.そのために,最適化手法を用いたリサイクルシナリオの選択システムを構築した.本システムでは,プラスチックリサイクルによるナフサ,重油,石炭,天然ガスの消費削減効果とCO
2排出削減効果をライフサイクルアセスメントに基づいて評価できる.さらに各資源に対する重み付けで評価する資源消費削減効果を目的関数とし,リサイクルプロセスごとの廃プラスチック受入許容量を制約条件として,廃プラスチックの分配量を線形計画法により最適化する.このシステムにより,286通りの重み付け係数の組み合わせから135通りの最適シナリオ群が得られ,CO
2排出削減量およびナフサ消費削減量が各最大削減量に対して50%以上となるシナリオに限定した場合,28通りにまで絞り込まれることを示した.本研究で構築したシステムにより資源節約を含むと環境負荷低減の観点からプラスチックリサイクルシステムが設計可能となる.
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島田 雪子, 二井手 哲平, 久保田 富生子, 神谷 典穂, 後藤 雅宏
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
255-258
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
廃棄物系バイオマスである卵殻膜および羽毛を吸着剤として用いた貴金属の分離について検討した.タンパク質を多く含むこれらのバイオマスは,Au(III),Pd(II)およびPt(IV)の貴金属イオンに対して選択的な吸着能を有し,貴金属イオンの分離回収に利用可能であることが明らかになった.タンパク質高含有の卵殻膜が羽毛に比べて高い吸着能力を示し,卵殻膜についてはpH 5以下の領域でAu(III)イオンに対して高い吸着能を示すことがわかった.その吸着挙動は卵殻膜に含まれるタンパク質とAu(III)イオンの錯形成が大きく関わっており,水溶液中のAu(III)イオン種に影響されることが示唆された.
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森川 豊, 伊藤 雅子, 楳田 慎一
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
259-263
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
食糧と競合しないスギなどのセルロース系バイオマス資源から糖化酵素を利用してバイオエタノールを効率よく生産するための前処理方法を開発した.本方法は高圧湿式粉砕機(湿式ジェットミル)を用い,その上流側の配管の一部を加熱することにより,分解が困難なセルロースの粉砕を,高温高圧下で行うものである.リグニンを含まない結晶性セルロース(セオラスTG,旭化成(株))およびリグニンを含む国産のスギに適用したところ,453 K(180°C)の加熱条件下では,加温しない場合と比べて平均粒子径が小さくなり,電子顕微鏡観察でいずれも繊維状に粉砕されたことがわかった.この試料を使ってセルラーゼとヘミセルラーゼによる酵素分解を実施した.処理時間と処理温度を変えた試料で酵素処理した結果,いずれの温度でもセオラスの分解率は向上し,特に423 K(150°C)以上での粉砕処理を行った試料の酵素分解率が大きくなった.スギを453 Kで約110 h処理した場合,ホロセルロース分解率は,未加熱の場合と比較して453 K処理により約2倍に,α-セルロース分解率は3倍以上に増加した.
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岑 友里恵, 大藪 真弓, 伊藤 亜季乃, 西田 晶子, 福永 公寿, 渡辺 高行, 三隅 修
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
264-269
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
環境負荷の少ない油脂からのバイオディーゼル燃料(BDF)製造のための触媒として酸化カルシウム(CaO)を検討した.石灰石を大気中で焼成して得られる工業用CaO(CaO-E)は米油のトランスメチル化反応を触媒したが,脂肪酸メチルエステル(FAME)の収率は2 hで8.3%でしかなかった.しかし,そのCaOを水和して,一旦,消石灰(Ca(OH)
2)としたもの,および市販試薬Ca(OH)
2を425°C, 9 hあるいは500°C, 1.5 hの真空下での焼成,あるいは600°C, 4 hの常圧・窒素ガス雰囲気下での焼成により脱水することにより,7.2≤pK
BH≤15.0の塩基強度の塩基を0.77 mmol·g
−1以上有し,比表面積が20 m
2/g以上,そして,直径2–200 nmの細孔容積が0.19 mL/g以上のCaOが調製できた(CaO-A, CaO-B, CaO-C, CaO-D and CaO-E).それらのCaOは米油のトランスメチル化反応において2 hで96%以上のFAME収率を与える高触媒活性を発現することが明らかとなった.
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稲塚 久, 尾形 剛志, 竹下 健二
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
270-274
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
分子の光異性化に伴う構造変化を利用した光応答型溶媒抽出プロセスについて検討する.分子内にアゾ基を有するbis[2,2′]dipyridyl-6-yl-diazene(BDPDA)は可視光照射下においては
trans体として存在し,紫外光を照射することによりその一部が
cis体に異性化する.BDPDAによる白金イオンの抽出において,白金イオンの抽出率はBDPDAの構造に依存し,紫外光照射時の抽出率(
cis-BDPDAによる抽出)は可視光照射時の抽出率(
trans-BDPDAによる抽出)に比べ非常に高いことが明らかとなった.また,紫外光照射下で白金イオンを抽出した有機相から蒸留水を用いて逆抽出を行った結果において,光未照射時では蒸留水による白金の逆抽出は困難であったが,可視光を照射することで高い逆抽出率を得た.これらの結果より,光の照射のみで白金を抽出・回収する光応答型溶媒抽出プロセス構築の見通しを得た.
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酒井 裕司, 相原 知之, 山本 隆善, 定方 正毅
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
275-280
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
中国にて深刻化している大気汚染と砂漠化,さらに食糧問題を解決する手法として,脱硫石膏を用いて砂漠化土壌改良を行っている.1996年より中国東北地方にて行ってきた砂漠化土壌改良試験を,1998年にヘクタール規模に拡大して行った結果,脱硫石膏を1.0 wt%施用したにもかかわらず改良できない未改良部分(以下,未改良区域(ANA))が生じてしまうことを確認した.そこで翌年,ANAにさらに脱硫石膏を施用して改良試験を行った結果,発芽率,株の成長割合,成長高さ,茎の太さ,生育量において明らかな改善効果を確認できた.生育量においては施用量の増加に伴い増加し,年々生育量が増加することも確認できた.さらに,改良に伴い土壌pHや土壌中Na含有量の減少も確認することができた.そして,トウモロコシ生産量,石膏施用量とpH,EC,ESPや各種イオン濃度の土壌化学性の分析結果における相関性を評価した結果,石膏施用に伴いトウモロコシ生産量が増加したこととやや相関があることが確認できた.最後に,フィールドでの土壌化学性からの改良評価のみならず,石膏による透水性の改良効果を,改良された土壌と未改良区域の土壌にて比較を行った.その結果,石膏施用量,乾燥密度の変化に伴う飽和透水係数の比較から,石膏施用量の増加,乾燥密度の減少により飽和透水係数が著しく改善されることが確認できた.したがって,透水性が植物の生育しない主要因になっているわけでは無いことが確認できた.
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酒井 裕司, 関 孝行, 佐藤 清貴, 陳 群, 長本 英俊, 定方 正毅
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
281-287
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
近年,中国における大気汚染防止技術として新規乾式脱硫プロセスの開発が急務となっている.これまで開発してきたT-Tプロセスにおいて,より低温域で高脱硫率を得ることができ,アルカリ土壌改良剤として有効な脱硫副産物が得られるような新規脱硫剤の開発が要求されている.そこで本論文では,従来の脱硫剤であるFLASHよりも脱硫性能の高い新規脱硫剤としてZeolite+CaOを検討した.その結果,473 Kの低温にて反応時間全体での脱硫率が72.0%という結果が得られた.この理由として,ゼオライトの比表面積が大きいことによるCa(OH)
2の吸着量の増加が関係していると考えられる.さらに,試料作製時におけるCaOと担体との投入順序の入れ替えにより,FLASH,Zeolite+CaOともに脱硫率が向上した.新規FLASH,新規Zeolite+CaOとともに従来型よりも高い脱硫率を得ることができ,FLASHでは473 K,623 Kにおいてそれぞれ32.4%,74.9%の脱硫率を,Zeolite+CaOでは523 Kにおいて84.1%の脱硫率を得ることができた.この原因として,Ca(OH)
2が均一に存在している溶液中に担体が投入されたことで比表面積が増加したためと考えられる.さらに活性化エネルギーの値から投入順序の変更により反応活性が向上していることを確認できた.そして,FLASH,Zeolite+CaOの従来型,新規型すべての脱硫後の化合物においてアルカリ土壌改良剤に有効な石膏の含有を確認できた.
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玉置 洸司郎, 齋藤 範三, 荻 崇, 野村 俊之, 小西 康裕
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
288-292
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
金属イオン還元細菌
Shewanella algaeの静止細胞は,ギ酸塩または乳酸塩を電子供与体として用いて,初期液相濃度1–10 mol/m
3のPdCl
2水溶液からパラジウムを細菌細胞内に還元・回収することができた.とくにギ酸塩を電子供与体に用いた場合には,
S. algaeによるPd(II)イオンの還元は迅速に進行し,Pd(II)イオンの最大還元・回収速度は2.14×10
−14 g-Pd/cell/minになった.Pd回収容量は1.74×10
−13 g-Pd/cell(1.49 g-Pd/g-dry cells)となり,出発溶液(10 mol/m
3 PdCl
2)に対するPd濃縮率は570倍に達した.また,
S. algae細胞に捕集されたパラジウムは,細胞表面に一次粒子径10 nm以下の金属Pd(0)ナノ粒子として存在していることが明らかになった.さらに,細胞懸濁液に対して超音波照射処理とアルカリ溶液処理を併用することにより,細胞内Pdナノ粒子を液相に分離・回収することができた.
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緒方 文彦, 藪谷 仁志, 冨永 壽人, 山口 勲, 川﨑 直人
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
293-298
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
本研究は,コーヒー豆かすの再資源化を目的として,コーヒー豆かすの表面をCaCl
2により処理し,それらへのNO
3−-NおよびNO
2−-Nの吸着機構について検討した.その結果,600°Cで炭化処理したコーヒー豆かす炭(CG600)へのNO
3−-NおよびNO
2−-Nの吸着量は,他の温度で炭化処理したものに比べ,最も高い吸着量を示した.また,吸着時の温度が高いほど増大が認められ,吸着開始24 hで平衡に達した.一方,NO
3−-NおよびNO
2−-Nの吸着によりコーヒー豆かす炭から塩化物イオンが溶出した.また,吸着等温線はFreundlich式およびLangmuir式に適合した.したがって,CG600表面に賦与された塩素はNO
3−-NおよびNO
2−-Nとイオン交換していることが示唆された.これらのことから,コーヒー豆かすは,CaCl
2水溶液で処理することにより再資源化され,NO
3−-NおよびNO
2−-Nの除去能を有することがわかった.
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大石 哲雄, 小西 宏和, 野平 俊之, 田中 幹也, 碓井 建夫
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
299-303
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
廃棄物から希土類金属を分離・回収する新プロセスを提案した.これは,溶融塩電解と合金隔膜を用いたプロセスであり,ここで合金隔膜はバイポーラー電極として作用し,次のような機構により希土類イオンを選択的に透過させる.(a)廃棄物のアノード溶解または低品位の希土類化合物を添加することで,陽極室内に希土類イオンを形成する,(b)合金隔膜の陽極室側表面において希土類イオンを還元して合金化する,(c)希土類金属が合金内を拡散し,隔膜の陰極室側表面で酸化され,イオンとして陰極室内に溶解する,(d)陰極室に溶解した希土類イオンは陰極で希土類金属または合金として回収される.固体合金内の金属拡散は遅いため,通常はこれを分離プロセスに応用することは困難であるが,溶融塩電解においては特定の希土類合金がきわめて高速で形成することが報告されており,本プロセスではこの現象を応用している.期待される特長として,鉄族元素等の不純物と希土類金属との高精度な分離が可能であること,各希土類金属に対する選択性を電解条件によって比較的自由に制御できることなどが挙げられる.そこで,予察的な実験としてNi薄膜で作成した容器に共融組成のLiCl–KCl溶融塩を入れ,この容器底部を別の溶融LiCl–KClに浸漬し,容器内側を陽極室,外側の浴を陰極室として使用した.まず,陽極室にDyCl
3を添加して定電位電解によりNi容器をDyと合金化した.次いで陽極室にNdCl
3を添加し,陽極室中の炭素電極を陽極,陰極室中のAl板電極を陰極として所定の電流を流した.陰極室中のDyおよびNdの物質量を測定した結果,DyおよびNdが上記の機構によって陽極室から陰極室に拡散透過したことが示された.続いて,合金化する際の選択性を確認するため,溶融LiCl–KClにDyCl
3とLaCl
3を添加した系,およびこれにFeCl
2を添加した系においてNi板電極を定電位電解した.その結果,いずれの場合もDyNi
2が選択的に形成していたことから,本プロセスではDyをLaやFeから分離できる可能性が高いことが示された.
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中井 智司, 河上 康二郎, 奥田 哲士, 西嶋 渉, 岡田 光正, 大田 利行, 熊本 直樹
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
304-309
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
銅(II),クロム(VI),ヒ素化合物(V)によって構成されるCCA剤は,電柱や建築物土台に使用する木材の防腐剤として使用されたが,その有害性のため,現在は使用されていない.しかしながら,耐用年数の経過と共に,かつて生産されたCCA処理木材が廃棄物として大量に発生することが予想される.本研究では,廃CCA処理木材中のCCAの分布を調査してCCA除去に適した薬剤を選定するとともに,三つの実廃CCA処理木材試料を用いてCCAの除去を行い,さらに除去に伴う木質成分への影響も評価した.電子プローブマイクロアナライザーを用いた観察の結果,銅,クロム,ヒ素は,ともに木材細胞の周囲の部分に多く存在していることが確認され,CCAの各成分がリグニンと共存している可能性が示された.そこで,試料中のリグニンの分解を行ったところ,分解に伴う銅やクロム,ヒ素の除去が認められ,リグニンの分解によってこれらを除去できることが明らかとなった.次に,4%過酸化水素水を用いて三つの試料を処理した結果,銅は95%以上除去されることを確認した.一方,クロムやヒ素については,除去率が70%に達しない試料もあったが,他の二つの試料からほぼ100%除去できた.さらに,処理前後において,試料中のホロセルロース,リグニンの割合は変化しておらず,過酸化水素水を用いて廃CCA処理木材を処理しても,パルプとしての再資源化の可能性を損なうような木質成分へのダメージは認められなかった.
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―反応促進とNOx生成抑制のための一考察―
新井 英敬, 尾形 敦, 山崎 章弘, 金 賢夏, 柳沢 幸雄
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
310-316
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
球状強誘電体ペレット(SrTiO
3(ε=330)あるいはBaTiO(ε=15,000)を充填した非平衡プラズマ反応器を用いてトルエンの分解実験を行った.SrTiO
3を充填した場合の方がBaTiO
3を充填した場合よりもトルエンの分解効率,NOxの生成抑制効果ともに高くなった.これらの充填剤による効率の違いを明らかにするために,オシロスコープを用いてプラズマ発生時の印加電圧波形と放電電流波形を調べた.どちらの充填剤を用いた場合も,プラズマ生成とともに数多くの放電パルスが観察された.しかしながら,最大放電パルス電流値やパルス放電電流の1サイクルでのピーク数は,投入電力が同じ場合でも充填剤によって大きく異なることが明らかになった.これらの事実は,充填する強誘電体ペレットの種類を替えることによって,充填型プラズマ反応器内のプラズマの状態を積極的に変えることができることを示唆している.また,反応特性および電流電圧波形の結果に基づき,それぞれの誘電体を充填したプラズマ反応器の放電状態に関するモデルを提案した.
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若月 正浩, 飯塚 淳, 山崎 章弘, 柳沢 幸雄
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
317-322
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
砂層の保水性に対する高吸水性ポリマー(SAP)の添加効果を実験的に明らかにするために,モデル砂層を用いて水分特性曲線を測定した.SAPとしては,市販のGrass Power P-200(栗田工業製)を用い,豊浦砂と混合することでモデル砂層とした.SAP混合割合は0.05–0.4 wt%の範囲で変化させた.SAPの混合割合を増加させると共にモデル砂層の保水力が上昇したが,水分特性曲線の形状そのものはほとんど変化がなく,純砂層を平行移動したものになった.このことは,SAP混合砂層の保水力がSAP相の保水力と砂層の保水力の和で表されることを示す.しかしながら,混合砂層中のSAPの保水力はフリーなSAPのそれよりも大幅に減少した.これは,砂層の重量による過剰な圧力がSAP相にかかるためであると考えられた.そこで,SAPの保水力に対する過剰な圧力効果をFlory–Hugginsのモデルを用いて定量化したところ,SAP混合砂層の水分特性曲線をよく相関することが可能になった.
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原田 浩幸, 天野 佳正, 志岐 昌彦, 吉野 健児, 山本 浩一, 横山 勝英, 川喜田 英孝, 大渡 啓介
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
323-327
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
付着藻類を起源とする細胞外物質の底泥粒子の凝集や安定に関する影響を実験室的に検討した.この多糖類は水溶性であり,凝集や安定化に関する影響を流動特性実験で調べた.抽出多糖溶液とその底泥懸濁溶液やカルシウム共存状態での流動は,ずり速度可変の粘度計を用いて測定した.抽出溶液はビンガム挙動を示し,粘度は経過時間とともに増加した.これは水和反応によるものと考えられた.抽出多糖が共存する懸濁液では非ビンガム挙動を示し,チキソトロピー性を示した.抽出多糖は底泥の安定化に関係して,その効果はカルシウムによって増すことがわかった.
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―インドネシア・ロンボク島における実証―
東野 英昭, 本嶋 秀子, 尾崎 益雄
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
328-335
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
開発途上国の環境整備においても,地球環境の視点から取り組むことがより重要になりつつある.
インドネシア国,西ヌサテンガラ州に属するロンボク島の農村部では,生活エネルギーの中心となる炊事エネルギー源の多くを薪に依存し,周囲の丘陵山間部からの伐採でまかなっている.
同島では生活水準向上のために,畜産が重要な位置を占めているが,伐採した樹木の葉や細い枝も飼料として利用するなど,エネルギーと畜産振興が環境に与える負荷は大きい.しかし,多くの開発途上国の場合と同様に,畜産廃棄物に対する環境対策は講じられていない.
インドネシア国の中央政府,および西ヌサテンガラ州政府は,この地域を畜産の振興によって経済発展させる計画を持っているため,今後,家畜数の増加に伴い,畜産廃棄物による地下水汚染など,環境問題の深刻化が懸念される.
本研究は,このような状況の中で,戸別バイオガス発生設備をこの地域に導入し,畜産廃棄物である牛ふんを原料としてメタンガスを供給し,炊事用エネルギー源の薪からの脱却を図り,環境と生活に与える効果を検証した.本設備は,農家が戸別に対応できる仕様で十分な機能を発揮し,環境負荷を低減することが明らかになった.
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―武蔵野市におけるケーススタディ―
張 文卿, 石原 雅典, 小島 紀徳
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
336-342
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
本論文では,武蔵野市で行われた廃プラスチックの混合焼却試験の結果を報告する.既存設備で廃プラを燃やすとダイオキシンなど有害ガスが発生することが危惧される.一方,埋め立て場所の不足の点から,プラスチックごみについても焼却処理したいとの行政側の意向がある.本試験は,混合焼却によりダイオキシン類など有害ガスがどのような挙動を示すかを計測し,実操業時での混合焼却の可否の判断のために行われたものである.ダイオキシン類およびその前駆物質の抑制にあたっては,燃焼過程での生成抑制が最優先されるべきで,次に排ガス処理装置で高効率除去プロセスが要求される.試験により,ボイラー出口のダイオキシン濃度は,混合焼却ごみ中のプラスチック含有率とは明らかな関係を示さなかった.ボイラー出口においてダイオキシンの濃度が最も低かった1点を除き1.2–2.3 ng-TEQ/m
3 Nであったが,バグフィルタ通過後のダイオキシン濃度はその1%程度まで減少した.煙突からのダイオキシン類の排出濃度は0.12–0.33 ng-TEQ/m
3 Nであり,2002年12月からの既設施設の2 t/h以上4 t/h未満の規模の焼却炉に対する新基準値である5 ng-TEQ/m
3 Nを満足していた.したがって,廃プラを燃やしても,必ずしもダイオキシン類の発生の増加がみられるとはいえないとの結論を得た.
廃プラ混焼により,高温化による炉寿命への影響やHCl除去費用の増大の可能性は残るものの,NOx等のほかの有害ガスについては,顕著な増大は認められなかった.武蔵野市ではこの試験結果に基づき,2003年10月から廃プラを焼却することとした.
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梅田 久義, 佐々木 敦, 髙橋 國彦, 高崎 康志, 柴山 敦
原稿種別: 報文
2010 年 36 巻 4 号 p.
343-350
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
一般に貴金属の精製・リサイクルプロセスからは強酸性廃液が発生し,多くの場合,湿式法で処理される.例えば金,白金,パラジウムおよび銀など貴金属が10 mg/L程度であり,銅や鉄などの金属が数mg/L–10,000 mg/L含まれる廃液については,通常中和法で処理される.しかし,このような廃液に多量のアンモニウムイオンが含まれる場合,pHの上昇と共に金属がアンミン錯イオンを形成するため,一般の中和法では処理が困難である.
本研究の目的は,多量のアンモニウムイオンを含有する強酸性廃液中の微量貴金属を回収することである.廃液をpH6で中和すると,銅,鉛および鉄などの大半の金属は沈殿する一方,貴金属は沈殿しなかった.中和処理後,濾液中に残留する貴金属は,水素化ホウ素ナトリウムを用いpH 7.5で還元された.特に白金については,水酸化ナトリウムを用いた脱アンモニア処理によって,還元が改善された.貴金属は,中和,脱アンモニア,還元および溶融の各プロセスを組み合わせることにより,銅メタル中に濃縮された.このとき金,銀およびパラジウムの回収率は91%以上であり,白金は,およそ71%であった.
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濱野 裕之, 高橋 伸英, 山田 興一, 小島 紀徳, Law John
原稿種別: ノート
2010 年 36 巻 4 号 p.
351-354
発行日: 2010/07/20
公開日: 2010/07/21
ジャーナル
認証あり
現在,大気中二酸化炭素濃度の増加による地球温暖化が問題となっており,その対策として西豪州半乾燥地における大規模植林が試みられている.対象地での積極的な対策としては,対象地における表面流出水の有効利用が考えられているが,その期待される表面流出水量は未知であり,同時に進められている数値計算の比較可能なデータは皆無である.そこで本研究は,年間降水量200 mmの対象地における表面流出の実測を行い,表面流出率の定量的把握,および植林地選定を目的とした表面流出モデルの検証の為の水収支データ取得を行った.その結果,29 mmの降雨では表面流出率17.5%であることが実測により得られ,対象地における植林への表面流出水の有効利用量が定量的に明らかになった.
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